青魔法
青魔法
宗教と科学の狭間で生まれた魔法は、発展の過程で白魔法と黒魔法に二極化した。それらの使い手は常に戦乱の中に身を置くことになり、あらゆる魔法が軍事に転用されていった。
しかし戦いと無縁のク族によって編み出された青魔法は、白魔法や黒魔法と異なる独自の発展を遂げていった。霧が晴れたことで、青魔法は広く世に知られることになった。またラーニングという新たな技法が英雄クイナ・クゥエンによって編み出されたことで、ク族以外の種族でも青魔法が使えるようになった。ラーナー(求道者)とも呼ばれる彼らは、現在、様々な場所で活躍している。
マスタードボム・ブレイズ
高熱の火炎を見舞い、敵に熱傷を負わせるマスタードボム。
冷気によって対象を攻撃し、凍傷を負わせるブレイズ。
これらの術は相手の戦闘能力を削ぐことに主眼を置いており、致命傷を与えることがないよう威力は抑えられている。
沼地の民ク族は好戦的な種族ではなかったものの、霧の下で暮らしていたため、常に魔物の脅威にさらされていた。青魔法は、そうした危険から身を守る目的で編み出されたものだった。性質も白魔法や黒魔法と根本的に異なっており、青魔法にリフレクが通用しないのはこのためである。
アクアブレス
水流で敵を押し流すアクアブレスは、空気中の水分を体内に取り込み、一気に吐き出す術である。遠い昔に黒魔道士と交流のあったク族が、水流の魔法ウォータから着想を得てこの魔法を編み出したと伝えられている。しかし殺傷力は低く、あくまで敵を牽制するための術といえる。
アースシェイク
局所的な地震を発生させるアースシェイクは、青魔法の中でも威力が高く、殺傷に優れている。
もともとこの魔法は、術者の周辺にある活断層に膨大な魔力を流し込むことで地震を発生させる黒魔法クエイクだった。地震によって生まれた地割れに敵軍を飲み込む、軍事利用を前提にした、非常に大規模な魔法である。しかし大魔法ゆえに制御も難しく、友軍にまで被害が及ぶことが多かったため、クエイクの使い手はいなくなった。
後にこのクエイクは青魔法に取り込まれて、規模も威力も抑えられた、より扱いやすい術に組み変えられた。
ツイスター
白魔法には、空気の動きを操つることで風を起こすエアロがある。ク族によってこの魔法を操作しやすく改良したのが、竜巻によって敵を薙ぎ払うツイスターだ。白魔道士がさらにツイスターを取り入れ、攻撃魔法として強化したのがトルネドである。
ク族は他種族と関わる機会が少なかったが、その文化はかならずしも閉鎖的だったわけではない。事実、ツイスターやアクアブレス、アースシェイクのように白魔法や黒魔法を模倣して生まれた青魔法は数多く、逆に青魔法が別系統の魔法に影響を与えることもあった。
ホワイトウィンド
白魔法の代名詞ともいえるケアルは、術者が患部に直接触れていなければその効果を十分に発揮できない。これは、過度な回復作用によって肉体を構成する細胞が破壊されないよう、あらかじめ力を制御するためである。
しかしホワイトウィンドは、回復の効果を持つ魔力を風に乗せることで、一定範囲内にいる人々の傷を癒し体力を回復することができる。常に安定した効果を発揮するこの魔法は汎用性が高く、新時代における青魔道士の地位を押し上げる原動力となっている。
マイティーガード
プロテスやシェルは、敵からの武器や魔法による攻撃を防ぐ。これらの術は、魔力によって対象個々の物質構造を強化し、また魔法への耐性を持たせることができる。
プロテス・シェルそれぞれの効果を兼備するマイティーガードは、術者の周辺に強力な結界を張る防御魔法であり、複数人を同時に攻撃から守ることが可能だ。しかし効果が高いぶん魔力の消費量も大きく、もっぱら高位の術者が多用する。
マトラマジック
ただ一撃で、対象を瀕死にまで追い込むことさえ可能な攻撃魔法。
強大な魔力によって敵を倒すこの術は、無数の光弾を操作するために高い能力を必要とし、完璧に使いこなすには鍛錬が欠かせない。その性質はデスに似ているが、相手に逃亡ないし降伏の機会を与えるあたり、かならずしも殺傷を目的としない青魔法にふさわしい。
リミットグローヴ
絶体絶命の危機に陥ったとき、青魔道士が起死回生の秘術として用いるのが、このリミットグローヴである。この魔法は、光の檻に敵を閉じ込め、その動きを止めたうえで魔力を炸裂させる。
生命は死に直面した時、それに抗おうと大きな力を発揮することがある。リミットグローヴは、死に打ち勝とうとする生命力そのものを魔力に転用したものだ。
黒魔法 目次 新時代の魔法
編集後記
例によって例のごとく、上記に挙げた青魔法はゲームに登場した全てを網羅していません。これについて、僕の意図を説明しておきましょう。
まずゴブリンパンチやレベル5デスのように、レベルによって効果が左右される魔法は取り上げませんでした。レベルの概念を、小説では除外してあるからです。
ただゴブリンパンチについては、当初青魔法に加えるべく、その効果を再設定していました。使用者と対象の能力が同等である時、強力な攻撃を見舞うことができる、というのがそれです。でも能力が同等なんてことはありえません。たとえば一度敵に敗れれば、主人公たちは相手を越えようと必死に力をつけることでしょう。敵の側も同様です。彼らの能力がまったくの互角であることは、到底考えられないのです。こうした理由から、結局ゴブリンパンチも取り上げないことにしました。
マジックハンマーについても、独自に設定を考えていました。ハンマーに見たてた腕に魔力をまとわせ、対象に触れると同時に、自分の魔力とともに敵の魔力も強制的に発散させる。これが、僕が考えたマジックハンマーの設定です。ただ、ドレインやアスピルを使うときも同じような手順を踏むことにしているので、いまいち個性を生かせそうにありませんでした。むしろ、青魔法としてではなくキャラクター独自の技として存続させたほうが良いように思われ、記述せずにおいたのでした。
死の宣告・死のルーレットは、その性質上、当然ながら除外しました。命をチップにしてしまうような人(笑)ならともかく、まっとうな戦略をたてられる人間は、こんな生死を賭けたギャンブルをしません。やはりこれも、青魔法として扱うより、キャラクターを特徴づける術として扱ったほうが良いだろうと判断したのでした。
リレイズも、似たような理由で青魔法の列に加えていません。そもそもレイズも、白魔法として直接には取り上げていないのです。記述しないのは当然のことでしょう。