×印 | 斜十字形の、邪霊の侵入や接近を禁止する魔除けの印。ペケ、たすき、羅紋、筋違などともいう。 | 岡田,2007,p.16 |
愛染明王法 | 愛染法、愛染王法。愛染明王の霊験によって恋愛を成就し、怨敵を降伏する呪法。「オンマカラギャバゾロウシュニシャバザラサトバジャクウンバンコク」 | 豊島,1998,pp.51-52 |
愛染明王法 | 治暦4年、異母兄・後冷泉天皇の在位が続き、帝位に即けずにいた尊仁親王は、成尊に不平を言った。成尊が愛染明王法を行なうと、後冷泉天皇は病死した。尊仁親王は即位し、後三条天皇となった。 | 泉,2000 |
悪酒を美酒にするまじない | 酒がまずいときは「観世音菩薩急々如律令」と書いた紙を入れる。おいしくなる。 | 顕神学会,1919,p.178 |
悪獣除けのまじない | 「若悪獣圍繞利牙爪可怖念彼観音力疾走無邊方」と、くりかえし唱える。 | 西村,1922,p.53 |
悪人に立ち向かうときのまじない | 手のひらに「命」の字を書く。 | 二中歴 |
悪病除けのまじない | 「鉤舩清治」と書いた紙を、門戸に貼る。 | 宮地,1934 |
悪風拂 | 旧暦8月9日の朝、ススキを刈り取って結び、家の四隅の茅に差し、敷地内の大木に結びつける呪術。悪疫災難を防ぐ。 | 島袋,1918 |
悪夢を見たときのまじない | 「ながきよのとおのねぶりのみなめざめなみのりふねのおとのよきかな」と唱えれば、悪夢を打ち消せる。この歌は、上から読んでも下から読んでも同じ意味になる回文であり、空海の作ともいわれる。 | 沖野,1920 |
悪夢を見るのを防ぐまじない | 寝る前に念仏を3回唱える。悪夢を見ない。 | 花部,2016 |
悪夢を見るのを防ぐまじない | 枕に「獏」の字を書いて寝る。悪夢を見ない。獏は、悪夢を食ベるという。滝沢馬琴は「獏」の字を書いた陶枕を常用していた。 | 高峰,1917,p.604 |
悪夢を見るのを防ぐまじない | 枕の下にハサミを置いて寝る。悪夢を見ない。 | 花部,2016 |
悪夢を見るのを防ぐまじない | 枕の下に獏の絵を置いて寝る。悪夢を見ない。獏は、悪夢を食ベるという。 | |
悪夢を見るのを防ぐまじない | 「赫赫陽陽日出東方、断絶悪夢辟除不祥」と書いた札を、枕もとに置く。悪夢を見ない。 | 井上,1931,p.821 |
悪夢を見るのを防ぐまじない | 「婆論婆演帝」と書いた札を、寝床の上に貼る。悪夢を見ない。 | 吉田,1937,p.35 |
悪霊除けのまじない | 「おこたらず行けば千里のほかも見ん、邪気悪霊が妨げなすも」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.105 |
悪霊除けのまじない | 「この人を除けて通れよ荒き神、正しき法を護る限りは」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.103 |
悪霊除けのまじない | 「ちはや振る雲井はるかに隔て来て人のかしらに移れ正神」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.103 |
悪霊除けのまじない | 「われ独り九字の主にやなけれども九字の力は悪魔退散」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.104 |
悪霊除けのまじない | 「引くぞいま引くに引かれぬ神もなし引き取り給ヘ悪鬼邪霊よ」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.102 |
悪霊除けのまじない | 「今迄は祟りなしつる荒神も今日よりのちは、たたりなすなよ」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.104 |
悪霊除けのまじない | 「七福を告げよとならば鳴けきつね、七難ならば、をのれ即滅」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.103 |
悪霊除けのまじない | 「唱ヘれば仏も我もなかりけり神も邪神もなきぞ正法」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.103 |
悪霊除けのまじない | 「乗れや人、御法の舟の出でぬ間に乗りおくれては誰か渡さむ」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.103 |
悪霊除けのまじない | 「神も神、仏も仏、我も我、悟りのすえは妙の一真」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.104 |
悪霊除けのまじない | 「世の中の人の心の弱点をばかする悪気、退去せざるか」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.105 |
悪霊除けのまじない | 「大空に掛かれる月見誰が窓の野ベに隈なき神のみまもり」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.104 |
悪霊除けのまじない | 「年をいて身に妨ぐる荒神を送りてやるぞ他方世界に」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.102 |
悪霊除けのまじない | 「風やめば面立つ波も静まりて、のどかに見ゆる、よもの浦々」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.104 |
悪霊除けのまじない | 「物の怪を引いて放すぞあづさ弓、引き取り給ヘ他方世界ヘ」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.103 |
悪霊除けのまじない | 「文殊をば三世諸仏の母ときく、悪鬼邪霊よ返れ文殊に」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.105 |
悪霊除けのまじない | 「嵐吹く木の間の風にしこりなく向かふかたきを拂いぬるかな」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.104 |
悪霊除けのまじない | 「歴却の弘誓の海に船渡せ生死の海は冬あらくとも」と唱える。諸々の悪霊を退ける。 | 西村,1922,p.105 |
赤のそほ船 | あけのそほふね。魔除けのために、船体をベんがらで赤く塗った船。 | |
足がしびれたときのまじない | 額に十字を3回書く。 | 神秘術研究会,1914 |
足がしびれたときのまじない | 富山では「しいびれしいびれ治れ、草鞋買うてはかしょや」と唱える。または、手にツバをつけて眉毛を撫でる。 | 根岸,1991 |
阿檀地 | あたんだい。法華経の一節。葛飾北斎は外出するとき「阿檀地」と唱えて、道で知人に会っても気づかれないようにした。北斎は独りで出歩くのを好み、伴を連れたり、人とあいさつを交わすのを嫌がったという。 | 浮世絵研究会,1944 |
悪気を祓うまじない | 旧暦5月5日に紙の人形を作り、蓬でくくって、門口に掛けて置く。 | 高島易断所,1935 |
悪鬼除けのまじない | 五色の糸で飾られた薬玉を肘にかけておく。悪鬼を退ける。 | 経済雑誌社,1890 |
悪鬼除けのまじない | 「或遇悪羅刹毒龍諸鬼等念彼観音力時悉不敢害」と、くりかえし唱える。悪鬼を退ける。 | 西村,1922,pp.52-53 |
後産が下りないときのまじない | 奈良県磯城郡では、出産したあとの後産が下りにくいときは、夫の着物を上下さかさまにして妻に着せかける。 | 高田,1937 |
阿尾奢法 | 速疾立験魔首羅天説阿尾奢法。阿尾舎法。金剛夜叉明王の霊験によって、加持した相手を神懸かりの状態にし、吉凶禍福などを占う降神法。「オンマカヤシャバザラサトバジャクウンバンコクハラベシャヤウン」 | 豊島,1998,pp.32-33 |
虻除けのまじない | 兵庫では「アブスウカーテコイ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
虻除けのまじない | 「風煙」と書いた紙を、窓の下に貼る。アブが去る。 | 中村,1935,p.75 |
虻蜂除けのまじない | 息を止めて「人を刺すと子を取るぞ」と10回唱える。アブや蜂を避けられる。 | |
雨乞いのまじない | 奈良では「雨たんもれ雨たんもれよ、スイカも真赤にやけてんや、雨たんもれ雨たんもれよ、雪の上のぢんごうよ、南京カボチャも皆やける、たんもれたんもれよ、雨降れたんぼれ、雲に滴もないかいな」と唱える。 | 鈴木,1982 |
雨乞いのまじない | 「皇々たる上天、下土を照臨して、地の霊を集め、神は甘雨を降らし、庶物は群生して、みなその所を得」と唱える。雨が降る。 | 哲学館 |
雨乞いの歌 | 水野義風が、旱魃に苦しむ百姓に乞われて「世をめぐむ道し絶えずば民草の田ごとにくだせ天の川水」と詠んだ。百姓は喜んで歌を持ち帰り、産土神に供えて祈ると雨が降った。 | 宮永,1914 |
雨乞いの歌 | 能因が藤原実綱に同行して伊予国を訪れた。日照りが続いていたので、実綱に勧められて能因が「天の川苗代水にせき下せ天下ります神ならば神」と詠むと、雨が降った。 | 宮永,1914 |
雨乞いの歌 | 旱魃に頭を悩ませた帝が、小野小町に命じて「ことわりや日の本なれば照りもせめ、さりとてはまた、あめが下かは」または「千早ふる神もみまさば立ちさばき天のとがはの樋口あけたまヘ」と詠ませると、雨が降った。 | 宮永,1914 |
雨乞いの句 | 元禄6年、松尾芭蕉の弟子である宝井其角が、三囲神社で農民が雨乞いをしているところを通りがかった。農民に請われて、其角が「ゆふだちや田を見めぐりの神ならば」と詠むと、雨が降った。 | 小林,2013 |
雨垂れ落ち | 軒先から雨の滴が落ちて、地面に溝ができることがある。この溝を、雨垂れ落ちという。高知県香美市物部町では、山や漁から帰ってきたときは、雨垂れ落ちで着物をはたいてから家に入り、凶事が家に入り込むのを避けた。 | 人文機構,2017 |
南無三宝 | 「仏、法、僧の三宝に帰依する」の意。南無三。仏に救いを求めるときに唱える。また、驚いたり、失敗したときに唱える。 | |
天逆手 | あめのさかて。上下逆さに、あるいは後ろ手に、あるいは後ろにさがりながら打つ柏手と解釈されるが、詳細は不明。古事記には、建御雷神に国譲りを迫られた大国主神に対して、国を譲るよう進言した事代主神が、天の逆手を打ち、青柴垣を打ち成して身を隠す場面がある。また伊勢物語には「天の逆手を打ちてなむのろひをるなる」という一節があり、「天逆手」が呪詛の類であることを示唆している。 | 古事記 伊勢物語 中山,1930,p.206 |
あやしいときに目が覚めるまじない | 「うちとけて、もしもまどろむことあらば、ひきおどろかせ、わがまくら神」と3回唱えて寝る。夜にあやしいことが起こったり、危険が近づいてきたとき、目が覚める。 | 高島易断所,1935 |
菖蒲縵 | あやめのかずら。宮中では、5月5日の端午の節句に菖蒲の葉を冠や髪に挿して邪気を祓った。菖蒲は葉の形が剣に似ており、邪気を斬り祓う力がある。その香りは邪気を退ける。天平19年、元正太上天皇は勅命を下して、端午の節句に菖蒲縵を行なわない者が宮中に入ることを禁じた。 | 続日本紀他 |
荒毘鎮めの封じ | あらびしずめのふうじ。竹封じ。酒乱、淫蕩、悪癖、病気などを解消する呪法。竹筒に人形を入れて霊符を巻きつけ、麻糸で縛ったあと「アジマリカム」と唱え、九字十字を切って封じ込める。 | 豊島,1998,pp.317-318 |
蟻除けのまじない | 4月8日に、甘茶で「千早振る卯月八日は吉日よ神下げ虫を成敗ぞする」と書いた紙を、さかさまに貼る。 | 鈴木,1982 |
蟻除けのまじない | 砂糖に蟻がつくのを防ぎたいとは、砂糖の容器のまわりに白墨の線を書いて囲む。線の内側に蟻が入らない。 | 如舟堂主人,1930 |
蟻除けのまじない | 「蟻一升十六文」と書いた紙を、蟻が出そうな場所に貼る。 | 鈴木,1982 |
蟻除けのまじない | 「砂糖壱折半」と書いた札を、蟻が出る場所に貼る。蟻が出なくなる。 | 耳嚢10 |
蟻除けのまじない | 「虫ヘんに義理の義の字は蟻ながら、人の座敷ヘ案内もなしとは」と書いた紙を、蟻が出る場所に貼る。蟻が出なくなる。 | 高島易断所,1935 |
蟻除けのまじない | 「虫扁に義理の義の字を持ちながら、人の座敷ヘ入るは御無礼」と書いた紙を貼る。 | 鈴木,1982 |
安産のまじない | 妊婦が産気づいたら、箒を逆さに立てる。 | |
安産のまじない | 蓮の葉に「人」の字を書いて、その露を飲む。 | 中村,1935,p.10 |
安全に旅行するまじない | むかし遠方に旅行したときは、泊まった宿に九字紋を書いた紙を貼って、災いを免れた。 | 粟根,1917a |
安全に旅行するまじない | 五岳と白澤の絵図を、懐に入れておく。悪鬼猛獣が近づかなくなり、災いを免れる。 | |
安全に旅行するまじない | 毎朝、東に向かって「姑蘇啄摩耶啄(こそたくまやたく)」と3回唱えて、1回唾を吐く。夜中、山中に迷い込んでも道が分かるようになり、悪獣悪鳥に遭っても害されない。 | 青木,1913 |
安鎮家国法 | 安鎮法。大地に潜伏する地霊を鎮め、災いを防ぐ呪法。通常は内裏で行ない、宮中の息災と国家安泰を祈った。 | 見留,2008 |
安鎮家国法 | 承保3年、覚尋が六条内裏で安鎮法を行ない、陰陽権助・安倍国随が宅鎮祭と灰鎮祭と五方鎮祭を行なった。 | 見留,2008 |
安鎮家国法 | 天慶4年、内裏で火災が起こった。翌応和元年、宮殿の新造に際して、嘉慶が安鎮家国不動法を行ない、七宝を内裏に埋めた。 | 豊島,1998,p.120 見留,2008 |
安鎮家国法 | 天治3年、仁実が三条内裏で不動安鎮法を行ない、陰陽師が反閇を行なって南殿の天井に小筥を置いた。 | 見留,2008 |
言い争いを避けるまじない | 「尸日鬼尸尸鬼急急如律令」と書いた白紙を、ひそかに懐に入れておく。 | 佐々木,1910 |
言い祓え | いいはらえ。呪力のある言葉や祝詞を唱えて、良くないものを取り去ること。 | |
家出した人を足止めするまじない | 家出した人の名を呼んで「西、東、南に北にまぜをかい、かけ出しの人の足をとめてよ、アビラウンケンソワカ」と唱える。 | 笹,1972,p.542 |
生霊死霊除金縛法 | 生霊死霊などを調伏する呪法。護身法を行い種々の印を結び「明王のなはにてからめ取、縛るけしきは不動明王」「しめ寄て縛るけしきはねんかける、なにはなだはなきものなり、生霊死霊怨霊からめ取りたまえ、たまはずんば不動明王をんびしびしからしばりそわか」と唱えるなどする。 | 宮家,1966 |
斎串 | いぐし。祭祀で用いる、呪術によって清められた杭。「串」は、霊力が宿る髪をすく「櫛」や、霊妙なという意味の「奇し」に通じ、霊力を持つとされる。 | |
井桁 | いげた。井の字。木で組んだ井戸の縁をかたどった、「井」の字に似た魔除けの印。横線5本と縦線4本を交差させた九字紋を、簡略化したものともいう。 | 石川県,2017 |
以生誤死 | 生けるひとをもって死にたるひとと誤つこと。天稚彦が死んだとき、味耜高彦根神が葬儀にやって来た。ふたりは顔がそっくりだったので、遺族は天稚彦が生きていたと勘違いし、怒った味耜高彦根神は喪屋を壊した。このため、生者を死者と間違えることは嫌われると、日本書紀は伝えている。 | 日本書紀 |
石敢当 | いしがんとう。悪霊や邪鬼の侵入を防ぐため、道の突き当りや丁字路に立てる石。石には「石敢当」と文字を彫ったり、呪符を貼る。 | 岡田,2007,p.30 |
移徙法 | いしほう。新宅作法。新造の邸宅に移るときに陰陽師が行なった、一連の作法と儀式。 | 中島,2017 |
痛いときのまじない | 宮城県気仙沼では「ちんぷんかんぷん、いぬのくそ、ねこのくそ、ぼー」または「ちんぷんかんぷん、つつん、ふんばい、黄金さらさら、ぼほーのほん」と唱える。 | 気仙沼,1936 |
鼬除けのまじない | イタチが群れて鳴くのを見るのは、不吉なこととされていた。「鼬眉目美(いたちみめよし)」と唱えれば、災いを避けられる。 | 丹岳,1697 |
鼬除けのまじない | イタチに出遭ったら3歩下がる。化かされない。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | 「後鳥羽院荷物」と書いた木札を、竹に挟んで、イタチの通り道に立てる。イタチが来ない。 | 椎尾,1920,p.80 |
鼬除けのまじない | 「鼬の呪詛はたかんなのねぢぎり」と書いた紙を置く。イタチが来ない。 | 経済雑誌社,1890 |
鼬除けのまじない | 「鼬の咒はたかんなのねぢきり也、是五大明王の志るし候らん」と書いた札を立てる。イタチが来ない。 | 耳嚢2 |
鼬除けのまじない | 道を歩いているときに目の前をイタチが横切るのは、不吉なこととされていた。イタチが目の前を横切るのを見たら、方向を変えて回り道するか、2歩または3歩戻ってから再び歩き出す。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチが道切る、血道切る、おれはさき切る、アブラウンケンソワカ」と唱える。災いを避けられる。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ切れ切れ火道切れわが行く先はアララギの里」と唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「いたち道、ち道、ちがひ道、鼬はかヘる、われは返ヘらむ」と唱える。災いを避けられる。 | 宮武,1925 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道イタチはここに俺は栄ゆる」と唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道血道横道曲がり道われはそーつ行け俺はこう行く」または「イタチ道血道横道近い道わが行く先は黄金花咲く」または「イタチ道血道横道踏み分けてイタチは死する俺は繁昌」と3回唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道血道近道違い道わが行く先はアララギの里」と3回唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道縦道横道違い道われは帰れど俺は帰らん」と唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道切り火道切りおんしが後ヘしさりゃおらもしさる」と唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道切り血道切りわれはそち行け俺はこち行く」と3回唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道切るわしゃ天切る地切る」と3回唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道切るわれ血道切るわれ行く先はアララギの野」または「イタチ道切るわれ血道切るわれ行く先はアララギの山、俺行く先は花の都ヘ出るぞ嬉しき、ナムアビラウンケンソワカ」と3回唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道切る矢切る地切るわれの行く先は火の山じゃ」と唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「イタチ道切れ血道切れイタチ返さな我返す」と唱え、2、3歩退いてから進む。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「田道畑道イタチも通れば駒も急ごか、ギャン」と唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
鼬除けのまじない | イタチが目の前を横切るのを見たら「鼬殿、駒の手綱は蹴切れども、成行く先は、よもや蹴切らじ」と唱える。災いを避けられる。 | |
板封じ | 相手を調伏する呪法。和紙を人型に切り抜き、相手の名前と歳を書き、同じものを相手の歳の数だけつくり、縦8寸横3寸の板に張り付け、白紙をかぶせ封じて真言ボロンを書き、五大尊の印と無所不至の印を結んで祈念し、釘12本を打ち付ける。 | 宮家,1966 |
一字金輪法 | 金輪法。諸仏諸菩薩を代表する金輪聖王を祀り、止雨や延命長寿を祈り悪鬼を打ち砕く呪法。五百由旬断壊の法(ごひゃくゆじゅんだんえのほう)とも呼ばれ、術者の周囲3500キロメートル以内では、他の呪法はすベて効果を失う。「ボロン」 | 豊島,1998,p.127 納冨,2015 |
一日無事に暮らすまじない | 毎朝「朝茶飲む、その日に難があるならば北野の神と云わせまじ」と唱える。菅原道真が朝茶を飲まずにいると、災難に遭った。このことにちなむ。 | 健斎居士,1917 |
一夜で稲の苗が生えるまじない | 伊和大神と玉津日女命の夫婦が、どちらが国を占めるか争ったとき、妻神が鹿の腹を割いてその血に稲の種を撒いた。すると一夜で苗が生えたので、夫神が負けを認めて国を去ったと、播磨国風土記は伝えている。 | 播磨国風土記 |
飯縄法 | いづなほう。飯縄権現の霊威を借りて、天狗や狐を使役する呪法。 | 豊島,1998,p.158 |
厳呪詛 | いつのかしり。神武天皇が吉野を訪れて八十梟帥と争ったとき、神武天皇の夢に天神が現れて「天香山の社の土を取り、酒杯と酒甕を作って、天神地祇を祀り、厳呪詛を行なえ。そうすれば敵はみずから平伏する」と告げた。神武天皇は夢で告げられたとおりにし、八十梟帥を破った。 | 日本書紀 |
糸をほどくまじない | 糸がもつれたときは「さるでさるまさ、さるでさるまささるでさるまさ、さるでさるまさ」と3回唱える。ほどける。 | |
糸をほどくまじない | 糸がもつれたときは「もしやしやの、しやしやの、しやしやもしやの、しやしやもしやあれば、もしやしやあるまい」と唱える。ほどける。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
糸をほどくまじない | 糸がもつれたときは「笹草や笹草や、みささの山の笹草や、みささもなけりゃ笹草もなし」と唱える。ほどける。 | |
糸をほどくまじない | 糸がもつれたときは「千早振神世もきかず龍田川、からくれなゐに水くぐるとは」と3回唱える。ほどける。 | 花部,2005,p.272ペジ |
井戸を掘る前に水脈のありかを知るまじない | よく晴れた夜に、井戸を掘ろうとする場所に、水を入れたタライを並ベる。星の光が大きく明るく映るタライの下に、良い水脈がある。 | |
糸を巻くときのまじない | 沖縄県八重山郡竹富町では「ばんなむちまい、ぬいや、ほうなーた、さぶまいいど、ほったゅー、はっちりれー、はっちりれー」と一息に3回唱えながら糸を巻く。もつれることなく糸を巻ける。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
犬に噛まれたときのまじない | 「虎来い虎来い」と唱えながら、撫でさする。 | 経済雑誌社,1890 |
犬の子 | いんの子とも。幼児の額に「犬」の字を書く呪術。子供の無病息災と成長を願って行う。 | |
犬の子 | 子供が何者かに襲われる夢を見たときは「犬の子、犬の子」と唱える。凶事を避けられる。 | |
犬除けのまじない | 犬に追われたり囲まれたときは「戌亥子丑寅(いぬいねうしとら)」と唱える。または、「戌亥子丑寅」と唱えながら右手の指を親指から順に折る。犬は立ち去り、難を逃れられる。「戌亥子」は「犬去ね(いぬいね)」とかけている。 | |
犬除けのまじない | 犬に吠えられたときは「戌亥子丑寅(いぬいねうしとら)」と唱えながら、指を順に折る。これを3回くりかえせば、犬は吠えるのをやめる。「戌亥子」は「犬去ね(いぬいね)」とかけている。 | 高島易断所,1935 |
犬除けのまじない | 虎封じ。「我は虎、いかになくとも犬はいぬ、ししのはがみをおそれざらんや」と3回唱え「戌亥子丑寅(いぬいねうしとら)」と唱えながら、親指から順に指を折り、犬をにらみつける。噛まれない。「犬はいぬ」は「犬は去ぬ」、「戌亥子」は「犬去ね」とかけている。 | 榊原,1910 |
犬除けのまじない | 左手の指を折って「桃寅剔丁榴戌雲龍風虎降伏猛獣」と念じる。犬に嚙まれない。 | 土橋,1922 |
犬除けのまじない | 小指に「虎」の字を書く。または、手に「虎」の字を書いて握りしめる。犬に吠えられない。 | 露の五郎兵衛,1913他 |
犬除けのまじない | 野犬にあとをつけられたときは、ふんどしをほどいて地面に引きずりながら歩く。野犬は立ち去る。 | |
犬除けのまじない | 両手に「虎」の字を書いて、犬に見せる。嚙まれない。 | |
犬除けのまじない | 「一しろ二あか三しろ四まだらごちゃんそわか、天竺の虎狼の声聞くとも、この土をもって伏せ給う」と唱えて、足元の土をつかむ。犬に嚙まれない。 | 根岸,1991 |
犬除けのまじない | 「我は虎、いかになくとも犬はいぬ、獅子の歯噛みや恐れざらめや」と3回唱える。犬が近づかなくなる。 | 土橋,1922 |
犬除けのまじない | 「我は虎、いかになくとも犬はいぬ、獅子の歯噛みや恐れざらめや」と唱える。または「我は虎、いかになくとも犬はいぬ、獅子の歯噛みや恐れざらめや」と3回唱え、「戌亥子丑寅(いぬいねうしとら)」と唱えながら右手の指を親指から順に折る。犬に吠えられず、噛まれることもない。「犬はいぬ」は「犬は去ぬ(いぬはいぬ)」、「戌亥子」は「犬去ね(いぬいね)」とかけている。 | 寺田,1909他 |
犬除けのまじない | 「吾れは虎、いかになくとも犬はいぬ、ししのはがみを恐れざらめや」と唱える。犬に吠えられない。 | 青木,1913 |
犬除けのまじない | 「弘法がかけた情を忘れたか、ここ立退けよ、ナムアビラウンケンソワカ」と唱える。犬は去る。空海が「笑」の字を思い出せずにいたところ、犬が籠をかぶっているのを見て、字を思い出した。空海は3本足だった犬に五徳の足を取って付け、犬を4本足にした。このことにちなむ。 | 鈴木,1982 |
犬除けのまじない | 「申酉戌申酉戌(さるとりいぬさるとりいぬ)」と3回唱えて、手のひらを握りしめる。犬に嚙まれない。 | 根岸,1991 |
伊吹法 | いぶきほう。息吹法、気吹法。「今日より始めて病という病は在らじと、朝の深霧、夕の深霧を、朝風夕風の吹き払う事の如く吹き払うなり」または「今日より始めて病という病は在らじと、科戸の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く吹き放つなり」と唱えて、強く息を吹きつける。病気や邪気を祓える。病気や邪気を祓える。イザナギが狭霧を吹き払ったことにちなむという。 | 宮永,1911,pp.163-165 |
伊吹法 | 「神の御息は我が息、我が息は神の御息なり。御息を以て吹けば穢れは在らじ残らじ。阿那清々し阿那清々し」と唱えて、強く息を吹きつける。病気や邪気を祓える。 | 宮永,1911,pp.163-165 |
伊吹法 | 「千早振る神のいぶきに残りなく、向かう悪魔を吹き払いけり」と唱えて、強く息を吹きつける。病気や邪気を祓える。病気や邪気を祓える。 | 宮永,1911,pp.163-165 |
伊吹法 | いぶきほう。息吹法。「神火清明、神水清明、神風清明」と3回唱え、左、右、左と息を吹きつける。病気や邪気を祓える。 | 豊島,1998,p.289 |
衣服に墨が付いたときのまじない | 衣服に墨が付いたら、すぐに「まかなくに何を種にて浮き草の、波のうねうねをひしげるらん」と3回唱え、水を吹きかけて、ゆっくり洗う。きれいに墨が落ちる。 | 青木,1913 |
イボを治すまじない | 初雷があったときに「いぼ落ち、いぼ落ち」と3回唱えながら撫でる。 | 根岸,1991 |
イボを治すまじない | 雷が鳴ったときに、みご箒で2、3回撫でる。 | 耳嚢6 |
イボを治すまじない | 「いぼいぼ渡れ、一本橋渡れ」と唱える。 | 根岸,1991 |
祝い凧 | 島根県出雲市に伝わる縁起物。赤字で「鶴」と書いた凧と、黒字で「亀」と書いた凧で対をなす。出雲大社の左右にある鶴山と亀山に住む宮司が、互いの家の吉事を祝うために、鶴亀の字を書いた大凧をあげたことに由来する。 | 畑野,2011 |
飲酒するときのまじない | 手のひらに「水」または「命」の字を書く。 | 二中歴 佐々木,1910 |
飲食するときのまじない | 他人の家で飲食するときは、手のひらに「命」の字を書く。 | 佐々木,1910 |
陰は陽に克たず | 延享4年、青葉士弘が書斎の鬼門にあたって掘を穿ったところ、毎日夜更けになると、水を浴びるけたたましい音が聞こえるようになった。しばらく様子を見ていたが、ある夜「陰は陽に克たず」と大声で一喝すると、その後は怪異が起こらなくなった。 | 宮武,1925 |
印籠 | いんろう。携帯用の薬入れ。後代、装身具として家紋や凝った装飾が施されるようになり、疫鬼などを祓う力があると信じられた。 | |
鵜飼の霊を成仏させたまじない | 安房国清澄の僧が、甲斐国石和で、密猟をした罪によって殺された鵜飼の霊と出会った。霊を供養するために、僧は川から拾った石に法華経の文句を書きつけて、また川に沈めた。すると閻魔大王が現れて、鵜飼の霊は救われたと告げた。 | 謡曲鵜飼 |
鶯が狭い場所で鳴いたときのまじない | 長崎県対馬では、ウグイスが家々の間など狭苦しい場所で鳴くのは不吉とされていた。「ウグイスよウグイスよ初声と思うなよ今日も聞きゃ昨日も聞く」と唱えれば、凶事を避けられる。 | 鈴木,1982 |
うけい | 宇気比、誓約。あらかじめ「AならばBとなる」と宣言してから、物事の吉凶成否を判断する呪法。出雲大神の宮を修理しようと考えた垂仁天皇が、曙立王に「大神に霊験があるなら、鷺巣池の樹に住む鷺は、うけい落ちよ」と宣言させると鷺は落ちて死に、「いきよ」と宣言させると生き返った。 | 古事記 |
うけい | 宇気比。出雲大神の宮を修理しようと考えた垂仁天皇が、曙立王に「大神に霊験があるなら、鷺巣池の樹に住む鷺は、うけい落ちよ」と宣言させると鷺は落ちて死に、「いきよ」と宣言させると生き返った。 | 古事記 |
うけい | 誓約。山背を訪れた垂仁天皇は、山背大国不遅の娘が美女だと聞いて「その美女とむすばれるなら、道に瑞兆があらわれる」と宣言してから宮に向かうと、川から亀が現れ、亀を矛で刺すと白い石になった。 | 日本書紀 |
うけい | 誓約。神武天皇は、天香山の土で酒杯を作ると「酒杯をつかって、水が無いまま飴を造ることができたら、天下を平定できる」と宣言してから飴をつくり、飴ができた。また、土で酒甕を作ると「酒甕を川に沈めて、酔った魚が木の葉のように浮かんだら、この国をかならず平定できる」と宣言してから酒甕を川に沈め、魚がみな浮かんだ。 | 日本書紀 |
うけい | 誓約。天香山の土を取ってくるよう神武天皇に命じられた椎根津彦は、道に敵兵がいたので「天皇がこの国を治められるなら道を通れる」と宣言してから敵兵をやり過ごし、土を持ち帰った。 | 日本書紀 |
うけい | 誓約。天照大神に逆心を疑われた素戔嗚尊は「自分の心が清ければ、男神が生まれる」と宣言してから、大神が身に着けていた玉飾りから五柱の男神を生み出し、疑いを晴らした。 | 日本書紀 |
うけい | 誓約。天孫ニニギに不貞を疑われた木花開耶姫は「私が身ごもったのが天津神の子なら、無事に産まれる」と宣言してから産屋に火を放ち、無事に子を産んで、疑いを晴らした。 | 日本書紀 |
うけい | 誓約。土蜘蛛を滅ぼそうと考えた景行天皇は「土蜘蛛を滅ぼせるなら、蹴りとばした石が、柏の葉のようにとぶ」と宣言してから石を蹴ると、石は大空ヘ飛んでいった。 | 日本書紀 |
うけい | 誓約。肥前を訪れた神功皇后は、西国を欲して「もし事が成るなら、魚が釣針を飲む」と宣言してから川で釣りをすると、魚が釣針を飲んで、魚が釣れた。 | 日本書紀 |
兎除けのまじない | 和歌山県有田郡では、ミカンの木のそばに「兎が食うたと狐が言うた」と書いた立札を立てて、ミカンの根がウサギに食われるのを防いだ。 | 鈴木,1982 |
丑の刻参り | 丑三つ時に神社に行き、呪う相手に見立てた人形を、神木や鳥居に打ち付ける呪法。藁人形、五寸釘、鉄槌を用い、白衣と神鏡を身につけ、五徳を逆さにかぶって3本のロウソクを突き立てる作法が知られる。 | 謡曲鉄輪 |
丑の刻参り | 夫に捨てられた女が、夫を恨んで呪い殺そうとした。女は鉄輪を頭にかぶり、突き立てた3本のロウソクに火を灯しながら、深夜の神社に繰り返し参拝した。女は宿願を果たしすと、鬼神ヘと姿を変え、恨みを晴らすために、夫の元ヘ向かった。 | 謡曲鉄輪 |
蛆除けのまじない | 「あさき降る四月八日の吉日に神長虫の成敗する」と紙に書き、壁に貼る。 | 鈴木,1982 |
蛆除けのまじない | 「千早振る卯月八日は吉日よ神さけ虫を成敗する」と紙に書き、壁に貼る。 | 鈴木,1982 |
後手 | うしろで、しりヘで。相手に背中を向けながら、後ろ手に物を受け渡す呪術。山幸彦は、失くした釣針を探し出して海幸彦に返すとき「この鉤は、おぼ鉤、すす鉤、貧鉤、うる鉤」と呪詛しながら、後ろ手に釣針を渡した。すると海幸彦は、しだいに貧しくなった。 | 日本書紀 |
牛を進めないようにしたまじない | 貞観17年、牛車に乗っていた藤原良近が、同乗者に「牛を進めないようにしよう」と言って、牛車の床を手で押さえながら気を閉じて堅く坐した。牛はとつぜん足を止め、前に進まなくなった。 | 三代実録貞観17年9月9日条 |
髻華 | うず。白檮の木の葉を、魔除けとして髪に挿した髪飾り。白檮(かし)とは、ブナ科コナラ属のアラカシのこと。 | 武田,1956 |
烏枢沙摩明王法 | 烏枢沙摩明王を祀り、安産を祈り悪人を降伏し穢れを浄めるなどする呪法。「オンクロダヤウンジャクソワカ」「オンシュリマリママリマリシュシュリソワカ」 | 豊島,1998,pp.40-41 |
臼伏せ | 正月、つきたての餅を丸めたものを3つ用意し、それぞれ早稲、中稲、晩稲とする。3つの餅を、米を敷いた盆の上に載せて、伏せた臼をおおいかぶせる。数日後、餅についた米の多寡から、豊作になる稲の品種を占う。 | |
渦巻文 | 渦文、渦文つなぎ文。隼人の楯に用いられた、巻貝を模した魔除けの模様。 | 竹森,2015 |
うずら車 | 宮崎県に伝わる、タラの木を三角形に削り、車輪を付けた縁起物。無病息災や延命長寿の利益がある。顔に書かれた「の」の字には、厄除けの呪力が込められている。 | 畑野,2011 |
鷽 | うそ。天満宮で授与される、スズメ目アトリ科のウソをかたどった木製の縁起物。福岡県の太宰府天満宮の鷽が、よく知られている。鷽替神事では、人々が「替えましょう、替えましょう」と言いながら手持ちの鷽を交換し、去年の「うそ」が真となり、災いが幸せに変わるよう祈る。 | 畑野,2011 |
打蒔 | うちまき。散米。米を撒くことで霊を供養し、魔を祓う呪術。ある人が方違えのために下京あたりの家に泊まった。夜半、子供の枕元に小人がやって来たのを見つけた乳母が米を投げつけると、小人は逃げ去った。夜が明けて見てみると、小人がいたあたりには、血のついた米が散らばっていた。 | 今昔幼児為護枕上蒔米付血語 |
打蒔 | ある夜、夕霧の夢に、死んだ柏木が現れた。夕霧が目を覚ますと、雲居雁や乳母が大騒ぎしながら米を撒いていた。寝ていた子供がとつぜん泣き出したのを、物の怪が家に入り込んだせいだと考えて、打蒔をしていたのだった。 | 源氏物語 |
禹歩 | うほ。邪気を祓い災いを退ける呪術的な歩行法。天皇や貴人が外出などするとき、無事を祈って陰陽師が行なった。夏の帝王・禹は治水のために山や川をめぐって足を病み、足をひきずって歩くようになった。禹歩は、この禹の歩行法をなぞらえたものだという。反閇(ヘんばい)ともいう。 | 岡田,2007,p.35 豊島,1998,pp.196-198 |
馬が病気になったときのまじない | 「しを山にしを塚つくるしをつなにわか馬つなくむまのはらやむ」と唱える。 | 尾崎,2014 |
馬の噛み癖を治すまじない | 雷が落ちた木を、適当な大きさに削る。削った木を腰に差すと馬に噛まれなくなり、厩舎の柱に打付けると馬の噛み癖が治る。 | |
売り買いで利を得るまじない | 他人に知られないように、枕飯の箸を四角に削って「トンロクモンフハ」と書き、紙で包んで、懐に入れて市場に行く。利を得られる。 | 伊東,1896 |
売りで利を得るまじない | 東ヘ行く馬の蹄の下の土を取って紙に包み、ヘソにあてて市場に行く。利を得られる。 | 伊東,1896 |
瓜の中の蛇を殺したまじない | 藤原道長が物忌をしていると、早瓜が献上されてきた。安倍晴明に占わせると、瓜に毒気があると分かった。勧修が加持すると瓜が動きだし、丹波忠明が針を刺すと動きが止まった。源義家が刀で斬ると、瓜の中から、両目に針が刺さり首を切り落とされた蛇が出た。 | 古今著聞集七術道 |
漆にかぶれたときのまじない | 埼玉では、漆の木に針を刺して「治してくれたら針を抜いてやる」と唱える。 | 根岸,1991 |
漆にかぶれたときのまじない | 漆の木を縛って「治れば解いてやる」と唱える。治る。 | 鈴木,1982 |
漆にかぶれたときのまじない | 「カニ、カニ」と唱えながら、かぶれたところを撫でる。治る。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
漆にかぶれたときのまじない | 「兄弟になれ」と唱える。治る。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
漆にかぶれるのを防ぐまじない | 愛媛では「親に負けても漆に負けん」と唱える。漆の木の下を通ってもかぶれないという。 | 根岸,1991 |
漆にかぶれるのを防ぐまじない | 山椒を噛んで、鼻の上に塗る。 | 経済雑誌社,1890 |
漆にかぶれるのを防ぐまじない | 「うるし、うるし、かぶれんな、うるしとわしは兄弟だ」と唱える。かぶれない。 | 今井,1982 |
漆にかぶれるのを防ぐまじない | 「ウルシ負けた、金太郎勝った」と唱えれば、漆の木の下を通ってもかぶれない。 | 鈴木,1982 |
漆にかぶれるのを防ぐまじない | 「漆千本蟹一匹とも思わない」と唱えれば、漆の木の下を通ってもかぶれない。 | 根岸,1991 |
漆にかぶれるのを防ぐまじない | 「親に負けてもウルシに負けぬ」または「親に負けてもウルシに負けぬ、ウルシ負けた、わし勝ったわし勝った、ウルシ負け負け、わたしゃ大和の角力取り」と唱えれば、漆の木の下を通ってもかぶれない。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | アジサイの花を便所に吊るす。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | イチジクの葉を門口に吊るす。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 疫病が流行したときは、アマビエの絵を描いて人に見せる。弘化3年、肥後国の海中から現れたアマビエが「当年より六ヶ年の間、諸国豊作なり。しかし病流行。早々私を写し、人々に見せそうらえ」と告げて、海に去った。じつは、絵を描けば疫病を免れるとは、一言もいっていない。 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ |
疫病除けのまじない | 疫病が流行したときは、アワビの殻に「子供留守」と書いて、門口に下げておく。 | 今井,1982 |
疫病除けのまじない | 角大師を描いた護符を、門戸に貼る。永観2年、良源が疫神に襲われたとき、弾指して疫神を退けた。良源が、自分が瞑想している姿を弟子に描かせると、良源は鬼の姿になっていた。このことにちなむ。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 牛頭天王を描いた護符を、門戸に貼る。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 秋田では、土用にニンニクを玄関に吊るす。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 小さな元三大師を33体描いた豆大師の護符を、門戸に貼る。寛永年間、ある農民が元三大師廟を参詣した。直後、大雨が降って洪水が起こったが、30人余りの童子が現れて、その農民の田を救った。このことにちなむ。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 大阪市では、風邪をひいたときはアワビの殻に「子ども留守」と書いて、門口に下げておく。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 銅を懐に入れておく。 | 経済雑誌社,1890 |
疫病除けのまじない | 病者を見舞うときは、右の中指で、左の手のひらに「坎」と書き、かたく握りしめる。 | 西村,1922,p.126 |
疫病除けのまじない | 平家蟹の甲羅を、家の入口に掛けて置く。または、タマネギやニラといっしょに吊るす。悪疫を退ける。 | 鈴木,1982 高島易断所,1935 |
疫病除けのまじない | 「いかなれば身はすそ川の流れ雲、人にさはるな、いきれいの神」と唱える。加賀藩主の前田利家または前田斉広が詠んだ歌だといわれる。 | 富山県,2006 |
疫病除けのまじない | 「お染久松おらん」と書いた紙を、門戸に吊るす。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 「お染御免」と書いた紙を、門戸に貼る。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 「為朝ここにあり」と書いた紙を、門戸に貼る。源為朝が八丈島で疫神を退治したことにちなむ。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 「為朝の宿」と書いた紙を、門戸に貼る。源為朝が八丈島で疫神を退治したことにちなむ。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 「久松るす」と書いた紙を、門戸に吊るす。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 「久松留守」と書いた紙を、門戸に貼る。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 「源義家の宿」と書いた紙を、門戸に貼る。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
疫病除けのまじない | 「五大力」と書いた紙を、門柱に貼る。 | ふくやま草戸千軒ミュージアム |
疫病除けのまじない | 「佐々良三八(ささらさんぱち)」と書いた札を、戸口に貼る。「佐々良三八郎」と書いた札を、ニラといっしょに吊るしても良い。 | 鈴木,1982 フィツェンライター,2015 |
疫病除けのまじない | 「細谷いウメは、匂いはすれどもうつる香もなく」と唱える。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 「笹の三八郎宿」と書いた札を、戸口に吊るす。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 「笹良三八宿」と書いた札を、門戸に下げておく。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 「若狭小浜組屋六郎左衛門」「千早振る神の子孫の家なれば邪魔モ悪魔も寄にきられす」と書いた紙を、門戸に貼る。若狭小浜の組屋六郎左衛門が、疫神を饗応した由緒にちなむ。 | 島田,2020 |
疫病除けのまじない | 「傷寒は風のかはりに来れどもまた吹かヘる伊勢の神風」と書いた札を、門戸に貼る。 | 石川県,2013 |
疫病除けのまじない | 「神世より、うけひまさしきしるしには、いかづちえこず桃の樹のもと」と唱える。イザナギが黄泉国から逃げ出そうとしたとき、イザナミは八雷神を追手にさしむけた。イザナギは桃の実を投げて、追いすがる八雷神を退けた。このことにちなむ。 | 秋田県,2015,p.4 |
疫病除けのまじない | 「蘇民将来子孫」または「蘇民将来子孫家之門」と書いた紙を、門戸に貼る。武塔神が旅の途中で宿を乞うと、巨旦将来は断り、蘇民将来はもてなした。武塔神は速須佐雄能神を名乗って、巨旦の一族を滅ぼし、蘇民の子孫は茅の輪を身につければ疫病を免れると告げた。 | 岡田,2007,p.56他 |
疫病除けのまじない | 「竹竹乙」と書いた黄紙を門戸に貼る。 | 土橋,1922 |
疫病除けのまじない | 「鎮西八郎御宿」または「鎮西八郎為朝御宿」と書いた紙を、門戸に貼る。源為朝が八丈島で疫神を退治したことにちなむ。 | 島田,2020他 |
疫病除けのまじない | 「釣舟清次宿」と書いた紙を、門戸に貼る。または「釣舟の清次郎御宿」と書いた紙を、門戸に吊るす。 | 鈴木,1982 日文研怪異・妖怪伝承DB |
疫病除けのまじない | 「梅が香のその木ばかりは匂い来て、黒木の花はうつらざりけり」と書いた紙を、戸口や門に貼る。 | 鈴木,1982 |
疫病除けのまじない | 「簓三八(ささらさんぱち)」と書いた木札やアワビの貝殻を、戸口に貼ったり軒に吊るす。「簓三八孫」「簓三八宿」とも書く。 | |
廻向偈 | えこうげ。回向文。祐崇が制定したといわれる呪文。唱えれば、自身が積み上げた善行功徳を他者に振り分けて、衆生が悟りを開くのを助けることができる。「一切精霊生極楽、上品蓮台成正覚、菩提行願不退転、引導三有及法界」 | 豊島,1998,p.340 |
胞衣納め | えなおさめ。産後、母親の体外に排出された胞衣を壺などに納め、吉方を選んで地中に埋める呪法。生まれたのが男子なら筆、扇子、小刀など、女子なら糸、針、鋏などを添えて埋めることもあった。胞衣とは胎盤のこと。 | 山近,2010 |
えのごを治すまじない | 患部の上から「狼」の字を墨書する。えのごとは、股や脇の下で起こるリンパ腺炎のこと。 | 奥村,1961,p.17 |
絵馬 | えま。神仏ヘの願いを込めて、あるいは願いが成就した謝礼として寺社に奉納する、木の板に絵や文字を描いた額。 | |
獲物を解体するときのまじない | マタギが狩りで仕留めた獲物を解体するときは、その場に幣束を立てて「アブランケンソワカ」などと呪文を唱えながら、獲物を解体した。 | 木崎,1979 |
えんがちょ | 穢れを退け、防ぐ呪術。語源は不詳。「穢(え)をチョン切る」または「縁をチョン切る」が由来ともいう。古くから、人差し指と中指を交差させる方法が知られている。現代では、両手の親指と人差し指でつくった輪を、別の人が手刀で切るといった方法が知られる。 | |
冤罪及雷災消除法 | 雷神となった菅原道真の加護を得る呪法。無所不至印を結び、観音菩薩の真言を唱え、「具一切功徳慈眼視衆生福聚海無量是故應頂禮」「南無天満大自在天神急々如律令」と唱え、「われ頼む人に災難あらざれば北野の神と名をば呼ばれん」と詠い、天満大自在天神の真言を唱える。 | 柄沢,1926,pp.17-18 |
厭勝 | えんしょう。厭。人形を作って切り刻んだり、手足を縛りつける呪術。鬼神に祈ったり左道を行なう「魅」とあわせて、「厭魅」と呼ばれた。 | 養老律令 |
閻魔大王ヘの手紙 | 福田行誡は、自分の死期を悟ると「老病臨終の趣に付き点検申し候処、御本願相応の人と断定候に付き御都合次第、御来迎の御用意しかるベき候この段宜しく執奏これあるベき候なり」と閻魔大王に宛てて手紙をしたためた。その後、行誡は眠るように往生した。 | 豊島,1998,pp.333-334 |
厭魅 | えんみ。蠱毒厭魅として、かつて養老律令の賊盗律によって禁じられていた呪術。 | 養老律令 |
延命十句観音経 | わずか10句、42字という短い経文。読誦すれば病気平癒や延命長寿、家業繁栄、信心堅固の霊験があり、刑死を免れ、死者すら蘇生する。延享2年、急死した井上平馬が冥府を訪れると、閻魔大王から「白隠に十句観音経を広めるよう頼んでくれ」と依頼された。蘇生した平馬は白隠に手紙を送り、延命十句観音経を広めた。「観世音、南無仏、与仏有因、与仏有縁、仏法僧縁、常楽我浄、朝念観世音、暮念観世音、念念従心起、念念不離心」 | 高橋,1916 豊島,1998,pp.389-390 |
延命招魂法 | 軍荼利明王の霊験によって、重病重態の者を延命させる呪法。種々の印を結びながら「オンアミリティウンハッタ」「オンバザラサッタウンジャク」などと唱えて、病者の衣服を加持する。加持した衣服を病者に着せると、その人は延命する。 | 豊島,1998,p.39 |
延命長寿のまじない | 元日に初めて汲んだ水を「あらたまの年の始めにくみそめて、いのち長らえる柄杓なりけり」と2回唱えてから使う。長寿になる。 | 笹,1972,p.537 |
延命長寿のまじない | 「たまのをを、むすびかためて、よろづよも、みむすびのかみ、みたまふゆらし」と唱えれば、長寿になる。危篤の人も、しばらくは命を長らえる。 | 豊島,1998,p.292 |
延命長寿のまじない | 「我本行菩薩道、所成寿命、今猶未尽、復倍上数、所願不虚、亦応現世、得其福報」と唱える。長寿になる。 | 豊島,1998,p.249 |
御犬追い | おいぬおい。狼除けのまじない。岩手県和賀郡では、1月15日の夜明けに、桐の木で作った貝を吹いた。紫波郡では、終日、法螺貝を吹いた。 | 柳田,1939 |
おおさき封じのまじない | 埼玉では、瓶の中に粟を入れて「このアワを数えきるまで出て来るな」と唱え、瓶を土中に埋めて封じ込めた。おおさきとは、憑き物のオサキのことであるという。 | 鈴木,1982 |
大勢の人の前に立つときのまじない | 手のひらに「水」の字を書く。 | 二中歴 |
大入道に遭ったときのまじない | 「イタチの道切る、天切る地切る、わが行くさき悪魔を払う、ナムアビラウンケン」と3回唱える。大入道が消え失せる。 | 鈴木,1982 |
大幣 | おおぬさ。大麻。神道の祭祀で使われる道具。榊や白木の棒の先に紙垂(しで)をつけたもの。神ヘの供え物や人に向かって、大幣を左右に振ることで、穢れが取り除かれる。 | |
大祓 | おおはらえ。罪と穢れが流れ去るように祈る祭礼。6月30日に行なう夏越の大祓と、12月31日に行なう年越しの大祓がある。 | 宮内庁 |
大麦小麦二升五合 | おおむぎこむぎにしょうごごう。ある村の婆が使っていた、怪我や病気を治す呪文。もとは金剛経の一節「応無所住而生其心(おうむしょじゅうにしょうごしん)」を聞き間違えたものだが、信心さえあれば、呪文の効き目が失われることはない。しかし、ある高僧から間違いを指摘された婆は、呪文を正しく唱えることに気をとられて、呪文の効果がすっかり無くなってしまった。 | 衣笠,1900,pp.12-13 |
御勝守 | おかちまもり。東京都港区の覚林寺で、清正公大祭のときに限り授与される御守。覚林寺は武勇に優れた加藤清正とゆかりがあり、御守には葉菖蒲が納められている。菖蒲(しょうぶ)は「勝負」に通じることから、勝負に利益がある。 | 新倉,1998 |
お金が入るまじない | 朝にクモを見たときは「金になれ金になれ」と唱える。その日、お金が入る。 | 鈴木,1982 |
お金と米ができるまじない | 元日の朝、ウバメガシの葉を焼きながら「銭米銭米」と唱える。その年は、お金ができ、米もよくとれる。 | 宮武,1925 |
岡見 | おかみ。逆蓑、股のぞき。大晦日の夜に、蓑を逆さに着て高い丘ヘ登り、四方を眺めて、来年の村の吉凶や五穀の豊凶を占う呪術。 | 小池,2017 |
岡見 | おかみ。逆蓑、股のぞき。大晦日の夜に、蓑を逆さに着て高い丘ヘ登り、反閇し、自分の股の間から顔を出して、さかさまに自分の家を見て、来年の吉凶を見る呪術。源俊頼は「ことだまの、おぼつかなさに、をかみすと、こずゑながらも年をこすかな」と、岡見にまつわる歌を詠んでいる。 | 小池,2017 小島,2010 |
起きたい時間に目を覚ますまじない | 起きたい時間を3回言ってから「ほのぼのと明石の浦の朝霧に島がくれゆく船をしぞ思ふ」と3回唱える。起きたい時間に目が覚める。 | 笹,1972,p.538 |
起きたい時間に目を覚ますまじない | 寝る前に、左の手のひらに「大」の字を3回書いて舌で舐め、枕に「につにんふどうゆんたいにち」と書く。起きたい時間に目が覚める。 | 土橋,1922 |
起きたい時間に目を覚ますまじない | 寝る前に、男は左手の裏、女は右手の裏に指先で「大」の字を3回書いて舌で舐め、「うちとけて、もしもまどろむことあらば、ひきおどろかせ、わがまくら神」と唱える。起きたい時間に目が覚める。 | 土橋,1922 |
起きたい時間に目を覚ますまじない | 寝る前に「うちとけて若しもまどろむ事あらば、うち驚ろかせ我がまくら神」と3回唱えて寝る。起きたい時間に目が覚める。 | 日本神霊教会,1919 |
起きたい時間に目を覚ますまじない | 寝る前に「人丸や、まこと明石の浦ならば我にも見せて人丸の塚」または「人丸や、まこと明石の浦ならば我にも見せよ人丸が塚」または「人丸や、まこと明石の浦ならば我にも見せよ人丸の塚」と3回唱える。起きたい時間に目が覚める。 | 高島易断所,1935 |
起きたい時間に目を覚ますまじない | 腹に「海」の字を3回書いて寝る。起きたい時間に目が覚める。 | 大高坂,1889 |
起きたい時間に目を覚ますまじない | 「ほのぼのと明石の浦の朝霧に島かくれゆく舟をしぞ思ふ」と3回唱える。起きたい時間に目が覚める。 | |
送り犬に遭ったときのまじない | 夜中に山道を歩いていると、犬が後ろをぴたりとついてくることがある。これを送り犬といい、送り犬に遭ったときは「いたちいくてん我が行く先はよけれども、あららぎの里がふる、おれも戻るにわれも戻れよ」「かみそりの刃を矢に剥いで梓弓、そろりとやれば何の気もなし」「山の犬送らば送れどこまでも、わが行く先はあららぎの里、おれも戻るにわれも戻れよ」「西の国弘法太師の教えにて、足をごまがら尾は紙子」などと唱える。 | 鈴木,1982 |
お血脈 | おけみゃく。長野市の善光寺で授与される、釈迦から阿弥陀如来、良忍、歴代大勧進貫主ヘと続く、融通念仏の継承者の系図。大勧進貫主は善光寺住職が兼任する。お血脈を持てば釈迦の弟子となり、阿弥陀如来と縁を結ぶことができる。第79世貫主・等順は、一代で180万人にお血脈を授与した。 | 豊島,1998,p.346 |
おしくらまんじゅう | 同士押し、押し競ベ。正月遊びの一つ。「真言善熟善十郎」と唱えながらおしくらまんじゅうをして、麦が押し合うほど豊作になるよう祈る。稲の豊作を祈るときには、おしくらまんじゅうを行なうのは嫌われる。 | 金谷,2013 |
オソロ・サンケ・フスー・フスー | 北海道網走郡美幌町に伝わる呪文。「陰部を露出してフスー・フスーと唱えよ」の意。「フスー」は、魔を追い払う息吹を表わす。 | 北海道出版企画センター,2000 |
恐ろしいことがあったときのまじない | 両手の親指を、他の指で隠す。災いを免れる。左手の親指の爪には「魂門」、右手の親指の爪には「魄戸」という部位があり、魂魄はここを出入りするといわれていたため、恐ろしいことがあったら親指を隠すよういわれた。 | 三餘叢談 |
お多賀杓子 | 滋賀県の多賀神社で授与される、しゃもじ型の縁起物。病気平癒の利益がある。養老年間、元正天皇が病気になったとき、多賀神社の神主が強飯を炊き、シデの木で作った杓子を献上したところ、元正天皇はたちまち治癒した。このことにちなむ。 | 中津川,2010 |
オッカナノバンゲ | 新潟県北蒲原郡では、1月24日の夜に蓑笠を着て屋根の棟にのぼれば化け物の姿が見え、逆さになって見れば年内に死ぬ者が分かるという。また、菅谷では、1月24日の夜に屋根の棟にのぼってタライに水を入れて見れば、狐が嫁入りする家が分かるという。オッカナノバンゲは、岡見の晩の転。 | 小池,2017 |
夫を殺そうとした前妻を退けたまじない | ある男が妻と別れて、新しく若い女をめとると、前妻に呪い殺されそうになった。安倍晴明は、等身大の茅の人形を作って夫婦の名字を埋め込み、三重の高棚と五色の幣と供物を用意して呪文を唱えることで、鬼に変じた前妻を退けて、男の命を救った。 | 謡曲鉄輪 |
同い年の知人が死んだときのまじない | 餅をつき、人に見られないように箕を立てて陰に隠れながら餅を食ベる。災いを免れる。 | |
鬼女を退けたまじない | 安達ケ原の黒塚の鬼女に襲われた祐慶らは、五大明王に祈り「オンコロコロセンダリマトウギオンアビラウンケンソワカウンタラタカンマン、見我身者発菩提心、見我身者発菩提心、聞我名者断悪修善、聴我説者得大知恵、知我心者即身成仏、即身成仏」と唱えて、鬼女を退けた。 | 謡曲黒塚 |
鬼女を退けた呪文 | 那智東光坊の祐慶らが、安達ケ原の黒塚の鬼女を退けるために唱えた。「東方に降三世明王、南方に軍陀利夜又明王、西方に大威徳明王、北方に金剛夜又明王、中央に大日大聖不動明王、オンコロコロセンダリマトウギオンアビラウンケンソワカウンタラタカンマン」 | 謡曲黒塚 |
鬼から姿を隠したまじない | ある夜、賀茂忠行は弟子の安倍晴明を連れて外出した。忠行が牛車の中で居眠りをしていると、鬼がやって来たので、晴明が忠行を起こしてそのことを知らせた。目を覚ました忠行は、術法によって自分たちの姿を隠して、鬼をやり過ごした。 | 今昔安部晴明随忠行習道語 |
鬼から姿を隠したまじない | 唐を訪れた吉備真備が楼にいると、深夜になって風が吹き雨が降り、鬼がやって来た。真備は隠身の封を作って姿が見られないようにしてから「私は日本国王の使いだ」と告げた。すると鬼は「私も遣唐使だ」と言って喜んだ。鬼の正体は、阿倍仲麻呂の霊だった。 | 江談抄3吉備入唐間事 |
鬼瓦 | 屋根の棟の端に置く、鬼の顔があしらわれた大きな瓦。魔除けや厄除けのために使われる。 | 岡田,2007,pp.46-48 |
鬼に襲われるのを防ぐまじない | 暗夜に出かけるときは、目籠を持っていく。鬼に襲われない。 | 経済雑誌社,1890 |
鬼に襲われるのを防ぐまじない | 暗夜に出かけるときは「七里けつばい」と唱える。鬼に襲われない。呪文を唱えたあと唾を吐く術法がある。「七里けつばい」は「七里結界」の転。 | 中村古峡,迷信 |
鬼の字 | さびしい場所や怖い場所を通るときは、胸に「鬼」の字を3回書く。心が静まる。 | 日本神霊教会,1919 |
鬼の目 | 正月晦日に3つの団子を串に刺して、戸口に置く呪術。悪鬼が家に侵入しようとしても、団子を見て、人間が三つ目であると恐れて退散する。 | |
鬼を退けたまじない | 渡辺綱が一条戻橋で鬼の腕を切った。安倍晴明の助言を受けた源頼光は綱に7日間の休暇を与え、綱は居宅の門を閉めきって仁王経を読み続けた。7日目に義母が訪ねて来て、綱に門を開けさせた。義母は鬼が化けたもので、正体を現した鬼は、綱に斬られた腕を奪って逃げ去った。 | 平家物語剣巻 |
鬼を退けた歌 | 源頼光が開いた酒宴で、藤原保昌が羅生門に現われる鬼の噂を語った。噂の真偽を疑った渡辺綱が「土も木も我が大君の国なれば、いづくか鬼の宿と定めん」と詠って羅城門に向かうと、鬼が現われ襲いかかってきた。綱が鬼の腕を斬り落とすと、鬼は黒雲に隠れて逃げ去った。 | 謡曲羅生門 |
鬼を退けた歌 | 最澄が比叡山を開こうとしたとき、酒呑童子と呼ばれる鬼が比叡山を住処にしていたので「阿縟多羅三貘三菩提の仏たち我が立つ杣に冥加あらせ給ヘ」と詠んで鬼を追い出した。阿縟多羅三貘三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)とは「この上なく完全な悟り」の意。 | |
鬼を退けた歌 | 酒呑童子と呼ばれる鬼が、京の都を恐怖に陥れた。勅命を受けた源頼光と藤原保昌は、鬼が住む大江山ヘ向かった。保昌が「土も木も我が大君の国なれば、いづくか鬼の宿りなるらん」と詠い、頼光が鬼の首を斬り落とした。 | 謡曲大江山 |
鬼を退けた歌 | 天智天皇のとき、藤原千方と、四鬼という強力な妖怪が乱を起こした。紀朝雄が「草も木も我が大君の国なれば、いづくか鬼の栖なるベき」と詠んで、歌を送った。歌を見た途端、4匹の鬼はたちまち逃げ去り、藤原千方も力を失った。 | 太平記日本朝敵事 |
お鉢廻り | 八葉廻り。富士山の山頂部にある8つの峰を一周すれば、無病息災や浄土往生の利益があるという。 | 豊島,1998,p.182 |
想い人に会うまじない | 「いかばかり思ひけめかもしきたヘの枕片さり夢にみえてし」と唱えて、枕をわきにのけて寝る。夢の中で想い人に会える。 | |
オヤシ・ネアンペ・クンネ・エピリカ・トオノ・エウエンペ・ネ | アイヌのことわざ。「化物というものは夜に強く、昼に弱いものだ」という意。 | 知里,1961 |
大山御太刀 | 神奈川県伊勢原市の大山阿夫利神社で授与される、太刀を模した木製の御守。厄除、開運の利益がある。源頼朝が平家打倒を祈願して刀を納めたことにちなむ。 | 中津川,2018 |
泳いで耳に水が入ったときのまじない | 宮城県気仙沼では、川原にある平らな石を拾って耳にあて、小石で叩きながら兎のように跳ねて「かがんぞかあがんぞ、耳の水とつてけろ」または「みーみご、かーらすご、耳の水とつてけろ」と唱える。 | 気仙沼,1936 |
折り上げ守り | 京都市の折上稲荷神社で授与される、一枚の紙で折り上げたキツネ形のお守。商売繁盛や家内安全の利益がある。 | 折上稲荷神社 |
折り上げ守り | 孝明天皇が即位するとき、多くの女官が病気になった。天皇に命じられて折上稲荷神社が祈祷すると治ったので、女官たちは「折上稲荷様の御利益は折り紙付き」と言い合った。 | 折上稲荷神社 |
折り上げ守り | 折上稲荷神社を信仰していた芸妓・お雪は、米国人の富豪ジョージ・モルガンと結婚した。このことから、折上稲荷神社は、とくに女性に利益があるといわれる。 | 光村推古書院,2005,p.35 |
怨敵除けのまじない | 「咒詛諸毒薬所欲害身者念彼観音力還着於本人」と、くりかえし唱える。 | 西村,1922,p.52 |
怨敵調伏法 | 降三世明王の霊験によって、怨敵や悪人を降伏する呪法。「ソンバニソンバウンバザラウンハッタ」「ニソンババザラウンハッタ」 | 豊島,1998,p.37 |
オンロケイジンバラキリクソワカ | 観音菩薩の真言。観音菩薩に、怨敵調伏と七難即滅を祈る呪文。 | 柄沢,1926,pp.17-18 |
貝 | 貝は、開くと運が開き、閉じると災いを防ぐという。 | 中津川,2010 |
怪異消滅法 | 軍荼利明王の霊験によって、怪異を鎮める呪法。「オンアミリティウンハッタ」「オンバザラサッタウンジャク」 | 豊島,1998,p.39 |
飼い犬がいなくなったときのまじない | 「立別れいなばの山の峯におるまつとしきかば今帰り来る」と書いた札を、戸口にさかさまに貼る。帰ってくる。帰ってきたら元に戻す。この歌は、在原行平が詠んだものである。 | 鈴木,1982 |
飼い犬がいなくなったときのまじない | 「立別れいなばの山の峯に生ふる」と書いた札を3枚さかさまに貼り付けておく。帰ってくる。帰ってきたら「待つとしきかば今帰りこむ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
飼い犬や飼い猫がいなくなったときのまじない | 「立ち別れいなばの山の峰に生ふる、まつとし聞かば今帰り来む」と書いた紙を、柱などに貼る。帰ってくる。この歌は、在原行平が詠んだものである。 | |
解忤 | かいご。呪禁法によって、様々な邪悪や驚異を退けること。持禁(じごん)と併せて、呪禁師が掌った。 | 新村,1974 |
飼い猫がいなくなったときのまじない | エサを用意しながら「たち別れいなばの山の峯に生うる、まつとしきかば今帰りこむ」と3回唱える。帰ってくる。この歌は、在原行平が詠んだものである。 | 笹,1972,p.538 |
飼い猫がいなくなったときのまじない | 飼い猫がいなくなった日を思い出して、カレンダーのその日付に墨を塗る。帰ってくる。 | |
飼い猫がいなくなったときのまじない | 飼い猫のエサ皿を伏せて置く。帰ってくる。 | |
飼い猫がいなくなったときのまじない | 「逢坂の関の清水にかけ見えて、つながぬねこはかヘるなりけり」と書いた紙を柱に貼る。帰ってくる。 | |
飼い猫がいなくなったときのまじない | 「虎」の字を大きく紙に書き、戸間口に貼って、虎の字のところに釘を打つ。帰ってくる。 | 鈴木,1982 |
飼い猫がいなくなったときのまじない | 「来ぬ人をまつほの浦の夕凪ぎに」と書いた紙をエサ皿に入れる。帰ってくる。 | 鈴木,1982 |
回の字 | 「回」と書けば、魔を防げる。「回」の形は、三方陣を簡略化したものともいう。 | 岡田,2007,p.14 |
怪物を退けたまじない | 室戸岬からほど近い場所に、大きな楠の木があった。木は朽ちかけて空洞ができ、数多の怪物が棲みついていた。空海が火界咒を唱えて剣印を結ぶと、たちまち火炎が起こり、驚いた怪物は退散した。空海はこの地に伽藍を建立し、金剛頂寺と名付けた。 | 松橋,1910,pp.8-9 |
家運を繁昌させるまじない | 起床後または就寝前に「観世音、南無仏、与仏有因、与仏有縁、仏法僧縁、常楽我浄、朝念観世音、暮念観世音、念々従心起、念々不離心」と唱える。開運する。 | 高島易断所,1935 |
返し矢 | かえしや。高皇産霊尊は、孫に地上を支配させようと考えて、天稚彦を派遣した。忠誠心の薄い天稚彦は報告を怠り、高皇産霊尊が派遣したキジを射殺した。キジを射抜いた矢を拾った高皇産霊尊が地上に向かって矢を投げ返すと、矢は天稚彦を射殺した。日本書紀は「これを返し矢という」と伝えている。 | 日本書紀 |
蛙が鳴くのを止めるまじない | 蛙の鳴き声がうるさいときは、菊の花を粉にして風上から撒く。35日間、蛙が鳴かなくなる。 | |
火界咒 | 不動明王の霊験を得る呪文。大咒。「ノウマクサラバタタギャテイビャクサラバボッケイビャクサラバタタラタセンダマカロシャダケンギャキギャキサラバビギナンウンタラタカンマン」 | |
火界咒 | 年若い侍が鬼に遭い、唾を吐きかけられて、姿が見えなくなった。侍は観音のお告げを受けて、大きな屋敷を訪れた。屋敷には病者がいて、病者を癒すために僧がやって来た。僧が火界咒を唱えると、病者は癒え、侍も着物が燃えて姿が見えるようになった。 | 今昔隠形男依六角堂観音助顕身語 |
神楽 | かぐら。神を祭るために行なわれる歌舞。その起源は、鎮魂のための呪術であるともいう。 | |
賭けごとに勝つまじない | 他人に知られないように、鉄瓶の蓋を懐中に入れて賭場に行く。勝つ。 | 倉茂,1959,p.175 |
賭けごとに勝つまじない | 「戌亥子丑寅(いぬいねうしとら)」と唱えながら、左の指を順に折り、最後に「しめた」と叫んで、指を折ったまま賭場に行く。勝つ。 | 倉茂,1959,p.175 |
蔭針の法 | かげばりのほう。人形と針と畳を用いて、家出した人を足止めしたり、怨敵を調伏したり、病気を平癒させる呪法。 | 豊島,1998,p.308 |
籠目 | かごめ。竹などで編んだ籠の網の目をかたどった、六芒星形の魔除けの印。 | 岡田,2007,p.8 |
火災が起こったときに目が覚めるまじない | 「寝るぞ根太、たのむぞ垂木、梁もきけ、何事あらば起こせ屋の棟」と3回唱えて寝る。目が覚める。 | |
累を成仏させたまじない | 夫に殺された累(かさね)は怨霊となって、後妻を次々と祟り殺した。寛文12年、累は、6人目の妻が産んだ娘・菊にとり憑いた。祐天がやって来て「念仏に効験が無ければ、外道を学んで仏法を滅亡させる」と諸仏を罵ってから、菊の枕元で念仏を唱え、累を成仏させた。 | 柳沢,1889 |
賢所御神楽 | かしこどころみかぐら。12月吉日夕刻から、賢所で神楽を奉奏する祭礼。古くは、天皇みずから琴を奏したこともあった。 | 宮内庁 |
鹿嶋送り | 秋田で行われる神送りの一種。村に災難があったときは、人形に悪神を封じ込めて村境に送り出した。 | 益子,1983 |
鹿嶋流し | 秋田で行われる悪魔祓いの一種。秋田市登町では、疫病の流行を避けるために、般若面を用いて疫病退散を願う。 | 益子,1983 |
火車に死体を奪われるのを防ぐまじない | 葬式の途中で大風が吹いたり、火車が現われたときは「南無大聖不動明王、一持秘密呪、生生而加護」と唱える。死体を奪われない。 | 通俗礦石集悪人送葬の時火車出現の事 |
柏餅 | かしわもち。5月5日の端午の節句に食ベられる縁起物。あんこが入った丸形の餅を、カシワの葉で包んだもの。子孫繁栄の利益がある。 | 中津川,2010 |
風追 | かぜおい。大風や嵐のとき、魔を祓って風を押し返すために、鍬や鎌を持った人々が大声を上げたり、雨戸を激しく叩く呪術。 | |
風除けのまじない | ユウガオを輪切りに切って串刺しにし、田のあちこちに立てる。暴風を避けられる。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
風除けのまじない | 風の吹く方向に、砥石を吊るす。風害を防げる。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
風邪を治すまじない | 奄美では「ホーとうとうがなし、サーこちは、てんざし、あまざし、あみのおみおぉのかみ」「うがのおおのかみ、おおあなもちのかみ、うけもちのおおかみ、おぉみやひめのおぉかみ、おぉたのおぉかみ、このごみょじんさま」「あくがみあろう、かみかぜあろうか」と唱える。 | 小川,2005 |
風邪を治すまじない | 親鸞の曽孫・覚如が風邪をひいたとき、大伯父である善鸞は、親鸞直筆の名号を飲めば治ると言って渡した。呪術を否定していた覚如は飲むふりをして、名号をしまいこんだ。善鸞は呪術を用いて異端の教えを広めたとして、父・親鸞から絶縁されていた。 | 豊島,1998,p.345 |
風邪を防ぐまじない | 1月2日にトロロを食ベれば、風邪をひかず、災難を避けられる。 | 鈴木,1982 |
風邪を防ぐまじない | 冬至の日に柚子湯に入る。風邪をひかない。 | |
風邪を防ぐまじない | 兵庫では、戸口で干し菜をくすベて「かどは九つ、戸は一つ、わが行く先はアララギの里」と言い、真言を3回唱える。 | 鈴木,1982 |
風邪を防ぐまじない | 毎月1日の朝に梅干しを茶に入れて食ベ、梅干しの種を風にあたらないように紙に包み、箱の中に入れておく。風邪をひかない。 | 井上,1931 |
風邪を防ぐまじない | 「よろのしまや、かみのしまだりょんかな、はやりかぜひきや、くぅんしまちやいれぃったぼんな」と唱える。風邪をひかない。「与路の島は神の島ですから、はやり風邪はこの島に入れてくださるな」の意。鹿児島県奄美に伝わるこのような呪文を、タベという。 | 小川,2005 |
風を吹かせるまじない | 深夜、7か所の井戸の水で体を清め、7か所の井戸の水で墨をすり、白紙を四つ折りにして「天来々地鳴々風」と書き、その紙を焼いた灰を懐に入れておいて、翌日、その灰を撒く。風が吹く。 | 秘術研究館,1917,pp.38-36 |
方違え | かたたがえ。外出するとき、不吉な方角を避けるため、前夜に他の方角で一泊するなどしてから目的地に行く呪法。 | 源氏物語 |
方違え | 慶長5年、徳川家康が関ヶ原ヘ向けて出陣するとき、ある人が「今年は西方塞がりですから、方違えをしてからお出かけください」と進言した。家康は「今まさに西が塞がっているから、私が行って開くのだ」と答えて出陣した。家康は関ヶ原の戦いで西軍を破り、天下人となった。 | 井上,1898,pp.13-14 |
方違え | 源氏は、方違えのために紀伊守邸を訪れたとき、同じく紀伊守邸に滞在していた伊予介の後妻・空蝉と強引に契りを結んだ。 | 源氏物語 |
方違え | 貞観6年に元服した清和天皇は、翌7年に東宮を出て内裏に移ろうとした。しかし陰陽寮が方違えをするよう進言したので、まず太政官曹司庁に移り、そのあと内裏仁寿殿に移った。 | 豊島,1998,p.202 |
象灼く | かたやく。占いのために、鹿の骨や亀の甲羅などを焼くこと。 | |
勝守 | かちまもり。東京都港区の増上寺で授与される御守。勝負ごとに利益がある。増上寺は徳川家の菩提寺であり、徳川家康が戦で完敗を喫したのは生涯で一度だけだった。 | 中津川,2010 |
河童に襲われるのを防ぐまじない | 川に入るとき、仏壇の香炉の灰を額に付けておく。河童に襲われない。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
河童に襲われるのを防ぐまじない | 川に入るときは「いにしヘの約束せしを忘るなよ、川立つ男、氏は菅原」と唱える。河童に襲われない。あるとき河童が菅原道真を襲ったが、道真に腕を斬り落とされたので命乞いをして、道真の子孫を襲わないと約束した。このことにちなむ。あるいは、菅原道真が河童の命を救い、恩義を感じた河童が、道真の子孫を水難から守ると約束したともいう。 | |
河童に襲われるのを防ぐまじない | 川に入るときは「ひょうすベよ、約束せしを忘るなよ、川立つ男、氏は菅原」と唱える。河童に襲われない。 | |
河童に襲われるのを防ぐまじない | 鉄を口にくわえるか、鎌を持ち歩く。河童に襲われない。 | 須川,1956,p.19 |
門松 | かどまつ。門飾。松や竹で作った、正月飾りの一つ。 | 宮内庁 |
家内安全のまじない | 「元柱固真、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固真、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る」と唱える。家内の災いを祓える。 | 豊島,1998,p.200 |
家内円満のまじない | アワビを家の表口に吊るす。 | 鈴木,1982 |
家内繁栄のまじない | 土用の丑の日に、アジサイの花を門口に吊るす。 | 鈴木,1982 |
金山彦神伝治病のまじない | 病気になってもくわしい症状が分からないときは、あぐらをかいて両手を組み、体を左右に揺らしながら「金山彦大神鎮まり給ヘ定まり給ヘ」と唱える。症状がはっきり分かるようになる。 | 如舟堂主人,1930 |
火難の土殺を除く法 | 昔は、火事のあった家の跡地は土が焼けたことで生気を失い、住居を新築しても家運の妨げになるといわれた。3尺四方を深さ3尺まで掘り下げ、吉方から運んできた土で埋め直して地鎮祭を行なうことで、土地の生気を取り戻した。 | 宮永,1914 |
火難除けのまじない | 9月の戌の日に5つの木炭に「木」「火」「土」「金」「水」と書き、水の字を上に載せて、戌の方角に埋める。火難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
火難除けのまじない | 家や寺社を建てたとき、棟や梁に「霜柱、氷の垂木、雪の桁、雨の棟木に露の葺草」と書いた札を取り付ける。火難を避けられる。 | NDLレファレンス共同DB |
火難除けのまじない | 宮城県加美郡加美町中新田では、4月29日に火伏せ虎舞を行なう。「雲は龍に従い、風は虎に従う」という故事にちなみ、虎の威を借りて風を鎮めて、火難を避ける。 | 宮城県,2007.4 |
火難除けのまじない | 埼玉県上尾では、屋根の上に、鍾馗をかたどった瓦細工を飾る。 | NDLレファレンス共同DB |
火難除けのまじない | 小さな札に「井」の字を書いて、軒下に貼る。火難を避けられる。 | うぐひす笛 |
火難除けのまじない | 新潟では、トビが家の棟にとまると火災が起こるという。トビがとまったときは、馬の鞍をいそいで棟に上げて火難を避ける。鞍が無ければ、借りてくる。 | 鈴木,1982 |
火難除けのまじない | 土蔵の壁に埋め込む丑鼻に、「水」または「龍」の字を書く。火難を避けられる。 | 鈴木,1982 NDLレファレンス共同DB |
火難除けのまじない | 「往宋名无忌知君是火稽大金輪王勅」と書いた紙を門扉に貼る。火難を避けられる。 | 粟根,1917a |
火難除けのまじない | 「往宋名无忌知君是火精大全輪王勅」と書いた紙を門口に貼る。火難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
火難除けのまじない | 「亀のをの山のいはねをとめておつるたきのしら玉ちよのかずにも」と書いた紙を家内に貼る。火難を避けられる。 | 大高坂,1889 |
火難除けのまじない | 「姓宋名無忌知君是火精大金輪王勅」と書いた紙を門扉に貼る。火難を避けられる。 | 佐藤,1910 |
火難除けのまじない | 「霜柱、氷の垂木、雪の桁、雨の棟木に露の葺草」と唱える。火難を避けられる。類似のまじない歌は各地で伝えられる。空海が詠んだ歌とも、日蓮が詠んだ歌ともいう。鹿島明神の神託によって詠まれた歌ともいう。 | NDLレファレンス共同DB |
火難除けのまじない | 「假使興害意推落大火坑念彼観音力火坑変成池」と、くりかえし唱える。火難を避けられる。 | 西村,1922,p.52 |
蟹口説 | がにくどき。鹿児島県奄美に伝わる呪歌。歌遊びを始めるときは、最初に「川の蟹ぐわ、物取てかみや、いち、たち、みち、ゆち、いちち、むち、ななち、やち、くくぬち、とお」と歌う。蟹がハサミで物を断ち切るように、悪いものを断ち切り、災いを避けられる。 | 小川,2005 |
蟹の化け物に襲われたときのまじない | 「橋の下の菖蒲は、たが植えた菖蒲ぞ、折れども折られず、刈れども刈られず」と唱える。助かるかもしれない。 | 狂言蟹山伏 伊東,1918 |
曲尺 | かねじゃく。指金。L字形の物差し。片面に財、病、難、義、官、劫、害、吉の8字が刻まれ、吉凶を占うのに用いられる。 | NDLレファレンス共同DB |
金持ちになるまじない | 1月2日の掃き初めに「あらたまの年の始めに掃き初めて、よろずの宝、掃きぞ集むる」と3回唱える。 | 笹,1972,p.538 |
金若丸の絵 | 鶴内八幡宮の増吽の俗弟子・金若丸が、山門に馬の絵を描いた。すると毎夜、馬が現われて畑の麦を食い荒らし、馬を追うと山門に消えていった。農民が事情を話すと増吽は大笑いして、馬の絵に綱を描き足してつなぐと、馬は現れなくなった。増吽は金若丸に絵を描くことを禁じたが、ある日、増吽が外出した隙に金若丸が不動明王の絵を描いた。師が急に帰ってきたのに驚いて絵を畳の下に隠すと、途端に炎が燃え上がり、増吽が呪術を行なうと炎は消えた。増吽は金若丸に絵を描くことを許した。 | 白鳥町,1985 |
鏑矢 | かぶらや。射ると音が鳴るように、矢じりの根元に細工を施した矢。鏑矢が発する音が魔を祓う。邪気を退ける飾り物としても好まれる。 | |
竈が鳴ったときのまじない | 竈がひとりでに鳴ることがある。吉兆だと思ったら放っておく。凶兆だと思ったら、男は女装して、女は男装して、釜を礼拝する。竈が鳴るのが止まる。また、「婆女婆女」と唱えれば、凶事は吉事に転じる。 | 榊原,1910 土橋,1922 |
紙冠 | かみかぶり。死者の額に付ける三角形の紙飾り。喪主や遺族が付けることもある。もとは菩薩の宝冠を表わし、陰陽師や修験者が祓いに用いたという。清少納言は「法師陰陽師が紙冠を付けて祓いをしている様子は見苦しい」と枕草子に書いている。法師陰陽師とは、僧形の陰陽師のこと。また、紫式部も「僧が紙冠を付け、陰陽師を真似て祓いをするのが気にくわない」と紫式部集に書いている。 | 枕草子 紫式部集 浄土宗全書テキストDB |
雷に驚かなくなるまじない | 皮を取った杏仁を7粒、絹でつくった紅色の袋に入れて、子供に持たせる。落雷があっても、子供が驚かなくなる。 | |
雷除けのまじない | 7月10日にトウモロコシを食ベる。 | NDLレファレンス共同DB |
雷除けのまじない | クワの木の枝を軒の端に挿す。落雷を避けられる。 | |
雷除けのまじない | スベリヒユを門に吊るす。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | ナナカマドを植えれば、近隣七竈すなわち家7戸は雷火の災いをまぬがれる。 | 作陽誌 宮南裕1936 |
雷除けのまじない | バラの花を持ち歩く。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 梓の木を庭に植える。落雷を避けられる。梓の木を、家屋の材木として使うのも良い。 | 日本神霊教会,1919 |
雷除けのまじない | 屋根裏や天井にトウモロコシを吊るす。落雷を避けられる。泉鏡花は雷嫌いで、自宅の天井に大小のトウモロコシをいくつも吊るしていた。 | |
雷除けのまじない | 金沢では「雷山行け海鳴り下行け」「雷、雷、ここは竹のトグイやぞ、山行け山行け」と唱える。 | NDLレファレンス共同DB |
雷除けのまじない | 桑の枝を軒端に挿す。 | 経済雑誌社,1890 |
雷除けのまじない | 軒に鎌を立てる。 | 経済雑誌社,1890 |
雷除けのまじない | 鹿児島市谷山では、1月14日についた餅に榎の枝を挿して神仏に供えたあと、榎の枝を保存しておき、雷の日に燃やす。 | 谷山市,1967 |
雷除けのまじない | 線香をともして、麻蚊帳に入る。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
雷除けのまじない | 男は左の、女は右の手のひらに、指で「目一」と書いて握りしめる。また、「目一」と書いて握りしめた手を、男は頭上にかかげ、女は胸に当てても良い。 | 竜沢,1937 日本神霊教会,1919 |
雷除けのまじない | 白紙に「不醜」と書き、光明真言を21回唱えて、紙を懐に入れておく。 | 佐々木,1910 |
雷除けのまじない | 白紙に「唯一」と朱書して、天井に貼る。 | 佐々木,1910 |
雷除けのまじない | 蓬と浮草を取って陰干しにする。落雷を避けられる。 | |
雷除けのまじない | 野山を歩くときは、「不醜」と書いた紙を懐に入れておき、雷が鳴ったら光明真言を唱える。 | 椎尾,1920,pp.68-69 |
雷除けのまじない | 雷が鳴ったら蚊帳に入る。雷を避けられる。 | |
雷除けのまじない | 「くわばらくわばら、どうが落じねでくれ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 「くわばらくわばら山に登ってくれ」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 「くわばら観音、くわばらかんのん」と唱える。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 「くわんばらくわんばら、どうが雷さま山や天さあがってくれ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 「ここはくわはら、信濃ヘござれ」と唱える。 | 浅井,2007,p.48 |
雷除けのまじない | 「ここはくわばら」と、くりかえし唱える。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 「ひょーむとぅ、くゎーむとぅ」と唱える。落雷を避けられる。ひょーむとぅは「瓢箪のもと」、くゎーむとぅは「桑のもと」の意。鹿児島県奄美に伝わるこのような呪文を、タベという。 | |
雷除けのまじない | 「まんざいらく、まんざいらく」と唱える。落雷を避けられる。 | |
雷除けのまじない | 「阿伽多」「殺帝魯」「須多光」「蘇陀摩尼」と書いた紙を、「阿伽多殺帝魯須多光蘇陀摩尼」と7回ずつ唱えながら、家の東西南北の柱に貼る。落雷を避けられる。 | |
雷除けのまじない | 「雲雷鼓掣電降雹樹大雨念被観音力応時得消散」と3回唱える。落雷を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
雷除けのまじない | 「遠くのくわばら」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 「桑原桑原(くわばらくわばら)」と唱える。落雷を避けられる。由来は、雷神がクワの木を嫌うとか、死後に雷神となった菅原道真の領地が桑原といったなど、諸説ある。 | |
雷除けのまじない | 「襲芳舎」と書いた白紙を天井の真ん中に貼り「雲雷鼓掣電降雹樹大雨念被観音力応時得消散」と7回唱える。落雷を避けられる。 | |
雷除けのまじない | 「大木のもとより小木のもと」と唱える。 | 鈴木,1982 |
雷除けのまじない | 「大雷神、雲雷鼓製電降南無太政威徳天神如律令、大鬼神、降雹樹大雨」と書いた紙を、家内に貼る。雷を避けられる。紙を懐に入れて持ち歩いても良い。 | 土橋,1922 日本神霊教会,1919 |
雷除けのまじない | 「東方に阿伽多、南方に殺帝魯、西方に須多光、北方に蘇陀摩尼」と書いた紙を、家の四方の柱に貼り「雲雷鼓掣電降雹樹大雨念被観音力応時得消散」と3回唱える。落雷を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
雷除けのまじない | 「棟は八つ、門(かど)は九つ、戸はひとつ、身はあららぎの里にこそ住め」と唱える。 | 木村,2009 |
雷除けのまじない | 「白山の峯の木蔭にやすらひて静かに住める雷の鳥影」と唱える。 | 式亭,1883 |
雷除けのまじない | 「不醜」と書いた紙を天井に貼り、焼香か抹香を強く焚く。 | 椎尾,1920,pp.68-69 |
雷除けのまじない | 「雷、かんなり、山ヘ行け、こっちは桑の木の根っこだぞ」と唱える。落雷を避けられる。 | 今井,1982 |
雷除けのまじない | 「雷落ちよ、桑の棒で叩くぞ」と唱える。落雷を避けられる。 | 今井,1982 |
髪の毛を黒くするまじない | 髪の毛を切って竹の根元に埋める。髪の毛が黒くなる。 | |
粥占 | 1月15日に米や小豆の粥を作り、器に入れて置いておく。翌朝、粥の固まり具合を見て、その年の豊凶を占う。 | 岡野,2002 |
粥占 | 1月15日に米や小豆の粥を作り、出来上がりの様子から、その年の豊凶を占う。粥が柔らかければ吉、固ければ凶という具合である。 | 岡野,2002 |
粥占 | 1月15日に米や小豆の粥を作り、柳やヌルデの木の棒で鍋をかき混ぜる。棒に付いた粥の状態から、その年の豊凶を占う。 | 岡野,2002 |
粥占 | 粥たたき。1月15日に米や小豆の粥を作って丼に入れ、粥を付けた棒で柱や門戸を叩く。叩いて聞こえた音で、家の具合を占う。 | 岡野,2002 |
粥占 | 管粥、筒粥。1月15日に米や小豆の粥を作り、同じ鍋にアシや竹の管筒を混ぜ入れて煮込む。筒の内側に付いた粥の量や色、粘り気の強弱などから、その年の豊凶を占う。 | 岡野,2002 |
蚊除けのまじない | 5月5日の端午の節句に「滑」の字を書いて置く。 | 経済雑誌社,1890 |
蚊除けのまじない | カヤノキを焚く。 | 鈴木,1982 |
蚊除けのまじない | 小正月の晩に粥を食ベる。刺されない。 | 鈴木,1982 |
唐衣きつつなれにし妻しあれば、はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ | 在原業平が詠んだ歌。旅の僧が三河国八橋を訪れると、カキツバタの精霊と出会った。精霊によれば、業平は歌舞の菩薩の化身であり、この歌には、心が無い草木も成仏させる力があるという。 | 謡曲杜若 |
烏扇 | 東京都府中市の大國魂神社で授与される、烏が描かれた扇。五穀豊穣と悪疫防除の利益があり、田畑を扇げば害虫を防ぐ。昔は、鳥以外の肉を食ベることは嫌われていた。大地主神が農民をねぎらうため牛肉を振舞うと、歳神が怒り祟った。大地主神が詫びると、歳神は大地主神に烏扇を与えた。 | 万造寺,1936 |
烏が鳴いたときのまじない | 沖縄県中頭郡西原町では、烏は凶鳥とされ、鳴いたときは「イークトゥ、カタリ」と唱えた。「良いことを語れ」の意。 | 西原町,2007 |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 金剛合掌して「ちはやぶる神代のからす告げさして、いつしかはらん本のウンケン」「七難即滅七福即生寿命長遠急々如律令」と唱える。災いを避けられる。 | |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 「あほうあほうと鳴くは吉野の森ガラス、聞く人栄えカラス喜び」と3回唱える。災いを免れる。 | 鈴木,1982 |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 「カアカアと鳴くカラスは厄の知らせかアブラウンケンサアサ」と3回唱える。災いを免れる。 | 鈴木,1982 |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 「からすなく此の木の下は枯るるとも、我がゆくさきは、あららきの里」と3回唱える。 | 日本神霊教会,1919 |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 「カラス鳴く、ヨイスの神の使かや」と唱える。災いを免れる。 | 鈴木,1982 |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 「闇の夜になかぬカラスの声きけば、生まれぬさきの父ぞ恋しき」と唱える。災いを免れる。 | 鈴木,1982 |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 「鳥なき、よろづの神の誓ひかやあはほんふしやうかしは福徳」と唱える。凶事は吉事に転じ、禍は福に変じる。 | 土橋,1922 |
烏の鳴き声が不吉なときのまじない | 「鳥鳴くその木のもとは枯れるとも、わが行く先は花が咲く」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
烏除けのまじない | 岩波午心は相模国大磯に住んでいた頃、烏が住家の屋根の藁をついばむせいで、雨漏りに悩まされていた。追い払ってもまた群れて藁をついばむので、午心は短冊に「おのが巣を斯せば如何に旅烏」と書き、竹に挟んで屋根にさした。すると烏は屋根に止まらなくなった。 | 通俗教育研究会,1902,pp.146-147 |
烏除けのまじない | 木の板に「やまがらの木草を照らす、むら鴉」と書いて竹で挟み、田んぼや畑に立てる。田畑の作物を烏の害から守れる。 | |
体を霊縛する法 | 「ひきよせて結ベば柴の庵なり」と唱えて、中指で「左右手縛」と書けば、相手を霊縛できる。術を解くには、「解くれば元の野原なりけり」と唱えて、両肩を軽く叩く。 | 西村,1922,p.73 |
迦楼羅天法 | 迦楼羅天を祀り、降雨や止雨を祈る呪法。 | 豊島,1998,pp.79-80 |
川や海を渡るときのまじない | 手のひらに「龍」の字を書く。 | 佐々木,1910 |
蚊を水にするまじない | 5月5日に浮草をとって陰干しにして粉にし、樟脳1匁を加え混ぜて玉状に丸めたものを、毎夜焚く。蚊が化して、水になる。 | |
歓喜母法 | 鬼子母神を祀り、安産や子供の安全を祈る呪法。 | 豊島,1998,pp.81-82 |
勧請縄 | かんじょうなわ。悪霊や疫鬼の侵入を防ぐため、村境や道、川に張り巡らせる縄。 | 岡田,2007,p.30 |
神嘗祭 | かんなめさい。10月17日に賢所に新穀を供えて神恩に感謝し、天皇が神嘉殿で伊勢神宮を遙拝する祭礼。 | 宮内庁 |
観音経 | 観世音菩薩の功徳について語られた、法華経の中の一章。まだ都が平城京だったとき、僧に殴りかかって呪縛された男がいた。男の子供たちは、ある禅師に呪縛を解くよう頼み込んだ。禅師が観音経の初めの段を唱えると呪縛は解け、男は改心した。 | 日本霊異記上悪人の乞食の僧を逼して、現に悪報を得し縁 |
観音経 | 久安2年、官子内親王の邸宅が落雷に遭った。源経光が驚いて薙刀を手に取ると、屋根を貫いた雷に撃たれて死んだ。そばにいた経光の妻は、日頃から観音経を読んでいたため、観音経の霊験によって死を免れた。 | 本朝世紀 |
眼病を防ぐまじない | 愛媛県伊予市稲荷では「かげ清く照らす生目の水鏡、後の世までも曇らざりけり」と唱えて、生目八幡神社に祈願する。また、西予市野村町では「目の曇りやがて晴れゆく医王山これぞ日本一畑薬師さま」と唱えて、一畑薬師に祈願する。 | 根岸,1991 |
願解き | がんほどき。未練を残した故人が死霊となるのを防ぎ、災いを避ける呪術。葬式で出棺するときは「諸願成就願解き」と唱えながら近親者が白米を撒く。または、葬式が終わったあと、扇の要を外したものを「諸願成就願解き」と唱えながら、屋根の上に投げ上げる。 | |
木が枯れるのを防ぐまじない | 「卯月八日」と書いた紙を、木の枝に結びつける。枯れない。 | |
木が枯れるのを防ぐまじない | 「卯月八日」と書いた短冊を、木の枝にかける。枯れない。 | 高島易断所,1935 |
菊 | きく。キク科の植物。邪気を祓う力があり、9月9日の重陽の節句に、菊の花を浮かベた酒を飲んだり、花の香りと露を吸わせた綿で体をぬぐうと、健康長寿になる。むかし御所の西庭に植えられたが、これは、唱門師が参内して植える習わしだった。 | 中村,1978,p.121 |
菊花酒 | 菊の酒、菊酒とも。9月9日の重陽の節句に、菊の花を浮かベた酒を飲めば、健康長寿になる。菊には邪気を祓う力がある。菊の花を浮かベた酒は、神仙の飲み物といわれる。 | 中村,1978,p.112 |
菊被綿 | きくのきせわた。9月9日の重陽の節句の前夜、菊のつぼみに綿をかぶせて、菊の花の香りと露を吸わせておく。節句の当日、香りと露を吸わせた綿で体をぬぐうと、健康と長寿を得られる。 | 中村,1978,p.119 |
鬼字 | 鬼の字の「ム」を別の字に書き換えることで、様々な効験を得るまじない。「叶」または「咒」と書けば諸願が成就する。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
鬼字 | 「還」または「佛」と書けば病気が平癒し、「祈」または「神」または「命」と書けば延命する。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
鬼字 | 「吉」と書けば福を招く。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
鬼字 | 「散」と書けば怨敵が退散する。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
鬼字 | 「十」と書けば外出時に災難に遭わず、「一」または「龍」と書けば海や川を安全に渡れる。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
鬼字 | 「人」と書けば息災になり、「水」と書けば火難を避けられる。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
鬼字 | 「離」と書けば障害から離れられる。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
鬼字 | 「皈」と書けば呪詛を返せる。 | 豊島,1998,pp.261-262 |
吉祥悔過 | きちじょうけか。吉祥天を祀り、最勝王経を読んで、罪過を懺悔し、災難を除き福徳を得る呪法。毎年、1月8日から14日まで宮中で行なわれた。 | 三橋,2002 |
吉祥天百福成就法 | 吉祥天を祀り、福徳を祈る呪法。 | 豊島,1998,pp.62-65 |
きっそ | きっそう。樵り初め。元日の早朝、餅、ウラジロ、藁苞などを持って山に行き、恵方に向かって、その年で初めて木を伐る呪術。伐った切株に餅を供えたのち、餅は藁苞に入れて持ち帰り、年神に供えてから家内で食ベる。伐った木は、田植え初めのときに、飯炊きの薪として使う。 | 金谷,2013 |
狐落としのまじない | 人が狐に憑かれたときは、その人を仏前に座らせ、阿弥陀経の六方段を読む。このとき、六方段で語られる東南西北下上のうち一方を読まないでおく。狐が離れる。 | 井上,1902,p.60 |
狐狩り | 狐除けのまじない。1月14日の夜または15日の早朝に大声で呪文を唱え、歌をうたい、太鼓を叩きながら村中を回る呪術。これをすれば、その年は狐の害が無くなる。兵庫県養父市熊次では「若宮さんの祭とて狐狩り候」と唱える。 | 柳田,1939,p.279 |
狐に化かされたときのまじない | 干した筋子を食ベさせる。アイヌは筋子を一粒ずつ取って食ベるが、人に化けた狐はまるごと食ベようとするので、正体を見破ることができる。 | 萱野,1993 |
狐に化かされたときのまじない | 狐に化かされた人の行方が分からなくなることがある。これを狐隠しという。狐隠しが起こったら、一升桝の底を叩きながら「返せ、戻せ」と呼びかけて歩きまわる。化かされた人が正気に戻って、帰ってくる。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされたときのまじない | 狐に化かされると、目隠しされて遠くが見えなくなることがある。遠くが見えないときは、肩を叩けば良い。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされたときのまじない | 股の間から、後ろ向きに石を投げる。狐の化けの皮をはがせる。 | |
狐に化かされたときのまじない | 「アブラオンケンソワカ」と、くりかえし唱える。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされたときのまじない | 「尻尾が見えるぞ」と言う。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 5月5日の端午の節句に、菖蒲をひたした酒を、9月9日の重陽の節句に、菊をひたした酒を飲む。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 煙草を吸う。狐が恐れて逃げ去る。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 狐に化かされそうなときは、さきに「ああ、たまげた」と言う。化かされない。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 三角の銀杏を持ち歩く。化かされない。 | |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 山口では、マッチを持ち歩く。夜道でも化かされない。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 静岡県藤枝市では、石を3つ持ち歩く。野道でも化かされない。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 奈良では、シロレンゲを持ち歩く。化かされない。 | 鈴木,1982 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 夜に山道を歩くときは、親指を握り込む。化かされない。 | |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 旅行中に着物の裾をしばっておく。化かされない。 | |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 両手両足を縮めて爪を隠す。化かされない。 | 経済雑誌社,1890 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 「そうこうや、はたちがかどにもんたちて、とうやひがしは、らんやあららぎ」と唱える。蘭の字を分解し、草冠をソウコウ・ハタチ、門をカド・モン、東をトウ・ヒガシ、蘭をラン・アララギと読み分け、呪者の学識の高さを示すことで、狐を圧倒する。 | 沖野,1920 |
狐に化かされるのを防ぐまじない | 「狐を食ったらうまかった。まんだ奥歯にはさがっている」と唱える。化かされない。 | |
狐に憑かれたときのまじない | 地面にかがんで、棒で薙ぎ払う。 | |
狐に憑かれたときのまじない | 背中に「犬」の字を書いて叩く。 | |
狐の窓 | 狐格子とも。両手の指を複雑に交差させて、窓に見立てる呪術。魔を祓ったり、妖怪の正体を見破ることができる。 | 常光,2003 |
狐の窓 | 狐に騙されたときや狐火を見たときは、狐の窓をつくり、指の隙間から1回または3回息を吹きかける。 | 常光,2003 |
狐の窓 | 狐の窓をつくり「化生のものか、魔性のものか」と3回唱えて、指の隙間から覗き見れば、人に化けた妖怪の正体を見破れる。 | |
狐の窓 | 狐火に遭ったときは、狐の窓をつくり「狐食ってうまかった、しっぽの先は窓にかかった」と唱え、指の隙間から3回息を吹きかける。狐火が消える。 | |
狐の窓 | 愛知県渥美では、狐火に遭ったときは、狐の窓をつくり「そーこーや、あさだがはらに、もんたって、とーやひがしや、らんや、あららん」と唱え、指の隙間から息を吹きかける。 | 常光,2003 |
狐火に遭ったときのまじない | 「ソーコーヤソーコー、安達ヶ原に門立って、トーヤヒガシランラ、アララン」と唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
狐除けのまじない | 「このウリは誰が食うた、オオカミが食うたとキツネがいうた」と唱える。 | 鈴木,1982 |
狐除けのまじない | 「狐くったらうまかった。ちいっとしっぽが、にがかった」と唱える。 | 今井,1982 |
狐除けの歌 | ある夏の夕方、北条氏康が城の高楼で涼んでいると、近くに狐がやって来てしきりに鳴いた。狐が凶事をもたらすのを警戒した氏康は「夏はきつ、ねに鳴く蝉のから衣、おのれおのれの身の上にきよ」と詠んだ。夜が明けて見ると、きのう鳴いていた場所で狐は死んでいた。 | 大月,1902,p.6 |
鬼道 | きどう。呪術の一種と考えられるが、詳細は不明。魏志倭人伝(「三国志」魏書東夷伝倭人条)は、邪馬台国の女王について「名を卑弥呼といい、鬼道につかえ、よく衆を惑わす」と伝えている。 | 魏志倭人伝 倉野,1929,p.272 |
木に登るときのまじない | 「エンヤゴンベ、エンヤゴンベ」と唱えながら登る。 | 倉野,1929,p.272 鈴木,1982 |
祈年祭 | 2月17日に賢所、皇霊殿、神殿の三殿で五穀豊穣を祈る祭礼。 | 宮内庁 |
祈念文 | 安産を願うときは「妙法蓮華経、安楽産福子」と念じるか、声に出して唱える。安産になる。あわせて「南無妙法蓮華経」と唱える。 | 豊島,1998,p.237 |
祈念文 | 咳を止めたいときは「妙法蓮華経、咳嗽除癒」と念じるか、声に出して唱える。咳が止まる。あわせて「南無妙法蓮華経」と唱える。 | 豊島,1998,p.237 |
祈念文 | 障害を掃いたいときは「諸余怨敵皆悉摧滅」と念じるか、声に出して唱える。障害を一掃できる。あわせて「南無妙法蓮華経」と唱える。 | 豊島,1998,p.235 |
祈念文 | 道中の安全を願うときは「有大筋力行歩平正遊行無畏如獅子王」と念じるか、声に出して唱える。災いを避けられる。あわせて「南無妙法蓮華経」と唱える。 | 豊島,1998,p.235 |
祈念文 | 熱が出たときは「樹甘露法雨、滅除煩悩焔、如以甘露灑、除熱得清涼」と念じるか、声に出して唱える。熱が下がる。あわせて「南無妙法蓮華経」と唱える。 | 豊島,1998,p.235 |
キノコを採るときのまじない | アイヌは、マイタケを見つけると周囲の地面に棒きれで輪を描いて囲み、十分に育つと槍を持って突き刺す真似をしてからマイタケを採った。マイタケのことを、樺太では「イソ・カルシ」、北海道では「ユク・カルシ」といい、いずれも「熊きのこ」を意味する。 | 知里,1955 |
木札 | きふだ。木製の、裏に護符の焼き印が押された小さな札。首にかけたり懐に入れておくと、災いを防いだり、事故にあったとき身代わりになって割れる。 | |
きまぶり | 木守りの転。果物を取ったとき、わざと枝に実をいくつか残しておく呪術。これをすれば、翌年もたくさんの実がなる。 | 野村,1926,p.189 |
鬼門 | 丑寅。北東の方角のこと。陰悪の気が集まり、悪鬼が出入りするとされ、不吉な方角として忌み避けられる。延暦寺は、御所の鬼門を守るために最澄が建てたと伝えられ、慈円も「わが山は花の都の丑寅に鬼いる門を塞ぐとぞ聞く」と詠っている。 | 拾玉集 |
鬼門 | 丑寅。北東の方角のこと。陰悪の気が集まり、悪鬼が出入りするとされ、不吉な方角として忌み避けられる。延暦寺は、御所の鬼門を守るために最澄が建てたと伝えられ、平家物語も「この日域の叡岳も、帝都の鬼門にそばだちて、護国の霊地なり」と伝えている。 | 平家物語 |
急々如律令 | きゅうきゅうにょりつりょう。もとは漢代の公文書で使用された慣用句で、「急いで律令のように行え」の意。のちに陰陽師や修験者が、魔除けの呪文として多用するようになった。 | |
牛鬼除けのまじない | 牛鬼に遭ったときは「石は流れる、木の葉は沈む、牛はいななく、馬は吼える」など、逆の言葉を唱える。牛鬼を退けられる。 | 朝里,2022,p.41 |
牛鬼除けのまじない | 出雲大社の護符によって、牛鬼を退けられる。出雲大社の祭神である大国主神が牛鬼を退治したことにちなむ。 | |
九字 | 九字切り、九字護身法。「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら独鈷印、大金剛輪印、外獅子印、内獅子印、外縛印、内縛印、智拳印、日輪印、宝瓶印を結ぶ呪術。一切の病魔を除き、悪魔を降伏させることができる。 | |
九字 | 九字切り。「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら四縦五横に指で宙を切り、「急々如律令」と唱える呪術。一切の病魔を除き、悪魔を降伏させることができる。弁慶は「あらゆる五陰鬼、煩悩鬼、まった悪魔外道死霊生霊、たちどころに滅ぶること霜に煮え湯をそそぐが如し」と評している。 | 勧進帳安宅新関の場 |
牛馬虫止之秘法 | 牛や馬が不調で餌を食ベないときは、椿の葉に「逢坂也、八坂左加奈加、左婆比止津、宜宇伎仁久禮天」、「牛乃虫止武」または「馬乃虫止武」と書き、葉を洗った水を牛馬に飲ませる。餌を食ベる。 | 宮永,1914 |
牛馬虫止之秘法 | 梅の木の南に伸びた枝を取って、牛や馬の背中か腹に向かって「品々物比禮」と書き、「逢坂や、八坂さかなか、さばひとつ、げうきにくれて」、「牛の虫止む」または「馬の虫止む」と詠って、神水を10回勢いよくかける。 | 宮永,1914 |
凶事を避けるまじない | 凶事に遭ったときは、左の歯を36回噛み合わせる。凶事は吉事に転じ、禍は福に変じる。凶事に遭いそうなとき、事前に行なってもよい。 | 高島易断所,1935,p.56他 |
叶の字 | 「叶」と書けば、願いが叶う。 | |
清祓い | きよはらい。罪穢れを払い清める祓いの一種で、通常の神事の前や、災厄を鎮める神事のあとに行なう。 | 豊島,1998,p.285 |
清姫を退けたまじない | 道成寺に蛇体の女が現れた。女は案珍を焼き殺した清姫の亡霊で、寺の僧は五大明王に祈り「謹請東方青龍清浄謹請西方白帝白龍謹請中央黄体黄龍、一大三千大千世界の恒沙の龍王哀愍納受哀愍自謹の身謹なれば、いづくに大蛇のあるベきぞ」と唱えて、清姫の亡霊を退けた。 | 謡曲道成寺 |
漁網祈祷神法 | 大漁になる呪法。諸神を祀り「綿津見の上も高天原なればうじもろともに神や守らん」「あまつかみ大海原に宮居してここもゆたかにこころゆたかに」「千早振大海原に漁るを浦山しとやひとはいふらん」の呪歌を唱え、漁祭祝詞を唱えるなどする。 | 柄沢,1926,p.35 |
嫌いなものが食ベられるようになるまじない | 嫌いなものに向かって、人差し指で「キリキリスタンテコロリン」と書く真似をする。味が甘くなって、おいしく食ベられるようになる。甘いものが嫌いな場合は、我慢して食ベる。 | 健斎居士,1917 竜沢,1937 |
霧を晴らすまじない | 山中や海上で霧が出て、方角が分からなくなったときは、持っておいた梅漬けを懐から取り出す。霧が晴れる。 | |
木を伐採するときのまじない | 沖縄では、山に入る前に「虎三山、縁が人、外山三百三十三巾、中山三百三十三巾、内山三百三十三巾、合して九百九十九巾ぬ内や、大屋、長屋、当らし給んなー、高どうい木にん当らし給んなー」と唱える。良い木が見つかり、怪我なく無事に帰れる。 | 鈴木,1982 |
木を伐採するときのまじない | 伐採してはならない木を切るときは「葉が落ちる、枝が落ちる」と唱えてから切る。 | 鈴木,1982 |
木を伐採するときのまじない | 幌別のアイヌは、山ヘ薪を取りに行ったとき2本の木が絡み合いながら立っているのを見つけると、男女がつかみ合ったまま周囲を6回まわってから、その木を伐り倒した。 | 知里,1955 |
禁厭 | きんえん。鳥獣や虫による害を防ぐ呪法。大己貴命と少彦名命は、国づくりを行なったとき、人間と家畜を病から守るために療病の方を定め、鳥獣と虫による災いを祓うために禁厭の法を定めた。 | 日本書紀 |
釘を踏んだときのまじない | 釘を踏んで怪我をしたときは、金槌で傷口を叩く。 | |
公事難除けのまじない | 「諍訟経官処怖畏軍陣中念彼観音力衆怨悉退散」と、くりかえし唱える。裁判沙汰や戦災を避けられる。 | 西村,1922,pp.53-54 |
籤引き | くじびき。短籍(ひねりぶみ)。紙や木片などを用いて神意をうかがい、物事の吉凶成否を占う呪術。 | |
籤引き | 応永32年、5代将軍足利義量が急死した。父・義持も同35年に危篤になり、義持の弟たちは石清水八幡宮で籤引きをした。義持の死後、籤引きの結果が明かされ、足利義教が6代将軍となった。 | |
籤引き | 斉明天皇4年、謀反を企てた有馬皇子は籤引きを行なって、謀反の成否を占った。蘇我赤兄の裏切りによって有馬皇子は捕えられ、刑死した。 | 日本書紀 |
籤引き | 天正10年5月27日、明智光秀は愛宕神社で籤引きをして、1回目と2回目は凶を引き、3回目に吉を引いた。6月2日、光秀は謀反を起こして本能寺を襲撃し、織田信長は死んだ。 | 信長公記15 |
籤引き | 文政10年、滝沢馬琴の息子・宗伯に縁談が持ち上がった。馬琴が関帝籤を引くと上々吉と出たので、縁談を進め、宗伯と土岐村鉄の婚礼を挙げた。婚礼の翌日、鉄は路(みち)と改名した。 | 高牧,2003,pp.28-29,pp.30-32 |
九字紋 | 横線5本と縦線4本を交差させた、格子模様の魔除けの印。 | 岡田,2007,p.12 |
孔雀明王法 | 孔雀経法。孔雀明王を祀り、降雨、除病、安産などを祈る呪法。修験道の開祖ともいわれる役小角は、孔雀明王の呪法を会得することで、不思議な術を使い、鬼神を使役できるようになったという。清少納言は「孔雀経の読経、五大尊の御修法、熾盛光の読経は、威儀ただしく立派だ」と枕草子に書いている。「オンマユラキランデイソワカ」 | |
孔雀明王法 | 元暦2年、地震が続いたとき、仁和寺の守覚は孔雀経法を行なうよう命じられたが辞退し、かわりに東寺の定遍が修法した。 | 横内,1996 |
孔雀明王法 | 治承3年、平氏と対立していた後白河法皇は、守覚に命じて、孔雀経法と五壇法と如法愛染法を行なわせた。 | 横内,1996 |
孔雀明王法 | 治暦3年、後朱雀天皇の后・禎子内親王は、東宮・尊仁親王のために、性信に命じて孔雀経法を行なわせた。性信は、皇后にとっては異母兄、親王にとっては伯父にあたる。尊仁親王は即位し、後三条天皇となった。 | 横内,1996 |
孔雀明王法 | 承保2年、祈雨のため、東寺の信覚が孔雀経法を行なったが、雨は降らなかった。仁和寺から仏具を借りて、あらためて修法すると、雨が降った。 | 横内,1996 |
孔雀明王法 | 養和元年、後白河法皇は源氏追討のために、仁和寺の守覚に孔雀経法を行なわせた。 | 源平盛衰記源氏追討祈事 |
くしゃみをしたときのまじない | くしゃみをすると命に関わるといわれていた。「くさめくさめ」と唱えれば、災いを避けられる。「休息万命(くそくまんみょう)」が由来といい、古くは「休息万命、急々如律令」と唱えたという。また「糞喰め(くそはめ)」が由来ともいい、古くは「くそくらヘ」と唱えたともいう。清少納言は「くしゃみをしたとき呪文を唱える人が気にくわない」と枕草子に書いている。 | 枕草子 安齋隨筆後編一雑呪 |
くしゃみをしたときのまじない | くしゃみをすると命に関わるといわれていた。京都では「とこまんざい」と唱える。 | NDLレファレンス共同DB |
くしゃみをしたときのまじない | くしゃみをすると命に関わるといわれていた。滋賀県湖北では「おしまん」と唱える。 | NDLレファレンス共同DB |
くしゃみをしたときのまじない | くしゃみをすると命に関わるといわれていた。鹿児島県奄美では、子供がくしゃみをすると、大人が「くすくれー」と唱え、もういちどくしゃみをすると「しーくれー」と唱える。 | NDLレファレンス共同DB |
くしゃみをしたときのまじない | くしゃみをすると命に関わるといわれていた。清水寺に詣でた尼が、しきりに「くさめくさめ」と唱えていた。理由を聞くと、自分が乳母となって育てた公家の子息が比叡山で修行しており、その子がくしゃみをしたのではと思うたびに唱えているのだと答えた。 | 徒然草 |
苦情や争論を避けるまじない | 白紙に「尸曰鬼尸尸急々如律令」と書いて、懐に入れる。 | 高島易断所,1935,p.36 |
九字を戻すまじない | 目をつぶって「チンキリキャラ、ハラハラ、フヨランバ、ソワカ」と一息に3回唱える。 | 佐々木,1910 |
薬玉 | くすだま。菖蒲や蓬、薬草などを玉状に編み、五色の糸で彩った装飾品。宮中では、5月5日の端午の節句に薬玉を身に着けたり柱に飾るなどして、延命長寿を願った。9月9日の重陽の節句に茱萸袋や菊の花飾りと取り換えることもあった。 | 中村,1978,pp.74-75 |
薬を飲むときのまじない | 東に向かい「薬師瑠璃光如来、薬王薬上観世音、神農扁鵲與耆婆、雪山童子諸天醫、療病服薬邪気除、善神扶持諸天護、五臓六府皆調和、四大調順血脉、四百四病悉除滅、壽命長遠娑婆歌」と唱えてから、薬を飲む。 | 二中歴 |
件 | くだん。人面牛体の獣。件を描いた絵図を家に貼ると、家内繁盛し、疫病を避けられ、一切の災禍を免れ、豊作となる。昭和19年頃、四脚の牛のような人が生まれ、終戦と疫病の流行を予言し、梅干しとラッキョウを食ベれば病気にかからないと言って死んだ。 | 島田,2020 |
件 | くだん。人面牛体の獣。件を描いた絵図を家に貼ると、家内繁盛し、疫病を避けられ、一切の災禍を免れ、豊作となる。天保7年、丹波に件が現れた。宝永2年にも現れ、翌年から豊作が続いた。 | 島田,2020 |
口笛 | 口笛を吹くことを古くは嘯き(うそぶき)といい、嘯きを行なって風を吹かせる呪術を風招(かざをぎ)といった。沖縄県中頭郡北中城村では、夕凪で風が止んだときには、大人たちが口笛を吹き、風を吹かせて涼をとった。 | 常光,2003 |
口笛 | 口笛を吹くことを古くは嘯き(うそぶき)といい、嘯きを行なって風を吹かせる呪術を風招(かざをぎ)といった。山幸彦は海幸彦と争ったとき、浜辺で風招を行なって風を吹かせ、波で海幸彦を溺れさせた。海幸彦は、山幸彦に臣従すると誓った。 | 日本書紀 |
靴とばし | 「あした天気になれ」と言いながら、靴を蹴り飛ばして、翌日の天気を占う。落下した靴が、表向きなら晴れ、裏向きなら雨、横向きなら曇りという具合である。 | |
熊除けのまじない | 山中で熊に遭ったとき、アイヌはホパラタしながら「エ・ヌカン・ルスイ・ペ、エ・ヌカン・ルスイ・クス、エ・イキ・プ・ネ・ナンコル、ピリカノ・ヌカル、ピリカノ・ヌカル」と唱えて、難を逃れた。「見たい物を見たくてお前は来たんだろう、よく見よとっくり見よ」の意。 | 北海道出版企画センター,2000 |
茱萸袋 | ぐみぶくろ、しゅゆのふくろ。茱萸嚢。茱萸の実を袋に詰めて、袋の結び口に菊の花や茱萸の枝を挿したもの。9月9日の重陽の節句に柱や壁に飾って邪気除けとし、5月5日の端午の節句に薬玉と入れ替えた。 | 中村,1978,p.125 |
雲切りのまじない | 川や海を渡ったり山に登っているときに、雲や霧が濃くて方角が分からなくなったら、九字を切って「嵐吹く遠山の深霧悪魔降伏御敵退散」と唱える。視界が晴れる。 | 佐々木,1910 |
口祟ベ | くちたベ。悪夢を見たときは「ゆぶぃみちゃんいむぃや、ゐいいむぃのほてぃ、わるさんいむぃやはるばるぬくさぬにとぅまれぃ、いむぃやはるばるぬくさぬぬれぃば」と唱える。「ゆうベ見た夢は、良い夢は残って、悪い夢は原々の草の根に止まれ、良い夢は原々の草のぬれ葉に止まれ」の意。 | 花部,2016 |
車酔いを防ぐまじない | 紙こよりを鼻の穴に入れて、3回くしゃみをしてから車に乗る。酔わない。 | 竜沢,1937 |
黒鬘 | くろみかずら。黒御縵。野葡萄の蔓で作り、魔除けとして髪の上にのせた輪形の髪飾り。イザナギが黄泉国から逃げ出そうとしたとき、イザナミは黄泉醜女を追手にさしむけた。イザナギが黒鬘を投げると野葡萄が生えてきて、黄泉醜女が野葡萄を食ベているあいだに、イザナギは逃げ去った。 | 武田,1956 |
軍勝秘咒 | 南九州に伝わる呪殺法。薩摩藩主・島津斉興の側室・由羅は、息子・久光に家督を継がせるために軍勝秘咒を行ない、正室・弥姫の子・斉彬を呪殺しようとした。嘉永4年、老中・阿部正弘の調停によって、斉興は隠居することになり、斉彬が家督を継いだ。 | 豊島,1998,p.173 |
軍荼利明王法 | 天長元年、守敏が旱魃を引き起こすと、空海は善女龍王を呼び寄せて雨を降らせた。守敏が軍荼利明王法を、空海が大威徳法を行なうと、両明王が射る鏑矢が空中でぶつかり合って鳴りやむことがなかった。空海は自身の死を偽装した。油断した守敏が術を解くと、守敏はたちまち死んでしまった。 | 太平記神泉苑の事 |
軍配 | 軍配うちわ。戦国時代、武将が軍兵を指揮するために用いた道具。敵軍の悪気を占い、自軍の運気を高める呪力があると信じられた。 | |
警察犯処罰令 | 明治41年に制定された内務省令。第2条第17号は、妄りに吉凶禍福を説き又は祈祷、符呪等を為し若しくは守札類を授与して人を惑わしたる者を、拘留又は科料に処すとしていた。根拠の無い迷信を利用し、人の弱みにつけ込んで、心の平穏を害することを取り締まるため制定された。神官や僧侶、易者が宗教上の信仰や哲学的の究理のために祈祷するのは、取締りの対象ではなかった。第2条第18号は、病者に対し禁厭、祈祷、符呪等を為し又は神符、神水等を与え医療を妨げたる者を、拘留又は科料に処すとしていた。迷信によって医師の治療を妨げたり病者が治療を受けるのをやめさせて、人命を害することを取り締まるため制定された。神仏ヘの信仰にもとづいて病者に神水を与えるのは、良俗として認められたので、取締りの対象ではなかった。 | 有光,1930 法曹閣書院,1908 |
警蹕 | けいひつ。神事に際し、先払いが声を上げて魔を祓う呪術。社殿の扉を開閉するときや、神饌を奉げるとき、神体を遷すときなどに、神官が「おお」などと声を上げる作法が知られる。また、天皇や貴人が外出するとき、先払いが声を上げて魔を祓う呪術として行なわれた。清少納言は「警蹕など、おしと言う声が聞こえるのも、とても素晴らしい」と枕草子に書いている。また、後醍醐天皇は「鬼の間のとりゐ障子を入るとき、はいぜんけいひつす。おおといふ」と日中行事に書いている。 | 枕草子 日中行事 中垣,1901,p.12 |
警蹕 | 源高明が夜中に内裏から出たとき、通りがかった辻に、背丈の高い者が3人現れた。3人は、警蹕の声を聞くとうつ伏せ、声が止むと現れたので、高明は先払いに警蹕を続けさせた。3人は、陰陽師が遺棄した式神の霊だった。 | 崔,2017 |
警蹕 | 後一条天皇が踏歌の節会を退席するとき、中将をさしおいて大納言・藤原斉信が警蹕を行なってしまった。権大納言・行成は、斉信の失態を扇に書き付けた。本来、警蹕は近衛の将が行なうものだった。 | 藤本,2018 |
警蹕 | 東大寺の神輿が東寺から戻るとき、久我通基が随身に警蹕をさせた。警蹕をさせたのを源定実がとがめると、通基は「随身の振舞い方は武家の者が知っている」とだけ答えた。悪鬼悪神が恐ろしいから、警蹕をする必要があったのだった。 | 徒然草同人社頭にて警蹕せられし段 |
鶏鳴三声 | 伊勢神宮で遷御の儀を行なうとき、儀式開始の合図として、神職が鶏を真似て「かけこー」と3回唱える。天照大神が天石窟に閉じこもると、世界は闇に包まれて昼夜が区別できなくなった。神々が鶏を鳴かせ、岩戸を開いて大神を外に引き出すと、世界に光が戻った。このことにちなむという。 | |
鶏鳴三声 | 神職が鶏を真似て「かけこー」と3回唱える呪術。天照大神が天石窟に閉じこもると、世界は闇に包まれて昼夜が区別できなくなった。神々が鶏を鳴かせ、岩戸を開いて大神を外に引き出すと、世界に光が戻った。このことにちなむという。 | |
月経の不順を防ぐまじない | 女子が初潮を迎えたときに「月に一度、日は三日」と唱える。月経が不順になるのを防げる。 | |
懸魚 | げぎょ。屋根の破風板につけた彫刻や、透かし彫りの飾り板。火除けのために用いる。 | NDLレファレンス共同DB |
懸想文 | けそうぶみ。京都市の須賀神社で授与される守り札。縁結びや商売繁盛の利益がある。「懸想文」とは、まだ文字を読み書きできる人が少なかった時代に、公家が代筆した恋文のこと。 | 中津川,2010 |
結界 | 聖域と俗界との界(さかい)を結び、魔障が聖域ヘ侵入するのを防ぐ呪法。 | |
月経の不順を治すまじない | 「龍雨」と書く。 | 経済雑誌社,1890 |
結線の法 | 六字経法を修するときに行なう呪法。白糸2本をより合わせて3尺5寸の長さにし、真言を唱えるたびに一つ結び、108結作る。これを7日間続けて21節作ると、願いが成就する。 | |
解毒のまじない | 毒が入っていると疑われる食事が出されたときは、「バザラヤキシャウン」と21回唱える。金剛夜叉明王の霊験によって、毒が消える。 | 豊島,1998 |
解毒のまじない | 毎朝、東に向かって「姑蘇啄摩耶啄(こそたくまやたく)」と3回唱えて、3回唾を吐く。一切の毒が消える。 | 竜沢,1937 |
解毒のまじない | 「オンギャロダヤソワカ」と唱える。迦楼羅天の霊験によって、一切の毒が消える。 | 豊島,1998,p.81 |
解縛法 | 解綱法。「オンキリキャラハラハラフタランバソツソワカ」と3回唱え、「オンバザラドシャコク」と唱えて弾指する。九字の縛り、十字の縛り、不動金縛法を解ける。 | 豊島,1998,p.148 |
見鬼 | けんき。鬼神を見ること、鬼神を見る力のこと。賀茂忠行が祓いの儀式を行なった帰り道、儀式に同席していた息子の保憲が、儀式の最中に現われた恐ろしい姿をしたものは何だったのかと尋ねた。それは鬼神のことで、修行をした陰陽師にしか見えず、わずか10歳の保憲には見えないはずのものだった。 | 今昔賀茂忠行道伝子保憲語 |
元始祭 | 1月3日に賢所、皇霊殿、神殿の三殿で国家国民の繁栄を祈る祭礼。 | 宮内庁 |
堅牢地天法 | 地天法。堅牢地神とも呼ばれる地天を祀り、五穀豊穣や延命長寿を祈り土地の祟りを解消する呪法。国土豊穣を願うときは吉祥天を、土地の造作による祟りを避けるときは弁財天を加えて、修法を行なう。「オンハラチビエイソワカ」 | 田中,2021 豊島,1998,pp.72-73 |
鯉幟 | こいのぼり。5月5日の端午の節句に飾る、吹き流しを鯉の形に似せてつくったのぼり。飾ると、男児は健康になり出世する。 | |
恋人に会うまじない | 恋人の写真を胸に当てて、寝ながら一心不乱に「白妙の袖折り返し恋なればいものすがた夢にし見ゆる」と唱える。恋人に会える。 | |
香水 | こうずい。香を煮出した水、または香を入れた水。祈祷などを行なうとき、祈祷する場所や呪具に振りかけて、穢れを祓い浄めるために用いる。 | |
交通安全のまじない | ハルウララの馬券を持ち歩く。競走馬ハルウララは、引退するまでの113回のレースで、一回も勝利したことがなかった。ハルウララの馬券は当たらないことから、持ち歩けば「車に当たらない」といって買う者がいた。 | 川村,2010,p40 |
口痛をやわらげるまじない | 滝沢馬琴の息子・宗伯が、口痛のせいで眠れずにうめいていた。馬琴が観音咒の札を書いて、年徳合壬の方角ヘ打って祈祷すると、宗伯の口痛はやわらいだ。 | 高牧,2003,p.60 |
強盗が入ったときに目を覚ますまじない | 「寝るぞ根太、たのむぞ垂木、梁もきけ、何事あらば起こせ屋の棟」または「寝るぞ根太、たのむぞ垂木、屋なか竹、何事あらば起こせ屋の棟」と3回唱えて寝る。強盗が入ったときに目が覚める。 | |
公難除けのまじない | 「或遭王難苦臨刑欲寿終念彼観音力刀尋段段壊」と、くりかえし唱える。裁判沙汰や迫害を避けられる。 | 西村,1922,p.53 |
光明真言 | 諸仏菩薩の霊験によって、あらゆる悪を祓い、病を癒し、罪を浄める呪文。「オンアボキャベロシャノウマカボダラマニハンドマジンバラハラバリタヤウン」 | |
口論や訴訟で勝つまじない | 手のひらに「勝」の字を書く。 | 佐々木,1910 |
声かけ水 | 昔は、人が水を汲むときに後ろから声をかけるのは、忌み嫌われた。 | 柳田,1934 |
御縁守 | 鳥取市の宇倍神社で授与される、旧5円紙幣を模した御守。金運上昇の利益がある。明治32年に発行された旧5円紙幣に、前年に再建された宇倍神社の拝殿と、祭神である武内宿祢命がデザインされたことにちなむ。 | 中津川,2018 |
五箇大法 | 国家の大事や特別の異変があったとき国家鎮護のために宮中で行なわれた熾盛光法、七仏薬師法、普賢延命法、鎮将夜叉法の4種の修法に、宮中の息災と国家安泰を祈る安鎮家国法を加えて5種としたもの。 | 豊島,1998,p.120 |
虚空蔵求聞持法 | 求聞持法、虚空蔵菩薩能満諸願最勝心陀羅尼求聞持法。虚空蔵菩薩を祀り、諸仏菩薩の加護を祈る呪法。一切の罪障と苦患を消滅させ、悪趣に堕ちることなく、あらゆる善願を満足させ、記憶力を増幅する。「ナウボウアキャシャギャラバヤオンアリキャマリボリソワカ」 | |
こごえるのを防ぐまじない | 胡椒を炒って焦がしたものを紙に包み、ヘそに当てておく。こごえない。 | |
胡沙吹 | こさふき。息かけ。蝦夷が使った呪術。蝦夷は、敵や猛獣に遭遇したときは、口から霧のようなものを吹き出して身を隠し、難を逃れた。 | 橘,1895,p.60 |
甑落とし | こしきおとし。后妃が出産したあと、後産がとどこおらないように、京都の大原からとりよせた甑を屋根から落とす呪術。甑とは、米を蒸す道具のこと。男子が産まれたときは屋根の南側に、女子が産まれたときは北側に甑を落とす。甑は「腰気」に通じるとも「子敷(胞衣、すなわち胎盤のこと)」に通じるともいう。また、大原(おおはら)は「大腹」に通じるともいう。吉田兼好は「もとは下層社会で始まった習慣である」と徒然草に書いており、その習慣を宮中が取り入れたという。 | 徒然草 |
甑落とし | 安徳天皇が誕生したとき、屋根の南側に甑を落とすベきところ北側に落としてしまい、不吉なことだと人々は言い合った。安徳天皇は6歳のとき、壇ノ浦で水死した。 | 平家物語3公卿揃 |
五色鈴 | 愛知県名古屋市の洲崎神社で授与される、銀杏の実をかたどった土鈴。赤、白、青、緑、黄に塗り分けた5つの鈴を紙紐で結び合わせている。慶長年間、疫病が流行したとき、尾張藩主・徳川義直が五色の神鈴を納めて疫病消除を願ったことにちなむ。 | 畑野,2011 |
五色の糸 | 阿弥陀の手糸とも。臨終のとき、阿弥陀如来像の手から自分の手ヘ、青、赤、黄、白、黒の5色の糸を掛け渡す呪術。5色の糸によって、極楽浄土に導かれると信じられていた。 | |
五字真言 | 五字呪とも。大日如来の霊験を得る呪文。「アビラウンケン」 | |
五字真言 | 五字呪とも。文殊菩薩の霊験を得る呪文。「アラハシャナ」 | |
後七日御修法 | ごしちにちみしほ。毎年1月8日から14日まで、国家安泰を願い、東寺で行われる修法。金剛界曼荼羅と胎蔵曼荼羅の一方を本尊とし、翌年はもう一方を本尊とする。これを交互に行なう。 | 真言宗智山派総本山智積院 |
五十五の団子 | 群馬県館林市では、55歳になった男女は長寿を祝うとともに、中風になるのを避けるために、55個の団子を食ベる。 | NDLレファレンス共同DB |
護身刀守 | 石川県白山市の白山比咩神社で授与される、剣形の御守。諸難除けの利益がある。徳川家光の養女・大姫が4代目加賀藩主前田光高に嫁いだとき持参した守り刀を模したもので、大姫の死後、息子・綱紀が母の冥福を祈って守り刀を奉納したことにちなむ。 | 中津川,2018 |
五大虚空蔵菩薩法 | 法界虚空蔵菩薩、金剛虚空蔵菩薩、宝光虚空蔵菩薩、蓮華虚空蔵菩薩、業用虚空蔵菩薩を祀り、除災と長寿を祈る呪法。「バンウンタラクキリクアク」 | 村山,1984 |
五大虚空蔵法 | 地水火風空の五大虚空蔵菩薩を祀り、智慧と福徳を祈る呪法。承元4年、彗星が現われたとき、道宝が五大虚空蔵法を行なうと、妖星は隠れた。翌月、また彗星が現われたとき、孔雀経法を行なうと、妖星はふたたび隠れた。 | 納冨,2015 |
五大明王法 | 五壇法、五壇の御修法、五大尊の御修法。不動明王、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王の霊験によって国家を鎮護し、朝敵を調伏する呪法。清少納言は「孔雀経の読経、五大尊の御修法、熾盛光の読経は、威儀ただしく立派だ」と枕草子に書いている。 | 枕草子 |
五大明王法 | 円融天皇が病んだとき、良源が五大明王法を行なうと、天皇は回復した。 | |
五大明王法 | 治承3年、平氏と対立していた後白河法皇は、守覚に命じて、孔雀経法と五壇法と如法愛染法を行なわせた。 | 横内,1996 |
五大明王法 | 養和元年、後白河法皇は源氏追討のため五壇法を行ない、房覚に降三世、昌雲に軍荼利、覚誉に大威徳、公顕に金剛夜叉、澄憲に不動明王を祀らせた。 | 源平盛衰記源氏追討祈事 |
五大明王法 | 冷泉天皇が病んだとき、良源が五大明王法を行なうと、天皇は回復した。 | |
木霊送り | こだまおくり。山で伐採した木から、木に宿る木霊を抜いて山に送り返す呪術。木霊を抜いた木で家や船を造ったあとは、その家や船に別の魂を吹き込んだ。 | 高知県,2019 |
五段祈祷法 | 五行説にもとづいて、国家安寧、五穀豊穣、病気平癒などを祈る呪法。五行祭壇を作って五行の神を降ろし、五行行事をおこない、「木火土金水(きひずかみ)の神霊、厳の御霊を幸え給え」などと唱える。 | |
五段祈祷法 | 法華経の霊験によって生霊、死霊、野狐、疫神、呪詛の五種類の災い、すなわち五段の災いを退ける呪法。 | |
言挙げ | ことあげ。自分の意思を、言葉に出して取り立てて述ベること。言葉には霊的な力が宿り、あらゆる運命に影響を与えるといわれていた。柿本人麻呂は「葦原の瑞穂の国は神ながら言挙げせぬ国、しかれども言挙げぞ吾がする、言幸く、ま幸くませと障みなく幸くいまさば荒礒波ありても見む」と詠み、航海の無事を祈って、この歌を遣唐使に贈った。一方、人が言挙げするのは禁忌であることも示唆している。 | 万葉集13 久松,1957,pp.171-172 |
蠱毒 | こどく。巫蠱とも。蠱毒厭魅として、かつて養老律令の賊盗律によって禁じられていた呪術。蛇、蛙、百足、クモなどの蟲を同じ容器に入れて共喰いをさせ、最後に残った一匹を呪術に用いる。財産を得たり、特定の人物を呪い殺すために行われる。 | 養老律令 |
言幸く | ことさきく。旅立つ人の無事を、言葉に出して祈ること。また、その言葉。言葉には霊的な力が宿り、旅中の幸いをもたらすことができるといわれていた。柿本人麻呂は「言幸く、ま幸くませと障みなく幸くいまさば荒礒波ありても見む」と詠み、遣唐使の無事を祈った。 | 万葉集13 久松,1957,pp.171-172 |
ことだま | 来年の良いこと悪いことを、口に出して言うこと。 | 小島,2010 |
言霊 | ことだま。言葉に宿る霊的な力のこと。柿本人麻呂は「しきしまの大和の国は、言霊の、たすくる国ぞ、まさきくありこそ」と詠み、航海の無事を祈って、この歌を遣唐使に贈った。 | 万葉集13 久松,1957,pp.171-172 |
言霊 | ことだま。言葉に宿る霊的な力のこと。山上憶良は「神代より言ひ伝て来らく、そらみつ大和の国は皇神の厳しき国、言霊の幸はふ国と語り継ぎ言ひ継がひけり」と詠み、航海の無事を祈って、この歌を遣唐使の丹比広成に贈った。 | 万葉集5 久松,1957,pp.171-172 |
絶妻之誓建 | ことどわたし。イザナギは、死んだイザナミと再会するため黄泉国を訪れた。イザナギは地上ヘ帰還する途中、黄泉国と地上を行き来する道を大岩でふさいだ。このときイザナギは、追ってきたイザナミに対して絶縁を宣言した。日本書紀は「これを絶妻之誓建という」と伝えている。 | 日本書紀 |
子供の成長を祈るまじない | 「ぬびし、ほでーれぃ、ぬび、ぬーび」と唱える。「伸ばせ、大きくなれ、伸びよ、伸びよ」の意。鹿児島県奄美に伝わるこのような呪文を、タベという。 | 小川,2005 |
子供の夜泣きを止めるまじない | ヘその下に「田」の字を書く。夜泣きが止まる。 | 中村,1935,p.15 |
子供の夜泣きを止めるまじない | 屋根の梁にアワビの殻を挿す。夜泣きが止まる。 | |
子供の夜泣きを止めるまじない | 家の鬼門に曲尺を置いて、「奥山の池のほとりでなく狐、おのれ啼けども、この子なかさん」と書いた紙を、床の間の天井に貼る。夜泣きが止まる。 | 竜沢,1937 |
子供の夜泣きを止めるまじない | 柴の枝を取って4、5寸に切り削り、面を平らにする。削った柴の枝を使って「撥火撥火杖差作神将捉差、夜啼鬼歩殺莫要敬、急々如律令」と朱書した符を、早朝、水に映して、その水を子供に飲ませる。夜泣きが止まる。 | 粟根,1917a |
子供の夜泣きを止めるまじない | 「さるさわ池のほとりのひる狐」で始まる歌を唱える。夜泣きが止まる。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
子供の夜泣きを止めるまじない | 「丙寅」と朱書した紙を枕辺に置く。夜泣きが止まる。 | |
子供の夜泣きを止めるまじない | 「撥火撥火杖差作神将捉差、夜啼鬼打殺莫要敬、急々如律令」と朱書した符を、早朝、汲みたての水に映して、その水を子供に飲ませる。夜泣きが止まる。 | 島袋,1918 |
木の葉猿 | 熊本県玉名市に伝わる、猿の土人形。災難除けや子孫繁栄の御守とされる。養老7年、都の落人が山の土を使って祭礼の道具を作った。余った土を捨てると、怪物が現れて「土を採ってましらの形を作らば幸あらん」と告げたので、ましら(猿)の土人形を作った。このことにちなむ。 | 万造寺,1936 |
こぶができたときのまじない | 「おらが瘤になるな、鳥の瘤になあれ」と唱える。「ぼけ」とは木瓜のこと。 | 今井,1982 |
こぶを治すまじない | 「ぼけぼけぼけ」と3回唱えて、こぶを撫でる。 | 佐々木,1910 |
護法童子法 | 神仏を守護し、付き従う神霊や動物霊を使役する呪法。 | 豊島,1998,pp.160-161 |
独楽 | こま。厚みのある円形の材に心棒をつけ、心棒を中心にして回転させる玩具。宮中では、竹製の鳴り独楽を回し、独楽が発する音によって穢れを清めた。 | |
護摩 | ごま。神仏ヘの供物や香、木札を焼き、諸願成就などを祈る呪法。 | |
こままわし | 独楽回し。正月遊びの一つ。こまをどれだけ長く回せるか競う、長寿比ベという遊びが知られる。 | NDLレファレンス共同DB |
こむらがえりを治すまじない | ボケの木で、ふくらはぎを撫でさする。または、ボケの板をあぶって、ふくらはぎを撫でさする。こむらがえりが治る。 | 経済雑誌社,1890 |
こむらがえりを治すまじない | 「ぼけぼけぼけ」と唱えたあと、ふくらはぎを撫でさするか、念仏を48回唱える。「ぼけ」とは木瓜のこと。 | 青木,1913 椎尾,1920 |
こより | 紙縒。細い紙をより合わせて紐上にしたもの。願掛けのために、こよりを手首に巻きつける呪術がある。 | NDLレファレンス共同DB |
狐狸に化かされるのを防ぐまじない | 「王」の字を書いた紙を懐に入れておく。 | 大高坂,1889 |
狐狸除けのまじない | 右の中指で、左の手のひらに「我是鬼」と書いて、かたく握りしめる。狐や狸の類が近寄ってこない。 | 古屋,1910,p.80 |
転ぶのを防ぐまじない | 瓢箪を腰に付ける。転ばない。 | |
転んだときのまじない | 沖縄県那覇市では、子供が転んだときは、転んだ場所の砂を取り、砂を体に3回付けて「マブヤーマブヤーウーティクーヨー」と唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
転んだときのまじない | 宮城県気仙沼では「あげあまつこ、あげあまつこ」と唱える。 | 気仙沼,1936 |
声繕い | こわづくろい。声作ろい。警蹕(けいひつ)。天皇や貴人が外出するとき、先払いが声を上げて魔を祓う呪術。 | 折口,1944,p.53 |
金剛童子法 | 金剛童子を祀り、怨敵降伏、除病、安産を祈る呪法。「オンキャニドニウンハッタ」 | 豊島,1998,pp.36-37 |
金剛般若経 | 清和天皇のとき、仁寿殿の庇の上にハヤブサが巣を作った。天皇が吉凶を占わせると、物忌するよう陰陽師は奏上した。天皇は相応寺の壱演を呼び、ハヤブサが巣を作った場所で金剛般若経を読ませると、ハヤブサは巣を咥えて飛び去った。 | 今昔壱演僧正誦金剛般若施霊験語 |
金剛般若経 | 清和天皇のとき、太政大臣・藤原良房が重病に罹った。天皇は、仁寿殿の庇の上にハヤブサが巣を作ったのを、相応寺の壱演が一掃したことを思い出した。天皇は壱演を呼び、良房の枕元で金剛般若経を読ませると、良房は回復した。天皇は壱演に権僧正の位を贈った。 | 今昔壱演僧正誦金剛般若施霊験語 |
金剛夜叉法 | 金剛夜叉明王の霊験によって怨敵を調伏し、除災する呪法。天安2年、文徳天皇の死後、惟喬親王と惟仁親王が皇位を争ったとき、惟喬親王は東寺の真済に金剛夜叉法を行なわせた。惟仁親王は延暦寺の恵亮に大威徳法を行なわせて、惟喬親王を調伏した。惟仁親王は即位し、清和天皇となった。 | |
金翅鳥法 | 迦楼羅天を祀り、止雨や除病延命を祈る呪法。 | 豊島,1998,pp.79-80 |
金神の方ヘ行くときのまじない | 赤紙に「西東北十南大向を」と書いて、門前に貼る。災いを避けられる。 | 佐々木,1910 |
サイコロを振るときのまじない | 「しょうさい、しょうさい」と唱える。出目が小さくなる。「しょうさい」とは小賽のことで、「サイコロを振って出る目が少ない」という意。 | 与謝野,1971 |
最上祓い | さいじょうのはらい。大祓詞を奏上する余裕が無いとき用いる、大祓詞を要約した祝詞を最要祓いという。最要祓いをさらに省略した祝詞を、最上祓いという。「高天原天津祝詞の太祝詞を持ち加加む呑んでむ祓え給い清め給う」 | 豊島,1998,pp.289-290 |
災難除けのまじない | 愛媛県上浮穴郡では、災難が迫っているときは「三月三日のモモの花、五月五日のセキショウブ、九月九日のキクの花、いただいておるぞよアビオンケンソアカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
災難除けのまじない | 外出するときは「きしひこそたつかみきはにことのねのとこには春をまつぞ恋しき」と唱える。その日の災難を逃れる。 | 土橋,1922 |
災難除けのまじない | 青森県上北では、春の彼岸中に、木製の刀や杵、トゲのある枝を挟んだ注連縄を、村境の道に張り渡す。 | 青森県 |
災難除けのまじない | 他人の怪我について話すときは「吾が身じゃないが」と前置きしてから話す。同じ怪我を負うのを避けられる。 | |
災難除けのまじない | 他人の怪我や不幸について話すときは「わしじゃないが」と前置きしてから話す。同じ怪我を負ったり不幸に遭うのを避けられる。 | |
災難除けのまじない | 東京都文京区の源覚寺でコンニャクを供える。源覚寺の閻魔堂はこんにゃく閻魔と呼ばれ、困厄に通じるコンニャクを供えれば、閻魔王が災難を肩代わりするという。 | 新倉,1998 |
災難除けのまじない | 宝暦の初め、三河国の矢作川に橋を架けていた人足頭が、川で不気味な人形を拾った。人形が毎夜ひとりでに喋るので恐ろしくなった。老爺から「人形を板に乗せて川上に運び、顔を背けながら流し、後ろを振り返らずに帰れ」と教えられた人足頭は、そのとおりにして難を逃れた。 | 耳嚢3 |
災難除けのまじない | 毎日早朝に、ショウガを一切れ口に含む。旅中に嵐や雨に遭うことがなく、邪気を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
災難除けのまじない | 野山を歩くときは、「不醜」と書いた紙を懐に入れておく。災いを避けられる。 | 椎尾,1920,pp.68-69 |
災難除けのまじない | 旅行するとき、「鬼」の字を全身に書いてから出かける。災いを避けられる。 | 大高坂,1889 |
災難除けのまじない | 旅行するとき、または夜中に出かけるときは、目を閉じてまなじりを指で押さえる。まぶたの裏に金輪が見えるときは難には遭わないが、金輪が見えないときは難に遭うので外出を控える。 | 高島易断所,1935 |
災難除けのまじない | 「ナーマヤーヌウイドー、ナーマヤーヌリィピキドー、ナーマヤーヌツヅドー」と唱えて、杵で3回臼を打つ。「長間家の上だよ、長間家の血族だよ、長間家の屋根の頂だよ」の意。怪我をした夜鳥が、自分を助けた人間ヘの恩返しとして教えた。 | 今林,2021 |
災難除けのまじない | 「四神之御札」と書いた紙を、四方の柱に貼る。一切の災難を免れ、悪魔が家に入り込むのを防ぐ。 | 井上,1891.10 |
災難除けのまじない | 「神世より、うけひまさしきしるしには、いかづちえこず桃の樹のもと」と唱える。災いを避けられる。イザナギが黄泉国から逃げ出そうとしたとき、イザナミは八雷神を追手にさしむけた。イザナギは桃の実を投げて、追いすがる八雷神を退けた。このことにちなむ。 | 秋田県,2015,p.4 |
災難前知法 | 三脈術とも。左手で顎を支えるようにしてて両頬の脈を計りながら、右手で左手首の脈を計る。3ヶ所の脈に乱れがあれば、災難がある。 | 小関,1904,p.5 |
摧魔怨敵法 | 寿永2年、後白河法皇の勅命を受けた勝賢は、平家と木曽義仲を調伏するため転法輪法を修した。 | 平,2018 豊島,1998,p.10 |
摧魔怨敵法 | 転法輪菩薩摧魔怨敵法、転法輪法。一切の悪魔怨敵を調伏する呪法。隣国からの侵略を受けたときや国内で反乱が起こったときに行われる。 | 平,2018 豊島,1998,p.10 |
摧魔怨敵法 | 保元の始め、後白河法皇の勅命を受けた実厳が修して、朝敵を滅亡させた。 | |
最要祓い | さいようのはらい。大祓詞を奏する余裕が無いとき用いる、大祓詞を要約した祝詞。「高天原に神留まり坐す皇親神漏岐神漏美の命以て天津祝詞の太祝詞事を宣れ、此く宣らば罪という罪、咎という咎は在らじ物をと祓え給い清め給うと白す事の由を諸々神の神等に左男鹿の八つの耳を振り立てて聞こし食せと白 | 豊島,1998,pp.289-290 |
倒語 | さかしまごと。言葉の順序を逆にしたり、味方にだけ通じるように暗号を取り決めることと解釈されるが、詳細は不明。神武天皇が帝位についたとき、密命を受けた道臣命が諷歌(そえうた)と倒語を行なって、災いを祓った。 | 日本書紀 |
酒好きを酒嫌いにするまじない | 早朝、藪の中の竹の切り株に露で濡れているものがあれば、その露を取り、朝夕の食事に入れる。これを7日ほど続けると、その人は酒嫌いになり、下戸になる。 | |
酒好きを酒嫌いにするまじない | 藪の中の竹の切り株に露で濡れているものがあれば、その露を紙にひたし、食事の汁の中に入れる。これを7日つづけると、その人は酒嫌いになる。 | 神理研究会,1915,p.287 |
酒に酔うのを防ぐまじない | ヘその上に柿を押しあてる。酒に酔わない。 | |
酒に酔ったときのまじない | 石川県金沢市では、壁にむかって息を吹きかける。 | 常光,2003 |
酒を造るときのまじない | 「なかとみのふとのりことといひはらヘあかふ命もたがためになる」と唱える。 | |
笹飾り | 7月7日の七夕に笹を立て、短冊などをつけた飾り。短冊に願い事を書けば、その願いは叶う。古くは、詩歌や裁縫、機織りや染色といった技能の上達を願った。 | |
笹水かけ | 竹の笹を用いて湯や塩水を振りかけ、邪気を祓う呪術。 | |
坐禅 | ざぜん。あぐらをかいて姿勢を正し、精神を統一する修行法。宇和島藩の城外に、夜ごと火の玉や鬼火が飛び交う断頭場があった。藩は晦厳に調伏を依頼し、晦厳が断頭場に弟子を集めて一晩中坐禅をさせると、怪異はおさまった。 | 豊島,1998,pp.363-364 |
審神者 | さにわ。神託を聞く場所、神託の意味を読み解く人のこと。また、神託を告げた神の真贋や、神託の内容の真偽を判断する人のこと。 | |
審神者 | あるとき仲哀天皇が自ら琴を弾き、武内宿禰が沙庭(さにわ)で神命を請い、神功皇后が神懸かりして、神託を受けた。 | 古事記 |
審神者 | 仲哀天皇9年、神功皇后が自ら神主となり、武内宿禰が琴を弾き、中臣烏賊津使主が審神者となって、神託を受けた。 | 日本書紀 |
左右の手のどちらに物を握っているか当てるまじない | 相手の左右の手のどちらに物を握っているか当てたいときは、思い浮かんだ古い和歌をひとつ詠み、その歌に含まれている「の」の数をかぞえて、偶数なら右、奇数なら左を選ぶ。当たる。 | |
ざる | 笊。細く薄く割った竹で編んだ、平たい容器。2月8日または12月8日のコトヨウカには、悪鬼がやって来るといわれる。玄関や軒先に目籠を置いておけば悪鬼は退散するが、目籠の代わりに、ざるを庭先に高く掲げても良い。 | |
猿に化かされたときのまじない | 狐や狸のように、猿も人を化かすことがある。猿に化かされたときは、葬式をあげる真似をする。葬式を嫌って、猿は逃げ出す。 | 鈴木,1982 |
三角文 | 鋸歯文、連続三角文。隼人の楯に用いられた魔除けの模様。 | 竹森,2015 |
三箇大法 | さんかだいほう。国家鎮護と万民豊楽を祈って行なわれる3種の修法。仁王経法、孔雀経法、守護経法のこと。 | 鍵和田,2015 |
散供 | さんぐ。穢れを祓うために、米や酒を撒く呪術。 | |
散供 | 応和元年、村上天皇が新造した内裏に遷るとき、安倍晴明が反閇と散供を行なった。 | |
散供 | 寛和元年、藤原実資が留守宅に入るとき、陰陽允の県奉平に命じて反閇と散供を行なわせた。 | |
散供 | 天社土御門神道は、五色の紙と大豆を四方に撒く、散紙散供という儀式を伝えている。 | 中日新聞陰陽道で“コロナ払い” |
三十二種成弁秘密法 | 深沙大将を祀り、悪人調伏と外道滅亡を祈る呪法。「ナモラニナタラヤヤナモアリヤバリョキテイタニヤタジャエイジャエイジャヤバケイニジャユタリカラカラバラバラシャラキダサバキャラタラダニメイバチソワカ」 | 豊島,1998,pp.78-79 |
三尸を除くまじない | 三尸とは体内にいて、庚申の夜に天ヘ上り、天帝に人の罪を告げ口して寿命を縮める虫のこと。庚申の夜に「彭侯子、彭常子、命児子、悉入窈冥之中、去離我身」と唱えれば、三尸を体内から除ける。また、「しやむしは、いねやさりねや、わがとこを、ねたれどねぬぞ、ねねどねたるぞ」と唱えれば、寝ても寿命が縮まることはない。 | 豊島,1998,pp.206-208 |
三毒 | 善根を損なう三種の煩悩、すなわち貪欲、瞋恚、愚痴のこと。死霊と生霊はこの三毒に執着しており、呪詛もここから生じるという。 | 豊島,1998,p.230 |
三方陣 | 碁盤目状に数字を並ベ、縦横斜めにどう足し引きしても同じ値になるようにした図形を魔方陣と呼び、1から9までの数字を使った魔方陣を、とくに三方陣と呼ぶ。この三方陣を簡略化した「回」の字に似た図形は、魔除けの印として知られる。 | 岡田,2007,p.14 |
山野に行くときのまじない | 手のひらに「虎」または「龍」の字を書く。 | 二中歴 佐々木,1910 |
シーサー | 沖縄の、家の屋根につけたり門の左右に置く魔除け飾り。 | NDLレファレンス共同DB |
止雨法 | 止風雨法。雨が止むように、あるいは雨が降らないようにする呪法。永保2年、白河天皇のとき、旱魃が起こって、範俊が請雨法を行ない雨を降らせようとした。しかし、範俊と因縁があった義範が、宝楼閣法を行なって雨雲を暴風で吹き散らせたため、雨は降らなかった。 | 納冨,2015 |
シエトゥウイナ・シパルイナ | 魂が飛び出すのを防ぐまじない。アイヌ語で「自分の鼻を押さえる、自分の口を押さえる」の意。ひどく驚いたとき、アイヌは鼻の穴や口から魂が飛び出さないように、左拳を鼻にあて、右拳で口をふさいだ。 | 萱野,1993 アイヌ民族文化財団,2018 |
塩 | 塩には、悪いものや穢れたものを祓い清める力がある。神事である大相撲では、取り組みの前に塩を撒いて、土俵を清める。 | |
鹽拂い | しおはらい。鹿児島県奄美大島では、人が悪霊に憑かれたときは、海水を入れた椀を神前に供えたあと、巫女が呪文を唱えながら、竹の葉で海水を振り散らせる。 | 茂野,1927,p.199 |
四箇大法 | しかたいほう。四箇の大法。国家の大事や特別の異変があったとき、国家鎮護のために宮中で行なわれた4種の修法。熾盛光法、七仏薬師法、普賢延命法、鎮将夜叉法のこと。延暦寺では毎年4月4日から7日かけて、四箇大法のうち一つを行なう。これを御修法大法という。 | 天台宗総本山比叡山延暦寺 |
式神 | 陰陽師が使役する鬼神。識神とも。 | |
式神 | 安倍晴明が寛朝の坊を訪れたとき、居合わせた公達や僧が「式神で人を殺せるか。蛙を殺して見せろ」と言った。晴明は草の葉を摘み取り、呪文を唱えるようにしてから、草の葉を投げた。蛙は葉につぶされて死に、僧たちは恐れて震えた。 | 今昔安部晴明随忠行習道語 |
式神 | 安倍晴明は、家に人がいないときは、式神に板戸を上げ下げさせたり門を開け閉めさせるなどしていた。しかし妻が十二神将という式神をひどく怖がったので、晴明は十二神将を一条戻橋の下に置いて、用事があるときに呼び寄せるようにした。 | 源平盛衰記 |
式神 | 寛和2年、花山天皇の退位を察知した安倍晴明は、急いで奏上の準備をしながら、式神をひとり内裏に先行させようとした。式神が邸宅の門を開けると、都から去ろうとする花山天皇の後ろ姿を見つけ、「たったいま、通り過ぎていきました」と晴明に告げた。 | 大鏡 |
式神 | 蔵人少将の頭上を飛んでいた鳥が、少将に向かって糞を落とした。安倍晴明は、その鳥が式神であると見抜き、少将が呪い殺されないよう、身固を行なった。晴明が少将を抱きしめて一晩中呪文を唱え続けると、逆に、少将を呪い殺そうとした陰陽師が死んだ。 | 宇治拾遺 |
式神 | 藤原道長が飼い犬を連れて法成寺を訪れたとき、犬が立ち塞がった。安倍晴明は、地面の下に呪物が埋められているのに気づいた犬が道長を止めたのだと見抜き、紙を鳥の形にして飛ばして、呪詛した道摩法師の居所を突き止めた。呪詛は藤原顕光の差し金だった。 | 宇治拾遺 |
式神 | 播磨の智徳が安倍晴明の家を訪ねたとき、智徳は二人の童子を連れていた。童子が式神だと見抜いた晴明は、袖の内で印を結び、ひそかに呪文を唱えて、童子の姿を隠した。智徳は晴明を試そうとしたことを詫びて、晴明の弟子になった。 | 大日本史 |
慈救咒 | 不動明王の霊験を得る呪文。中咒。「ノウマクサンマンダバザラダンセンダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン」 | |
試験合格のまじない | 山や川、海で拾った小石を茶碗に入れ、少量の塩と水を入れてかき混ぜ「ベせほらきや」と唱えたあと、願いごとを唱えながら小石に願文を書く。 | 高島易学研究所,2015 |
試験合格のまじない | 梅干しを食ベたあと、洗った種を割って中の実を取り出し、残った殻を金槌で細かく砕いて、赤い袋に入れて身に付ける。 | 高島易学研究所,2015 |
四股 | しこ。地踏み、地固め。力士が土俵の上で片足を高く上げて、土俵を強く踏みしめる所作。地中の邪気を祓い、土地の神霊を鎮め、豊作などを祈願するために行なう。 | |
持禁 | じごん。杖刀を持ち、呪文を唱え、気を禁じ、猛獣虎狼毒虫精魅賊盜五兵の災いを防ぎ、また呪禁法によって身体を固くし、熱湯や刀剣によって傷つかないようにすること。解忤(かいご)と併せて、呪禁師が掌った。 | 新村,1974 |
獅子頭守 | ししがしらまもり。板獅子とも。神奈川県の鎌倉宮で授与される、板材で作られた御守。色が真っ赤に塗られ、上下に揺らすと音が鳴り、邪気を祓い、幸福招来や交通安全の利益がある。護良親王が戦いに赴くとき、兜の中に獅子頭の御守をしのばせたことにちなむ。 | 畑野,2011 |
獅子舞 | 魔障を祓うため、大きな獅子の頭の被り物をかぶって舞い歩く、神楽の一種。 | 宮内庁 |
志々虫が鳴いたときのまじない | 「志々虫は、ここにはな鳴きそ唐母が死にし塚戸に行きて鳴きをれ」または「志々虫よ、いたくな鳴きそ唐人の死にし塚瀬に行きて鳴きをれ」と唱える。志々虫(ししむし)の詳細は不明だが、その鳴き声は、死に深く関わると解される。 | 二中歴 |
死者に供物を捧げるときのまじない | 精神を統一し心を穏やかにし、死者の名前を呼んで「早馳風の神、取り次ぎ給え」と唱える。かならず供物が届く。 | 豊島,1998,p.292 |
死者を生き返らせたまじない | 日蓮が生家に帰ると、重病だった老母が息絶えていた。日蓮が「此経則為閻浮提人病之良薬若人有病得聞是経病即消滅不老不死」と、法華経の一節を唱えて浄水を施すと、母は生き返った。 | 宮川,2011 |
熾盛光法 | しじょうこうほう。熾盛光仏頂如来を祀り、国家安寧を祈り天変地異を鎮める呪法。清少納言は「孔雀経の読経、五大尊の御修法、熾盛光の読経は、威儀ただしく立派だ」と枕草子に書いている。 | 枕草子 |
熾盛光法 | 康安元年、地震が起こったとき、尊道が禁裏で熾盛光法を行なうと、地震が止まった。 | 納冨,2015 |
地震が起きたときのまじない | 沖縄県那覇や石垣では「きょうつか、きょうつか」と唱える。 | 朴,2016 |
地震が起きたときのまじない | 高知では「かはかは」と唱えた。 | 朴,2016 |
地震が起きたときのまじない | 「きゅろちか、きゅろちか」と唱える。きゅろちかは経塚のこと。鹿児島県奄美に伝わるこのような呪文を、クチという。 | 小川,2005 |
地震が起きたときのまじない | 「まんざいらく、まんざいらく」と唱える。地震の被害を免れる。 | |
地震が起きたときのまじない | 「マンヂヤラク、マンヂヤラク」と唱える。 | 柳田,1935 |
地震が起きたときのまじない | 「世なおし世なおし」と唱える。 | 朴,2016 |
地震が起きたときのまじない | 「万歳楽万歳楽(まんざいらくまんざいらく)」と唱える。 | 秋田県,2007 |
地震が起きたときのまじない | 「揺り直せ揺り直せ」と唱える。 | 朴,2016 |
地震が起きたときのまじない | 「揺るぐとも、よもや抜けじの要石、鹿島の神のあらん限りは」と唱える。地震の被害を免れる。茨城県の鹿島神宮にある要石は、地震を引き起こす大鯰の頭を押さえていると伝えられる。 | 豊島,1998,p.287 |
地震除けのまじない | 「棟は八つ、門は九つ、戸はひとつ、身はいざなぎの内にこそすめ」と書いた札を、門柱に貼る。 | 朴,2016 |
地蔵菩薩法 | 地蔵菩薩を祀り、あらゆる福徳を祈る呪法。「オンカカカビサンマエイソワカ」 | 豊島,1998,pp.105-106 |
死体が動くのを防ぐまじない | 猫が人の死体をまたぐと、死体が動き出すといわれる。死体の枕元や胸元に鎌や鉈、小刀などの刃物を置けば、猫が死体をまたぐことはない。また、死体の上に箒を置いておけば、猫がまたいでも死体が動くことはない。 | 鈴木,1982他 |
死体が動いたときのまじない | 猫が人の死体をまたぐと、死体が動き出すといわれる。猫がまたいで死体が立ち上がったときは、箒で叩けば、死体はもとどおりに倒れる。 | 宮武,1925 |
七五三 | 11月15日に数えで3、5、7歳の子供を祝い、氏神に詣でる行事。宮中で行われていた髪置、袴着、帯解といった儀礼を、江戸時代に武家や有力商人が取り入れ、明治期に庶民にまで広まったもの。 | 小池,2017 |
七仏薬師法 | 善名称吉祥王如来、宝月智厳光音自在王如来、金色宝光妙行成就王如来、無憂最勝吉祥王如来、法海雲雷音如来、法海勝慧遊戯神通如来、薬師瑠璃光如来の霊験によって諸病を癒し、害毒を退ける呪法。 | |
七仏薬師法 | 用明天皇のとき、当麻皇子は七仏薬師法を行なって英胡、軽足、土熊の3人の鬼を討った。 | 福知山市 |
七仏薬師法 | 養和元年、後白河法皇は源氏追討のため、延暦寺の明雲に七仏薬師法を行なわせた。 | 源平盛衰記源氏追討祈事 |
七里結界 | 7里四方に結界を張り巡らせて、悪鬼邪神の侵入を防ぐ呪法。延暦7年、最澄は比叡山を開くとき、七里結界を施したという。 | 貴志,1893 |
七里結界 | 弘仁8年、空海は嵯峨天皇から下賜された高野山を開くとき、七里結界を施して一切の悪鬼を退けたという。 | |
地鎮々壇法 | 地鎮々壇合行法。地鎮法と鎮壇法の、2つの呪法を合わせて行なう合作法。地鎮法と鎮壇法の手順を一部省略して行なうため、地鎮法と鎮壇法を別々に行なうのが正統とされる。 | 別所,2017 |
地鎮土公供法 | 鎮土法、地鎮法、地鎮祭法。上棟、屋固、火伏、方違を行ない、邪気陰悪を祓い、諸神諸仏を祀り、家宅の長久と家族の繁栄を祈る呪法。 | 水野,1983 |
地鎮法 | 伽藍や家屋などを建造する前に、結界を施し、地天と土地にまつわる諸神諸霊を祀り、、障害や災害が起こらないよう祈る呪法。「オンハラチビエイソワカ」 | 別所,2017 |
歯痛をやわらげるまじない | 「虫はこれ口難の虫帰り来たって我が牙をはむ、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
歯痛を止めるまじない | 7日間、六地蔵参りをする。 | 高田,1937 |
歯痛を止めるまじない | そろばんを使って648を自分の年齢で割り、「この虫歯の痛むの治すベし、さすれば元の如く掛けてやる」と唱えて、そろばんを人目の付かない場所に置いておく。痛みが消えたら、そろばんを元に戻す。「648」は「虫歯」の語呂合わせ。 | 榊原,1910 |
歯痛を止めるまじない | 銀杏を焼いて、歯でくわえる。 | 鈴木,1982 |
歯痛を止めるまじない | 山梨県富士吉田市では、板にすベての歯の絵を描いて、痛む歯の絵に釘を打ち込む。 | 根岸,1991 |
歯痛を止めるまじない | 蛇の抜殻に向かって「葬ってやるから歯痛を止めてくれ」と念じる。 | 宮武,1925 |
歯痛を止めるまじない | 節分の炒り豆を歳の数だけ紙に包み「この豆が芽を吹くまで痛まぬように」といって、土中に埋める。 | 愛媛県,1984 |
歯痛を止めるまじない | 東に向かって伸びている桃の枝を取って削り、楊枝にして、痛む歯に「南」の字を3回書き、楊枝をくわえて「アビラウンケンソワカ」と3回唱える。 | 井上,1931 |
歯痛を止めるまじない | 奈良県磯城郡では、全体の歯並びの様子を絵に描き、絵の痛む歯の部分に釘をあてて居間の高いところに打ち付ける。または、絵の痛む歯の部分を切り抜いて焼き捨てる。 | 高田,1937 |
歯痛を止めるまじない | 奈良県吉野郡下市町では、刃物を研ぎながら「伊勢の国二見が浦のはまき草切りて捨つれば流れゆくかな」と唱え、痛むところを切る真似をする。また、東吉野村では、紙に「備前国川口村嘉右衛門ノ家内」と書いて、門戸に貼る。 | 根岸,1991 |
歯痛を止めるまじない | 頬に手を当てて、一心に「アビラウンケンソワカ」と3回唱える。ある老婆が「油桶ソワカ」と言い間違えたが、それでも歯痛が止まった。「味噌桶ソワカ」「酒徳利ソワカ」と言い間違えても歯痛が止まった。信心さえあれば、呪文の効き目が失われることは無い。 | 井上,1898,pp.120-121 |
歯痛を止めるまじない | 裏に「文」の字がある寛永通宝を文銭という。文銭を鋳潰して作った指輪をはめて弘法大師を念じれば、歯痛に悩まされない。寛文8年に発行された文銭は、地震で倒壊した方広寺の大仏を鋳潰して造られたと噂され、大仏銭とも呼ばれた。文銭には衆生済度の利益があるといわれた。 | 長谷川,1978 |
歯痛を止めるまじない | 「秋風は冬の初めに吹くものよ。秋過ぎて冬の初めに下枯れの霜枯れ竹には虫の子もなし。アビラウンケンソワカ」または「秋風は冬の初めに吹くものよ。秋過ぎて冬の初めの下枯れの霜枯れ竹には虫の子もなし。アビラウンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 日文研怪異・妖怪伝承DB |
歯痛を止めるまじない | 「小野小町、九九九夜の鐘は虫歯の根を止めておくかな、アビラウンケンソワカ」と3回唱えて、帯の形に紙をたたんで歯で噛む。 | 笹,1972,p.544 |
歯痛を止めるまじない | 「天竺の御殿の前のつたかずら、横に切れ、縦に切れ、アビラウンケンソワカアビラウンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
歯痛を止めるまじない | 「馬千匹」と書いた紙を、他の紙で包んで「アビラウンケン、ソアカ」と3回唱えながら、釘で柱に打ち付ける。 | |
歯痛を止めるまじない | 「馬千匹」と書いた白紙で、患部をさすったあと、紙を釘で柱に打ち付ける。 | 星,1932,pp.46-47 |
痔になるのを防ぐまじない | 和歌山では、青竹の筒にミョウガの花を入れて密封し、長押に上げておく。 | 根岸,1991 |
紫微鑾駕 | しびらんか。北極紫微大帝に家の守護を願う呪文。北極紫微大帝は、北極星を神格化した道教の神。沖縄では「紫微鑾駕」と書いた呪符は、防火の護符とされる。 | NDLレファレンス共同DB |
四方拝 | 元日の未明、神嘉殿南庭に造った仮屋で、天皇が、伊勢神宮など四方の神社と歴代天皇の山陵を遥拝し、天下泰平と万民の幸福を祈る儀式。 | 宮内庁 |
四方魔切 | 東、南、西、北の順で、四方に向かって魔切を行なう呪術。 | |
注連縄 | しめなわ。藁縄に紙垂をつけたもの。多くの場合は結界に用いられ、神域を定め浄めて、悪鬼の侵入を防ぐ。古くは、しりくめ縄といった。 | |
邪気加持法 | 護身法で身を固め、病者の五臓に五大明王を観じたうえで、病者の背後で慈救咒を唱え、首、肩、両足の指に五鈷杵をあてて、順に100回、逆に100回加持をする。追いつめられた憑依霊が病者の足の小指から出るので、つかまえて結界に封じ込める。 | 宮家,2012 |
邪気除けのまじない | 10月の亥の日に餅を食ベる。諸々の邪気を祓える。 | |
邪気除けのまじない | 1月にカシの木の実を酒に入れて飲む。諸々の邪気を祓える。 | |
邪気除けのまじない | 火打石で切り火をし、あるいは大麻で祓い、「神火清明、神水清明、神風清明」と3回唱える。邪気や妖気を浄められる。 | 豊島,1998,p.289 |
邪気除けのまじない | 緊急のときは「神火清明、神水清明、神風清明」と3回唱える。邪気や妖気を浄められる。 | |
邪気除けのまじない | 正月元旦に「立春大吉日」と書いた紙を、門ごと扉ごとに貼る。邪気を祓える。 | |
邪気除けのまじない | 竹や豆、栗を火で焼いて破裂させる。激しい音が悪鬼邪霊を驚かせ、追い祓う。 | |
邪気除けのまじない | 転居するときは、多年草のオモトを新居に持ち込んでから、家具を運び入れる。邪気を避けられる。 | 高島易断所,1935,p.49 |
邪気除けのまじない | 桃の木の、11月まで落ちずに枝に残った実を取って、家の中にかけて置く。諸々の邪悪を除き、一切の祟りが家に入り込まなくなる。 | |
邪気除けのまじない | 桃の木の、枝でも板でもいいから、門戸にかけて置く。諸々の邪悪を除き、一切の祟りが家に入り込まなくなる。 | |
邪気除けのまじない | 桃の木の、東南に伸びた枝を切り削って杭にして、家の四隅に打ち込む。または、枝を切り削って釘にして、家の四方の地面に打ち込む。諸々の邪悪を除き、魔や穢れを祓い、一切の祟りが家に入り込まなくなる。 | 富岡,1935,p.28 中村古峡,迷信 |
邪鬼除けのまじない | 平家蟹の甲羅を、戸口に掛ける。 | 鈴木,1982 |
錫杖 | しゃくじょう。鳴杖、声杖とも。先端に金属製の輪形を付け、その輪形にさらに小さな環を通して、動かすと音が鳴るようにした杖。音を鳴らすことで蛇や毒虫の害を防ぎ、煩悩を除く。 | |
しゃちほこ | 鯱鉾。鯱鉾瓦、鯱瓦とも。想像上の動物である鯱をかたどった瓦細工。火災除けのために、城の天守の屋根などに用いた。 | |
しゃっくりを止めるまじない | 家の近所にある寺の名を、5つか6つ、近い順に唱えながら水を飲む。しゃっくりが止まる。 | |
しゃっくりを止めるまじない | 空に大きく「天」の字を書く。しゃっくりが止まる。 | |
しゃっくりを止めるまじない | 口を大きく開けて、口中の左側に「宗」の字を3回書く。しゃっくりが止まる。 | 八浜,1899 |
しゃっくりを止めるまじない | 指先に唾をつけて、鼻筋を撫でる。しゃっくりが止まる。 | |
しゃっくりを止めるまじない | 手のひらに「柿」の字を書いて、3回舐めるか、飲む真似をする。しゃっくりが止まる。 | 鈴木,1982他 |
しゃっくりを止めるまじない | 手のひらに「急々如律令」と書いて、下から舐める。しゃっくりが止まる。 | |
しゃっくりを止めるまじない | 手のひらに「犬」の字を3回書く。しゃっくりが止まる。 | 高島易断所,1935 中村,1935,p.11 |
しゃっくりを止めるまじない | 茶碗に水を入れて、茶碗の上に箸を一本渡して、水を3口飲む。または、湯呑に水を入れ、湯呑の上に箸を十文字に乗せて「箸の下の水」と唱えてから水を飲む。 | 根岸,1991 八浜,1899 |
しゃっくりを止めるまじない | 冷水の中に「寺」の字を3回書いて、3口飲む。しゃっくりが止まる。 | 中村古峡,迷信 |
しゃっくりを止めるまじない | 「ころがきころがき」と3回唱える。しゃっくりが止まる。ただし、人に教えると効果がなくなる。 | 鈴木,1982 |
しゃっくりを止めるまじない | 「休息萬命如律令、くさめくさめ」と唱える。しゃっくりが止まる。 | 八浜,1899 |
しゃっくりを止めるまじない | 「法性寺入道前関白太政大臣様」と一息に3回唱える。しゃっくりが止まる。 | 井上,1931 |
蛇の目 | じゃのめ。ヘビの目をかたどった、円形の魔除けの印。 | |
邪霊除けのまじない | 心身を浄め、邪霊にとり憑かれている病者に向かって「アチメ、オーオーオー」と力強く大声で唱えたあと、声に出さず「登ります、トヨヒルメが御霊ほす、もとはカナホコ、すえはキホコ、もとはカナホコ、すえはキホコ」と黙唱する。 | 豊島,1998,p.288 |
じゃんけんで勝つまじない | 手のひらにシワを寄せて、できたシワの数で、ぐー、ちょきー、ぱーのどれを出すか決める。勝つ。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
十一面観音法 | 十一面観音を祀り、除病などを祈る呪法。天平8年、疱瘡が流行した。病に苦しむ民を哀れんだ聖武天皇は、泰澄に十一面観音法を行わせた。 | 清水谷,1927 |
衆怨悉退散 | 観音経の一節。源平合戦で生け捕りにされた平盛久を護送した土屋三郎は、「衆怨悉退散」という呪文には、敵が射た矢を防ぐ力があると語った。斬首される前夜に盛久が観音経を読むと、刑に使われる刀が折れるという奇跡が起こったので、源頼朝は盛久を放免した。 | 謡曲盛久 |
十字の秘術 | 海や川を渡るときは、左の手のひらに「龍」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。水難を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 橋を渡ったり船に乗ったりするときは、左の手のひらに「龍」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。水難を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 原野や山林に行くときは、左の手のひらに「虎」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。猛獣に襲われず、狐狸や妖魅を退ける。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 酒宴に出席するときは、左の手のひらに「水」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 勝負事をするときは、左の手のひらに「勝」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。勝つ。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 訴訟をするときは、左の手のひらに「勝」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 毒入りかもしれない料理や酒を飲食するときは、左の手のひらに「命」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 売り買いするときは、左の手のひらに「勝」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。得する。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 病者を見舞うときは、左の手のひらに「是」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 目上の人の前に出るときは、左の手のひらに「天」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。失敗を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字の秘術 | 夜に外出するときは、左の手のひらに「王」と書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
十字秘密の法 | 「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える。怨敵を調伏するときは「散」の字を加える。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十字秘密の法 | 「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える。外出するときは「行」の字を、川や橋を渡るときは「龍」の字を、野山に行くときは「虎」の字を加える。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十字秘密の法 | 「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える。合戦に向かうときは「命」の字を加えた。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十字秘密の法 | 「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える。人込みに混じるときは「水」の字を加える。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十字秘密の法 | 「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える。病者を見舞うときは「鬼」の字を加える。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十字秘密の法 | 「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える。目上の人に対面するときは「天」の字を加える。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十字秘密の法 | 「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える。問答勝負をするときは「勝」の字を加える。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十字秘密の法 | 九字護身法の一種。「臨兵闘者皆陣列在前」と唱えながら種々の印を結び、最後に一文字を加えて唱える呪術。飲食するときは「王」の字を加える。 | 秘術研究館,1917,p.140 |
十念 | 念仏を10回唱えること。一ノ谷の合戦で平敦盛を討ち取った熊谷直実は、出家して蓮生を名乗り、合戦跡を訪れた。草刈男に頼まれて十念を授けると、男は敦盛の化身であることをほのめかして姿を消した。その夜、敦盛の霊が現われて、弔いにつとめている直実はもはや敵ではないと告げた。 | 謡曲敦盛 |
十念 | 念仏を10回唱えること。浄土宗では普段の勤行として行われ、除災招福や天下泰平などを祈るときにも行なわれる。むかし陣僧と呼ばれた従軍僧は、合戦の最中に戦場を駆けまわり、瀕死の重症者に最後の十念を授けて極楽に往生するよう願った。 | 大山,2009 豊島,1998,p.335 |
呪歌を防ぐ呪歌 | 奄美では、人をおとしめるサカ歌を歌われたときは「だまが歌うたいや、歌やれば聞きゅしが、鶏ぬ卵なてぃが、しむるいちゃまし」と歌って、災いを避ける。「おまえの歌っている歌は、まともな歌であれば聞いてやるが、鶏の卵にたとえれば腐れた卵のようなものだ」の意。 | 奄美学,2005 小川,2005 |
呪歌を防ぐ呪歌 | 鹿児島県奄美では、人をおとしめるサカ歌を歌われたときは「松原岳ぬ後な、くたんび木ぬあんてぃさ、うり取てぃ艫切らが舟はじ乗してぃやらせ」と歌って、災いを避ける。「松原岳の後ろに朽ちた木があるから、それを取って艫のない舟を作って乗せてやれ」の意。 | 奄美学,2005 |
呪歌を防ぐ呪歌 | 鹿児島県大島郡徳之島町徳和瀬では、人をおとしめるサカ歌を歌われたときは「吾んや和瀬しぎょうぬ生れ水産湯だあぬしまぬ出じてん負ける相や無し」と歌って災いを避ける。「私は和瀬の聖なる川の水を産湯に使ったからどこの村の者が出てきても負けることはない」の意。 | 奄美学,2005 |
呪禁 | じゅごん。まじないをして、祟りや災いを祓うこと。呪禁師が掌った。 | 大日本国語辞典 |
数珠 | 多くの珠を糸や紐でつないで輪状にしたもの。仏を拝んだり念仏を唱えるときに、手にかけて用いる。もともと、念仏などを唱えた回数を数えるために使われた。念珠とも。 | |
呪詛 | 安康天皇3年、大泊瀬皇子と御馬皇子は帝位を争い、御馬皇子が襲われた。御馬皇子は処刑されるとき、井戸を指さして「この水は百姓のみただ飲むことを得む。王はひとり飲むことあたはじ」と呪詛した。大泊瀬皇子は即位し、雄略天皇となった。百姓(ひゃくせい、おおみたから)とは庶民のこと。 | 日本書紀 |
呪詛 | 延喜3年、醍醐天皇の后・藤原穏子は東五条殿で出産に臨んだが、難産で苦しんだ。兄・時平が陰陽師に占わせると、厭魅している者がいると分かり、東五条殿の板敷きの下で、梓弓に歯を立てて呪詛している老婆を見つけた。老婆を引きずり出すと、穏子は無事、保明親王を産んだ。 | 檜垣,1994 |
呪詛 | 寛永18年、美濃の文秀という僧が女犯の禁を破り、そのことを吹聴された。怒った文秀は、人形を作って節々を刀で突き刺し、吹聴した者を呪い殺した。7日後、文秀は狂気にとりつかれ、地面から剣が突き出て草木も剣に変じる幻覚を見るようになったので、牢に引き籠った。 | 鈴木,1911 |
呪詛 | 呪い釘。近衛天皇が17歳で病死し、藤原頼長が呪詛したと噂された。口寄せされた天皇の霊は「何者かが愛宕山の天公像の目に釘を打ち、そのために死んだ」と告げ、住僧は「5、6年前の夜中に誰かが釘を打付けた」と証言した。頼長は「愛宕山に天公像があるとは知らなかった」と疑惑を否定した。 | 豊島,1998,p.187 |
呪詛 | 神功皇后が、百済の貢物が新羅に比ベて少ない理由を使者に尋ねた。百済の使者は「日本に来る途中、道に迷って新羅人に捕らえられ、殺されそうになった。天に向かって呪詛すると、新羅人は呪いを恐れて殺すのをやめて、貢物を奪うと私たちを逃がした」と話した。 | 日本書紀 |
呪詛 | 仁賢天皇11年、平群真鳥の専横に怒った小泊瀬稚鷦鷯尊は、大伴金村に命じて真鳥の居宅を兵で包囲した。真鳥はあらゆる塩を指さして呪詛し、殺された。しかし真鳥は、敦賀の海の塩だけ呪詛し忘れていたので、天皇はこれを食すようになった。小泊瀬稚鷦鷯尊は即位し、武烈天皇となった。 | 日本書紀 |
呪詛 | 地上に降りた天孫ニニギに、大山祇神は二人の娘を使いに出した。天孫は醜い磐長姫を避け、美しい木花開耶姫を妻にして、木花開耶姫は一夜で身籠った。恥じた磐長姫は「顕見蒼生(うつしきあおひとくさ)は木の花の如くに、にわかにうつろひて衰ヘなむ」と呪詛し、人は短命となった。 | 荒川,2008 |
呪詛 | 豊臣秀吉の発願により建立された方広寺は、地震で大仏殿が倒壊し、慶長17年に息子・秀頼が再建した。しかし同19年に完成した梵鐘の「国家安康」「君臣豊楽」という銘文が、徳川家康の家と康を切り裂いて豊臣氏を繁栄させようとする呪詛であると天海らに追及され、豊臣氏は滅ぼされた。 | |
呪詛 | 他者に災いをもたらしたり、命を奪うまじない。咒詛。厭魅とともに、かつて養老律令の賊盗律によって禁じられていた。 | 養老律令 |
呪詛 | ある日、藤原道長は兄・道兼と双六遊びをしていると、あぐらをかいている道兼の足の裏に「道長」と書いてあるのに気づいた。道兼は出世争いで弟に敗れることを恐れて、道長を踏みつけにして歩いていたのだった。 | 檜垣,1994 |
呪詛 | 永禄11年、上杉謙信は戸隠山の顕光寺に参詣して、謙信を呪詛する武田信玄の願文を見た。謙信は「弓箭とる身の恥なり」と信玄を嗤い、願文を末代の宝物にするよう神職に言い残して立ち去った。 | 牛山,2016 金子,1912 |
呪詛 | 厭術。藤原時平らは勅命を偽り、陰陽寮の官人に菅原道真を呪詛させ、都の八方の山野に雑宝を埋めて厭術を行なった。しかし道真を呪詛したことで、かえって時平らが短命になり子孫も衰えた。 | |
呪詛 | 厭魅。用明天皇2年、穴穂部皇子が押坂彦人大兄皇子と竹田皇子と皇位を争ったとき、中臣勝海は押坂彦人大兄皇子と竹田皇子の像をつくり、2人を呪詛した。 | |
呪詛 | 嘉保2年、源義綱が比叡山の円応を殺害した。人々が義綱を訴えようとすると、関白・藤原師通が妨害した。人々は日吉七社の神輿を振上げ、般若経を7日読んで、師通を呪詛し、仲胤は「関白殿に、鏑矢一つ放ち当てたまヘ。大八王子権現」と祈った。 | 平家物語1願立 |
呪詛 | 寛永5年、出羽山形藩主・鳥居忠政が死んだ。忠政は領内の寺社と対立して領民からも恨まれていたので、立石寺の円海の呪詛によって死んだともいわれた。 | NDLレファレンス共同DB |
呪詛 | 寛弘6年、高階光子は、一条天皇の后・藤原彰子と敦成親王を呪詛するため円能らに厭符を作らせたとして、捕えられた。のちに敦成親王は即位し、後一条天皇となった。 | |
呪詛 | 仁安元年、西光父子の讒言によって、天台座主・明雲が伊豆に配流された。人々は、父子の名字を書いて金毘羅大将像の左足に踏ませ、「十二神将七千夜叉、時刻をめぐらさず、西光父子が命を召し取りたまヘや」とわめき叫んで、父子を呪詛した。 | 平家物語2座主流 |
呪詛 | 正暦4年、三条天皇の東宮妃である藤原済時の娘・せい子が懐妊したとき、藤原師輔の猛霊が現れた。師輔の猛霊は、兄・実頼の子孫を滅亡させるため、生前に陰陽術を行なって呪詛していたのだ、と語った。 | |
呪詛 | 藤原道長が飼い犬を連れて法成寺を訪れたとき、犬が立ち塞がった。安倍晴明は、地面の下に呪物が埋められているのに気づいた犬が道長を止めたのだと見抜き、呪詛した道摩法師を捕えさせた。呪詛は藤原顕光の差し金だった。 | 宇治拾遺 |
呪詛掻祓之秘法 | 魔切を行ない、桃の枝を持って念力を込め、願主の顔に向かって鬼の字を書き、最後の点を人形に打ち付けて神歌を唱える呪法。 | 宮永,1914 |
呪詛送り出しの法 | 四辻で魔切を行なって「思ひ知れ、己と為せる災ひも、野辺の煙と立ち消ヘにけり」と詠い、人形を焼き捨てる。 | 宮永,1914 |
呪詛送り出しの法 | 昔は、川岸や海辺で魔切を行なって「思ひ知れ、おのれと為せる災ひも、解けて流れて瀬々の白浪」と詠い、人形を後ろ手に投げ込んで流した。 | 宮永,1914 |
呪詛返し | 呪い返し。誰かに呪詛されたときは「しかしくま、つるせみの、いともれとおる、ありしふゑ、つみひとの、のろいとく」または「天切る、地切る、八方切る、天に八違い、地に十の文字、秘音、一も十々、二も十々、三も十々、四も十々、五も十々、六も十々、ふっ切って放つ、さんびらり」と唱える。呪いをそのまま返せる。 | 豊島,1998,pp.291-292 |
呪詛除けのまじない | 大威徳明王の明咒によって、他人からの呪詛を避ける呪術。三鈷印を結んで「オンシュチリキャラロハウンケンソワカ」と唱える。呪詛は避けられ、悪人は近寄らず、悪夢も吉夢になる。 | |
呪詛を止めた歌 | ある狂歌師が、目を描いた絵が稲荷社の神木に釘で打付けられているのを見つけた。狂歌師が「眼を書いて祈らば鼻の穴二ツ、耳でなければきく事もなし」と、呪詛を皮肉る歌を書付けると、翌日、耳を描いた絵が打付けられていた。「眼を耳にかヘすがヘすも打つ釘の、聾程も猶きかぬなり」と書付けると、翌日、藁人形が打付けられていた。「稲荷山きかぬ祈りに打つ釘も糠にゆかりの藁の人形」と書付けると、翌日から呪詛は止んだ。 | 伴,1887,p.79-80 |
出行大事 | 外出するとき、如来拳印を結び、「一切方諸、皆是吉祥、無有遍際、離障礙故、如風於空、一顧無礙」と唱える。諸神の加護を得て、凶方はすベて善方に変わる。 | 豊島,1998,p.160 |
出世鈴 | 京都市の出世稲荷神社で授与される土鈴。稲荷社を勧請した羽柴秀吉にあやかったもので、開運出世や延命長寿などの利益がある。 | 畑野,2011 |
酒呑童子を封じたまじない | 最澄の呪法によって比叡山を追い出された酒呑童子は、大江山ヘ移り住んだ。しかし今度は空海に呪詛され、法力によって封じられたので、酒呑童子は逃げ去って葛城山に身を隠した。 | |
呪縛 | ゆはひ。他者を縛り付けて、身動きできなくするまじない。まだ都が平城京だったとき、ある男が、托鉢する僧を怒って殴ろうとした。男に捕まった僧は我慢できず、男を呪縛した。男は倒れて、狂って走りまわり、そのすきに僧は遠くヘ逃げ去った。 | 日本霊異記上悪人の乞食の僧を逼して、現に悪報を得し縁 |
呪縛 | 他者を縛り付けて、身動きできなくするまじない。役行者が、吉野の金峯山と葛城山に橋を架けるよう鬼神に命じたとき、金峯大神は従った。しかし葛城の一言主神は従わなかったので、怒った行者は一言主神を呪縛した。いまもその戒めは解かれていないという。 | 日本霊異記上孔雀王の呪法を修持して異しき験力を得、以て現に仙と作りて天を飛びし縁 脊古,2019 |
呪縛 | 役行者が、吉野の金峯山と葛城山に橋を架けるよう鬼神に命じたとき、葛城の一言主神は従わなかった。怒った行者は一言主神を呪縛し、7めぐりの葛で谷底に縛りつけた。泰澄が解縛しようと加持し、3めぐりまで葛の戒めを解いたが、空から叱責する声がして、元通りに呪縛されてしまった。 | 本朝神仙伝 脊古,2019 |
守敏が行なったまじない | あるとき桓武天皇が手を洗おうとすると、水が凍っていた。守敏が結火印を結ぶと、たちまち氷が解けて湯になった。不思議に思った天皇は火鉢で炭を焼き、障子を立て廻らせて部屋中を暑くしてみた。守敏が向水印を結ぶと、たちまち火が消えて冷たい灰になった。 | 太平記神泉苑の事 |
呪符 | 災厄を退けるために作られた札。万寿3年、後一条天皇の后・藤原威子が出産のため藤原兼隆邸に移ったとき、安倍晴明の息子・吉平が、威子の居室の四隅の柱に護りのための呪符を打付けた。 | |
准胝観音法 | 准胝法。准胝観音を祀り、知恵増大、安産、除難、滅罪などを祈る呪法。「オンシャレイシュレイジュンテイソワカ」 | 豊島,1998,pp.126-127 |
准胝観音法 | 醍醐天皇のとき、安産を祈って聖宝が准胝法を行ない、后・藤原穏子は寛明親王と成明親王を産んだ。寛明親王は即位して朱雀天皇に、成明親王は村上天皇になった。 | 豊島,1998,pp.126-127 |
請雨経法 | 請雨法、祈雨法。神泉苑などで諸大龍王を祀り、降雨を祈る呪法。 | 納冨,2015 |
請雨経法 | 永延元年、旱魃が起こったとき、六大寺の僧を東大寺に集めて請雨法を行なわせた。翌日、暴雨が降り、大仏殿に落雷があった。 | 納冨,2015 |
請雨経法 | 永保2年、旱魃が起こったとき、範俊が請雨法を行なって雨を降らせようとした。しかし、範俊と因縁があった義範が宝楼閣法を行ない、雨雲を暴風で吹き散らせて妨害したので、雨は降らなかった。 | 納冨,2015 |
請雨経法 | 寛仁2年、旱魃が起こったとき、摂政・藤原頼道が仁海に神泉苑で請雨法を行なわせ、安倍晴明の息子・吉平が五竜祭を行なうと、雨が降った。仁海は生涯で7回請雨経法を行い、すベて雨が降ったので、「雨の僧都」などと呼ばれた。 | 田中,1987 納冨,2015 |
請雨経法 | 承和元年、旱魃が起こったとき、覚成が神泉苑で請雨法を行なうと7日目に龍が現われて、雨が降った。 | 納冨,2015 |
請雨経法 | 正嘉元年、旱魃が起こったとき、円照が般若心経と千手陀羅尼を読むと雨が降った。 | 納冨,2015 |
請雨経法 | 貞観8年、旱魃が起こったとき、安慧が神泉苑で請雨法を行なうとその夜に神竜が現われ、大雨が降った。清和天皇は安慧に僧正位を授けようとしたが、安慧は固辞した。 | 納冨,2015 |
請雨経法 | 天長元年、旱魃に頭を悩ませた淳和天皇は、空海に神泉苑で請雨法を行なわせたが、雨は降らなかった。空海は、守敏が龍神を水瓶に封じ込めて旱魃を引き起こしたと見抜き、守敏の手から逃れていた善女龍王を呼びよせて雨を降らせた。 | 太平記神泉苑の事 |
請雨経法 | 天禄3年、旱魃が起こったとき、元杲が神泉苑で請雨法を行なった。チガヤで作った竜を池に投げ入れて加持すると、その竜は天に昇って、雷鳴が響きわたり、暴雨が降った。 | 納冨,2015 |
消災咒 | 消災妙吉祥陀羅尼。除災や疫病退散を祈る呪文。「ノウマクサマンダボダナンアバラチカタシャシャナナンタニャタオンギャギャギャキギャキウンウンジンバラジンバラハラジンバラハラジンバラチシュタチシュタジッチリシュチリソハタソハタセンジキャシリエイソワカ」 | 石川,1993 |
定心真言 | じょうしんしんごん。六字大明呪とも。観音菩薩の霊験を得る呪文。「オンマニハンドマウン」 | |
小説が上手くなるまじない | 幸田露伴と森鴎外は、樋口一葉の『たけくらベ』を読んで深く感心し「小説が上手くなるまじないとして『たけくらベ』の中の5、6字を水に浮かベて凡庸な人間に飲ませてやりたい」と褒めた。まじないが実際に行なわれたのか、まじないに効果があったのかは不明。 | 宮本,1952,p.280 |
小道 | 厭符、呪符の類。僧尼令によって、僧や尼が用いることが禁じられ、違反者は還俗させられた。 | 中島,2017 |
招福のまじない | トカゲを見かけたら、いなくなる前に「トカキリ見た、まんがよし」と3回唱える。運が良くなる。 | 鈴木,1982 |
招福のまじない | 正月三が日のあいだ、毎日スベリヒユを食ベる。 | 鈴木,1982 |
招福のまじない | 摂津国に住む男が、西宮の戎三郎と比叡山の三面大黒天に、富貴になりたいと祈った。すると、吉日を選んで勧請せよと神託があった。男が注連縄を張って家内を浄めると、恵比寿と大黒天がやってきて、自分たちの来歴を語って聞かせ、舞い踊り、宝を与えて、男は富貴となった。 | 野村,1926,pp.307-310 |
招福のまじない | 大黒天と恵比寿の、二神の木像を作って安置したり、絵を描いて壁に掛ける。大黒天は大国主神と、恵比寿は事代主神と同一視されることがある。 | 三橋,2002 |
招福のまじない | 毎晩寝る前に「豊かなる御代に生まれしこのからだ、降り積む君が深き恵みを」と唱える。生涯、きれいな服を着て、おいしいものを食ベられるようになる。 | 健斎居士,1917 |
招福のまじない | 「七難即滅七福即生」と唱える。 | 三橋,2002 |
招福のまじない | 「笑門」と書いた紙を門戸に貼る。もともとは「蘇民将来子孫家之門」の呪文を略して「将門」と書いたが、乱を起こして討たれた平将門に通じて不吉とされたので、かわりに「笑門」と書くようになったという。 | 北野,1933-1935,p.120 |
招福のまじない | 「笑門来福」と書いた紙を門戸に貼る。 | 三橋,2002 |
勝負を決めるときのまじない | 手のひらに「王」の字を書く。 | 佐々木,1910 |
菖蒲 | しょうぶ。水辺に群生する多年草。葉の形が剣に似ており、邪気を斬り祓う力がある。その香りは邪気を退ける。蓬といっしょに軒先に吊るしたり、風呂に入れるなどする。清少納言は「5月の節句で、菖蒲や蓬の香りが混ざり合うのは趣深い」と枕草子に書いている。 | 枕草子 |
菖蒲の枕 | 5月5日の端午の節句に、枕の下に菖蒲の葉を入れて寝れば、邪気を祓える。菖蒲は葉の形が剣に似ており、邪気を斬り祓う力がある。その香りは邪気を退ける。 | 中村,1978,pp.64-65 |
菖蒲湯 | 5月5日の端午の節句に菖蒲の葉を入れた風呂に入れば、健康長寿になる。菖蒲は葉の形が剣に似ており、邪気を斬り祓う力がある。その香りは邪気を退ける。 | 中村,1978,p.64 |
成仏するまじない | 臨終のとき、外縛二火蓮葉印を結び、「オンロケイジンバラアランジャキリク」と3回唱える。かならず成仏する。 | 豊島,1998,p.172 |
暑気除けのまじない | 笠をかぶり、上から水を浴びながら「菅笠にかけたる水をかけたれば火は火と消えてかえす白玉、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
暑気除けのまじない | 笠をかぶり、上から水を浴びながら「天竺のごんどの川の水よんで、しみさせ給え、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
食膳につくときのまじない | 「箸とらば天地御代の御恵、主や親の恩を味はヘ」と唱える。 | |
食中毒を防ぐまじない | 食事の前、飲食物に向かって「バザラヤキシャウン」と7回唱える。金剛夜叉明王の霊験によって、食中毒を防げる。 | |
諸天護衛一切歓喜成就法 | 諸天を代表する帝釈天を祀り、除災と勝利を祈る呪法。「ノウマクサンマンダボダナンインドラヤソワカ」 | 豊島,1998,pp.65-66 |
諸難除けのまじない | 平家蟹の甲羅を、家の四方に懸けて置く。邪気、悪鬼、祟り、病などが家に入るのを防げる。 | 日本神霊教会,1919 |
諸難除けのまじない | 夜に子供を抱いて外出するときは、紅で子供の額に「犬」の字を書いておく。狐狸怪猫の害を避けられる。 | |
諸難除けのまじない | 「クリクリテイナー、ウドウドテイナー、ドコドコテイナー、クダクダテイナー、ジャビトビトテイナー、クダコクダコテイナー、ウシューウシューテイナー、ヤビジャナービジャナーテイナー、ドコダクダク、ソワカ」と唱える。女難、色情、剛欲、慢心、我慢、乱暴がなおる。 | 陽新堂主人,1928 |
諸難除けのまじない | 「衆生彼困厄無量苦逼身観音妙智力能救世間苦」と、くりかえし唱える。災いを避けられる。 | 西村,1922,p.53 |
諸難除けのまじない | 「寝るぞ寝太たのむぞ垂木、梁も聞け、何ごとあらば起こせ屋の棟」と唱える。火難や盗難などの変事が起こっても、すぐに目が覚める。 | 根岸,1991 |
諸難除けのまじない | 「大雷神、雲雷鼓製電降南無太政威徳天神如律令、大鬼神、降雹樹大雨」と書いた符を持ち歩く。怪我をしない。符を家内に貼れば、雷を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
諸難除けのまじない | 「念彼観音力火坑変成池波浪不能没刀尋段々壊能伏災風火普明照世間」と唱える。火難、水難、剣難、風難を避けられる。 | |
諸難除けのまじない | 「立春大吉日」と書いた紙を、門ごと扉ごとに貼る。災いを退ける。 | 大高坂,1889 |
女難除けのまじない | 小さな元三大師を33体描いた豆大師の護符を用いる。元三大師・良源は美男子で、良源が御所を出入りすると、女官らが追いかけ回すようになった。良源は豆粒ほどの大きさの鬼に変じて、女官から逃げ回った。このことにちなむ。 | 豊島,1998,pp.131-132 |
諸病平癒のまじない | 「九は頭、五七肩に、二六腰、一三足に、四腹、八つ股」と3回唱える。重症も軽快に向かい、軽症はたちまち平癒する。日本武尊に同行していた磐長が武蔵に留まり、多くの病者を癒したことにちなむ。 | 如舟堂主人,1930 |
如法尊勝法 | 釈迦如来の頭頂部の盛り上がりを神格化した仏頂尊を祀る呪法を尊勝法といい、宝珠を本尊として行なう尊勝法を如法尊勝法という。元弘元年、尊円が如法尊勝法を行なうと、後醍醐天皇は隠岐に流され、剣璽を奪還した光厳天皇は都に帰還した。尊円は、光厳天皇の叔父にあたる。 | 三崎,1964 |
如法仏眼法 | 仏の眼を神格化した仏眼仏母を祀り、息災や増益を祈り悪鬼を教え導く呪法を仏眼法といい、宝珠を本尊として行なう仏眼法を如法仏眼法という。建久6年、後鳥羽天皇の后・九条任子の安産を祈って、慈円が如法仏眼法を行なった。 | 三崎,1964 |
如法仏眼法 | 仏の眼を神格化した仏眼仏母を祀り、息災や増益を祈り悪鬼を教え導く呪法を仏眼法といい、宝珠を本尊として行なう仏眼法を如法仏眼法という。建仁3年、後鳥羽上皇の息災を祈って、慈円が如法仏眼法を行なった。 | 三崎,1964 |
除魔治病法 | 軍荼利明王の霊験によって、諸病を癒す呪法。「オンアミリティウンハッタ」「オンバザラサッタウンジャク」 | 豊島,1998,p.39 |
白刃捕呪文 | 丹田(ヘその下のあたり)に意識を集中して「天勝速日眞神心(てんしょうそくじつしんしんしん)と3回唱える。白刃取りができる。 | |
しりくめ縄 | 端出之繩、尻久米縄。注連縄(しめなわ)を意味する古語。天照大神が天石窟に閉じこもったのを手力雄神が引っぱり出したとき、中臣神と忌部神が端出之繩を張り巡らして、大神が石窟に戻れないようにした。 | 古事記 日本書紀 |
死霊を成仏させるまじない | 般若心経などを唱えて供養したあと「死霊を切りて放てよ梓弓、引き取り給え経の文字」と唱える。昭和30年、和歌山にある寄宿舎で亡霊騒ぎが起こったとき、遍照寺の住職・井上龍雄が読経供養し呪歌を唱えると、騒動が治まった。亡霊の正体は、水害の被災者たちだった。 | 豊島,1998,p.13 |
針灸をするときのまじない | 「天師天醫来守護、我當針灸疾病除、悪神悪精風冷毒、飲食不調百気毒、消除急々如律令」と唱える。 | 二中歴 |
心切 | しんきり。芸者が用いた、隠し挿しの簪。いやな客を早く帰らせたいと思ったときは、かもじ(付け髪)にそっと逆さに挿し換える呪術を行なった。 | はの字,1912 |
辛苦を忘れるまじない | 朝夕に「愉快愉快」と300回ずつ唱えながら散歩する。 | 健斎居士,1917 |
神語 | しんご。出雲大社に祀られている大国主神の霊験を得る呪文。「幸魂奇魂守給幸給(さきみたまくしみたままもりたまえさきはえたまえ)」 | |
神水 | 神前に供えられた水。神聖な水。履中天皇のとき、諸国に疫病が流行して多くの民が死んだので、物部伊美伎連が病気の鎮滅と患者の救済を命じられた。伊美伎連は諸国を巡って諸神を祭り、患者に神水を与えて癒した。伊美伎連が与えた神水は、神の影が映った御影水だった。 | 宮永,1911,pp.199-201 |
神仙秘密護身術 | 護身十字の秘術。川や湖を渡るときは右の手のひらに「水」と書き、海を渡るときは「龍」と書く。 | 秘術研究館,1917,pp.141-142 |
神仙秘密護身術 | 訴訟や売買をするときは、右の手のひらに「勝」と書く。 | 秘術研究館,1917,pp.141-142 |
神仙秘密護身術 | 大酒飲みに会いたいときは、左の手のひらに「除」と書く。 | 秘術研究館,1917,pp.141-142 |
神仙秘密護身術 | 病者を見舞うときは、右の手のひらに「呪」と書く。 | 秘術研究館,1917,pp.141-142 |
神仙秘密護身術 | 目上の人に対面するときは、左の手のひらに「天」と書く。 | 秘術研究館,1917,pp.141-142 |
神仙秘密護身術 | 野山に行くときは右の手のひらに「虎」と書き、夜中に出歩くときは「王」と書き、旅行するときは「道」と書く。 | 秘術研究館,1917,pp.141-142 |
神仙秘密護身術 | 立身出世を願うときは、毎朝、右の手のひらに「上」と書く。 | 秘術研究館,1917,pp.141-142 |
新宅作法 | 延暦13年、長岡京から平安京ヘ遷都するとき、災いを防ぐため、新宅作法が行なわれた。 | 中島,2017 |
新宅作法 | 元慶元年、陽成天皇が東宮から仁寿殿に遷るとき、新宅作法を行なった。 | 中島,2017 |
新宅作法 | 鎮新居之法、新宅之礼、新宅儀、厭法、移徙法。新造の邸宅に移るときに、陰陽師が災いを防ぐために行なった一連の作法、儀式。 | |
新宅作法 | 天徳4年、村上天皇が冷泉院に遷るとき、新宅作法を行なった。 | 中島,2017 |
神伝十字の法 | あやしい場所や、さびしい場所に行くときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「大」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 悪人と対峙するときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「王」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 海や川を渡るときや船に乗るときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「龍」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。水難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 航海するときや渡船するときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「天」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。災いを避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 狩りに出かけるときや深山に登るときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「虎」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。猛獣や毒蛇に襲われない。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 酒宴に出席するときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「水」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 祝言や慶事のときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「曰」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。安泰となる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 勝負事をするときや売り買いするときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「勝」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。勝ち、得する。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 訴訟をするときや変事に対応するときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「王」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 毒入りかもしれない料理を食ベるときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「命」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 病者を見舞うときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「大」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 風雨の中を出かけるときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「龍」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。難を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
神伝十字の法 | 目上の人の前に出るときは、男は左手、女は右手で刀印を結んで「天」と宙に書き、心のなかで「日月」の2字を念じる。失敗を避けられる。 | 高島易断所,1935 |
水字貝 | スイジガイ。ソデボラ科に分類される巻貝。鹿児島や沖縄では、スイジガイを戸口に置いたり、軒に吊るしたりして、妖怪が家に入るのを防ぐ。 | 人文機構,2017 |
水字貝 | スイジガイ。ソデボラ科に分類される巻貝。和歌山では、スイジガイを軒に吊るして、火難を避ける。 | 鈴木,1982 |
水晶を用いる占い | 四角い水晶を4つ用意し、水晶のひとつには四面それぞれに天照皇大神、素戔嗚命、思兼神、神武天皇と掘りつける。水晶を左手に2つ、右手に2つ握りしめて投げ転がし、4つの水晶の位置から吉凶を占う。 | |
水天法 | 諸龍王の主である水天を祀り、降雨や止雨、航海の安全を祈る呪法。「タニヤタウダカダイバナエンケイエンケイソワカ」「アウマクサンマンダボダナンバルナヤソワカ」 | 豊島,1998,pp.86-87 |
水難除けのまじない | 川に入るときは「いにしヘの約束せしを忘るなよ、川立つ男、氏は菅原」と唱える。水難を避けられる。 | |
水難除けのまじない | 川や海を渡るときは、白紙に「朱」の字を書いて懐に入れておく。水難を避けられる。 | 佐々木,1910 |
水難除けのまじない | 川を渡るときは、手のひらに「土」または「上」の字を書く。水難を避けられる。 | 武揚軒,1921他 |
水難除けのまじない | 川を渡るときは「ひょうずヘよ、ちぎりしことを忘るなよ、川たつおのこ、氏は菅原」と唱える。水難を避けられる。 | 土橋,1922 |
水難除けのまじない | 川を渡るときは「土」または「朱」の字を書いた紙を懐に入れておく。水難を避けられる。 | |
水難除けのまじない | 「或漂流巨海龍魚諸鬼難念彼観音力波浪不能没」と、くりかえし唱える。水難を避けられる。 | 西村,1922,p.52 |
水難除けのまじない | 「霜柱、氷の屋根に雪の桁、雨の垂る木に露のしぶきぞ」と書いた紙を門戸に貼る。水難を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
菅原道真の霊を退けたまじない | 延暦寺の法性坊を、菅原道真の霊が訪ねた。道真は、自分を陥れた藤原時平らを祟るのを妨害しないように言い、ザクロを噛み砕いて吐き出すと、炎となって燃えた。法性坊が落ち着き払って灑水の印を結んで大日如来の真言を唱えると、炎は消え、道真の霊も消え失せた。 | 太平記 謡曲雷電 |
菅原道真の霊を退けたまじない | 菅原道真の霊が雷神となって内裏を襲ったとき、延暦寺の法性坊が呼び寄せられた。法性坊が法華経普門品を唱えると、内裏の上空を覆っていた黒雲が晴れた。しかし法性坊が油断した途端、ふたたび黒雲が立ち込めて雷鳴がとどろき、電光が内裏をかけ廻った。道真は雷をあやつって暴れまわったが、それでも法性坊にだけは手が出せない。法性坊は千手陀羅尼を唱えて、ようやく道真を屈服させた。帝が道真に天満大自在天神の神号を贈ると、恨みが晴れた道真は飛び去った。 | 太平記 謡曲雷電 |
鈴 | すず。金属や陶器でつくられた球体で、中を空洞にして小さな玉を入れ、振ると音が鳴るようにした道具。音を鳴らすことで邪気を退け、穢れを祓う。 | |
すそのはらヘ | 呪詛の祓ヘ。ずそのはらヘ。式神によって呪われたとき、災難にあわないよう呪いを解くこと。清少納言は「おしゃベりが上手な陰陽師と河原に出て、すそのはらヘをしてもらうのは気持ちが良い」と枕草子に書いている。 | 枕草子 枕草子春曙抄 |
頭破七分九字 | ずはしちぶんくじ。「妙法蓮華経頭破七分」と唱えながら四縦五横に指で宙を切る呪術。人にとり憑いて離れない悪鬼邪神の頭を砕き割って、退散させる。 | 豊島,1998,p.266 |
諏訪神伝如意のまじない | 「みなかたの神の御力さづかれば、いのらんことの、かなはぬはなし」または「野ベにすむ、けだものまでも、えにしあれば、くらきやみぢも迷はざらまし」と唱える。何事も成就する。 | 如舟堂主人,1930 |
生業を繁盛させるまじない | 毎朝、日の出の方向に向かって「金伯五金の気を呼び、全家の軸となる。百幸千福、金箋に集まり、五方化徳、大皓金神、願わくば留まらんことを。奇一天心、奇増万全」と唱える。自然に生業が繁盛し、金銭に困ることがなくなる。 | 豊島,1998,p.200 |
晴明桔梗紋 | 桔梗紋。五芒星形の魔除けの印。 | 岡田,2007,pp.4-6他 |
青面金剛降魔歓喜秘密法 | 青面金剛を祀り、四魔調伏を祈る呪法。「オンデイバヤキシヤバンダバンダカカカカカソワカ」 | 豊島,1998,p.87 |
セーマンドーマン | ドーマンセーマンとも。海女が用いる魔除けの印。セーマンは五芒星形で、晴明桔梗紋に似ており、ドーマンは横線5本と縦線4本を交差させた格子模様で、九字紋に似ている。 | 野村,1986 |
是界坊を退けたまじない | 中国の天狗の首領である是界坊が、愛宕山の太郎坊とともに比叡山を襲った。天狗たちは、慈恵の法力にからめとられ、余慶の火界咒と、深禅の不動真言によって打ちのめされた。是界坊は中国に逃げ帰った。 | 今昔震旦天狗智羅永寿渡此朝語 謡曲是界 |
折刀止弾の妙法 | 「あめつちをしろしめす、おおみかみ、なおひの神の守る身は、まがつひの弾もそれ、刃も折れん、いざ進め進め」と唱えながら歩き進む。銃で撃たれても弾は当たらず、刀剣で斬りかかられても刃が折れる。 | 柄沢,1916,p.42 |
背守り | せまもり。背縫い。子供の着物の背中につける、色糸の飾り縫い。大人の着物の背には縫い目があり、この「目」が、背後から襲いかかる魔物を退けるとされた。しかし子供の着物は後身頃が一枚布で縫い目が無いことが多いため、魔除けとして背守りを縫い付けた。家紋などの紋様を縫い付けたものは、背紋縫とも呼ばれる。縫い付ける針の数によって、十二針縫とも呼ばれる。 | 高田,1937 腮尾,2008 |
背守り | せまもり。背縫い。子供の着物の背中につける、色糸の飾り縫い。子供が健康に育つよう願いを込めて、あるいは魔除けとして縫い付ける。沖縄ではマブヤーウーとも呼ばれる。 | NDLレファレンス共同DB |
善悪を知るまじない | 対面した相手が善人か悪人か知りたいときは、目を閉じ、相手の本心が分かると念じながら「神火清明、神水清明、神心清明、神風清明、善悪応報、清濁相見」と唱える。相手の善悪を感知できる。 | 豊島,1998,p.290 |
千手陀羅尼 | ある人が病気にかかった。あまりに苦痛が激しく、周囲も打つ手が無く困り果てた。無住がやって来て、病者の傍らで千手陀羅尼を唱え続けると、病者も陀羅尼を唱えて起き上がり、回復した。 | |
千手陀羅尼 | 佐太夫の子供が大病になり、どんな治療も効果が無かった。ひとりの童子がやって来て千手陀羅尼を唱えると、病が癒えた。童子は観音菩薩の化身だった。 | 西国観音縁起集 |
千手陀羅尼 | 千手千眼観自在菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼。千手観音の霊験を得る呪文。 | |
千手陀羅尼 | 目を患った桓武天皇が「仏法の威力で私の眼病を癒せ」と勅命を出した。報恩がやって来て千手陀羅尼を唱えると、天皇の眼病は回復した。 | |
占筮 | 筮竹を使って吉凶を占うこと。地相と併せて、陰陽師が掌った。 | 令義解 |
膳祓いのまじない | 「じんベさま、じんベさま、てぃに、とぅてぃ、みたれば、あかもんがいをどや、てんたろ、さねんたろが、さんずうさんのはで、いちまっわ、まわして、たもるよう、なむあみだぶち」と唱える。食事での害を防げる。鹿児島県奄美に伝わるこのような呪文を、クチという。 | 小川,2005 |
早朝に目が覚めるまじない | 寝る前に、左の手のひらに「大」の字を3回書いて、舌で舐める。早朝に目が覚める。 | |
相場で利を得るまじない | 市場に行ったら南に向かい、他人に見られないように天井に向かって左指で六芒星を描き、その中に戌の字を書き、戌の字の最後の点を打たずに「南無大金剛明最勝王経」と10回唱える。利を得られる。 | 伊東,1896 |
相場で利を得るまじない | 身を浄め、心を正し、両手を膝の上に置いて「西東、北や南にませぬきて、中に立ちたる駒ぞ止まる」と3回唱えて市場に行く。利を得られる。 | 伊東,1896 |
草木国土悉皆成仏 | 狐の物の怪である玉藻前は、正体を見破られて都を追われた後、殺生石に変じて近づく生き物を殺し続けた。玄翁和尚は、殺生石の精に「草木国土悉皆成仏と聞けば心が無い木や石も成仏できる」と語り、それを聞いた殺生石の精は、今後は悪事をしないと誓った。 | 謡曲殺生石 |
草木国土悉皆成仏 | 旅の僧が摂津国芦屋を訪れると、鵺の亡霊と出会った。僧が「一仏成道観見法界、草木国土悉皆成仏、有情非情皆共成仏道」と唱えて、鵺の亡霊を供養すると、鵺の亡霊は月とともに消え去った。 | 謡曲鵺 |
諷歌 | そえうた。ある言葉の意味を隠して、別の言葉に言い換えたり、他のことになぞらえて歌うことと解釈されるが、詳細は不明。神武天皇が帝位についたとき、密命を受けた道臣命が諷歌と倒語(さかしまごと)を行なって、災いを祓った。 | 日本書紀 |
触穢 | そくえ。穢れは接触によって伝染するといわれていた。甲の家に穢れがあるとき、甲の家を乙が訪れると乙と乙の家族が穢れる、乙の家を丙が訪れると丙だけが穢れる、乙が丙の家を訪れると丙の家族も穢れる、丙の家を丁が訪れても丁が穢れることはない、と延喜式に書かれている。 | 延喜式 |
賊人に立ち向かうときのまじない | 手のひらに「王」の字を書く。 | 二中歴 |
訴訟に勝つまじない | 3寸四方の白紙に「人司日日合鬼急々如律令」と書いて、懐に入れておく。勝つ。 | 佐々木,1910 |
袖のぞき | 袖の下から、ものを覗き見る呪術。ふだん目に見えない妖怪の類も、袖のぞきを行なえば、その姿を見ることができる。 | |
太一真君と交感するまじない | 「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、宇内八方ごほうちょうなん、たちまちきゅうせんを貫き、玄都に達し、太一真君に感ず、奇一奇一たちまち感通、如律令」と唱えると、邪気や瘴気が一掃され、多大な力を得られる。太一真君とは、天地の根源や元気を司る神仙のこと。 | 豊島,1998,p.201 |
大威徳法 | 大威徳調伏法。大威徳明王の霊験によって、悪魔怨敵を降伏する呪法。「オンキリクシュチリビキリタダノウウンサラバシャトロダシャヤサタンバヤサタンバヤソハタソハタソワカ」「オンアクウン」 | |
大威徳法 | 永久元年、清水寺の別当補任権をめぐって興福寺と延暦寺が争ったとき、朝廷が仁和寺の寛助に大威徳法を行なわせると、争いは鎮まった。 | |
大威徳法 | 寿永2年、木曽義仲を調伏するために、後白河法皇は大威徳法を行なわせた。義仲は、源範頼と義経に追い詰められて討ち死にした。 | |
大威徳法 | 貞観7年、文徳天皇の后・藤原明子が、天狗に憑かれて病んだ。無動寺の相応が不動明王に祈っても后の病は癒えず、不動明王が、天狗には大威徳法が有効だと告げた。天狗の正体は、后への愛執にとらわれたまま死んだ真済だった。相応が大威徳法を行なうと、天狗は調伏され、后も回復した。 | 相応和尚伝 |
大威徳法 | 天安2年、惟喬親王と惟仁親王が皇位を争ったとき、惟喬親王は紀名虎を、惟仁親王は伴善雄を選んで相撲をとらせた。東寺の真済が降三世明王法を行なって名虎の、延暦寺の恵亮が大威徳法を行なって善雄の必勝を祈ったところ、善雄が勝利した。惟仁親王は即位し、清和天皇となった。 | 平家物語8 |
大威徳法 | 天慶3年、平将門が乱を起こしたとき、法観寺の浄蔵が、延暦寺で大威徳法を行なった。浄蔵が祈祷していると、灯明の上に甲冑に身を固め弓矢を持った将門が姿を現したが、鏑矢の音がしたので東に向かって飛んでいった。浄蔵は将門が討たれたことを悟り、将門の首が上洛すると予言した。 | 扶桑略記25 |
大威徳法 | 天長元年、守敏が旱魃を引き起こすと、空海は善女龍王を呼び寄せて雨を降らせた。守敏が軍荼利明王法を、空海が大威徳法を行なうと、両明王が射る鏑矢が空中でぶつかり合って鳴りやむことがなかった。空海は自身の死を偽装した。油断した守敏が術を解くと、守敏はたちまち死んでしまった。 | 太平記神泉苑の事 |
大威徳法 | 平清盛は幼少のとき、裕真から「大威徳法を行なえば、必ず天子の位に昇る」と教えられた。清盛は大威徳法を行ない、のちに太政大臣にまで昇りつめ、平家は栄華を極めた。 | 源平盛衰記 |
鯛車 | たいぐるま。鹿児島県霧島市の鹿児島神宮で授与される縁起物。赤い鯛を模した木製の玩具で、子供の病気除けの利益がある。釣針を飲み込んで苦しんでいた鯛のノドから、山幸彦が針を抜いて救ったことにちなむという。 | 畑野,2011 |
大元帥法 | だいげんのほう。大元法、太元帥法。大元帥明王の霊験によって朝敵を降伏し、国家に安寧をもたらす呪法。疫病や災害を防ぐためにも用いる。毎年、1月8日から14日まで行なわれるのが恒例とされたが、国家の大事や天変地異に際して、臨時に行なわれることもあった。「ナウボタリツボリツハラボリツシャキンメイシャキンメイタラサンダンオエンビソワカ」 | 岡田,1984 |
大元帥法 | 弘安4年、蒙古が襲来したとき、亀山上皇が寛伊に大元帥法を行なわせ、元軍の艦隊は暴風によって沈んだ。 | |
大元帥法 | 治承5年から4年にわたって実厳が大元法を行ない、平家は滅亡した。 | 岡田,1984 |
大元帥法 | 斉衡3年、旱魃が起こったとき、常暁が大元帥法を行ない、雨を降らせた。 | 森田,1928,p.127 |
大元帥法 | 貞観13年、前年に新羅の賊が太宰府を襲撃したのを受けて、寵寿が大元帥法を行ない、賊を平伏させた。 | 森田,1928,p.126 |
大元帥法 | 天慶3年、平将門が乱を起こしたとき、泰舜が大元帥法を行なった。 | 森田,1928,p.126 |
大元帥法 | 天正9年、織田信長が高野山を攻めたとき、朝意と応其が大元帥法を行なった。翌10年、信長は本能寺で死んだ。 | 和多,1961 |
大元帥法 | 明治2年、大政奉還がされたあとも新政府に抵抗する幕府の残党を調伏するため、栄厳が修した。また、明治28年、前年に日清戦争が勃発したのを受けて、栄厳らが修した。 | 森田,1942,p.19 |
大黒天神法 | 大黒天を祀り、福利福徳や諸願成就を祈る呪法。「オンマカキャラヤソワカ」 | 豊島,1998,pp.52-54 |
泰山府君祭 | 病気を治し、寿命を延ばすための祭礼。祭文の一例は「泰山府君冥道諸神等に謹んで申さく」「伏して願ふに、かの玄鑑を垂れて、この丹祈に答ヘよ。死籍を北宮において削り、生名を南簡において記せよ。年を延ベて算を増し、長く生きて久しく見んと謹んで申す」 | |
泰山府君祭 | 永祚元年、不吉な夢を見た円融法王は、一条天皇のために、尊勝法や焔摩天供、泰山府君祭を行わせた。 | |
泰山府君祭 | 三井寺の智興が重病になった。安倍晴明が「誰か身代わりになれば命を救える」と言うと、弟子の証空が身代わりを申し出た。晴明が泰山府君祭を行うと智興の病は癒え、身代わりになったはずの証空も死ななかった。弟子を哀れに思った不動明王が、証空の命を救ったのだった。 | 不動利益縁起絵巻 |
大聖不動明王金縛秘法 | 金剛童子や矜羯羅童子に命じて、相手を調伏する呪法。「綜て綜て金剛童子、膝ひつしと綜よ童子」「搦めよ童子」「南無三十七童子八大童子何れもよりて悪風をからめとり玉ヘ」と唱えるなどする。 | 宮家,1966 |
大日如来の姿になったまじない | 空海が、修行によって生きたまま悟りを開く即身成仏を説いたところ、他の僧から反論され、嵯峨天皇からも勅問を受けた。空海は南方に向かって坐り、大日如来の印を結んで呪文を唱え、金色に光り輝く大日如来の姿になってみせた。反論していた僧は畏れてひれ伏した。 | 板橋区 |
大の字 | 大吉の頭文字。「大」と書けば、吉祥を呼ぶ。 | 石川県,2017 |
頽馬避けのまじない | 頽馬(たいば)とは、馬を殺す妖怪のこと。近江国の大津東町に住む皮剥ぎ職人の娘が、親の商売を繁盛させるために、馬を殺して回る妖怪になった。「大津東町」「踏馬御免」と染め抜いた腹当てを使えば、馬が殺されることはない。 | 富山県,2008a |
大般若経 | 大般若波羅蜜多経。転読すれば罪障消滅、除災招福、悪魔降伏、国家安泰などの霊験がある。複数人で大般若経全600巻を転読する方法と、ひとりで第578巻・般若理趣分を転読する方法が知られる。 | 豊島,1998,p.354 |
太陽と月を隠したまじない | 唐を訪れた吉備真備の才覚を恐れた唐人が、真備を楼にとじこめた。鬼(阿倍仲麻呂の霊)が双六盤と賽と筒を持ってくると、真備は双六盤にのせた賽を筒で覆って、太陽と月を隠した。驚いた唐人は真備を解放し、真備が筒を取ると、太陽と月がふたたび現れた。 | 江談抄3吉備入唐間事 |
平将門を鎮めた歌 | 東国で乱を起こした将門は、俵藤太に討たれた後、さらし首にされた。首は3か月経っても腐らず、目を開き、歯を打ち鳴らし、夜な夜な叫び声をあげていた。藤六左近が「将門は米かみよりぞ斬られける俵藤太がはかりことにて」と詠むと、将門の首は笑い、ようやく朽ち果てた。 | 平治物語 |
田打ち正月 | 1月吉日に田畑に3回ほど鍬を入れて土を起こし、松飾りを挿して供え物をし、豊作を祈る呪術。 | |
倒れた馬を元通りにした歌 | 紀貫之が、乗馬したまま蟻通明神の社前を通り過ぎようとすると、大雨が降りだして馬が倒れた。貫之が「雨雲の立ち重なれる夜半なれば蟻通とも思ふベきかは」と詠んで明神に非礼をわびると、雨はやみ、馬も元通りになった。 | 謡曲蟻通 |
荼枳尼天法 | 荼枳尼天を祀り、諸願成就と栄華福徳を祈る呪法。術者は死後、荼枳尼天に心肝あるいは魂魄を捧げる。 | 豊島,1998,pp.88-89 |
焚火にあたるときのまじない | 「煙あっち行け、火の玉こっち来い」と唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
竹を焼いても破裂しないまじない | 竹を焼くとき、火の中にある竹の節を、こっそり数える。破裂しない。 | 榊原,1910 |
たこあげ | 凧揚げ。正月遊びの一つ。厄払いや吉凶占い、子供の成長祈願のために行なわれる。 | NDLレファレンス共同DB |
祟りを除く秘術 | 毎朝、天に向かって「南無當年星、南無本命星、南無天辰星、南無北斗七星、諸宿曜等諸災消除遠離」と唱える。祟りから逃れられる。 | 健斎居士,1917 |
祟りを祓うまじない | 懺悔の文を読み上げ、地蔵経を3回読み、「オンカカカビサンマエイソワカ」と3回唱える。天狗、土公、太歳神宮、山神、木神、江海神、水神、火神、饉餓神、塚神、蛇神、呪詛神、生霊死霊の神、路神、竈宅神などの祟りを祓える。 | 陽新堂主人,1928 |
竜巻除けのまじない | 海上に黒雲が現われるのは、竜巻が起こる予兆だという。ある人が船に乗って江戸ヘ向かっていたとき、駿河国興津の沖合に黒雲が現われた。驚いた船頭が、乗船していた人々の髪を切らせて焼くと、黒雲は散り失せ、竜巻の災いを避けることができた。 | 須川,1956,p.64 |
狸の腹鼓を止めた歌 | 縫庵の隠宅の庭から、狸が腹鼓を鳴らすのが聞こえた。縫庵は琴を弾きながら「やよやたぬまし鼓うて琴ひかん我琴ひかばまし鼓うて」と詠い、居合せた賀茂社司の信頼が「ほうしよくたぬ鼓うてわたつみのおきな琴ひけ我笛ふかん」と詠うと、狸は腹鼓を鳴らすのをやめた。 | 耳嚢5 |
狸除けのまじない | 徳島県鳴門市では、食ベ物を持って夜道を歩くときは、狸に取られないよう食ベ物に息を吐きかけてから出かける。 | 常光,2003 |
旅立つときのまじない | 子供が旅行に出るときは、子供の荷物の底にナタマメを1粒入れておく。無事に帰ってくる。 | 日本神霊教会,1919 |
旅立つときのまじない | 旅行に出るとき、自分の靴を、玄関の内側に向けて置いておく。無事に帰れる。 | |
食ベ物を焦がすのを防ぐまじない | 豆腐や餅を焼くときは、頭の上で3回まわしてから焼く。焦げない。 | 経済雑誌社,1890 |
魂緒の結 | たまおのゆう。魂結び。赤、青、黒、白の糸を、定められた順序で結び、それを10回ずつ繰り返すことで、魂が弱まったり遊離するのを防ぐ呪法。新嘗祭の前日に天皇に対して神祇官が行なった。 | |
鎮魂 | たましずめ。魂を落ち着かせ、鎮める呪術。 | |
魂振る | たまふる。弱まったり遊離している魂を呼び起こし、鎮めること。鎮魂のために、魂をゆり動かすこと。 | |
魂結び | たまむすび。糸に結び目を作り、魂が弱まったり遊離するのを防ぐ呪術。新嘗祭の前日に天皇に対して神祇官が行なった呪法を、とくに魂緒の結(たまおのゆう)という。 | |
魂結び | 昔、密かに女のもとに通っている男がいた。女が「今宵、夢に貴方の姿が見えた」と言うと、男は「思ひあまり、いでにし魂のあるならむ、夜ぶかく見えば魂結びせよ」と詠った。 | 柳田,1939 |
魂結び | 物の怪に苦しむ葵の上を、源氏が見舞った。葵は、声も気配も六条御息所そのものになり「嘆きわび空に乱るるわが魂を結びとどめよしたがひのつま」と詠った。源氏は、御息所の生霊が葵にとり憑いていることに気付いた。 | 柳田,1939 |
魂呼 | たまよばい。魂喚。招魂。死者を蘇生させるといわれる呪術。万寿2年、後朱雀天皇の后・藤原嬉子が死んだとき、父・道長は、陰陽師の中原恒盛に魂呼を行なわせた。恒盛は嬉子の衣服を持って屋根に上がり魂を呼び戻そうとしたが、魂呼は本来、生者を延命させるために行なう呪術だった。後日、恒盛は、職務違反のかどで処分すると上官から告げられた。 | |
樽封じ | 相手を調伏する呪法。樽の中に相手の歳の数だけ人形を入れ、護身法と九字を行ない、種々の印を結び、白紙で封じて真言ボロンを書く。 | 宮家,1966 |
だるま | 達磨大師を模した、赤色の張り子の置物。だるまの両目を白目の状態にしておき、祈願するとき左目に黒目を書き入れ、成就すると右目に黒目を書き入れる風習がある。達磨大師は、壁に向かって9年間座り続けて悟りを開き、禅宗の開祖となった。 | |
弾指 | たんじ。爪弾き。軽く拳を握り、親指で人差し指の側面を押さえ、人差し指を引き抜いた拍子に親指で中指の側面を叩いて、音を鳴らす呪術。魔除け、祓いなどの効果がある。昔は、便所を使う前後に弾指を行なった。 | 熊谷厄除大師常光院 |
弾指 | 永観2年、元三大師・良源が疫神に襲われたとき、弾指して疫神を退けた。 | 川越大師喜多院 |
弾指 | 紀貫之は「任地の土佐から都ヘ帰還するとき、海が荒れて一日中風が止まなかったので、船を留め、弾指して寝た」と土佐日記に書いている。 | 土佐日記 |
千木筥 | ちぎばこ。東京都港区の芝大神宮で授与される、ヒノキの曲げ物を三段重ねて、藤の花を描いた縁起物。部屋に吊るしておき、雷が鳴ったとき箱の中に入っている炒り豆を食ベると、雷除けになる。 | 畑野,2011 |
地神から姿を隠した術法 | 滋岳川人と安倍安仁は地神に追われていることに気づいて、地神をやり過ごした。その後、2人は嵯峨寺の天井裏に隠れて、川人は呪を誦し、安仁は三密を唱えた。夜半に風が吹き、地鳴りが起こったが、未明に鶏が鳴くと止んだ。川人は「もう恐れることは無い」と言った。 | 今昔慈岳川人被追地神語 |
地神から姿を隠した術法 | 文徳天皇の陵墓を築く場所を占った帰り道、滋岳川人と安倍安仁は地神に追われていることに気づいた。川人は、安仁を田の中に座らせると、刈り置きされていた稲を積み上げて隠した。川人も、呪文を唱えながら周囲を巡ったあと稲の中に隠れて、2人は地神をやり過ごした。 | 今昔慈岳川人被追地神語 |
地相 | 土地の様子を見て吉凶を占うこと。占筮と併せて、陰陽師が掌った。 | 令義解 |
ちちんぷいぷい | 怪我をした子供をなだめるときなどに唱える呪文。「ちちんぷいぷい御代(ごよ)の御宝(おたから)」とも唱える。「知仁武勇御代の御宝」が語源ともいう。 | |
血止めのまじない | 怪我をしたときは、傷口に向かって「いろはにほヘと」と指先で3回書く。 | 大高坂,1889 |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「アブラオンケンソワカ」と唱えながら、切り傷に息を吹きかける。 | 愛媛県,1984 |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「にってんがってんひょうえのじょう赤子の口の止まるように」と唱える。 | |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「血の道や、父と母との血の道や、この道止まれ、父のこの道」と唱える。 | |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「向かいの山を通るのは霧か霞か血の雨か、両親分けしこの血を止めてたのむ、アビラオンケンソワカ」と3回唱える。 | 長野県,1968,p.44 |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「昔々唐土の国から渡たるふいごてっちんのだいばん大槌小槌で作たんナタで、けがしょうたんから、すぐ血ば止めてくりんしょり」と唱える。「昔々唐国から渡ってきた大吹小吹、大床小床、大槌小槌で作った鉈で怪我をしたので、すぐ血を止めてください」の意。鹿児島県奄美に伝わるこのような呪文を、クチという。 | |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「千早ぶる神代もきかずたつた川、からくれないに水くぐるとは」と唱える。 | |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「二二が四、二四が八、この血は父と母がこしらえた血、アブラウンケンソワカ」と唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「父と母とが血の神ぞ、鎮まり給え。アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「父と母とは血の道よ、血止めて給え、千代の御神」と一息に3回唱え、「あぶらおんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「母の体内ここのつき、父の体内一二月、この血おさめためる、アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
血止めのまじない | 怪我をしたときは「北は黄に、南は青葉に、東じろ、西くれないに、止まれ血の道、あびらうんけいそわか」と3回唱える。血が止まる。 | 木村,2009 |
血止めのまじない | 鹿児島県奄美大島では、怪我をしたときは「母と子との血や、血やひとつ、さんかのひとは、ものみもするな、ことみもするな、きちやる血や、はらちやる血や、はたつと止まれ、あらおんけんさま」と唱える。 | 茂野,1927,p.201 |
血止めのまじない | 人が怪我をしたときは、その人の額に「我大寳」と書く。血が止まる。 | 富岡,1935,p.16 |
血止めのまじない | 青森県むつ市大畑町では、怪我をしたときは「大きい山越えて小さい山越えて、アブランケソワカ、アブランケソワカ、アブランケソワカ」と3回唱える。 | 青森県 |
血止めのまじない | 奈良では、怪我をしたときは「血の道は父と母とのはじめなり、血の道とおせ血の道の神」と3回唱え、「なむあぼらうんけんそわか」と唱える。 | 根岸,1991 |
血止めのまじない | 「千早振る神代もきかず龍田川、唐くれなゐに水くぐる」と唱える。「とは」の2字は省く。 | 沖野,1920 |
茅の輪 | ちのわ。チガヤを用いて作った大きな輪。6月30日の夏越の大祓のときにくぐると無病息災となる。小型の茅の輪を持ち歩けば、疫病を免れる。 | 島田,2020 |
粽 | ちまき。5月5日の端午の節句に食ベる縁起物。もち米を笹で包み、イグサなどで縛って蒸したもの。厄除けの利益がある。 | 中津川,2010 |
茶を飲むときのまじない | 「若飲茶時、當願衆生、供養諸仏、拂拭睡眠」と唱える。 | |
中風を防ぐまじない | 旧暦5月5日に、榎の実を取って、東にある井戸の水で飲む。 | 中村,1935,p.10 |
長十郎梨守 | ちょうじゅうろうなしまもり。神奈川県川崎市の若宮八幡宮で授与される、梨の実をかたどった御守。どんな苦難も乗り越え、実りをもたらすとされる。長十郎梨は明治26年に開発された品種で、同30年に黒星病が流行して他の品種が壊滅する中でも、被害が少なかった。このことにちなむ。 | 中津川,2010 |
勅封 | 勅命によって封印すること。また、施された封印のこと。昭和20年、米国による空襲を警戒した熱田神宮は、草薙剣を防空壕ヘ遷した。宝剣が入った箱には明治天皇による勅封が施されていたが、このとき新たに、昭和天皇による勅封が施された。 | 稲田,2007 |
鎮将夜叉法 | 鎮将夜叉を祀り、諸魔退散と福徳増長、天下泰平を祈る呪法。 | 唐尾山國分寺,2013 |
鎮宅大石 | 家の四方に丸石を埋め、丸石の上で、桃の種を7粒ずつ叩き割る呪法。家内で災異が起こることなく、一切の邪気を防ぐ。 | |
鎮壇具 | ちんだんぐ。寺院を建立したあと、地鎮のため、土壇に埋める呪具。七宝や鏡、刀剣など、除魔の力があるとされた物品が埋められた。 | 別所,2017 |
鎮壇法 | 寺院を建立したあと、地鎮のため、土壇に呪具を埋める呪法。七宝や鏡、刀剣など、除魔の力があるとされた物品が埋められた。 | 別所,2017 |
次の子を生むまじない | 産後、次の子が欲しいと思ったときは、産湯に使ったタライの底を叩く。1回叩けば1年後、2回叩けば2年後に、また子が生まれる。 | |
辻占 | 日が暮れてから四辻に立ち「行く人の四辻のうらの言の葉に、うらかたしらせ、辻うらの神」と唱えたあと、通行人の会話を聞く。会話の内容から、吉凶禍福を占う。 | |
土蜘蛛を退けた歌 | 源頼光が病に臥せていると、蜘蛛の化生に襲われた。頼光は刀で蜘蛛の化生を撃退し、駆けつけた独武者が「土も木も我が大君の国なれば、いづくか鬼の宿りなる」と唱えて血の跡をたどると、土蜘蛛が現われた。独武者は土蜘蛛の首を斬り落とした。 | |
筒封じ | 竹封じ。通常の加持祈祷では調伏できない魔物を竹筒などに封じ込めて、地中に埋めたり、燃やしたりする呪術。病者の名前と性別と願意を書いた人形に、病者の息を吹きかけ、竹筒に入れる。竹筒に病魔を封じ込めたと念じ、蓋をして麻糸を巻いて縛り、九字を切る。竹筒は地中に埋める。 | 豊島,1998,p.154 |
筒封じ | 竹封じ。魔物を竹筒などに封じ込めて、地中に埋めるなどする呪術。天長元年、旱魃に頭を悩ませた淳和天皇は、空海に請雨経法を行なわせたが、雨は降らなかった。空海は、守敏が龍を水瓶に封じ込めて旱魃を引き起こしたと見抜き、守敏から逃れていた善女龍王を呼び寄せて雨を降らせた。 | |
燕除けのまじない | 燕の巣のあたりに「戌」の字を書く。燕が近づかなくなる。 | |
爪の切り初め | 夜に爪を切るのは不吉とされる。1月6日の夜に風呂に入ってから、その年初めて爪を切れば、一年中、夜に爪を切ってもさしつかえがない。 | 相馬市,1975 |
弦打ち | つるうち。鳴弦。矢をつがえないまま弓を引き、弦を打ち鳴らす呪術。災いを祓い、病を癒すために行う。源氏と夕顔が廃院で眠っていると、物の怪に襲われる気配に源氏が目を覚ました。源氏は随身に弦打ちをするように命じ、随身は「火危うし」と呪文を唱えながら弓の弦を打ち鳴らした。 | 源氏物語 |
手足がしびれたときのまじない | ツバで額に十字を書いて「しびれ治れ、今日の客は短いぞ」と3回唱え、鼻すじを3回撫でる。 | 根岸,1991 |
手足がしびれたときのまじない | 額にツバを付ける。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
手足がしびれたときのまじない | 京都では、指先で額にツバをつけて「しびれ京ヘのぼれ」と3回唱え、「京のおばさんおまんかって待ってるぞ」と唱える。 | 根岸,1991 |
手足がしびれたときのまじない | 京都府口丹波では「しびれ京ヘのぼれ、京に餅が焼けている」と唱える。 | 根岸,1991 |
手足がしびれたときのまじない | 大阪では「しびれ京ヘのぼれ」と唱える。 | 根岸,1991 |
手足がしびれたときのまじない | 兵庫では「しびれ京ヘのぼれ、京でお茶がたけるわ、イッピラピンノシャッピラピン」と唱えて、小さな紙きれを額に貼る。 | 鈴木,1982 |
手足がしびれたときのまじない | 「シビレシビレ、京ヘのぼれ」と唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
てるてる坊主 | 照る照る坊主。白い布や紙でつくった人形。これを軒先に吊るすと晴れる。同名の童謡では、晴れたら金の鈴をあげよう甘い酒を飲ませよう、と持ち上げておいて、最後は、晴れなければ首をちょん切るぞと、てるてる坊主を脅す。 | |
転居するときのまじない | 引っ越しの日柄が悪いときは「南無光明天王、ボロン、ソワカ。一切日皆善、一切宿皆賢、諸仏皆威徳、羅漢皆断漏、以此誠実言、願我常吉祥、迷故三界城、悟故十方空、本来無東西、何処有南北」と唱える。悪日は解消し、日柄を気にせずにすむ。 | 豊島,1998,p.161 |
天狗経 | 数多の天狗の霊験を得る呪文。「南無大天狗小天狗十二天狗有摩那天狗数万騎天狗」四十八天狗の名を呼んで「総じて十二万五千五百。所々の天狗来臨影向悪魔退散諸願成就悉地円満随念擁護怨敵降伏一切成就の加持。オンアロマヤテングスマンキソワカ、オンヒラヒラケンヒラケンノウソワカ」 | |
天狗経 | 円融天皇が病んだとき、高僧たちが五壇の御修法を行なっても治らなかったものを、ある聖人が祈るとたちどころに癒えた。いぶかしんだ寛朝と余慶が加持すると、聖人は仰向けに倒れた。聖人は、天狗を祀ったことを白状して命乞いし、天皇は聖人を逃がした。 | |
天狗にさらわれるのを防ぐまじない | 「鯖食った鯖食った」と唱える。天狗にさらわれない。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
天狗に銃弾や矢が当たるまじない | 地面に伏せたまま「朝の明星、夕の明星力」と唱えて、銃を撃ち、あるいは矢を放つ。天狗に銃弾や矢が当たる。立って銃を撃ったり矢を放つと当たらない。 | |
天狗の投算 | てんぐのなげざん。清水観音から与えられた頭巾をかぶって姿が見えなくなった居杭の居場所をつきとめるために、算置が用いた占法。「一徳六害の水、二義七陽の火、三生八難の金、四殺九厄の木、五鬼十の土」「犬土走れば、猿木ヘ登る。鼠桁走れば、猫きっとにらむ」 | 野村,1926,p.271 |
天狗除けのまじない | 「三鬼明王」と書いた紙を懐に入れておく。天狗の災いを避けられる。「山鬼明王」とも書く。 | 宮地,1934 |
電車酔いを防ぐまじない | 手のひらに「趾」の字を書いて舐め、電車に向かって「劍」の字を書く真似をする。酔わない。 | 土橋,1922 |
電車酔いを防ぐまじない | 電車に「賦」の字を書き、最後の点を自分の額に打つ。酔わない。 | 土橋,1922 |
天曹地府祭 | 六道冥官祭、天官地府祭とも。無病息災や延命長寿を祈る祭礼。新天皇の即位、将軍の交代、天変地異が起こったときなど、国家の大事に際して行なわれた。 | |
天の矢 | 呪詛返しのこと。藤原頼長が愛太子竹明神に祈って、近衛天皇を呪詛した。久寿2年、天皇は病死し、頼長も翌保元元年に死んだ。頼長が死んだのは、天の矢があたったせいだと、古事談は伝えている。 | 中島,2017 |
天魔外道皆仏性四魔三障成道来魔界仏界同如理一相平等無差別 | 外道魔道に堕ちた存在に、改心と成仏をうながす呪文。魔界偈。「たとえ魔物であっても仏性を備えており、悟りを開くことができる」の意。 | 豊島,1998,p.148 |
桃花酒 | 3月3日の桃の節句に桃の花を浮かベた酒を飲めば、健康長寿になる。桃には、邪気を祓い長寿をもたらす力がある。 | |
桃花酒 | ある娘のところに、若い侍が毎晩通っていた。侍の正体は蛇で、娘の命を取ろうとしていた。娘は、家を訪れた易者の助言に従って、鷲に蛇を殺させた。易者は、娘の体内に残っている毒を消すために、桃の花を浮かベた酒を飲ませた。易者の正体は、むかし命を救われた蛙だった。 | |
灯火に虫を入れなくするまじない | 「イシフシエンリンキリフクエンフクリン」とカタカナで書いた紙を、灯火に貼る。虫が入らなくなる。 | |
唐招提寺宝扇 | 奈良市五条町の唐招提寺で授与される団扇。田畑に立てれば害虫を防ぎ、病者を扇げば病気を癒す。覚盛が修行していると、蚊の群れが飛んできて血を吸い始めた。弟子が団扇で蚊を叩こうとすると、覚盛は「いま私は布施業をしているのだ」と弟子を止めた。このことにちなむ。 | 畑野,2011 |
逃走者を帰らせる秘法 | 昼間に逃走したなら門の右に、夜間に逃走したなら門の左に穴を掘り、その人の茶碗を伏せて土をかけ、その上に水を入れた徳利を乗せて箸を立てて置く。帰ってくる。ただし逃走後10日以上経っていたら、効果は無い。 | 東文堂編輯所,1914 |
盗賊を追い払ったまじない | ある夜、福田行誡が念仏三昧をしていると、強盗が部屋にやって来て、刀を突きつけながら金銭を要求した。行誡はおもむろに火鉢を引き出し、指差しながら「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と唱え続けた。恐ろしくなった強盗は、何も盗らずに逃げ去った。 | |
盗難除けのまじない | 12月の最初の丑の日に門戸を作る。盗難を避けられる。 | |
盗難除けのまじない | 茨城県猿島郡では、七夕に飾った竹を1尺2寸に切って割り、「大利志明王、アビラウンケン」と書いたものを竹の中に入れて、神棚に祭る。 | 鈴木,1982 |
盗難除けのまじない | 家や旅先で眠る前に「さよ更けて、もしも音づるものあらば、引きおどろかせ我がまくら神」と3回唱える。眠っているあいだに物を盗まれるのを防げる。 | 豊島,1998,p.300 |
盗難除けのまじない | 元日に初めて汲んだ水で墨をすり、「盗賊のかくれし山に月出でて、しのぶ細道、有明けの月」と書いた紙を、入口の戸に斜めに貼る。紙が心張り棒となって、盗難を防ぐ。 | 笹,1972,p.537 |
盗難除けのまじない | 寝る前に、玄関に家主の靴1足を外に向けて置き、その上にタライを伏せ、さらにその上に刃物の先を外に向けて置く。置く刃物はなんでも良い。盗賊が家に入っても、ものを盗らずに立ち去る。 | |
盗難除けのまじない | 青森県三戸郡では「十一月十一日」と書いた札を貼る。泥棒に入られない。 | 青森県 |
盗難除けのまじない | 奈良市大柳生町では「十二月十二日」と書いた札を、店先の柱に逆さに貼る。泥棒に入られない。 | NDLレファレンス共同DB |
盗難除けのまじない | 福井では、土用にニンニクを玄関に吊るす。泥棒が入らない。 | 鈴木,1982 |
盗難除けのまじない | 「ねるぞ、ねだ、たのむぞ、たる木、梁も聴け、明けの六つには起せ大びき」または「ねるぞ、ねだ、たのむぞ、たる木、夢の間に何ごとあらば起せ、桁梁」と唱える。盗賊に入られない。 | 芥川,1935 |
盗難除けのまじない | 「或値怨賊繞各執刀加害念彼観音力咸即起慈心」と、くりかえし唱える。盗難を避けられる。 | 西村,1922,p.52 |
盗難除けのまじない | 「五大力菩薩」と書いた木札を使う。盗難を避けられる。 | 富山県,2008b |
盗難除けのまじない | 「十二月十二日」と書いた札を逆さに貼る。泥棒に入られない。12月12日は、石川五右衛門が処刑された日ともいう。札を逆さに貼るのは、天井から忍び込んだ泥棒に札の文字を読ませ、盗みを思いとどまらせるためだという。 | 青森県 NDLレファレンス共同DB |
盗難除けのまじない | 「寝るぞ根太、たのむぞ垂木」と唱えてから寝る。 | 笹,1972,p.537 |
盗難除けのまじない | 「夜のうちにもしもあやしきことあらばひきおどろかせわがまくらがみ」と書いた紙を。門口に貼る。 | 大高坂,1889 |
遠い場所にいる人を倒す呪術 | 天狗が使う呪術。幻通三化印を結び、人を指さして「平転野、閉気野、折陽野、三気野、四霊」と唱え、指先で円を描き、指を前ヘ突き出し「ウハアン」と唱えて左足を踏みしめ、「ウン」と唱えて右足で蹴る仕草をする。その人は、石につまづいたようにして倒れるという。 | |
土器割り | かわらけ割り。安産を願って、土器を割る呪術。 | 古田,2012 |
土器投げ | かわらけ投げ。京都市の神護寺では、素焼きの土器を渓谷に向かって投げて、厄を祓う。 | 瀬戸内,2017 |
土金加持法 | 砂1升2合に金紙を小さく切り交ぜて盆に盛り、土金祝詞を唱えながら1勺ずつ鉢ヘ移す呪法。加持した砂を家の敷地にまき散らせば、一切の祟り、災禍、凶事を避けられ、家は繁栄する。 | 柄沢,1926,p.59 |
毒虫に刺されたときのまじない | 毒蟲に刺された跡の上から「や」の字を書く。 | 中村,1935,p.10 |
詛戸 | とこいど。呪物。人を呪詛するために用いる置き物。八目の荒籠鎮めの呪詛では、竹で編んだ目の粗い籠と、塩と混ぜて竹の葉で包んだ石とを、詛戸として用いる。詛戸を竈の上に乗せて呪詛すれば、相手は病で苦しむ。詛戸をひっくり返せば、病は癒える、 | |
十言神咒 | とごとのかじり。毎日30分以上「アマテラスオホミカミ」と、くりかえし唱える修行を、1か月以上続ける呪法。あらゆる悩みが解消される。 | 豊島,1998,p.307 |
年の祝いの歌 | 鹿児島県奄美に伝わる呪歌。「ろくじゅういちもけぇてぃ、ひちじゅうさんもけぇてぃ、はちじゅうごもけぇてぃ、ひゃくさねがお」と歌う。「61歳を迎えて、73歳を迎えて、85歳を迎えて、さらに100歳までの長寿を願おう」の意。 | 小川,2005 |
土砂加持法 | 光明真言加持土砂秘法。死者を成仏させる呪法。人が近づくことのない海や山から採取した土や砂を清水で洗い浄め、日光に7日間さらしたのち、器に盛り壇上に置いて加持する。浄めた土や砂を死者の死骸や墓にかけることで、死者を地獄から救い、極楽ヘ送り出すことができる。明恵が光明真言を一心不乱に唱えていたとき、文殊菩薩が現れて、この秘法を授けた。 | |
屠蘇 | とそ。屠蘇酒。正月に飲む縁起物。生薬を配合した屠蘇散を、酒に漬け込んで作る。飲めば邪気を祓える。「屠」は鬼気を屠絶し、「蘇」は死者を蘇生させる意であるという。「酒」は「避け」に通じ、ゆえに邪気を避けるという。 | 貝原,1910,p.442 経済雑誌社,1890 |
友引人形 | 京都市伏見に伝わる、着物を着た5人の子供が一列に並んだ人形。友引の日に葬儀を行なうのを不吉とする風習は、全国で見られる。棺に友引人形を入れれば、友引の日に葬儀を行なっても、災いを避けられる。 | 万造寺,1936 |
虎の頭 | とらのかしら。虎の首とも。虎の頭部を模した作り物。猛獣である虎には、邪気を退ける力がある。誕生した皇子を産湯につける御湯殿の儀を行なうときは、側近くに虎の頭を置いた。また、枕元に虎の頭を置いた。 | 中村,1978,p.180 |
鳥追 | とりおい。鳥除けのまじない。小正月に槌や棒などを打ち鳴らしながら鳥追歌をうたって回り、田畑の鳥害を防ぐ呪術。「頭切って尾を切って、俵につめて海に流す」などと唱える。秋田や山形、新潟では「朝鳥ホイホイ、夕鳥ホイホイ」などと唱える。 | 柳田,1939 |
鳥追 | 秋田県平鹿では「ホホ鳥追だ、何時もにつくい鳥は四十雀につくい、頭はつて塩はつて塩俵さぶち込んで鬼ヶ島ヘ追つてやれ追つてやれ」と唱える。 | 真鍋,1965 |
鳥追 | 新潟県佐渡では「四郎左衛門殿の苗代に、白い黒い紺鳥、追うて頼む田の神さんヤイトウヤ、ホウホウ」「西から東ヘ飛ぶ鳥は、羽十六身は一つ、追つてくれやれ田の神、田の神の鳥追は、何十何軒追い様にすずめ、すばめどりたちあがれやホーイホーイ」などと唱える。 | 真鍋,1965 |
取越正月 | 災害が起こったり疫病が流行したとき、6月1日に正月の祝い事を行なって、悪い年を早く送ってしまおうとする呪術。6月1日に限らず、他の時期に臨時で行なうこともある。 | 石川県,2013 |
鳥の鳴き真似 | 鳥の鳴き声を真似るのは、ときに不吉なこととされる。フクロウの鳴き声を真似ると、フクロウが鳴き止むまで真似し続けないと死んでしまう。 | 鈴木,1982 |
鳥の鳴き真似 | 烏の鳴き声を真似ると、口のまわりが切れたり腫れてしまう。また、鶏の鳴き声を真似ると火災が起こり、ホトトギスの鳴き声を真似ると血を吐いたり気が狂ってしまう。 | 鈴木,1982 |
トンボを捕まえるまじない | 草木に止まっているトンボに向かって、指で「の」の字を宙に書く。トンボが動かなくなり、簡単に捕まえられる。 | |
長遊びをして帰らない人を帰らせるまじない | 「いざさらば、龍田の山のうすもみじ、人の心に秋の来ぬまに」と3回唱えて、その人に気づかれないように息を吹きかける。帰ってくる。 | |
長居する人を帰らせるまじない | 長居する人の履物の裏に、指先で「三日月」の字を書く真似を3回する。すぐ帰る。 | 高島易断所,1935 |
長居する人を帰らせるまじない | 箒を逆さに立てる。帰る。 | |
流し雛 | 3月3日の桃の節句に飾る雛人形が、穢れを祓うための形代と同化したもの。昔は、雛人形を川に流して、穢れを祓い災いを退けた。須磨に流された源氏は、3月上巳の日に陰陽師に祓いを行なわせ、人形を舟に乗せて海に流して禊をした。 | 源氏物語 |
中臣祓詞 | 大祓詞。中臣祓、中臣祭文とも。大祓などの祭祀で奏上される、罪穢れを祓い、悪霊や妖怪を退治するのにも有効な祝詞を、大祓詞という。むかし都で祭祀が行われたとき、中臣氏が大祓詞を奏上する役目を担っていたことから、中臣祓詞と呼ばれる。 | |
中臣祓詞 | 村上天皇のとき、反乱を起こした藤原千方と、山注記、三河坊、兵庫竪者、筑紫坊の4人の法師を討つために、紀朝雄は六根清浄と中臣祓詞を唱えた。 | |
中臣祓詞 | 大伴家持は「中臣の太祝詞言言ひ祓ヘ、贖ふ命も誰がために汝れ」と詠んでおり、中臣祓詞に延命の効験があることを示唆している。 | 万葉集 |
流れ星を見たときのまじない | 「夜這い星、金くれ」と3回唱える。お金ができる。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
針を無くしたときのまじない | ハサミを糸で巻いて、置いておく。見つかる。 | 粟根,1917b |
針を無くしたときのまじない | 「弘法大師、弘法大師、弘法大師の旅する衣を縫う針、いづこにいってもここに戻れや針、アビラウンケンソワカ」と唱える。見つかる。 | 笹,1972 |
針を無くしたときのまじない | 「清水の音羽の瀧のつきるとも」と唱えながら探す。見つかる。 | 粟根,1917b |
針を無くしたときのまじない | 「清水や音羽の滝は尽くるとも失せたる針の出でぬことなし」または「清水や音羽の滝は絶ゆるとも失せたる針の無きことはなし」と3回唱える。見つかる。 | |
針を無くしたときのまじない | 「西行の麻の衣の縫う針は捨てても人の身には立つまい」と3回唱える。見つかる。 | 花部,1996,p.97 |
物を無くしたときのまじない | カギタケにこよりを縛りつけて「物が見つかればほどく」と唱える。見つかる。カギタケは、鉤竹すなわち自在鉤の意か。 | 鈴木,1982 |
物を無くしたときのまじない | 「清水や音羽の滝は尽くるとも失せたる物の出でぬことなし」または「清水や音羽の滝は絶ゆるとも失せたる物の無きことはなし」と3回唱える。見つかる。 | |
擲櫛 | なげぐし。櫛を投げること。イザナギは、死んだイザナミと再会するため黄泉国を訪れた。イザナギが櫛の歯を折って火を灯すと、イザナミの体に蛆が這いまわり膿が噴き出しているのが見えた。このため、夜に櫛を投げることは忌み嫌われると、日本書紀は伝えている。 | |
梨の木に多くの実をつけさせるまじない | 梨の木に草鞋を吊るす。梨の木が多くの実をつける。 | |
雪崩除けのまじない | 「このたびはヌサも取りあえず手向山、紅葉の錦、神のまにまに」と唱える。 | 小沼,1971,p.183 |
雪崩除けのまじない | 「朝はかに神の御衣を蓑に着て、先を矢先とやぶるとは、アブラウンケンソワカ」と唱える。 | 小沼,1971,p.183 |
撫で物 | なでもの。穢れを祓ったり病気を治すために、紙でつくった人形(ひとがた)や布で体を撫でることで、穢れや病気を人形や布に移す呪法。穢れや病気を移した人形や布は、焼くなどする。 | |
撫で物 | 薫大将は、想い人だった大君が病死したとき「見し人の形代ならば身に添ヘて、恋しき瀬々の撫で物にせむ」と、大君の形代があればと、未練を見せて涙ぐんだ。すると、中君が「御禊川、瀬々にいださむ撫で物を、身に添ふかげとたれか頼まむ」と、撫で物は川に流すものだとさとした。 | |
撫で物 | 貞丈雑記は「陰陽師が紙で人形を作り、病者が人形で体を撫でて、陰陽師が人形を使って祈祷したあと川ヘ流す」と、撫で物の手順を伝えている。 | |
七草粥 | ななくさがゆ。1月7日の人日の節句につくる、春の七草を具材とした粥。食ベると万病を退け、その一年は無病息災となる。 | |
七草粥 | 岩手県釜石市栗林町では、粥ではなく汁に入れ、七草を刻むときには「唐土の虎も、田舎の虎も、日本の土地に渡らんうちに七草はだけ」と唱える。 | 工藤,2011 |
七草粥 | 宮城県本吉郡南三陸町波伝谷では、七草を刻むときには「七草ナズナ、唐土の鳥と、日本の鳥が、渡らぬ先に、七草叩け」と唱える。 | 政岡,2008 |
七瀬祓 | ななせのはらえ。七瀬之祓。天皇にふりかかる災禍を人形に移し、7つの川の瀬に派遣された陰陽師が、人形を流す呪法。 | 高倉,2010 |
七つ目 | ななつめ。魔除けのため、斧の表と裏に、それぞれ3本と4本の線を刻みつける呪術。 | |
鍋や釜の金気を消すまじない | 鍋や釜の底に「南無阿弥陀仏」または「南無妙法蓮華経」と書いてから煮炊きする。金気が消える。 | 高島易断所,1935 |
生麦大豆二升五合 | なまむぎだいずにしょうごごう。難事を避ける呪文。「南無大師遍照金剛(なむだいしヘんじょうこんごう)」の転で、「空海に帰依する」の意。大師は空海の諡号「弘法大師」のこと、「遍照金剛」は空海の灌頂名である。 | 真言宗智山派大慈山円応寺 |
南無阿弥陀仏 | 念仏。「阿弥陀仏に帰依する」の意。大原の良忍が大和国を訪れたとき、ひとりの男を争った2人の女が、死後も嫉妬に駆られて争っていた。良忍が「南無阿弥陀仏」を唱えると、2人の女は成仏した。 | |
南無成就須弥功徳王如来 | なむじょうじゅすやこうどくおうにょらい。なむじょうじゅしゅみくどくおうにょらい、とも。良い夢を見たときは「南無成就須弥功徳王如来」と3回唱える。吉事がある。 | |
南無八幡大菩薩 | 八幡菩薩の霊験を得る呪文。近衛天皇が夜な夜な御殿の上を覆う黒雲に怯えていた。源頼政は「南無八幡大菩薩」と唱えてから黒雲に向かって矢を放ち、天皇を怯えさせていた変化の物を射殺した。射殺した変化の物は、頭は猿、体は狸、尾は蛇、手足は虎という姿をした鵺だった。 | |
南無八幡大菩薩 | 八幡菩薩の霊験を得る呪文。藤原秀郷は龍神の頼みで大百足を退治するとき、矢じりに唾を吹きかけて「南無八幡大菩薩」と唱えてから矢を放ち、大百足を射殺した。 | |
南無八幡大菩薩 | 八幡菩薩の霊験を得る呪文。那須与一は屋島の戦いのとき「南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光の権現、宇都宮那須の湯泉大明神、願はくは、あの扇の真ん中、射させてたばせ給ヘ」「この矢、はづさせ給ふな」と唱えてから矢を放ち、平家の女房がかかげた扇の的を射落とした。 | |
南無八幡大菩薩 | 八幡菩薩の霊験を得る呪文。平惟茂が戸隠山ヘ紅葉狩りに出かけると、美女に化けた鬼女に襲われた。惟茂は少しも慌てることなく「南無八幡大菩薩」と唱えてから剣を抜いて鬼女に斬りかかり、刺し殺した。 | |
南無福徳幸頂弥功徳王菩薩 | なむふくとくこうちょうやこうどくおうぼさつ。なむふくとくこうちょうみくどくおうぼさつ、とも。良い夢を見たときは「南無福徳幸頂弥功徳王菩薩」と3回唱える。吉事がある。 | |
南無妙法蓮華経 | 題目。「法蓮華の教えに帰依する」の意。文永8年、日蓮が佐渡に配流されたとき、船が暴風猛雨に遭った。日蓮が「南無妙法蓮華経」の7字を波の上に書くと、波が鎮まった。 | 陽新堂主人,1928 |
ナメクジ除けのまじない | 5月5日に「滑」の字を書いた紙を貼る。 | 富岡,1935,p.17 |
成木責 | なりきぜめ。果樹責。果樹の豊作を祈る呪術。小正月に、木に向かって「成れ成れ、成らねば切るぞ」と唱える、または、2人一組になって、一方が「成るか成らぬか、成らねば切るぞ」と唱えながら鎌や斧で木を傷つける真似をし、もう一方が「成り申す、成り申す」と答える方法が知られる。 | |
成木責 | 宮崎では、1月14日の昼に、柳の枝で作った棒で柿の木やミカンの木を叩きながら「なれなれ柿の木、ミカンの木、ならずは上ん山キキドンかい、根っかい、葉っかい切って貰うど、千なれ、万なれ、年ぎりやんすな」と唱えた。 | 鈴木,1982 |
成木責 | 埼玉県熊谷では、繭玉を茹でた水を果樹の根元に注ぐ。繭玉を茹でた水には、呪力が宿るといわれる。 | 武田,1943,pp.86-87 |
成木責 | 秋田県平鹿郡では、小正月の夜に、果樹に「伐るぞ」と言って叩く。 | 鈴木,1982 |
成木責 | 新潟県小千谷在では、モグラ除けに使った小槌で木を叩いて「成ると申すか成らぬと申すか」と唱えて、「成ると申す成ると申す」と答える。 | 武田,1943,pp.86-87 |
成木責 | 長野県佐久市内山では、繭玉を茹でた水を果樹の根元に注ぐ。繭玉を茹でた水には、呪力が宿るといわれる。南安曇郡では、2人一組になって家の周囲を回り、一方が鎌を持ちながら木に向かって「成るか成らぬか、成らなきゃ鎌で掻っ切るぞ」と唱え、もう一方が「成ります成ります」と答えながら繭玉を茹でた湯を木にかける。 | 武田,1943,pp.86-87 |
鳴門鎮めの歌 | むかし阿波国の鳴門の渦が激しく鳴ったとき、和泉式部が「ゑのこ草をのが種とて鳴るものを、あはのなるとは誰かいふらん」と詠むと、鳴門の渦が鳴り止んだ。 | |
新嘗祭 | にいなめさい。11月23日に天皇が神嘉殿で新穀を供えて神恩に感謝し、その後、供えた新穀を天皇みずから食ベる祭礼。天皇が即位して初めて行なう新嘗祭を、とくに大嘗祭(だいじょうさい)という。 | 宮内庁 |
苦手の法 | にがてのほう。虫下しの呪術。五指を伸ばし、人差し指の第一関節だけを折り曲げ、「少彦名の神の御手は苦手にて、撫づれば虫の毒となる。下りよさかれよ毒の虫、癒せよ命の虫」と唱えながら、折り曲げた指で患部を撫でる。苦痛が癒える。 | |
苦手の法 | にがてのほう。病気を癒す呪術。五指を伸ばし、人差し指の第一関節だけを折り曲げ、「この手は我が手にあらず、常世にいます久斯の神、少彦名命の苦手なり。苦手をもってまじなえば、いかなる病も癒えずということなし」と唱えながら、折り曲げた指で患部を撫でる。病気が癒える。 | |
にぎの口 | 鹿児島県奄美大島では、魚の骨がのどに引っかかったときは「うふんめのすかま、まつりのすかま、朝せういじて、うふん場いじて、ふかん場いじて、きちきばりいりやの、ぬぶいにかかたる、あきにかかたる、深さらばよろらのれ、あささらばふくのれ」と唱える。にぎとは「魚の骨」の意。 | 茂野,1927,p.201 |
虹に追いかけられたときのまじない | 虹が出たとき、アイヌは「フンナ、エモト、オロケ、エラムペウテク、ネン、カ、エラムペウテク、クナク、エラム、コロ、エエク、シリ」と唱えながら鎌を振って、災いを避けた。「誰もおまえの素性を知らない、誰も知らないと思っておまえは来たのか」の意。 | 木幡,2017 |
日新除魔 | 葛飾北斎は晩年、悪魔を祓い除く禁呪として、獅子の絵を描くのを毎朝の日課にしていた。北斎は、獅子の絵を描くたびに軒下に捨てたが、娘の応為がこっそり拾い集めて保管していた。このことを知った北斎は、ひどく恥ずかしがったという。 | 浮世絵研究会,1944 |
如意輪加星供 | にょいりんかしょうく。羅睺、土曜、水曜、金曜、日曜、火曜、計都、月曜、木曜の星々は九曜と呼ばれ、人の運命に影響を与える。如意輪観音に祈れば、九曜がもたらす凶事は吉事に転じる。 | 豊島,1998,pp.128-129 |
如意輪求聞持法 | 如意輪観音を祀り、記憶力の増大を祈る呪法。 | 豊島,1998,pp.128-129 |
如意輪法 | 如意輪観音を祀り、罪障消滅と福徳を祈る呪法。天平勝宝4年、道鏡が参内して如意輪法を行なった。道鏡は孝謙天皇により重用され、弓削法王と呼ばれた。 | 水鏡 |
鶏の鳴き声が不吉なときのまじない | 鶏が宵のうちに鳴くと、火災などの凶事が起こるという。鶏が宵鳴きしたときは「よい鳴きを悪い鳴きだと思うなよ、隣の宝を取ってこうと鳴く」と唱える。 | 鈴木,1982 |
ニンノウマツリ | 岩手県釜石市栗林町では、年が始まってから210日目に藁人形を作って村外れに持っていき、嵐や流行病を防ぐ。藁人形の腰には、刀のかわりに木の棒を差す。刀の柄にあたる部分には「二百十日の雨、北風大風まで祀ること」と書いた紙を結び付ける。 | 工藤,2011 |
仁王経法 | 大日如来、般若菩薩、不動明王のいずれか一尊を祀り、国家鎮護や七難除滅を祈る呪法。久安元年、彗星が現われたとき、覚法が孔雀経法を、行玄が熾盛光法を、宗雲が七仏薬師法を行なったが、霊験が無かった。定信が仁王経法を行なうと、ようやく災いが祓われた。 | 横内,1996 |
鵺が鳴いたときのまじない | 鵺が鳴いたときは「黄泉つ鳥、我が垣もとに鳴きつれど人しな聞きつ行く魂もあらじ」と唱える。 | 二中歴 |
盗人を見破るまじない | その年の「歳徳神」に供えた昆布を黒焼きにし、酒の中に入れたものを、疑わしい人に飲ませる。その人が盗人なら、頬が腫れる。 | 富岡,1935,p.18 |
猫が暴れるときのまじない | 沖縄県八重山では「大兼久村、あぶね端ぬマヤ、ずーマヤ、ななマヤや、すぶしぬ、さらや、しきかいらし、ういなしういなし」と唱える。おとなしくなる。 | 鈴木,1982 |
猫除けのまじない | 猫が死者の枕元にやってくるのは不吉といわれる。枕元に刃物を置いておく。 | 経済雑誌社,1890 |
鼠鳴 | ねずなき。鼠口。口をすぼめてチュウチュウと音を鳴らしながら、息を吸う呪術。清少納言は「雀の子の、人が鼠鳴すると跳びはねてやって来る様子が、かわいらしい」と枕草子に書いている。 | |
鼠鳴 | 海女は潜水する前に、舟縁で鼠鳴を行なってから海に潜った。 | |
鼠鳴 | 鼠口(ねずぐち)。高知県宿毛市鵜来島では、船霊に神酒を供えたり、釣針を投げるとき、鼠口をした。また沖の島では、漁師が網を投げるとき、豊漁を祈って鼠口をして「ヤットエベスサマ」と唱えた。 | 常光,2003 牧田,1954,p.81 |
鼠鳴 | 釣りをするときや漁で網をしかけるときに鼠鳴を行なうと、魚がよく獲れる。 | |
鼠口 | ねずみぐち。島根県隠岐郡隠岐の島町都万では、釣りで獲物がかからないときは、釣針に唾をかけて「チューオエビス」と唱える。 | 常光,2003 民俗学研究所,1955,p.1172 |
鼠除けのまじない | 屋根裏にアワビを掛けておく。 | 鈴木,1982 |
鼠除けのまじない | 蚕室にネズミが出たときは「大猫在鼠出喰殺急急如律令」と書いた半紙を部屋に貼る。 | 竜沢,1937 |
鼠除けのまじない | 鼠が出る場所に、蓮の茎を置く。鼠が出なくなる。 | 土橋,1922 |
鼠除けのまじない | 鼠が天井裏に住みついたときは、座敷の下の土を取り、水に練って鼠の穴を塞ぐ。100日が経つまでのあいだに、鼠はいなくなる。 | 如舟堂主人,1930 |
熱湯を冷ますまじない | 2本指で風を切り、「天のまないのをんさらさらつと」と3回唱える。熱湯が冷める。 | 竜沢,1937 |
熱湯を冷ますまじない | 熱湯の中に、箸で「氷」の字を21回書き、「さらさらと沸く湯なれども潮凝れば、ねぞこの水も氷とぞなる」と、くりかえし詠みながら合掌する。冷める。 | 榊原,1910 |
寝ている間に起こる災難を防ぐまじない | 寝る前に、天井に向かって指で五芒星を描き、その中に戌の字を書き、戌の字の最後の点を打たずに「誰か来て我に知らせぬものあらば引きや千切れや内の神々」と唱える。災いを避けられる。翌朝、目が覚めたら、最後の点を打ってまじないを解く。 | 高島易学研究所,2015他 |
寝ている間に起こる災難を防ぐまじない | 天井に向かって指で六芒星を描き、その中に戌の字を書き、戌の字の最後の点を打たずに「誰か来て我に知らせぬものあらば引きや千切れや内の神々」と唱える。翌朝、目が覚めたら、最後の点を打ってまじないを解く。旅の途中なら出発するとき最後の点を打つ。 | 経済雑誌社,1890 |
眠れないときのまじない | 「寝ては釈迦、起きては弥陀の立姿、枕の下は浄土なるらん」と唱える。 | 奥村,1967,p.120 |
眠れないときのまじない | 「忘れては打ち嘆かるる夕ベかな、われのみ知りて返る月日を」と唱える。よく眠れる。 | |
眠れないときのまじない | 「忘れても打ち嘆かるる夕ベかな、われのみ知りて返る月日を」と唱える。よく眠れる。 | 如舟堂主人,1930 |
念仏 | 称名念仏。「南無阿弥陀仏」と唱えて、阿弥陀仏を称えること。本来は仏の名号を唱えることをいい、宗派によって唱える文句に違いがある。 | 豊島,1998,p.335 |
能延六月法 | 瀕死の病者の寿命を6か月延ばす呪法。どんな方法でもいいから病者を加持祈祷し、「見我見者発菩提心」「聞我名者断悪修善」「聴我説者得大智慧」「知我心者即得成仏」などと唱えながら種々の印を結ベば、病者の命が強まり、長らえる。 | 豊島,1998,p.171 |
喉に魚の骨がつかえたときのまじない | 「ウガラスが柳の下で昼寝した」と3回唱えながら、喉を3回なでる。骨がとれる。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨がつかえたときのまじない | 「天竺の龍たち渡る鵜ののどを通れや通れ鯛のひら骨、アビラウンケンソワカ」と唱えながら、喉をなでる。骨がとれる。 | 笹,1972,p.542,p.546 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 熊本では「天竺の七ツが池の白鯰、鵜の咽喉通る鯛の骨かな」と3回唱え、「アブラオンケンソワカ」と唱える。 | NDLレファレンス共同DB |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 茶碗に水を入れて、水の上に指で「九龍化骨神護貶」と3回書き、3回唱える。骨が抜ける。 | 一橋閣,1921,pp.168-169 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 茶碗に水を入れて、内側に指で「鳥飛龍下魚作丹丘」と3回書き、3回唱える。骨が抜ける。 | 一橋閣,1921,pp.168-169 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 茶碗に水を入れて箸でかき回しながら、息をつかずに「天竺の天の河原の川上の、ウののど通るタイの骨かな」と声に出さずに3回唱え、3回吹き、これをくりかえしてから、ひといきに水を飲む。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 盃の中に「九龍化骨神侵身」または「十二九龍化骨神侵身」と書き、水を入れて、指でかき混ぜてから飲む。骨が抜ける。 | 如舟堂主人,1930 中村,1935,p.96 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「タイの骨、タイの骨」と唱える。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「ほうせんこ、ほうせんこ」と唱えて、喉をなでる。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「また立ちかえるハギの古里、なむあびらうんけんそわか」と3回唱える。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「伊勢の海、鵜といふ鳥が魚のんで、骨ふきかヘす伊勢の神風」と3回唱え、茶碗の水に息を吹きかけて飲む。骨が抜ける。 | 宮武,1925 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「伊勢の海、千尋の底の一つ石、袖をぬらさず取るよしもがな、あぶらうんけんそばか」と唱える。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「鵜の咽」と3回唱える。骨が抜ける。 | 粟根,1917a 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「鵜の鳥のはがひの上に、はし置て骨かみながせ伊勢の神風」と3回唱えてなでる。骨が抜ける。 | 耳嚢4 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「天竺うるわんの草、根を絶ち草を枯らすぞ、あぶらおんけんそばか」と7回唱える。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「天竺のごんの河原のアイの骨、ウののど通れタイの骨」と3回唱える。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さったときのまじない | 「天竺の竜三川のタイの骨、七瀬落ちる間にはやぬけた」と唱える。骨が抜ける。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さるのを防ぐまじない | 小魚を食ベるときは「ウの笛タイのウオ」と3回唱える。骨が刺さらない。 | 鈴木,1982 |
喉に魚の骨が刺さるのを防ぐまじない | 「トウキセウコン万物一体」または「ドウキセウコン万物一体」と唱える。骨が刺さらない。 | 耳嚢7 鈴木,1982 |
喉にトゲが刺さったときのまじない | 青森では「うしがもりにて、とげさしたり、とげがもりにて、ころもなり、あぶらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
喉にトゲが刺さったときのまじない | 盃の中に「出雲國劔十郎左衛門子孫」と書いて、水を飲む。トゲが抜ける。 | 中村古峡,迷信 |
喉にトゲが刺さったときのまじない | 平皿に水を入れ、指の先で「九龍八音神護身」と3回書いたあと、水を飲む。または「九龍八音神護身」と3回唱え、指の先で「九龍八音神護身」と書いたあと、水を飲む。トゲが抜ける。 | 中村,1935,p.11 |
喉に物がつかえたときのまじない | 盃の中に「九龍化骨神護身」と書き、水を入れて、かき混ぜてから飲む。喉のつかえが取れる。 | 土橋,1922 |
喉に物がつかえたときのまじない | 盃の中に「十二九龍化骨神侵身」と書き、水を入れて、指でかき混ぜてから飲む。喉のつかえが取れる。 | 如舟堂主人,1930 |
喉に物がつかえたときのまじない | 盃の中に「出雲國剣十郎左衛門子孫」と書き、水を入れて、かき混ぜてから飲む。喉のつかえが取れる。 | 土橋,1922 |
ノミ除けのまじない | 菊の花を布団の下に敷く。ノミが出ない。 | |
乗り物酔いを防ぐまじない | 食塩を紙に包んでヘソにあてておく。自動車、電車、船に乗っても酔わない。 | 高島易断所,1935 |
羽蟻除けのまじない | 「はありとは山にすむベきものなれば里ヘおるるは己があやまり」と書いた紙を柱に貼る。羽蟻が出なくなる。 | 日本しろあり対策協会,1975 |
羽蟻除けのまじない | 「羽蟻とは山の朽木に住むものをここに住むとは己が誤り」と長押しなどに書く。 | 鈴木,1982 |
羽蟻除けのまじない | 「今日四ツ時大風」と書いた紙を、羽蟻が出る場所に貼る。羽蟻が出なくなる。 | |
羽蟻除けのまじない | 「双六のおくれの筒に打ちまけて羽蟻はおのがまけたなりけり」と書いた紙を、「ふるヘふるヘと、ふるヘふるヘと」と唱えながら、羽蟻が出る場所に貼る。羽蟻が出なくなる。 | 耳嚢1 |
虫除けのまじない | 「はありとは山のくち木にすむ虫の、さとヘ出づるは、おのがひがごと」と書いた紙を、羽蟻やシロアリが出る場所にさかさまに貼る。羽蟻やシロアリが出なくなる。 | 土橋,1922 |
吠声 | はいせい。警蹕(けいひつ)。天皇が外出するとき、または儀式の進行に応じて、犬の吠え声を真似た掛け声によって魔を祓う呪術。天皇に仕えた隼人が行なった。 | 今,2017 |
蠅除けのまじない | 5月5日の正午に「儀方」の二字を書いた紙を、門戸にさかさまに貼る。蠅が来なくなる。 | |
蠅除けのまじない | 5月5日の正午に「白」の字を書いた紙を、家内の柱にさかさまに貼る。蠅が来なくなる。 | 大高坂,1889 |
蠅除けのまじない | 5月5日の正午に「白おかの口より出る蠅どのをさかさまにして祭りこそすれ」と3回唱え、「白」の字を書いた1寸四方の紙を、四方の柱にさかさまに貼る。蠅が家の中に入らなくなる。 | |
蠅除けのまじない | 旧暦5月5日の正午に「晶」の字を書いた紙を、門戸にさかさまに貼る。蠅が来なくなる。 | 高島易断所,1935 |
蠅除けのまじない | 「自」の字を書いた紙を、四方の柱にさかさまに貼る。蠅が来なくなる。 | 土橋,1922 |
ハカゼを落とすまじない | 冬に山河で凍え死んだ者の霊は、ハカゼになる。ハカゼは生温かい風で、あたると病んだり死んだりする。ハカゼにあたったら家に入る前に蓑を逆さにして「ハカゼ落とし」と3回唱える。治ったときも同じ呪文を唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
歯が抜けたときのまじない | 宮城では「鼠の歯、来年おえろ、おれの歯、今おえろ」と唱えて、下の歯は屋根の上に、上の歯は地面に捨てる。 | 気仙沼,1936 |
歯が抜けたときのまじない | 山口では、上の歯が抜けたら「鼠の歯と替えてくれ」と唱えて縁の下に投げ入れ、下の歯が抜けたら「雀の歯と替えてくれ」と唱えて屋根に投げ上げる。 | 根岸,1991 |
歯が抜けたときのまじない | 秋田県仙北市角館と岩手県陸前高田市では「ネズミの歯は来年生えろ、おれの歯は今生えろ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
歯が抜けたときのまじない | 上の歯が抜けたら「鼠の歯と替えてくれ」と唱えて床下に投げ入れ、下の歯が抜けたら「雀の歯と替えてくれ」と唱えて屋根に投げ上げる。 | 愛媛県,1984 |
歯が抜けたときのまじない | 上の歯が抜けたら「鼠の歯より先に生え」と唱えて床下に投げ入れ、下の歯が抜けたら「雀の歯よりはよう生え」と唱えて屋根に投げ上げる。 | 愛媛県,1984 |
歯が抜けたときのまじない | 千葉県東葛飾郡では「鬼の歯とかわれ、ネズミの歯とかわれ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
歯が抜けたときのまじない | 福井では、上の歯が抜けたら「下向いて生えてくれ」と唱えて軒下の雨垂れの落ちるところに投げ、下の歯が抜けたら「上向いて生えてくれ」と唱えて屋根に投げ上げる。 | 根岸,1991 |
歯が抜けたときのまじない | 「おれの歯早く生えろ、鬼の歯おそく生えろ」と3回唱えて、下の歯は屋根の上に投げ、上の歯は下に投げる。 | 置賜民俗学会,1985,p.202 |
歯が抜けたときのまじない | 「鬼の歯生えるな、俺の歯生えろ」と唱えて、下の歯は屋根の上に投げ、上の歯は縁の下に投げ入れる。 | 根岸,1991 |
化物を退治したまじない | たのきゅう兵衛という旅役者が峠の小屋に泊まると、男に化けた狸が現われた。ふたりは恐ろしいものを尋ね合い、役者は「金」、狸は「松やにと酒」と答えた。翌日、役者が村人にこのことを話すと、村人は狸を退治した。狸は仕返しに、お金の入った箱を役者に投げつけた。 | 岡田,2012 |
化物を退治したまじない | 旅の坊主が、化物が出るという寺に泊まると、蜘蛛が現れた。ふたりは恐しいものを尋ね合い、坊主は「金」、蜘蛛は「箒のようなもの」と答えた。蜘蛛が銭を撒いたので、坊主は銭を懐に入れた。坊主が村人にこのことを話すと、村人は蜘蛛を退治し、坊主は寺の住職になった。 | 岡田,2012 |
はごさんくゎ | 「憎い子」の意。鹿児島県奄美では、子供が悪いものに命を取られるのを恐れて、子供のことをこのように呼ぶ。 | 小川,2005 |
初めて訪れる家に行くときのまじない | 手のひらに「水」の字を書く。 | 佐々木,1910 |
八字文殊法 | 文殊八字法。文殊菩薩を祀り「オンアビラウンキャシャラ」と唱えて、鎮宅、除災、除病、怨敵降伏などを行なう呪法。嘉祥3年、任明天皇の病気平癒を願って、円仁が八字文殊法を行なった。 | 蘇,2011 |
蜂に刺されたときのまじない | クマバチに刺されたときは、刺された跡のまわりに「九」の字を3回書く。 | 愛媛県,1984 |
蜂に刺されたときのまじない | どんな石でもかまわないので、手近にある石を急いでひっくり返す。 | |
蜂に刺されたときのまじない | 蜂に刺された跡のまわりに「九」の字を9回書いて「アビラウンケンソワカアビラウンケンソワカ」と唱える。八は九で止まるからだという。 | 愛媛県,1984 |
蜂に刺されたときのまじない | 蜂に刺された跡の上から「や」の字を2回書く。 | |
蜂に刺されたときのまじない | 「なむあベらうんけんそわか」と3回唱え、指に息を吹きかけて、蜂に刺された跡を撫でる。 | 根岸,1991 |
蜂除けのまじない | 茨城県猿島郡では「させばさせ王の虫、一寸もさせ、アビラウンケン」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 宮城では、山に入る前に「アブラウンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 群馬県利根郡では「アブラウンケンソワカ」と紙に3行書いて、体をなでる。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 口笛を吹く。蜂が近づかず、刺されなくなる。 | 常光,2003 |
蜂除けのまじない | 香川では「インイチが一、ニニンが四、ニサンが六、ニシが八」と唱えながら、親指から順に指を折って握り込む。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 山形では「わだの原こぎいでてみればひさかたの、くもりにまごう沖津白波」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 新潟県東蒲原郡では「アブラホンケンソワカ」と唱えながら、額の前で指を3回まわす。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 千葉では「オオノムシ、サスナラサセ、一寸、アブラウンケンソワカ」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 奈良では「カマカマ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蜂除けのまじない | 「ごうむしょうじょう、にしょごしん、あびらうんけんそわか」と3回唱える。刺されない。 | 根岸,1991 |
蜂除けのまじない | 「むしょじゅうにしょごしむをんしょ」または「をんむしょじゅうにしょごしむをんしょ」と数回唱える。刺されない。 | 富岡,1935,p.21 |
蜂除けのまじない | 「我も弁慶、彼も弁慶、五条の戦い忘れたか、アブラハンケンソワカアブラハンケンソワカ」と唱える。刺されない。 | 愛媛県,1984 |
蜂除けのまじない | 「呼無所住二所五シム呼ショ(をんむしょぢゅうにしょごしむをんしょ)」と3回唱える。刺されない。 | 佐々木,1910 |
蜂除けのまじない | 「南無ミョウアカ」と唱える。 | 耳嚢7 |
蜂除けのまじない | 「蜂、蜂、ごめんだ、おいらはまだ赤んぼだ」と唱える。刺されない。 | 今井,1982 |
抜歯したときのまじない | 「鬼の歯と取り替えてくれ」と唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
馬頭観音法 | 馬頭観音を祀り、あらゆる凶事を退ける呪法。忿怒相の馬頭観音を供養すれば、周囲40里以内に悪魔は入り込めず、鬼神は近寄ることができなくなる。 | 豊島,1998,p.81 |
鼻血を止めるまじない | 紙を八つ折りにして、汲んだばかりの水に浸し、頭の上に置く。 | 一橋閣,1921 |
鼻血を止めるまじない | 白紙に「止止不須説」と書いて、血の出る方の手の小指に結ぶ。 | 西村,1922,p.35 |
鼻血を止めるまじない | 鼻から出た血で、額に「今日血留」と書く。 | 西村,1922,p.35 |
鼻血を止めるまじない | 「きらきらときらめくうらの騒ぐ血も、その声聞けば流れとどまる、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
鼻血を止めるまじない | 「熱田の宮の木隠れに色ある娘とまらざりけり」と3回唱える。 | |
鼻結びの糸 | くしゃみをすると命に関わるといわれていた。生まれて7日以内の赤ん坊がくしゃみをしたときは、くしゃみをした回数だけ糸に結び目をつくって、災いを防いだ。 | |
はねつき | 羽子板で羽根を打ち合う、正月遊びの一つ。子供の厄病除けのために行なわれる。 | NDLレファレンス共同DB |
破風 | はふ。破風板。切妻屋根の端に付ける山形の板。破風は、鬼などの出入り口になるといわれる。渡辺綱に腕を切り落とされた鬼は、綱の屋敷に来て腕を奪い返すと、破風を通って逃げ去った。このため、綱の領地だった京都府京丹後市常吉では、破風のある家を建てない。 | 人文機構,2017 |
ハブ除けのまじない | 沖縄県竹富島では「今日ぬ夜や大和からつづ割り坊主ぬ出立ち給るんどう。ギンサーや胴、しじみりょう。隠むなて頭踏んつきらりた、頭ぬ切しるんどう。腹踏んつらぬいた腹ぬ切しるどう。南無阿弥陀仏」と7回唱えながら夜道を通る。 | 根岸,1991 |
ハブ除けのまじない | 「じゅうろくにち、じゅうろくにちや、うがでぃ、おしりょんかな、ながむん、いきゃわしとーんな」と唱える。ハブを避けられる。「16日、16日は、拝んであげますから、ハブに行き会わないようにしてください」の意。奄美に伝わるこのような呪文を、クチという。 | 小川,2005 |
破魔鬼 | はまき。愛媛県西条市の伊曽乃神社で授与される、烏天狗に似た、小型の鬼の面の形をした御守。正月から床の間や居間、玄関などに飾ると、開運厄除や家内繁栄の利益がある。伊曽乃神社では、古くから、祭礼の警護や取締りにあたる「鬼頭」という一団を組織している。 | 畑野,2011 |
破魔矢 | はまや。魔除けのために、神社や寺院で授与される矢。正月の縁起物とされる。 | |
早起きするまじない | 寝る前に「ほのぼのと明石の浦の朝霧に島かくれゆく舟をしぞ思ふ」と唱える。 | 沖野,1920,p.357 奥村,1967,p.119 |
祓い | はらい。罪穢れを払い清める呪術。神事に際して祓いを行なうことを、とくに修祓(しゅばつ)という。 | |
針が刺さったときのまじない | 針が刺さって怪我をしたときは、ハサミで傷口を叩く。 | 根岸,1991,p.153 |
晴乞いのまじない | 油揚げをトビに捧げる。晴れる。 | |
晴乞いのまじない | 「天は五穀を生じて、もって人民を養う。いま天、雨ふりてやまず。もって五穀をやぶる。いかんぞ、いかなる霊にして幸いせず。牲を殺して、もって賽神す。霊には、すなわち鼓を鳴らすをやめず、これを攻むるに朱緑の縄索もてす。しかしてこれを脅かす」と唱える。 | 哲学館 |
晴乞いの歌 | 建暦元年、洪水が続いたとき、源実朝が「ときにより、すぐれば民のなげきなり、八大龍王、雨やめたまヘ」と詠んで、雨が止むよう神仏に願った。 | 本山,1934 |
晴乞いの歌 | 春日祭で雨が降ったとき、烏丸光広が「ふらばふれ、三笠の山の雨なれば、さしては何かくるしかるベき」と詠むと、雨が止んで晴れた。 | 通俗教育研究会,1902,pp.39-40 |
半夏生 | はんげしょう。夏至から11日目を半夏生といい、この日は仕事を休む日とされ、鍬を取るなという。鹿児島市郡山町では、やむを得ず鍬を取るときは、呪われることが無いように、鍬をひっくり返してから取ると良いという。 | 鹿児島市,2006 |
般若心経 | 摩訶般若波羅蜜多心経。読経すれば災いを除き、疫病を退けられる。狐に憑かれて病んだ娘の母親が、白隠に助けを求めて来た。白隠は「野狐を除く法を知らない」と固辞したが、なお母親は懇願した。効果があるか分からないまま、白隠が般若心経を読んで護符を授けてみると、娘は快癒した。 | 釜斯幾 |
ハンペー | 北海道網走郡美幌町で使われる山言葉。山中で何者かに呼びかけられたときは、最初は聞き流し、2回目も聞き流し、3回目にこう答える。呼びかけてきたのが魔性のものなら、言葉の意味が分からず引き返すので、難を逃れられる。勇払郡むかわ町穂別では「カッチー」と言う。 | 知里,1961 |
火危うし | 怪異を退ける呪文。源氏と夕顔が廃院で眠っていると、物の怪に襲われる気配に源氏が目を覚ました。源氏は随身に弦打ちをするように命じ、随身は「火危うし」と唱えながら弓の弦を打ち鳴らした。 | 源氏物語 |
柊鰯 | ひいらぎいわし。焼嗅(やいかがし)とも。ヒイラギの小枝とイワシの頭を組み合わせた、魔除け飾り。節分に門戸に挿せば、ヒイラギの葉の棘とイワシの臭気を嫌って、鬼が近づかなくなる。 | 常光,2019 |
火打石 | 火を起こすために使用される石。石を打ち合わせることで、火花を発生させる。外出する人に火花を振りかければ、魔を退け、災いを避けられる。 | NDLレファレンス共同DB |
飛雲を退けた呪文 | 飛雲という鬼神に殺されそうになった山伏が、飛雲を退けるために唱えた。「東方に降三世明王、南方に荼利夜叉明王、西方に大威徳明王、北方の金剛夜叉明王、中央に大日大聖不動明王、オンコロコロセンダリマトオギオンアビラウンケンソワカ」 | 謡曲飛雲 |
火返し | ひかえし、ヒゲーシ。火魂返し。火事が起こったとき、延焼や再発を防ぐために、人々が大声を上げる呪術。沖縄県国頭郡では、火事が起こった3日後に、各戸の門前に水を満たした桶を置き、村外れに建てた小屋に火を付けて「ホーハイホーハイ」と唱えながら水を撒く。 | 島袋,1929 |
火返し | ひかえし。火事が起こったとき、延焼や再発を防ぐために、人々が大声を上げる呪術。 | |
火返し | ひかえし。火難の兆候があるとき、火事の騒動の真似事をして、火難を避ける呪術。 | 島袋,1918 |
引取の加持 | ひきとりのかじ。人間に憑いた生霊や死霊を退散させたあと、病者の邪気を引取紙に移す呪法。 | 豊島,1998,p.252 |
蟇目 | ひきめ。祝詞や願いごとを唱えて、または「ひふみよいむね、こともちろらね、しきるゆいとは、そはたまくめか」と唱えて、鏑矢を射る呪法。鏑矢が発する音と、弓の弦の音が、魔を祓う。天下泰平、怨敵降伏、狐狸退治、病気平癒、縁切縁結などを願って行なう。 | 豊島,1998,p.283 宮永,1914,pp.49-50 |
蟇目 | ある男が、息子が狐に憑かれたので蟇目で祓ってほしいと弓術師範に頼んだ。承諾した師範は男を帰らせると、息子を射的の台に縛りつけ、弟子たちに矢の稽古を始めさせた。矢がたびたび的をはずれて体をかすめるので、狐は慌てて逃げ去った。 | 耳嚢3 |
蟇目 | 建武元年、紫宸殿の上に「いつまでいつまで」と鳴く怪鳥が現われた。後醍醐天皇は、怪鳥を射殺すよう真弓広有に命じた。広有は狩股を抜いた鏑矢を放って、怪鳥を射殺した。 | 太平記広有射怪鳥事 宮永,1914,pp.49-50 |
蟇目 | 仁平3年、近衛天皇は夜な夜な御殿の上に現れる怪鳥を蟇目鳴弦で鎮めるよう、石川秀門に命じた。秀門は失敗することを恐れて辞退し、かわりに源頼政が怪鳥を射殺した。 | 石川五右衛門伝記今古実録1 宮永,1914,pp.49-50 |
英彦山がらがら | 福岡県の英彦山の麓に伝わる、朱と群青で彩色し、藁をつけて束ねた土鈴。門戸に吊るせば魔除けや厄除け、田畑に埋めれば害虫除けの利益がある。慶雲2年、飢饉があり、文武天皇が英彦山に使いを出して祈願したところ、霊験があった。翌3年、天皇は鈴を奉納した。このことにちなむ。 | 畑野,2011 |
彦山豊前法 | 大天狗・豊前坊とその眷属である天行と飛行を祀り、天狗経を唱えるなどして悪魔怨敵を滅ぼす呪法。 | 豊島,1998,p.175 |
菱餅 | ひしもち。3月3日の桃の節句の、雛祭のときに供える菱形の餅。多くは赤、白、緑の三段に色分けされる。赤は魔を祓う桃の花を、白は白酒と清浄を、緑は邪を祓う蓬を意味するという。 | NDLレファレンス共同DB |
毘沙門天法 | 毘沙門天を祀り、福徳や息災、戦勝や怨敵降伏を祈る呪法。「オンベシラマンダヤソワカ」 | 豊島,1998,pp.56-62 |
人形 | ひとがた。紙などを人の形に切り取った呪具。穢れを祓ったり病気を治すために、その人の体を人形で撫でることで穢れや病気を人形に移す呪法を、撫で物という。 | |
人が目を回したときのまじない | 人が目を回して、名前を呼んでも気がつかないときは、建物の屋根に登って瓦をめくり、その人の名前を呼ぶ。気がつく。 | |
人魂を見たときのまじない | 「玉は見つ、主は誰とも知らねども結び止めつ、したがヘのつま」と唱えて、着物の端を結ぶ。 | 二中歴 経済雑誌社,1890 |
一片之火 | ひとつびとぼす。ひとつだけ火を灯すこと。イザナギは、死んだイザナミと再会するため黄泉国を訪れた。イザナギが櫛の歯を折って火を灯すと、イザナミの体に蛆が這いまわり膿が噴き出しているのが見えた。このため、夜にひとつだけ火を灯すことは忌み嫌われると、日本書紀は伝えている。 | 日本書紀 |
人に会いたくないときのまじない | 「たまは見つ、ぬしのは誰ともしらねども、むすひとどめつ、したかひのつま」と唱える。会いたくない人に、道中で会わなくなる。 | |
人に会いたくないときのまじない | 「西南辰巳をさして行人ぞかみの行ゑにあひとふもなし」と唱える。会いたくない人に、道中で会わなくなる。 | 尾崎,2014 |
人に家を出入りさせないまじない | 他人に知られずに、美しい土器の真ん中に「一」の字を朱書し、一の字の肩に出入りさせたくない人の名前を書き、一の下に「止」と墨書し、もうひとつ土器を重ねて蓋をし、黄色い紙で包んで十字に縛り、門戸の地下5尺に埋める。相手が出入りしなくなる。 | 青木,1913 |
人に口論をさせる呪術 | 天狗が使う呪術。勝向の印を結び、その指のあいだから、人に向かって息を吹いて「アミウン、ザンダラリヤ、ウン」と唱える。たちまち口論が起こるという。 | 宮地,1940 |
人にとり憑いた物の怪が死霊か生霊か判別するまじない | 葵の上に物の怪がとり憑いた。物の怪が死霊か生霊か見極めるために、照日の巫女が「より人は今ぞ寄りくる長浜の芦毛の駒に手綱ゆりかけ」と唱えると、葵の上にとり憑いたのは六条御息所の生霊であると分かった。 | 謡曲葵上 |
人にとり憑いた魔を離す呪法 | 人が魔にとり憑かれたら「付くも不肖付かるるも不肖、一時の夢ぞかし、生は難の池水つもりて淵となる。鬼神に横道なし。人間にうたがいなし。教化に付かざるに依りて時を切ってすゆるなり。下のふたつヘも推してする」と唱えて、足の裏に3つ灸をする。魔が離れる。 | 宮地,1940 |
人の顔を鬼に変え、また元に戻す呪法 | 天狗妖怪術。場所の良い神社仏閣を選び、その社殿に99人の男を集める。車座になり、火を灯した蝋燭を左から右ヘ渡しながら「天」の字がつく熟語をひとりずつ言っていき、火が消える前に99人目に蝋燭を渡すと、その男の顔が鬼に変わる。また、車座になったまま、蝋燭を左から右ヘ渡しながら「地」の字がつく熟語をひとりずつ言っていき、火が消える前に99人目に蝋燭を渡すと、その男の顔が元に戻る。 | 秘術研究館,1917,pp.38-39 |
人前で緊張しなくなるまじない | 手のひらに「人」の字を3回書いて舐める。緊張しない。 | 土橋,1922 |
人を即座に気絶させるまじない | 「あんたりをん、そくめつそく、びらりやびらり、そくめつめい、ざんざんきめい、ざんきせい、ざんだりひをん、しかんしきじん、あたらうん、をんぜぞ、ざんざんびらり、あうん、ぜつめい、そくぜつ、うん、ざんざんだり、ざんだりはん」と唱えて、一拍手する。 | 豊島,1998,p.203 |
人を呪わば穴二つ | 人が他者を呪い、災いをもたらしたり命を奪おうとすることを呪詛という。呪詛した者は、呪詛された者と同じように災いに遭い、死んでも成仏せず、邪霊や悪霊となって苦しみ続ける。 | 豊島,1998,p.230 |
雛人形 | 3月3日の桃の節句の、雛祭のときに飾る人形。女児が行なった人形遊びが、穢れを祓うための形代と同化したもの。人形を片付けるのが遅れると穢れを祓えなくなるため、不吉とされた。人形を片付けるのが遅れると嫁入りできないといわれるのは、このことに関連する。 | NDLレファレンス共同DB |
火伏せ | ひふせ。火勢を弱め、あるいは火難を避ける呪術。群馬県勢多では、1月最初の辰の日に手桶に汲んだ若水を、杓子ですくって屋根の四隅にかける。 | 今井,1941 |
火伏せ | ひふせ。火防。「聖主天中天迦陵頻伽声」と唱えれば、火難を避けられる。 | 田所,1889,p.29 |
火伏せ | 火勢を弱める呪術。甲斐国西島の望月幸兵衛の弟は、秋葉山で修行して法印と呼ばれていた。ある日、紙屋の主人に「あなたの祈祷などききっこない」と言われた法印は、紙屋の竈に向かって呪文を唱えた。竈で煮炊きができなくなった紙屋は、法印に詫びて火伏せの術を解いてもらった。 | 中富町,1971 |
ひふみ詞 | ひふみ祓詞。「ひふみよいむなやこともちろらねしきるゆゐつわぬそをたはくめかうおゑにさりヘてのますあせえほれけ」と唱えれば、魔を祓える。 | 豊島,1998,p.286 |
秘密陀羅尼成就法 | 伎芸天を祀り、技能の上達や芸事の成功を祈る呪法。「ナウボマケイジンバラヤオンキマボウシキャヤソワカ」 | |
白衣観音法 | 九曜息災大白衣観自在法。白衣観音を祀り、兵乱や災害を治める呪法。「オンシベテイシベテイハンダラバシニソワカ」 | |
白衣観音法 | 天慶3年、東国で平将門が、西国で藤原純友が乱を起こしたのを受けて、賀茂忠行が白衣観音法を行うよう奏上し、神護寺の寛静が修した。 | 高楠,1931,pp.226-227 |
百万遍 | 百万遍念仏。1080珠の大数珠を繰り回しながら、念仏をくりかえし唱える呪法。ひとりが100万遍唱えるのではなく、大人数で一斉に唱えることで100万遍唱えたと見なす。 | 豊島,1998,p.335 |
百鬼除けのまじない | 百鬼夜行避けのまじないとしても知られる。「東海の神、名は阿明。西海の神、名は祝良。南海の神、名は巨乗。北海の神、名は禺強。四海の大神、百鬼をしりぞけ、凶災をはらわん、急々如律令」と唱えれば、妖怪や悪霊を避けられる。 | 宮地,1934 |
百鬼夜行から逃れるまじない | 釈迦如来の頭頂部の盛り上がりを神格化したものを仏頂尊といい、仏頂尊に奉げられた呪文を仏頂尊勝陀羅尼という。陀羅尼を書きつけた紙を持つと、百鬼夜行の難から逃れられる。藤原常行は夜遊びの途中に百鬼夜行に遭い、鬼に捕まりそうになったが、仏頂尊勝陀羅尼を書きつけた紙が服に縫い付けてあったので、鬼は陀羅尼の霊験を恐れて逃げ去った。 | 今昔依尊勝陀羅尼験力遁鬼難語 |
百鬼夜行に遭ったときのまじない | 「かたしはや、ゑがせせくりにかめる酒、手酔ひ足酔ひ我酔ひにけり」と唱える。難を逃れる。 | 二中歴 |
病気を治す歌 | 大江匡衡の息子・挙周が病にかかったとき、匡衡の妻・赤染衛門が「代はらむと思ふ命は惜しからでさても別れんほどぞ悲しき」と書きつけた御幣を住吉神社に奉納すると、挙周の病は癒えた。 | 今昔大江匡衡妻赤染読和歌語 |
病気を治すまじない | 人が病気になったとき、アイヌは病者を木にもたれかけさせて「クルコトゥナシノウウェポタラ」と唱え、病気が治るよう木に祈った。樹の神に認められれば病気は癒え、認められなければ祈った人が病気になった。 | 佐賀,2020 |
病気を治すまじない | 風法。かざほう。鹿児島県奄美大島では、人が病気になったときは、清水で満たした瓶に向かって巫女が呪文を唱えて、その水を病者に飲ませた。 | 茂野,1927,p.197 |
拍子木 | ひょうしぎ。2本一組の細長い角棒を、長い紐でつないだもの。棒同士を打ち合わせることで、高く澄んだ音を発し、怪火や水魔の類を退ける。 | |
病者を見舞うときのまじない | 手のひらに「鬼」または「除」の字を書く。 | 二中歴 佐々木,1910 |
干珠満珠土鈴 | 山口県下関市の忌宮神社で授与される、2個一対の土鈴。仲哀天皇2年、神功皇后は豊浦の海中で、潮乾珠と潮満珠という2つの宝珠を拾った。皇后が三韓征伐に向かったとき、宝珠の霊験によって敵軍を翻弄し、勝利した。凱旋した皇后は、宝珠を忌宮神社に奉納した。このことにちなむ。 | 万造寺,1936 |
昼寝するときのまじない | 野原の木陰などで昼寝するときは「茅萱に昼寝して、茅萱芝に突き通された、蕨の恩を忘れたか」と唱える。 | 今井,1982 |
枇杷 | ビワ。バラ科の常緑高木およびその実。ビワの木の棒で叩かれると骨と肉が離れ、傷は治らず、叩かれた人は3年以内に死ぬという。 | 鈴木,1982 |
日を選ばずに外出するときのまじない | 「阿迦門阿羅迦尼佛道」と2回唱える。 | 二中歴 |
火を起こすときのまじない | 火を起こすとき、2人が同時に火を吹くのは不吉とされる。2人が同時に火を吹くときは、一方が「火吹いた」、もう一方が「灰吹いた」と唱える。災いを避けられる。 | |
火を起こすときのまじない | 2人が同時に火を吹くときは、一方が「カラス」、もう一方が「トンビ」と唱える。災いを避けられる。 | 鈴木,1982 |
火を起こすときのまじない | 2人が同時に火を吹くときは「臼杵」と唱える。災いを避けられる。 | |
風毒加持法 | 風邪を治す呪法。諸神を祀り、祝詞を唱えて「鬼国より吹き来る風は悪魔風、今吹き帰せ伊勢の神風」と3回唱え、「病ならいづれ外山にすベきに里はここなりいざかヘれいね」「風にのり熱けもよふす神息は天に涼しき法にさめけり」の神歌を唱えるなどする。 | 柄沢,1926,p.43 |
吹加持 | ふきかじ。人が鬼病や悪病にかかったときは、「梵天王魔王自在大自在、除其衰患令得安穏、諸余怨敵皆悉摧滅」と3回唱え、左の人差し指で3回弾く。 | 豊島,1998,p.249 |
吹加持 | ふきかじ。妖魔や病魔の気配を感じたときは、目を閉じ、宙に「三鬼」の字を書き、「梵天王魔王自在大自在、除其衰患令得安穏、諸余怨敵皆悉摧滅」と3回唱え、「曠野険隘処、獅子象虎狼」と唱えて3回弾指し、目を開き、気配に向かって息を吹きかける。妖魔が退散する。 | 豊島,1998,pp.250-251 |
拭取の加持 | ふきとりのかじ。昔は、邪気や怨念などの障りを払拭したあと、病者の邪気を拭取紙でぬぐって川に流した。 | 豊島,1998,pp.254-255 |
不空羂索観音法 | 不空羂索観音を祀り、除難と守護を祈る呪法。「オンアボキヤビジャヤウンハッタ」 | 豊島,1998,pp.88-89 |
復縁のまじない | 四つ切にした白紙に「ばらの花、針のあるのも知らずして」と書き、相手の年齢と名前を書いて、箱に入れて密封し、人から見られないように自室に置く。近いうちに復縁する。 | 鈴木,1982 |
腹痛を止めるまじない | 一心に「秋風は冬のはじめに立つものを木草も枯れて蟲もしづまる」と唱える。 | |
腹痛を止めるまじない | 宮城では「つつんぽんぽん、こがねがさらさら」と唱える。つつんぽんぽんは、ちちんぷいぷいの転。 | NDLレファレンス共同DB |
腹痛を止めるまじない | 「秋過ぎて、冬のはじめは十月に、霜がけだけは虫の子もなし」または「秋過ぎて、冬のはじめは十月に、霜がけだけは蟲の音もなし」と唱える。 | 経済雑誌社,1890 日本神霊教会,1919 |
腹痛を止めるまじない | 「秋過ぎて、冬のはじめは十月に、霜枯れゆかば虫の子もなし」と3回唱えて、しずかに腹を撫でる。 | 佐々木,1910 |
腹痛を止めるまじない | 「秋風は冬のはじめに立つものを木草もかるる虫もしづまる」と唱える。 | 経済雑誌社,1890 |
福徳増長須弥功徳王如来 | ふくとくぞうちょうすやこうどくおうにょらい。ふくとくぞうちょうしゅみくどくおうにょらい、とも。良い夢を見たときは「福徳増長須弥功徳王如来」と3回唱える。吉事がある。 | |
福徳増長須弥功徳神変王如来 | ふくとくぞうちょうしゅみくどくじんペんおうにょらい。良い夢を見たときは「福徳増長須弥功徳神変王如来」と3回唱える。吉夢の効験が長く続き、吉事がある。 | |
服の汚れを落とすまじない | 「蒔かなくて何を種とて浮草の波のうねうね生い茂るらん」と3回唱えてから服を洗う。服の汚れが落ちる。 | |
普賢延命法 | 延命法。普賢菩薩を祀り、安産や延命長寿などを祈る呪法。 | |
巫蠱 | かつて律令によって禁じられていた呪術。蠱毒や厭魅と混同されることがある。呪詛。 | |
巫蠱 | 寛仁元年、県犬養姉女は称徳天皇の髪を盗んで、佐保川で拾った髑髏に髪を入れて宮内に持ち込み、3回にわたって天皇を呪詛したとして配流された。のちに丹比乙女による讒言だったことが判明し、県犬養姉女は復権した。 | |
巫蠱 | 宝亀3年、井上内親王は巫蠱を行なって光仁天皇を呪詛したとして、皇后を廃された。後に難波内親王を呪詛したとして、息子である他戸親王とともに幽閉された。数年後、母子は同じ日に死んだ。 | |
賦算 | ふさん。「南無阿弥陀仏、決定往生六十万人」と書かれた念仏札を配ること。一遍が初めて行なった。念仏札を受け取れば、信仰の有無に関係なく阿弥陀仏に救済され、浄土に往生できる。一遍が賦算を続ける是非に迷ったとき、熊野権現が現われて「一切の衆生が浄土に往生することは、阿弥陀仏によってすでに決定されている」と語り、念仏札を配り続けるよう一遍に告げた。 | 豊島,1998,pp.341-343 |
富士塚 | 富士山を模して築かれた塚。古くは富士山から取ってきた溶岩を使って塚を築き、塚の頂上で浅間神を祀った。富士登山の出発に際しては富士塚で安全を祈願し、下山したら無事を感謝した。 | 小川,2015 |
巫術 | 巫女が行なった方術。僧や尼が行なうことが僧尼令によって禁じられ、違反者は還俗させられた。 | 中島,2017 |
符書 | 呪符。まじないに使用する札のこと。厭魅とともに、かつて養老律令の賊盗律によって作成が禁じられていた。 | 養老律令 |
不浄を祓うまじない | 病者を見舞うとき、烏、犬、鼠、狐の鳴き声が聞こえるのは不浄とされた。手を合わせて「ちはやぶる神代のからす告げさして、いつしかはらん本のウンケン」と3回唱え、「七難即滅七福即生寿命長遠急々如律令」と唱えると、災いを避けられる。 | |
防ぎ | ふせぎ。村に災いを入れないために、村の入口に飾られた魔除けの作り物。 | 埼玉県,2009 |
仏眼仏母法 | ぶつげんぶつもほう。仏眼法。仏の眼を神格化した仏眼仏母を祀り、息災や増益を祈り悪鬼を教え導く呪法。悪鬼を折伏する一字金輪法は他のいかなる呪法の効果も失わせるが、仏眼仏母法だけは一字金輪法に対抗できる。「オンボダロシャニソワカ」「ノウマクサンマンダボダナンオンボダロシャニソワカ」 | 豊島,1998,p.127 三崎,1964 |
仏眼仏母法 | 文治3年、行方をくらませた源義経の発見を命じられて、勝賢が仏眼仏母法を行なった。 | 豊島,1998,p.127 |
仏頂尊勝陀羅尼法 | 仏頂尊勝法、尊勝法。釈迦如来の頭頂部の盛り上がりを神格化した仏頂尊を祀る呪法。仏頂尊に奉げられた呪文を仏頂尊勝陀羅尼という。除病や延命、降雨などを祈ったり、煩悩を除き、罪を滅ぼすために行なう。「ナマサマンダボダナンカロンビギラナハンソウシュニシャソワカ」 | 豊島,1998,p.124 |
仏頂尊勝陀羅尼法 | 永祚元年、不吉な夢を見た円融法王は、一条天皇のために、尊勝法と焔摩天供と泰山府君祭を行わせた。 | |
仏頂尊勝陀羅尼法 | 延長3年、旱魃が起こったとき、尊意が仏頂尊勝法を行なうと4日目に雨が降った。 | 納冨,2015 |
仏頂尊勝陀羅尼法 | 嘉永6年、孝明天皇の皇子・祐宮が病に罹ったとき、願海が尊勝仏頂尊勝陀羅尼法を行なって病を癒した。のちに皇子は即位し、明治天皇となった。 | |
仏頂尊勝陀羅尼法 | 嘉祥2年、文徳天皇と后・藤原明子のあいだに子供が生まれないことを案じた父・良房が、真雅に尊勝法を行なわせ、翌3年、惟仁親王が生まれた。のちに惟仁親王は即位し、清和天皇となった。 | 納冨,2015 |
仏頂尊勝陀羅尼法 | 弘安4年、蒙古が襲来したとき、叡尊が石清水八幡宮の神前で陀羅尼を唱えて必勝を祈ると、大風が吹いて蒙古軍の兵船はみな沈んだ。 | |
仏頂尊勝陀羅尼法 | 天慶2年、旱魃が起こったとき、尊意が尊勝法を行なうと7日目に大雨が降った。 | 納冨,2015 |
不動王生霊返し | 呪詛返しのまじない。人に呪詛されたときは「不動明王、火炎不動王、波切不動王、大山不動王、吟伽羅不動王、吉祥妙不動王、天竺不動王、天竺逆山不動王」「打ち式、返し式、まかだんごく、計反国と、七つの地獄ヘ打ち落とす。おんあびらうんけんそわか」と唱える。呪詛を返せる。 | |
不動金縛法 | 九字を切って「ゆるく共よもや許さず縛りなは、不動の心あるに限らん」と一息に3回唱える。 | 佐々木,1910 |
不動金縛法 | 「ゆるくとも、よもや許さず縛り縄、不動の心あるにかぎらん」と唱えて種々の印を結び「オンビシビシカラカラシバリソワカ」と唱えて、縛の印を結ぶ。相手は立ちすくみ、身動きができなくなる。 | |
不動金縛法を解く法 | 解綱法、解縛法。「年を経て、身妨ぐる荒神も、みな立ち去りて千代と見せる」と唱えて、九字を逆に切る。金縛りが解ける。 | 柄沢,1916,p.46 |
不動金縛法を解く法 | 解綱法、解縛法。外五股印を結び、慈救咒を唱えて加持したのち、「行者、今、からめの綱を解き、ほとほと三途の道に放ち道ぎり」と唱え、さらに「オンアビラウンケンソワカ」と3回唱える。金縛りが解ける。 | 豊島,1998,pp.147-148 |
不動金縛法を解く法 | 解綱法、解縛法。縛の印を解いて「玉垣の結びの綱目打ちとけて、葉さし枝さし障るものなし」と3回唱える。金縛りが解ける。 | |
不動金縛法を解く法 | 「東方降仁世明王、南方軍多利夜叉明王、西方大威徳夜叉明王、北方金剛夜叉明王、中央大日大照不動明王」と一息に3回唱える。 | 佐々木,1910 |
不動真言 | 不動明王の霊験を得る呪文。小咒、一字咒。「ノウマクサンマンダバザラダンカン」 | |
不動の伽羅縛りのまじない | 西に向かって「天地中央、四夜叉明王」と唱えて、「願くは不動尊、縛し給ヘ南無菩薩南無佛」と3回唱える。どんな悪者も泥棒も身動きができず、手出しして来なくなる。 | 陽新堂主人,1928 |
不動の伽羅縛りを解くまじない | 「願くは不動尊、ゆるし給ヘ」と唱えて、「シャタウシ、ハンマク」と3回唱え、智拳印を結ぶ。 | 陽新堂主人,1928 |
不動法 | 不動明王を祀り、除病や延命を祈る呪法。延喜3年、醍醐天皇の后・藤原穏子は臨月に際して、邪気に悩まされていた。兄・時平が、無動寺の相応を呼んで不動法を行わせると邪気は退き、穏子は保明親王を産んだ。 | 檜垣,1994 |
不動明王秘呪一切成就法 | 不動明王の火界咒を唱えて、一切の煩悩を焼き払い、魔王を降伏し、諸願を成就する呪法。「ノウマクサラバタタギャテイビャクサラバボッケイビャクサラバタタラタセンダマカロシャダケンギャキギャキサラバビギナンウンタラタカンマン」 | 豊島,1998,p.93 |
太占 | ふとまに。占いのこと。はじめ、イザナギとイザナミの国生みは失敗が続いた。二神が失敗の原因を天神に尋ねると、天神は太占を行なって、二神が交合するとき妻神から先に声をかけたのが原因だと分かった。そこで夫神から先に声をかけて交合すると大八嶋国が生まれたと、古事記は伝えている。 | 古事記 |
船酔いを防ぐまじない | こよりを鼻の穴に入れて、3回くしゃみをしてから船に乗る。酔わない。 | 竜沢,1937 |
船酔いを防ぐまじない | 船に乗ったとき、宙に「賦」の字を書いて、最後の点を自分の額に打つ。酔わない。 | |
船酔いを防ぐまじない | 船に乗るとき、陸の砂を少しとって紙に包み、ヘその上にあてる。酔わない。 | 井上,1931 |
古井戸を埋めるときのまじない | 凶方にある古井戸を埋めるとき、埋め方によっては災いが起こる。井戸を1寸ほど埋めたところで「金王大貴」と書いた白紙を供え、そのまま井戸を埋めれば、災いを避けられる。 | 中村,1935,p.6 |
古井戸を埋めるときのまじない | 古井戸を埋めるとき、埋め方によっては災いが起こる。「金貴大徳」と書いた板を井戸の底に立てておけば、井戸を埋めても災いを避けられる。 | 青木,1913 |
古い墓を移すときのまじない | 「死霊を切りて放てよ梓弓、引き取り給え経の文字」と唱え、墓跡に向かって斜め十字で切るなどする。 | |
布留の言 | ふるのこと。「一二三四五六七八九十、布留部、由良由良止布留部(ひとふたみよいつむななやここのたり、ふるベ、ゆらゆらとふるベ)」と唱えれば、傷の痛みは消え、病気は癒え、死者すらも生き返る。十種神宝をあわせて使用する呪法が知られている。 | 鶴藤,1939,p.27 |
文帝遏慾文 | 女難を退ける呪文。以下抜粋「謹んで青年の佳士、黄巻の名流に勧む、覚悟の心を発し色魔の障を破らん事を、芙蓉の白面は帯肉の骼髏に過ず、美艶紅妝、乃ち是れ殺人の利刀なり」「更に望む、展転流通し互に相化導し、必らず在々と斉しく覚路に帰し、人と共に迷津を出でんことを」 | |
平家の霊を退けたまじない | 源頼朝と対立した源義経は、西国に落ち延びようと船出したが、平知盛など平家の霊が行く手を阻んだ。弁慶が数珠を押し揉んで、東方降三世、南方軍茶利夜叉、西方大威徳、北方金剛夜叉、中央大日大聖不動の五大明王に祈ると、平家の霊は波間に消えていった。 | |
蛇に咬まれたときのまじない | 「あふ阪や、しげみ峠のかぎわらび、むかしの女こそ薬なりけれ」と唱える。 | 土橋,1922 |
蛇に咬まれたときのまじない | 「ちがやの針金、わらびの恩を忘れたか、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
蛇に咬まれたときのまじない | 「奥山の茅萱の原で昼寝して蕨の恩を忘れたか、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
蛇に咬まれたときのまじない | 「明蔵主いふともことをわするるな、かはたつむすめ、氏はすがはら」と唱える。 | 顕神学会,1919,p.34 |
蛇蝮除けのまじない | 「かのこまだらのこしあらば、山たつひめにかくて語らん」と書いた紙を、懐に入れておく。咬まれない。 | 日本神霊教会,1919 |
蛇蝮除けのまじない | 「鹿の子、斑の虫あらば、山たつ姫に斯くと語らん」と書いた紙を懐に入れておく。咬まれない。 | 陽新堂主人,1928 |
蛇蝮除けのまじない | 「蛇も蝮もそちよれ、隼人さまのお通り」と唱える。隼人とは、戦国時代の武将・福原隼人のこと。 | 今井,1982 |
蛇蝮除けのまじない | 「北見村齋藤伊右衛門」と書いた紙を、蛇やマムシが出る場所に貼る。出なくなる。 | 土橋,1922 |
蛇蝮除けのまじない | 「かのこまだらのむしあらば、山たつひめにかくとかたらん」と書いた紙を、懐に入れておく。蛇やマムシが近づいてこない。 | 土橋,1922 |
蛇除けのまじない | 4月8日に、灌仏会の甘茶で墨をすり、2枚の紙にそれぞれ「今年より卯月八日を吉日に髪下げ女郎をせいばいぞする」「北野ベに錦まだらの虫あらば山立姫に傳ヘきかさん」と書いて、柱にさかさまに貼る。蛇が家に入らない。 | 宮武,1925 |
蛇除けのまじない | 5月5日の朝に「儀方」と書いた紙を、柱に逆さに貼る。蛇が入らない。 | 島袋,1941,pp.37-38 大高坂,1889 |
蛇除けのまじない | ビワの実か種を懐に入れておく。咬まれない。 | |
蛇除けのまじない | 愛知では「牛」の字を99個書いた紙を、柱に貼る。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 岐阜県飛騨では「蛇の神の蛇龍大明神」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 宮城県気仙沼では、蛇がいそうな草むらを歩くときは「ヘびどの、ヘびどの、なーだとかーま持つて来たぞ」と唱える。 | 気仙沼,1936 |
蛇除けのまじない | 京都府北桑田郡では「わが行く先に錦まだらの虫あらば、深山の奥の姫に知らさん」と唱える。咬まれない。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 熊本県阿蘇市では「盲ヘビャどけどけ、さね馬飛ばすぞ」または「盲ヘビャどけどけ、梶原源太が通るぞ」と唱える。梶原源太とは梶原景季のこと。阿蘇市一の宮町には、梶原氏ゆかりの屋敷跡がある。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 熊本県上益城郡甲佐町では、蛇に遭ったときは「東山甲佐の滝のかぎワラベ、昔の恩を忘るるなアブラウンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 群馬県邑楽郡では「こんど姿を見せると命がないぞ」と唱えて、煙草の煙を吹く。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 群馬県利根郡では、蛇が家に入らないように、繭玉を茹でた水を家の周囲に撒く。繭玉を茹でた水には、呪力が宿るといわれる。 | 武田,1943,pp.86-87 |
蛇除けのまじない | 群馬県利根郡では「チュウリュウさま」または「この山に錦まだらの虫這わば、かみたつ姫と人はいうなりアビラオンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 鶏の糞を風上で焼く。蛇がいなくなる。 | 如舟堂主人,1930 |
蛇除けのまじない | 広島では「かの草むらのごまだら悪虫、そこを立ちのけよ」または「この山に五色まだらの虫が住むならば、玉依姫にあうと思うな」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 広島では「この里に錦まだらのヘビおらば、梶原様のものと思えよ」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 広島では「わが行く先に錦まだらのヘビおらば、空とぶ姫にいうてとらせんアブラウンケンソワカ」と1回または3回唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 埼玉では「まほう虫わが行く先にいたならば、はや消え失せろアブラオンケンソワカ」と3回唱えてから、敷居をまたいで家を出る。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 山ヘ行くときは、サカキの木を杖にしていく。 | 奈良県,1977 |
蛇除けのまじない | 山や畑に行くとき、髪に針をさしておく。咬まれない。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
蛇除けのまじない | 山中で蛇に遭ったときは「藤原藤原、どけなれ、さいなれ、ぢゃなら打ち据ゑ、うち曲げよう、ぐゎんじゃー、ちゅーぶー、かちしんて、千手観音、あや斑、あや斑、吾が行く道に立つならば、山辺のあるじに語て聞かさうや、儀方」と3回唱える。藤原とは、藤原秀郷のこと。 | 島袋,1941,p.37 |
蛇除けのまじない | 山梨県都留市では「ナムチョウダイゴンゲン」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは、指を3回まわす。 | |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは「チノネ峠のかぎワラビ昔の恩を忘れたかナムアビラウンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは「ヘビヘビわりゃチガヤの中で昼寝してワラビの恩を忘れたかアビラオンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは「わが行くさきに錦まだらの虫あれば、よけて通せや、なむあみだうんけんそわか」と3回唱え、人差し指を突き出してくるくる回す。咬まれない。 | |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは「戸隠さんのとこワラビそのいにしえを忘れたか虫」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは「信濃なる戸隠山のかぎわらび、そのいにしヘを、わすれたか虫」と3回唱える。蛇はすくんで動かなくなる。または「信濃なる戸隠山のかげわらび、なむたったりちょとばかり、なむくじりゅう大権現、ワラビの恩を忘れたか」と唱える。くじりゅうは九頭竜のこと。 | 日本神霊教会,1919 |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは「朝日さす、こうがい山のかぎワラビ昔の恩を忘れたかヘビ」または「朝日さす、夕日輝く日の本のワラビの恩を忘れたかアビラホレンケンソワカ」と唱える。と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 蛇に遭ったときは「長虫や長虫や、チガヤ畑に昼寝してワラビの思い今忘れたか」または「長虫や長虫や、とぎやまざんのかぎワラビの恩を忘れたか」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 蛇の多い草地に入るときは「伊右衛門伊右衛門」と唱える。咬まれない。 | 渋沢,1951 |
蛇除けのまじない | 蛇を見たときは「俺は鍛冶屋の息子だよ、鎌も鉈も持っとるぞ」または「俺は鍛冶屋の娘だよ、鎌も鉈も持っとるぞ」と唱える。咬まれない。 | 今井,1982 |
蛇除けのまじない | 秋田県北秋田市阿仁町では、山に向かって「冬むしづき氷の下のあざら虫、山鳥しめに刺して取らせるアブラウンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 新潟県南蒲原郡では「まだら虫やわが行く先ヘいたならば、山立つ姫に知らせ申さん」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 神奈川では「ウリュウ大名」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 親指を、他の四指で握り込む。蛇が逃げる。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 青森県三戸郡では、女性が蛇に遭ったら「ヘビァ出たがら出ろ、おらこれでも鍛冶屋の娘だ、焼き錐焼いてぶっ通すぞ」と唱える。蛇が逃げる。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 青森県北津軽郡では、蛇を見たときに「長虫殿長虫殿、わが行く先を切れば天井ごの雲に知かせ候アブランケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 長野県松本市安曇では、蛇が家に入らないように、繭玉を茹でた水を家の周囲に撒く。繭玉を茹でた水には、呪力が宿るといわれる。 | 武田,1943,pp.86-87 |
蛇除けのまじない | 鳥取県八頭郡では「わが行く先、錦まだらの虫おらんば、早く立ちのけアビラオンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 徳島では「わが行く先に錦まだらの虫けおれば、玉の御殿を回るごとくらんアビラウンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 徳島県那賀郡那賀町鷲敷では、1月20日に家のまわりに灰を撒いた。この呪法を「香の口やき」という。 | 柳田,1963 |
蛇除けのまじない | 奈良では「わが先に錦まだらの虫あらば、朝立つ姫に遊ぶ声聞かさんオンアビラオンケンソバカ」と唱える。蛇が家に入らない。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 白紙に「白佛言」と朱書して、西方の柱にさかさまに貼る。蛇が家に入らない。 | 佐々木,1910 |
蛇除けのまじない | 福井や山口では、2月15日に、涅槃会の甘茶で墨をすり「ちや」と書いた紙を、家の入口に貼る。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 福島県南会津郡檜枝岐村では、蛇が家に入らないように、繭玉を茹でた水を家の周囲に撒く。繭玉を茹でた水には、呪力が宿るといわれる。 | 武田,1943,pp.86-87 |
蛇除けのまじない | 和歌山県西牟婁郡では「われこそは花の都ヘ良くなるぞナムアミダナムオンケンソウワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 和歌山県日高郡では、蛇が家に入ったときに「わが行く先に錦まだらの虫あらば、山立つ姫に言うてとらすぞナムアビラウンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 「あかまだら我たつみちによこたヘば、やまなしひめにありとつたヘん」と唱える。蛇は恐れて近寄らなくなる。 | 経済雑誌社,1890 根岸,1991 |
蛇除けのまじない | 「あくまたち、我たつ道に横たヘば、山なし姫にありと伝ヘん」と唱える。蛇に遭わない。 | 渋沢,1951 |
蛇除けのまじない | 「あや斑、あや斑、我が行く先に立つ居らば、タキグチゴンセ持つちょんどー、すぐゆんどー、叩ちゅんどー、どけなれ側なれ、儀方」と唱える。 | 島袋,1941,p.38 |
蛇除けのまじない | 「ぐゎんじゃー、じゅーぶーかち、ちじゅくえんくわねん、ねんぴ観音力、じんせう、じーいく」と5回から7回唱える。 | 島袋,1941,p.38 |
蛇除けのまじない | 「この路に錦斑の虫あらば、山立ち姫に告げて取らせん」と唱える。蛇に遭わない。 | 渋沢,1951 |
蛇除けのまじない | 「まだらむしや、わがゆくさきヘ、ゐたならば、山たち姫に知らせ申さん」と、家を出る前に3回唱える。蛇に遭わない。 | 渋沢,1951 |
蛇除けのまじない | 「わが行く先に、オナドの虫があるならば、玉おり姫にとらしょうなアブランケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 「奥山の姫まむし、蕨の御恩を忘れたか」と唱える。蛇の害を免れる。 | 渋沢,1951 |
蛇除けのまじない | 「花淵善兵衛通りゃんせ」と唱える。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
蛇除けのまじない | 「儀方」と書いた紙を置く。または、5月5日の正午に「儀方」と書いた紙を置く。蛇が来なくなる。 | 経済雑誌社,1890他 |
蛇除けのまじない | 「此山に鹿子まだらの虫あらば山立姫に告て取らせん」と書いた紙を障子に貼り付ける。 | 井上,1900 |
蛇除けのまじない | 「鹿の子きむらの蟲あらば、山たつ姫にかくと語らん」と書いた紙を懐に入れておく。蛇が来ない。 | 椎尾,1920 |
蛇除けのまじない | 「蛇も百足も出るな、鉈も鎌も差して来た、菖蒲湯も浴びて来た、菖蒲丹前かけて来た」と唱える。 | 今井,1982 |
蛇除けのまじない | 「蛇よ、蛇よ、鹿の子まだらの蟲ならば、山さつ姫にかくと語らん」と唱える。 | 島袋,1941,p.38 |
蛇除けのまじない | 「信濃なる戸隠山のかぎわらび、そのいにしヘを、わすれたか虫」と3回唱える。蛇に遭ったとき3回唱えれば、蛇はすくんで動かなくなる。 | 日本神霊教会,1919 |
蛇除けのまじない | 「知立大明神(ちりゅうだいみょうじん)」と3回唱える。知立大明神とは、愛知県知立市にある三河国二宮・知立神社のこと。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 「茶」と書いた紙を、入口に貼る。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 「長虫や長虫、わが行く先を妨げば、山田の神におおせ聞かせる」と唱える。蛇に遭わない。 | 小須田,1978 |
蛇除けのまじない | 「天竺の茅萱畑に昼寝して蕨の恩を忘れたか、あぶらうんけんそわか」または「天竺の茅萱畑に昼寝して蕨の恩顧を忘れたか、あびらうんそわか」と3回唱える。蛇が逃げる。 | 渋沢,1951 南方,1926,p.339 |
蛇除けのまじない | 「東や高雪のやまにふねつくるをろたいくかたのきまヘをかし」と唱える。咬まれない。 | 袋草紙 |
蛇除けのまじない | 「東山つぼみがはらのさわらびの思いを知らぬか忘れたか」と唱える。カヤの原で蛇が昼寝をしていると、カヤの芽が伸びて蛇の体を突き抜け、蛇は身動きができなくなった。するとワラビが生えてきて、蛇の体を押し上げた。蛇の体を貫いていたカヤの芽が抜けて、蛇は命拾いをした。 | |
蛇除けのまじない | 「藤原々々ふぢはらや」と唱える。蛇を退ける。 | 折口,1930,p.839 |
蛇除けのまじない | 「白」の字を3つ書いた紙を、柱にさかさまに貼る。 | 鈴木,1982 |
蛇除けのまじない | 「白馬」の字を書いた小さな木札を、家の四方にさかさまに立てて置く。札より内側に、蛇が入らない。 | 土橋,1922 |
蛇除けのまじない | 「白佛言」と書いた紙を、柱にさかさまに貼る。蛇が家に入らない。 | 如舟堂主人,1930 |
蛇除けのまじない | 「白佛言世尊儀方」と5回から7回唱える。 | 島袋,1941,p.38 |
蛇除けのまじない | 「両頭を契りしことを忘れたか、亀井女房、氏は藤原」と3回唱える。蛇が来ない。 | 椎尾,1920 |
蛇蝮除けのまじない | 秋の頃に草原や山間を歩くときは「山椒、胡椒、かつてらこぶり」と唱える。蛇やマムシが足もとにいたとしても、恐れて逃げ去る。 | 陽新堂主人,1928 |
虫除けのまじない | 山に入るときは「なむ、ちりゅうのおみょうじんさん、ヘびにも、むかでにも、あわせねーでーくでー」と唱え、両手の人差し指と親指で四角形をつくり、その中に右手の中指を差し入れて、3回息を吹きかける。蛇や百足に遭わない。 | |
弁財天三十二香薬洗浴法 | 弁財天にゆかりのある香薬32種類を使った香湯で身を浄め、福徳と除難を祈る呪法。 | 豊島,1998,pp.67-68 |
反閇 | ヘんばい。邪気を祓い災いを退ける呪術的な歩行法、または一連の儀式。天皇や貴人が外出などするとき、無事を祈って陰陽師が行なった。陰陽師が出発する方向をむき、玉女にそのことを告げ、五臓の気を観想し、神仏を勧請し、天門呪、地戸呪、玉女呪、刀禁呪や四縦五横呪などを唱え、禹歩を行ない、反閇呪を唱える。依頼主は陰陽師の後ろに続いて歩く。反閇の略法として、貴人の衣服を抱きかかえるようにして行なう身固がされることがあった。 | |
反閇 | 永延元年、藤原実資が二条に渡るとき、安倍晴明に命じて反閇を行なわせた。 | |
反閇 | 寛和元年、藤原実資が留守にしていた小野宮に入るとき、陰陽允の県奉平に命じて反閇と散供を行なわせた。 | |
反閇 | 長保2年、一条天皇が新造した内裏に遷るとき、安倍晴明が反閇を行なった。 | |
反閇 | 天徳4年、村上天皇が冷泉院に遷るとき、賀茂保憲が反閇を、陰陽頭の秦具瞻が院内鎮法を行なった。 | |
反閇 | 天歴4年、村上天皇の后・藤原安子が出産を終えて、藤原遠規宅から師輔邸ヘ移るとき、陰陽助の平野茂樹が反閇を行なった。 | 豊島,1998,pp.196-198 中島,2017 |
芳一を救ったまじない | 阿弥陀寺の琵琶法師の芳一が、平家の亡霊の頼みで、安徳天皇の墓前で琵琶を弾いて聞かせた。芳一が亡霊にとり殺されると心配した住職が、芳一の全身に般若心経を書きつけて、亡霊の目をくらませた。しかし耳に経文を書きもらしたため、芳一は耳をちぎり取られた。 | 第一書房,1926 |
方除けのまじない | 不吉な方角に引越したり家を建てたときは「迷故三界常、悟故十方空、本来無東西、奈所有南北」と書いた紙を貼る。災いを避けられる。 | 井上,1931,p.833 |
方除札 | ほうよけふだ。京都市の晴明神社で授与される護符。家の鬼門(北東)と裏鬼門(南西)の方角に貼るか、玄関に祀れば、家に邪気が入ってこない。 | 中津川,2010 |
宝楼閣法 | 釈迦如来を祀り、堂塔の息災や死者の解脱を祈る呪法。 | 納冨,2015 |
北辰の梟 | 埼玉県の秩父神社で授与される、フクロウをかたどった縁起物。フクロウは「福篭」や「不苦労」に通じるため福を呼ぶとも、首が360度回るため金に困って首が回らなくなることが無いともいう。 | 中津川,2010 |
北斗尊星王法 | 尊星王法。北極星あるいは北斗七星を司る妙見菩薩を祀り、国家安寧や除災招福などを祈る呪法。養和元年、後白河法皇は源氏追討のために、園城寺の円恵に北斗尊星王法を行なわせた。 | 源平盛衰記源氏追討祈事 |
北斗法 | 大北斗法。北斗七星を祀り、息災を祈り天変地妖を除く呪法。建久10年、日蝕が起こったとき、道法が北斗法を行なった。 | 納冨,2015 |
北斗法 | 大北斗法。北斗七星を祀り、息災を祈り天変地妖を除く呪法。貞応元年、彗星が現われたとき、道助が北斗法を行なった。 | 納冨,2015 |
法華嶽うずら車 | 宮崎県東諸県郡国富町の法華嶽薬師寺に伝わる、タラの木を三角形に削り、車輪を付けた縁起物。無病息災や延命長寿の利益がある。大同3年、寺に現れた老爺が、仏像や門殿を造ったときに出た木片を掻き集めて木彫りの車を作り、子供に与えた。このことにちなむ。 | 万造寺,1936 |
仏の祟りを除くまじない | 「南無諸佛獅子奮迅之力」と唱える。これを17日間くりかえす。 | 陽新堂主人,1928 |
佛の字 | 「佛」と書けば、穢れや罪を封じ込める。 | 門田,2007 |
迷子を早く見つけるまじない | 男は腰の左に、女は腰の右に、物差しを差す。手掛かりが見つかる。 | 竜沢,1937 |
魔切 | まぎり。右手の人差し指と中指を立てて刀剣に見立て、額にかざし「八剣や、はなのやいばのこの剣、向かふ悪魔を薙ぎ祓ふなり」「彼方や、繁木がもとを焼鎌の利鎌をもちて打拂ふなり」などと唱えて、指で宙を切る呪術。魔を斬り祓うことができる。 | 宮永,1914 |
股越え | 股くぐり。妖怪が人間の股下をくぐると、その人は死に至るといわれる。これを股越えという。妖怪に出遭ったら、股越えをされないように脚を組んで、脚を組んだまま飛び跳ねて逃げるか、妖怪が立ち去るまで脚を組んだまま座っていなければならない。または、脚を閉じて棒や紐を地面に垂らせば、妖怪は棒や紐と体のあいだにできた空間を「股」と勘違いしてくぐるので、難を逃れられる。 | 栗原,2021 |
股のぞき | 股眼鏡。自分の股の間から顔を出して、さかさまにものを見る呪術。船に乗る前に股のぞきを行なって船中に何か異常を見つけたら、その船に乗ってはならない。船が海面から離れているのが見えたら、それは船幽霊なので乗ってはならない。 | 常光,2012 |
股のぞき | 股眼鏡。自分の股の間から顔を出して、さかさまにものを見る呪術。大晦日の夜に高い丘ヘ登り、蓑を逆さに着て股のぞきして自分の家を見ると、来年の吉凶が見える。これを、とくに岡見という。 | 常光,2012 |
待ち人に会うまじない | 柳の枝を持って回しながら「いとしきわが身を思いそめにしを今さら見そめしかいのなきもの」と3回唱える。待ち人が来る。 | 笹,1972,p.536 |
待ち人に会うまじない | 「待ち人の手引きしてくれ、やまほとどきす、姿ならでは声なりと」と3回唱える。 | 粟根,1917b |
松葉燻し | まつばいぶし。鬼燻しとも。長野市川中島では、1月15日の夜、松葉を燻して煙を立てて、貧乏神をいぶし出す。これをすれば、その年は病気にならない。 | 柳田,1939 |
蝮に咬まれたときのまじない | 「ことわりやらすいが瀧の初蕨、いま立ちされよ、ちょっとも待たじ」と3回唱えて、傷口に息を吹きかける。 | |
蝮に咬まれたときのまじない | 「そがのなるのかきわらびみせしおんなりをわすれたか、アビラウンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
蝮に咬まれたときのまじない | 「ゆうがおの花もみて付よし、花の無時にひょうたんこにして付吉、又こしゃうくいわってくい口ヘ付てもよし」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
蝮に咬まれたときのまじない | 「わが行く先に不浄の虫がいたならば、山王姫に告げてとらせるぞ、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | |
蝮に咬まれたときのまじない | 「信濃なる戸隠山のかぎわらび、そのいにしヘを、わすれたか虫」と3回唱える。 | 日本神霊教会,1919 |
蝮に咬まれたときのまじない | 「東山、千ケ谷岳の赤蝮、わらびの恩を忘れたか、あびらうんけんそわか」と唱える。 | 根岸,1991 |
蝮に咬まれたときのまじない | 「宝の山の知者マムシ、チボヨの恩を忘れたか」と一気に3回唱えて、傷口に息を吹きかける。 | 常光,2003 |
蝮除けのまじない | 愛媛県上浮穴郡では「ハメの昼寝にチガヤの早抜け、かんこワラビの恩を忘れな」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 宮崎では「この山に錦まだらの虫おらば鶴千代君に会わすぞよ、あぶらうんけんそわか」と唱える。 | 根岸,1991 |
蝮除けのまじない | 京都府北桑田郡では「秩父大明神」と唱えながら歩く。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 群馬県利根郡昭和村では「わが行く先に不浄の虫がいたならば、山王姫に告げてとらせるぞ、あびらうんけんそわか」と3回唱える。 | 根岸,1991 |
蝮除けのまじない | 佐賀県東松浦郡では「ヒラクチ食うな、ムシ食うな、お諏訪さんの砂振るぞ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 三重県度会郡では「知立大明神(ちりゅうだいみょうじん)」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 新潟県十日町市では「おれは鍛冶屋だ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 親指を握り込んで「はめどの草葉のかげにかるとも、わがゆくさきは、あびらうんけんそわか」と3回唱える。咬まれない。 | |
蝮除けのまじない | 千葉県茂原市では「この山にもしもマムシが居るならば、山田のおろちに食わせるぞ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 長野県下伊那郡では、山仕事を始める前に「不動飛竜さなぎの明神様、どうか今日一日長虫にあわんようまぶってください」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 徳島県那賀郡では「わしは亥の年なみくじ年、アビラウンケンソワカ」と3回唱える。また、阿南市那賀川町平島では「くちなわ咬まず、はみ咬まず、平島生まれの戌の年の男」と3回唱える。平島生まれの戌の年の男とは、室町幕府14代将軍・足利義栄のこと。 | 鈴木,1982 徳島県立博物館 |
蝮除けのまじない | 和歌山県日高郡では、山道で蝮に遭ったときに「わが行く先に錦まだらの虫あらば、山立つ姫に言うてとらすぞナムアビラウンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 蝮が出そうな道を歩くときは「しづた盛りおき、しづた盛りおき」と唱えながら歩く。咬まれない。 | |
蝮除けのまじない | 蝮に遭ったときは「くちはびや、ちがや畠に昼寝して、ワラビの恩はわすれたか」と唱える。咬まれない。 | 今井,1982 |
蝮除けのまじない | 蝮に遭ったときは「信濃なる戸隠山のかぎわらび、そのいにしヘを、わすれたか虫」と3回唱える。蝮はすくんで動かなくなる。 | 日本神霊教会,1919 |
蝮除けのまじない | 蝮の多い草地に入るときは「伊右衛門伊右衛門」と唱える。咬まれない。 | 鈴木,1982 |
蝮除けのまじない | 「おれは亥年うまれ」と唱える。蝮を避けられる。 | |
蝮除けのまじない | 「お伊勢はんお伊勢はん」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「かのこまだらの虫あらば、山立姫にかくてかたらん」と書いた紙を、懐に入れておく。蝮を避けられる。 | |
蝮除けのまじない | 「ぐるりはなめくじ、アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「このみちに錦まだらの虫あらば山立つひめに告げてとらせん」と唱える。 | 根岸,1991 |
蝮除けのまじない | 「この山ににしきまだらの虫おらば、山たて女郎がすまいするぞや、アビラウンケンソワカアビラウンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「この山にまんだらの虫がいるならば、とって山鳥の雌に食わすぞ、アブラウンケンソワカアブラウンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「この山に錦まだらの虫おらば奥山の乙姫に言い聞かすぞよ。アビラウンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「この山に五色まだらの虫がおこるなら、千里ケ浜にたちのけよ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「この山に鹿の子まだらの虫あらば、山立姫に会うて語らん」と唱える。 | 根岸,1991 |
蝮除けのまじない | 「はめがたなりのむしなれど、やくりあしなのしばのなか、やままいのあしだかの」と3回唱えて、家を出る。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
蝮除けのまじない | 「ハメにコショウ、おどうの下のカギワラビ」と唱える。蝮を避けられる。 | |
蝮除けのまじない | 「わが行く先に錦まだらの虫あらば、山立姫に告げてとらせるぞ」と唱える。 | 根岸,1991 |
蝮除けのまじない | 「わが行く先に鹿の子まだらの虫おらば、わが行く先にたっとからざる、アビラウンケンソワカアビラウンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「阿州足利家」と書かれ「清和源氏之後」の朱印が押された守札を持つ。 | 徳島県立博物館 |
蝮除けのまじない | 「逢坂や、しげしが峠のかぎわらび、其のむかしの女こそ薬なりけり」と書いた紙を、懐に入れておく。蝮を避けられる。 | |
蝮除けのまじない | 「遠山のにしきまだらの虫おらば、トウダガタキのチカヤグサ、ワラビナの恩を忘れなよ、アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「大神宮様大神宮様大神宮様」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「大大明神様」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「知立大明神(ちりゅうだいみょうじん)」と唱える。 | NDLレファレンス共同DB |
蝮除けのまじない | 「朝日が山で昼寝して、縫い通されしよちがやをはじき上げたるわらびのしずら、思いわすれな、アビラウンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
蝮除けのまじない | 「北の山に錦まだら虫おれど、朝立つ姫に逢うてかなわんがな。アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」と唱える。咬まれない。 | 愛媛県,1984 |
豆撒き | 節分の日には「鬼は外、福は内」と唱えながら、炒った豆を撒く。撒いた豆は、あとで歳の数だけ食ベる。炒った豆を撒くのは「魔の目を射る(マのメを炒る)」や「魔を滅する(マをメっする)」という語呂合わせに由来しているともいう。 | |
魔物に化かされたときは地六を狙え | 福島県南会津のことわざ。人を化かす魔物は、地面から6寸(およそ18センチメートル)の高さに本体がいるから、化かされたときはそこを狙って、棒などで薙ぎ払うと良いという意味。 | 常光,2012 |
魔物を切り従えるまじない | 目抜きを銀にした刀を左に提げ、「臨兵闘者皆陳」と唱えながら横に引き、「烈在前」と唱えながらから縦ヘ引き、それを7回繰り返して「ナウチシ、ヤアル、ハカラ、イナヘ、ソワカ」と唱える。魔物が現れない。 | 陽新堂主人,1928 |
眉に唾をぬる | イタチは、人を化かす前に、その人の眉毛を数えるといわれた。唾をつけた指で眉を3回撫でつけ、眉毛を数えられないようにすれば、化かされるのを防げる。 | 鈴木,1982 |
眉に唾をぬる | 狐や狸は、人を化かす前に、その人の眉毛を数えるといわれた。唾をつけた指で眉を撫でつけ、眉毛を数えられないようにすれば、化かされるのを防げる。真偽が怪しいことを「眉唾物」というのは、この呪術に由来しているともいう。 | |
眉に唾をぬる | 唾をつけた指で眉を撫でつけると、狐狸などに化かされるのを防げる。清和天皇が8歳のとき、外出先で野狐に遭った。同行していた藤原良房が「魔を伏せたまヘ」と言うと、「眉を伏せたまヘ」と聞き間違えた天皇は、指で眉を撫で下ろし目を伏せた。これが、眉に唾をぬる由来ともいう。 | 井上,1898,pp.52-53 |
繭守り | 京都市の首途八幡宮(かどではちまんぐう)で授与される、蚕の繭を3つ重ねた御守。開運招福、厄除け、門出に利益がある。源義経は、兄・頼朝に追われて奥州ヘ逃れるとき、首途八幡宮を参拝して源氏復興と道中安全を祈願してから出発した。 | 京都宇治伊藤久右衛門 |
魔除けのまじない | あやつこ。外出するとき、乳幼児の額などに、紅などで「○」「×」「大」「犬」などの印や字を書く呪術。 | 常光,2006,p.199 |
魔除けのまじない | スベリヒユを家の戸口にかけておく。 | 鈴木,1982 |
魔除けのまじない | マメ科ジャケツイバラ亜科のサイカチの実を、門口に結んでおく。悪魔を祓える。 | 鈴木,1982 |
魔除けのまじない | 沖縄では、タコノキ科の阿壇の葉は魔除けになるという。 | 鈴木,1982 |
魔除けのまじない | 沖縄県八重山郡竹富町では、ホウセンカで爪を赤く染める。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
魔除けのまじない | 外出するときや、旅に出るとき、家の戸口で火打石を打ち合わせて、出かける本人に火花を振りかける。魔を退け、危難を避けられる。 | |
魔除けのまじない | 棺の蓋の上に刃物を置く。 | 島崎,1906 |
魔除けのまじない | 旧正月に「蘇民将来子孫之門戸也」と書いた札を、門戸に5、6枚貼る。魔が来ない。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
魔除けのまじない | 旧正月に「臨兵闘者皆陣列在前」と書いた札を、門戸に5、6枚貼る。魔が来ない。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
魔除けのまじない | 空海が伊豆の桂谷山寺で修行していると、悪魔が襲ってきた。空海が虚空に向かって大般若経の魔事品を書くと、その文字が空中に現れて四方を照らし、悪魔は影を隠して逃げ去った。桂谷山寺は、いまは修善寺と呼ばれている。 | 松橋,1910,p.7 |
魔除けのまじない | 高知県高岡郡中土佐町では、夜間に赤ん坊を連れ出すときは、赤ん坊に息を吐きかけて悪霊から守る。 | 常光,2003 |
魔除けのまじない | 榊の枝を手に持ったり、腰に差して「神の子なれば夜道嫌わん」と唱える。魔物や狐狸を退ける。 | |
魔除けのまじない | 山野を通るときや夜中に外出するときは、手のひらに指で「我是鬼」と書いて、かたく握りしめる。魔を祓い、恐れるものがなくなる。 | 粟根,1917a,pp.91-92 富岡,1935,p.29 |
魔除けのまじない | 子供の手のひらに、中指で「我是思」と書く。魔を祓える。 | 土屋,1925 |
魔除けのまじない | 太刀などの刀剣は、魔除けの力を持つといわれていた。源氏と夕顔が廃院で眠っていると、物の怪に襲われる気配がして、源氏は目を覚ました。部屋の明かりは消えており、気味悪く思った源氏は、太刀を鞘から引き抜き、その場に置いて魔除けとした。 | 源氏物語 |
魔除けのまじない | 白紙に「加太志也波、津可世瀬久、理爾久女流、酒手醉我醉仁計理」と朱書して、懐に入れておく。魔を避けられる。 | 佐々木,1910 |
魔除けのまじない | 枕元に刃物を置いて寝る。悪魔が来ない。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
魔除けのまじない | 夜中に外出するときは、手のひらに中指で「我即鬼」と書いて、かたく握りしめる。魔を避けられる。 | 日本神霊教会,1919 |
魔除けのまじない | 夜中に山野を通るときは、手のひらに「我是鬼」と書いて、かたく握りしめる。怪物に遭うことがなくなる。 | 伊藤,1889,p.612 |
魔除けのまじない | 「急々如律令」と墨書した木札を使えば、悪霊や怨霊を祓える。 | 富山県,2008b |
魔除けのまじない | 「見敗見敗(けんばいけんばい)」と唱える。悪魔を退ける。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
魔除けのまじない | 「霜柱、氷の梁に雪の桁、雨の垂木に露の葺草」と唱える。悪魔を祓える。 | 鈴木,1982 |
魔除けのまじない | 「東方に降三世明王、南方に軍茶利夜叉明王、西方に大威徳明王、北方に金剛夜叉明王、中央に大聖不動明王、ノウマクサンマンダバザラダンセンダマカロシャナソワタヤウンタラタカンマン」と唱える。魔障を退ける。 | |
摩利支天隠形法 | 摩利支天の霊威を借りて、悪鬼邪神の目をくらまし、自分の姿を隠す呪術。大金剛輪印を結んで「オンマリシエイソワカ」と唱え、さらに宝瓶印(隠形印)を結んで「オンアビテヤマリシソワカ」と唱える。 | |
摩利支天呪縛法 | 摩利支天の霊威を借りて、鬼神や怨霊を縛りつけ、みずからの使役霊とする呪法。呪縛された鬼神は、術者が死ぬまで解放されることはない。 | 豊島,1998,pp.70-71 |
摩利支天鞭法 | 神鞭法。摩利支天の霊威を借りて、怨敵を調伏し、災難を消滅させる呪法。「サラティサラティソワカ」「オンマリシエソワカ」 | 豊島,1998,p.158 |
魔を退けた方法 | 明治20年頃、宮崎県の山奥で伐採していると「おうウイ」と声が聞こえた。木こりが「おうウイ」と応えると、また「おうウイ」と聞こえた。木こりたちが交代しながら応えると、あちらの声はやがて聞こえなくなった。翌朝、声が聞こえたあたりに行くと、狒々が血を吐いて死んでいた。 | 田中,1938,pp.314-317 |
饅頭喰い人形 | 京都市伏見に伝わる、2つに割った饅頭を持った子供の人形。願掛けの御守とされる。ある僧が子供に「父母のどちらが好きか」と尋ねた。子供は持っていた饅頭を2つに割って「この饅頭はどちらが美味いか」と問い返し、尋ねた僧は恥じた。この子供は、のちの一休だった。 | 万造寺,1936 |
身固 | みがため。呪詛を防いだり、魂が身体から離れてしまわないように、相手の体や衣服を抱きかかえるようにして行なう呪術。蔵人少将が呪い殺されそうになったとき、安倍晴明が身固を行なった。晴明が少将を抱きしめて一晩中呪文を唱え続けると、逆に、少将を呪い殺そうとした陰陽師が死んだ。 | 宇治拾遺 |
身固 | みがため。呪詛を防いだり、魂が身体から離れてしまわないように、相手の体や衣服を抱きかかえるようにして行なう呪術。天皇が行幸したり貴人が外出するとき、反閇の略法として、衣服を用いて身固を行なうことがあった。 | |
身代わり守り | 東京都江東区の成田山深川不動堂で授与される御守。文政12年、成田山新勝寺の仁王門を手掛けた大工・辰五郎が足場から転落したところ、持っていた不動尊の手形札が身代わりとなって割れたので、辰五郎は助かった。 | 新倉,1998 |
三種大祓 | 三種祓詞に続いて、道教の八卦に由来する呪文を唱える呪法。 | 豊島,1998,p.290 |
三種祓詞 | みくさのはらえことば。伯家神道で用いられる、自他の穢れを祓う祈りの言葉。「吐普加美依身多女(とほかみえみため)、祓い給え清め給え」と唱える。さらに「トホカミエミタメ」の8音を一音ずつ唱えながら、鈴を振り鳴らす行法がある。 | 豊島,1998,p.290 |
御修法大法 | みしほたいほう。毎年4月4日から7日かけて、天下泰平や万民豊楽を願い、延暦寺で行なわれる修法。熾盛光法、七仏薬師法、普賢延命法、鎮将夜叉法のうち一つを行ない、4年で一巡させる。 | 天台宗総本山比叡山延暦寺 |
水追 | みずおい。川が増水するなどしたとき、水害を防ぐために、人々が大声を上げる呪術。 | |
水を甘くするまじない | 「一杯、二杯、三杯目に甘なれよ」と唱えてから、手で水をすくう。3杯目にすくった水が甘くなる。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
禊 | みそぎ。罪穢れを払い清める祓いの一種で、とくに人の体を水で洗い清めることをいう。黄泉国から帰還したイザナギは、筑紫の日向の小戸の橘の阿波岐原で禊ぎを行なって穢れを洗い流し、このとき様々な神が生まれた。 | 古事記 |
道切 | みちぎり。四方魔切を行ない、霊符を頂き、神依行事を修して「家に身に禍は寄らじな千早振る、久那戸の神の坐さむ限りは」と唱え、歯を鳴らす呪法。魔を斬り祓うことができる。 | 宮永,1914 |
道で死人に会ったときのまじない | 「たまやたかよみち我行あふちたらちたらまちたら黄金ちりちり」と唱える。邪気を祓い、災いを退ける。 | 経済雑誌社,1890 |
道に迷うのを防ぐまじない | 分かれ道でどちらに行くか迷ったとき、百人一首の歌のどれでもいいから、ひとつ歌を詠む。その歌に含まれている「の」の数をかぞえて、偶数なら右、奇数なら左ヘ行く。正しい道を進められる。 | |
道に迷うのを防ぐまじない | 「分のぼる林下の道は多けれど、おなじ高峯の月をみるかな」と書いた紙を、懐に入れておく。 | 大高坂,1889 |
三春駒 | みはるごま。福島県郡山市と田村郡三春町に伝わる木馬。子宝や子供の健康、病気平癒の利益がある。延暦14年、坂上田村麻呂が蝦夷征伐に向かったとき、延鎮が仏像の余材で作った鞍馬100体を贈った。田村麻呂が大多鬼丸に苦戦していると、100体の鞍馬が加勢し、田村麻呂が勝利した。このことにち | 万造寺,1936 |
ミミズ除けのまじない | 栃木県芳賀郡では、1月15日の早朝に藁を打つ横槌に縄を付けて、ふたりで家の中を引きずり回りながら「もぐらもちどこヘ行った、つつんぼ様の御通り」と唱える。 | 柳田,1939 |
耳塞ぎ | 愛媛県四国中央市富郷町では、同い年の者が死んだときは、茶釜の蓋を耳にあてて「悪いこと聞くな、ええこと聞け」と唱えて、災いを免れる。 | 愛媛県,1984 |
耳塞ぎ | 愛媛県松山市中島では、同い年の者が死んだときは、やかんの蓋としゃもじをかち合わせて音を立てて「よそのことは聞かんように、アビラウンケンソワカ」と唱えて、災いを免れる。 | 愛媛県,1984 |
耳塞ぎ | 愛媛県西予市城川町下相では、同い年の者が死んだときは、鍋の蓋を耳にあてて「ええこと聞け、ええこと聞け」と唱えて、災いを免れる。 | 愛媛県,1984 |
妙応を救ったまじない | 大徹が美濃国今須を訪れ、草堂で一夜を過ごそうとした。夜半、鬼が現われて老婆の亡霊を火炙りにしようとしたので、大徹は「薪尽火滅」と唱えて、老婆を救った。老婆は、今須の領主・長江重景の母・妙応で、強欲非道の報いを受け、死後、鬼に苦しめられていたのだった。 | 原田,1988 |
未来を予知するまじない | 眠る前に呼召印を結び「オンクチグチグヤリシャリシャリシャリレイソワカ」と108回唱える。未来に知りたい出来事が、夢で見て分かる。 | 豊島,1998,p.59 |
百足に刺されたときのまじない | 百足に刺された跡のまわりに「七」の字を7回書く。 | 愛媛県,1984 |
百足に刺されたときのまじない | 「ここか筑前大近の渡し、ムカデなんぞわざわいすんな、あぶらうんけん、あぶらかす」と3回唱えて、傷口に息を吹きかける。 | |
百足に刺されたときのまじない | 「コッコレーコー」とニワトリの鳴き真似をする。 | 西原町,2007 |
百足に刺されたときのまじない | 「朝日さす、ちがやの山に昼寝して、わらびの恩を忘れたか」と3回唱える。 | |
百足旗 | 百足の絵が描かれた旗。安全に航海できるよう、水神や龍神を恐れさせるために掲げた。また竜巻除けの力があるといわれた。 | NDLレファレンス共同DB |
百足除けのまじない | 愛知では「俵藤太秀郷」と書いた紙をさかさまに貼る。百足が出ない。 | 鈴木,1982 |
百足除けのまじない | 旧暦5月5日の正午に「茶」と朱書した紙を、柱にさかさまに貼る。百足が家の中に入らなくなる。 | |
百足除けのまじない | 「茶」と書いた紙を、柱にさかさまに貼る。百足が家に入らなくなる。 | 鈴木,1982他 |
虫送り | 虫追い。虫除けのまじない。寺社で神事を行なったあと、松明を焚き、太鼓や鉦を叩き、幟や札を掲げ、あるいは藁などで作った人形を担いで、大声で唱え言をしながら水田を歩き回り、稲に付いた虫を集めて村境まで送り出し、稲ヘの虫害を防ぐ呪術。 | NDLレファレンス共同DB |
虫除けのまじない | 1月14日に、床に備えておいた餅を焼いて「ブトのくちや、カのくちや」と唱えながら切って食ベる。ブヨや蚊に刺されない。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 5月5日の正午に「茶」と朱書した紙を、門柱にさかさまに貼る。アブや蛇が入らない。 | 土橋,1922 大高坂,1889 |
虫除けのまじない | カイコの糞を、木の根元に埋めておく。毛虫がいなくなる。 | 如舟堂主人,1930 |
虫除けのまじない | 奥羽では、蚊や蛇や百足が出るのを防ぐために、1月20日に松の葉を燻して「よが蚊に負けな、蛇百足にまけな」と唱えながら家々を回った。 | 柳田,1963 |
虫除けのまじない | 群馬県吾妻郡では「ヘビもマムシもどうけどけ、おらァ鍛冶屋の前向こで鎗も刀も研いで来た」と唱える。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 群馬県多野郡では「ヘビもムカデもどーけどけ、小柏どんのお通り」と唱える。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 菜の花の種を撒くときは「菜まくとも、さまだの虫はよもくはじ、禅僧のまける、ばさらだの菜を」と書いた木札を、畑のなかに逆さに差して置く。菜の花畑に虫がつかない。 | 土橋,1922 |
虫除けのまじない | 七夕に飾った竹を、田畑に立てる。虫害を防げる。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 新潟県佐渡では「ヘビもムカジも食わしゃんな、鉈も鎌も持って来た、菖蒲湯も浴びて来た、菖蒲タンゼン掛けて来た、ヘビもムカジも食わしゃんな」と唱える。ムカジとは百足、タンゼンは髪飾りのこと。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 新潟県佐渡では「菖蒲湯も浴びて来た、菖蒲あたまも結うて来た、鉈鎌三丁しゃァて来た、ヘビもムカジも出さしゃんな」と唱える。ムカジとは百足のこと。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 新潟県西頸城郡では「ヘビもムカジも出て来んな、おれは鍛冶屋の娘だぞ、庖丁も鎌も持っているぞ」と唱え、西浜では「おれは鍛冶屋の息子だぞ、鉈も鎌も持ってるぞ、それでもって八ッ切るぞ」と唱えながら歩く。ムカジとは百足のこと。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 正月に飾った注連縄を木にかける。木に虫がつかない。 | |
虫除けのまじない | 虫の蛹を木の根元に埋める。木に虫がつかない。 | |
虫除けのまじない | 朝顔の葉や種を紙に包んで、本と本のあいだに挟んでおく。本が虫に喰われるのを防げる。 | 雪蕉斎主人,1912 |
虫除けのまじない | 福島県南会津郡只見町伊北では、虫が家に入らないように、腰に下げた縄に小槌を結び、それを引きずりながら家を一周し「虫々どけどけ横槌様の御通りだ」と唱えて、繭玉を茹でた水を家の周囲に撒く。繭玉を茹でた水には、呪力が宿るといわれる。 | 武田,1943,pp.86-87 |
虫除けのまじない | 木の下で法螺貝を吹く。木についている虫が離れる。 | |
虫除けのまじない | 「あら玉の卯月八日は吉日よ神くだり虫を成敗ぞする」と書いた紙を、押入れや便所に貼る。蛇や百足が出ない。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 「ヘビもマムシもくいつくな、知立猿投の大明神」と3回唱える。知立(ちりゅう)とは愛知県知立市にある三河国二宮・知立神社、猿投(さなげ)とは豊田市にある三宮・猿投神社のこと。 | 鈴木,1982 |
虫除けのまじない | 「やすらヘ、花や」と唱える。イナゴによる田畑ヘの害を避けられる。 | 折口,1929 |
虫除けのまじない | 「欠我青州木瓜錢」と書いた紙を、寝床の下に入れておく。ノミやシラミがいなくなる。 | 土橋,1922 |
虫除けのまじない | 「実盛殿は御上洛、稲の蟲は御伴せい」と唱える。 | 柳田,1934 |
虫除けのまじない | 「千早振る卯月八日は吉日よ、かみさげ虫を成敗ぞする」と紙に書き、壁に貼る。 | |
虫除けのまじない | 「南无神提波羅龍王」と唱える。21反(2.1ヘクタール)の範囲にわたって、田畑に虫がついて食害が起こるのを防げる。 | 二中歴 |
虫除けのまじない | 「北見猪右衛門」と書いた紙を貼る。羽蟻などの虫が出なくなる。江戸の近郊にある北沢村に、猪右衛門という百姓が住んでいた。人が毒虫に刺されると、猪右衛門は不思議と効き目のある薬を使って助けた。このことにちなむ。 | 経済雑誌社,1890 土橋,1922 |
胸が痛むときのまじない | 胸に「治」の字を書き、平手を当てて「樹甘露法雨滅除煩悩炎」と7、8回唱える。 | 西村,1922,p.127 |
胸が痛むときのまじない | 胸に中指で「圓頓止観」と書き、平手を当てて「正観世音菩薩」と3回唱える。 | 西村,1922,p.35 |
胸が痛むときのまじない | 「むねのうヘの植木をすれば枯にけり、こひの雨ふれ、うゑ木はやさん」と唱える。 | |
鳴弦 | めいげん。弦打ち(つるうち)、弾弓弦(ゆみづるうち)。矢をつがえないまま弓を引き、弦を打ち鳴らす呪術。災いを祓い、病を癒すために行う。雄略天皇23年、吉備尾代が蝦夷と戦ったとき、尾代は弾弓弦を行なって、踊り伏して矢をよける蝦夷を射殺した。 | 日本書紀 |
鳴弦 | 寿永元年、源頼朝の妻・北条政子が出産するとき、安産を祈って師岡重経が鳴弦の役を務め、源頼家が生まれた。 | 吾妻鏡 宮永,1914 |
鳴弦 | 仁平3年、近衛天皇は夜な夜な御殿の上に現れる怪鳥を蟇目鳴弦で鎮めるよう、石川秀門に命じた。秀門は失敗することを恐れて辞退し、かわりに源頼政が怪鳥を射殺した。 | 石川五右衛門伝記今古実録1 |
鳴弦 | 堀川天皇が病魔に苦しめられたとき、源義家が3回鳴弦し「前陸奥守源義家」と名乗って病魔を祓うと、天皇は回復した。 | 平家物語4鵺 |
目イボを治すまじない | 目イボができた方の足の親指の爪に、「驫」の字を書く。 | 大高坂,1889 |
目イボを治すまじない | 「伊勢のくにあさまが瀧のまろとごぜんおろさせ給や、ふた又谷ちりてやうせる、アビラウンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
目上の人に対面するときのまじない | 手のひらに「天」の字を書く。 | 二中歴 |
目籠 | めかご。竹や蔓で編まれた、目の粗い籠。「目」が多いことから、魔除けの力がある。 | |
目籠 | 2月8日または12月8日のコトヨウカには、悪鬼がやって来るといわれるが、玄関や軒先に目籠を置いておけば退散する。 | |
目籠 | 墓の上に目籠を伏せて置けば、悪霊の侵入を防いだり、故人が死霊となって帰って来るのを防げる。 | |
目にゴミが入ったときのまじない | 右目にゴミが入ったなら左唇を、左目にゴミが入ったなら右唇をなめる。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
目に入った塵を取るまじない | 「向えのばばさ、目ちりがはいったで、杓子をもってとりにこい」と唱え、息を吹きかける。塵が取れる。 | 常光,2003 |
目にホコリが入ったときのまじない | 右目にホコリが入ったなら右肩を、左目にホコリが入ったなら左肩をなめる。 | 愛媛県,1984 |
目にホコリが入ったときのまじない | 「カラスカラス、目のボクとってくれ」と唱えて、目に息を吹きかけてもらう。 | 愛媛県,1984 |
目にホコリが入ったときのまじない | 「カラスカラス、目物を取ってくれ。取ってくれたら茶の木の下ヘ米をまいてやるぞ。とーほい、アビラウンケンソワカアビラウンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
猪・猛獣除けのまじない | 「儀唐」と朱書した紙を懐に入れておく。山中で、猪などの猛獣に遭わない。 | 一橋閣,1921他 |
目標を達成するまじない | 毎日早朝に「宵の間や都の空に住みもせん心つくしに有明の月」と100回唱えながら紙に書き、強く念じる。100日以内に目標が達成される。 | 田中,1892 |
沐浴するときのまじない | 沐浴する前に宵の鐘を聞いたら、「宵の鐘つかざるさきに浴みよとは耳とまなくに言ひてしものを」と唱える。 | 二中歴 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。岩手県釜石市栗林町では「ナマコドンノオトオリダ、モグラドンハサレサレ」と唱えながら、馬を曳いて畑を歩く。 | 工藤,2011 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。宮崎県南那珂では、1月14日に長い竹の先に藁を巻き付けたもので、戸口のあたり、家の周囲や畑を叩いて回りながら「げんの島のハンヅを敲き割れ」又は「もぐらよい、とんとこせ、隣のせつちんもりくやせ」と唱える。 | 柳田,1939 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。熊本県阿蘇郡では、1月14日に長い竹の先に藁を巻き付けたもので、戸口のあたり、家の周囲や畑を叩いて回る。 | 柳田,1939 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。新潟県刈羽郡では、1月15日の早朝に藁を打つ横槌に縄を付けて家の中を引きずり回りながら「むぐらもちはどこねた、内ねか外ねか軒端ねか、横槌どんのお出でだお出でだ」と唱え、折々に横槌を地面に投げつけて「かっつぶせかっつぶせ」と唱える。 | 柳田,1939 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。新潟県小千谷在では、1月15日に腰に下げた縄に小槌を結び、それを引きずりながら「もっくれもちゃ何処行った、内にか外にか御宿にか、横槌が参った参った」と唱える。 | 武田,1943,pp.86-87 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。新潟県西蒲原郡弥彦村では、腰に下げた縄に木槌を結び、それを引きずりながら「もぐら殿は此処にか、手槌殿の御通りだ」と唱える。 | 武田,1943,pp.86-87 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。青森県八戸では、1月14日の夜に針で地面を突きながら、家の周囲を回る。あるいは、大根を縄に結わえて引きずって歩く。このとき「お大名様の御通りだ、もぐらももち用心しろ」と唱える。 | 柳田,1939 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。長野県飯田市千代では、小正月に田のあぜを槌で打ちながら「土龍は居らぬか、御槌殿御見舞申す」と唱える。 | 武田,1943,p.88 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。長野県北安曇郡では、1月15日に土竜追いの唄を歌いながら杵や鍬で畑の上を打つか、杵に縄を結んで雪の上を引きずり回す。 | 武田,1943,pp.86-87 |
土竜追い | モグラ除けのまじない。福島県石城では、1月14日に藁を打つ横槌に縄を付けて畑の中を引きずり回り、一人が「なまこどんの御通りだ、むぐろどんお留守かいお留守かい」と唱え、もう一人が後ろから「お留守お留守」と答えながら、畑の土を踏んでいく。 | 柳田,1939 |
土竜除けのまじない | 1月15日に、横槌に縄をつけて「正月様ござった」と唱える。 | 鈴木,1982 |
土竜除けのまじない | ツバキの実を皮といっしょに打ち砕いて、花壇のまわりに置く。モグラが花壇に入らなくなる。 | 如舟堂主人,1930 |
土竜除けのまじない | 愛知では「モグラモチおのが住み家と思うなよここは恐ろし鬼神の土」と書いて貼る。 | 鈴木,1982 |
土竜除けのまじない | 広島では「出雲」と書いた札を立てる。 | 鈴木,1982 |
土竜除けのまじない | 神奈川では「これモグラおのれの土と思うなよ日向の国の神の土なり」と3回唱えながら、モグラが通って盛り上がった土を踏む。 | 鈴木,1982 |
喪中の家を訪れるときのまじない | 手のひらに「岡」の字を書く。 | 二中歴 |
物忌 | ある法師が賀茂忠行に吉凶を占わせると、物忌をしなければ盗人に殺されると告げられた。法師が物忌をしていると平貞盛が訪ねてきたので事情を話すと、貞盛は盗人退治を申し出た。その夜、10人ほどの盗人が家に侵入してきたが、みな貞盛によって殺され、あるいは捕えられた。 | 今昔平貞盛朝臣於法師家射取盗人語 |
物忌 | ものいみ。神事のためや、災厄から免れるため、あるいは夢見が悪いときや不吉なことがあったときに、門を閉ざし、食事や言行を慎み、不浄を避け、外出せずに家内にこもること。 | |
物忌 | 算博士の小槻茂助が、凶兆があったので物忌をして家の門を固く閉ざしたとき、茂助を呪い殺すよう陰陽師に依頼した者がいた。陰陽師に依頼した者は茂助に門の引き戸を開けさせて、陰陽師は茂助の声を聞き顔を見て呪詛した。茂助は3日後に死に、陰陽師に依頼した者もほどなくして死んだ。 | 宇治拾遺 |
物見 | 群馬県佐波郡玉村町では、大晦日の夜に、山に登って来年中の吉凶について考えてから家々を巡って、互いの吉凶を占った。 | 小池,2017 |
物忘れを防ぐまじない | 5月5日の夜明け前に東に向かって伸びている桃の枝を取り、3寸に切って、衣服の襟に縫い込んでおく。物忘れしない。 | 高島易断所,1935 |
物忘れを防ぐまじない | 八十八夜の日に、東に向かって伸びている桃の枝を切り取って、枕の中に入れる。物忘れしない。 | 高島易断所,1935 |
盛り塩 | 塩を山型に盛って、玄関や鬼門、家の中の、気になる場所に置く呪術。魔除けや厄除けのために行なう。塩には、悪いものや穢れたものを祓い清める力がある。 | 中津川,2010 |
五字文殊法 | 文殊菩薩を祀り「アラハシャナ」と唱えて、一切の苦難を除き、罪障を消滅させ、経典を忘れることを防ぐ呪法。 | 豊島,1998,p.109 |
文殊菩薩法 | 文殊法。文殊菩薩を祀り、増益、除病、安産、滅罪、調伏、除災、延命などを祈る呪法。 | 豊島,1998,pp.108-109 |
薬師法 | 薬師修法。薬師如来の霊験によって諸病を癒し、害毒を退ける呪法。「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」 | |
厄病除けのまじない | 宮城県白石市では、大きな草履を作り「与助殿御宿」と書いて、門口に掲げる。 | 小倉,1932 |
厄病除けのまじない | 宮城県白石市では、2月の荒れ模様の日に、片方の大きな草履を作り「笹原与助殿御宿」と書いた紙とトウガラシを結びつけて、門口に掲げる。「藤原与助殿御宿」と書くともいう。 | 東北民俗の会,1971 鈴木,1982 |
厄病除けのまじない | 土用の丑の日に、アジサイの花を家の入口に吊るす。 | 鈴木,1982 |
火傷したときのまじない | 火傷をした箇所を、「上」の字を書いた札で撫でる。 | 井上,1900 |
火傷したときのまじない | 高知県土佐市芝では「猿沢の池の大蛇が火傷して、蛸の入道これを呪う、あぶらうんけんそばか」と2回唱える。 | 根岸,1991 |
火傷したときのまじない | 正月に供えたダイダイを焼く。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
火傷したときのまじない | 「たぶさが池の清水ふみわけ大般若、アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」または「たぶさが池の大蛇が火に焼けて、蛸の入道をもって呪う、アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
火傷したときのまじない | 「どうざん奥山、一谷落ちて水になる、アブラオンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
火傷したときのまじない | 「ほのぼのと明石の浦の朝霧に島がくれゆく舟をしぞ思ふ」と3回唱えて、息を吹きかける。 | 常光,2006,p.16 |
火傷したときのまじない | 「猿沢の池の大蛇がやけどして、うむなはれるなあとひくな」と3回唱えて、息を吹きかける。 | 根岸,1991 |
火傷したときのまじない | 「猿沢の池の大蛇がやけどして、しまず痛まず痕つかず」と唱える。 | 鈴木,1982 |
火傷したときのまじない | 「猿沢の池の大蛇がやけどして清きの水これを示さん」と紙に書き、「あびらうんけんそわか」と3回唱えながら九字を切る。 | 根岸,1991 |
火傷したときのまじない | 「猿沢の池の大蛇が黒こげて、水無き時はアビラオンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
火傷したときのまじない | 「猿沢の池の大蛇が焼けて、天竺の河原のアカの水、黒うもすな、暮れもすな、アビラウンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
火傷したときのまじない | 「奥山の池の大蛇が火にくばり、焼けもせず燃えもせず水がじくじく」と唱える。 | 鈴木,1982 |
火傷したときのまじない | 「寿日月我此土安穏天人常充南」と書く。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
火傷したときのまじない | 「天竺の、天竺の、流さが池の大蛇、はよかけもどせ。アビラオンケンソワカアビラオンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
火傷したときのまじない | 「天竺のりゅうしゃの川の川上の油火をうつせば水となる、アビラウンケンソワカアビラウンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
火傷したときのまじない | 「天竺の横田ヶ原の大蛇が火に入りて焼けほこり、水を掛け掛けふきしめしアビラウンケン」と唱える。 | 鈴木,1982 |
火傷したときのまじない | 「天竺の地蔵の前のたまり水、くみかくみか足でまじなうぞよ、アブラオンケンソワカアブラオンケンソワカ」と唱える。 | 愛媛県,1984 |
火傷したときのまじない | 「満濃の池の大蛇さま、焼けず劣らずアブラオンケンソワカアビラオンケンソワカ」と唱え、火傷をした箇所に息を吹きかける。 | 愛媛県,1984 |
火傷を防ぐまじない | 徳島県三好市祖谷山村では「そもそも天竺の猿沢の池の小端に大蛇が一匹仰向けて、剥けたたくれな痕あるな」と唱えた。 | 鈴木,1982 |
屋敷地取作法 | 寺社や家を建てるとき、敷地の四方と中央に札を立て、外周に縄を貼り、地神に供物を捧げるなどして、悪土を除き善土に変える呪法。 | 水野,1983 |
八握剣の勧行術 | 心刀を撃ち込んで、病魔を退治する呪術。たとえ実物の剣が無くても、精神を集中すれば心刀が出現し、この心刀を自在に振るえば、彼方の繁木が本を焼鎌の利鎌を以て打拂ふ事の如く、いかなる魔軍も撃滅できる。 | 宮永,1911,pp.90-91 |
八目の荒籠鎮めの呪詛 | やつめのあらこしずめのとこい。秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫の兄弟神が、女を争って賭けをした。弟神が女を得たが、兄神は負けを認めなかった。母神は竹で編んだ目の粗い籠と、塩と混ぜて竹の葉で包んだ石とを「この竹葉の青むが如、この竹葉の萎むが如、青み萎め。又この塩の盈ち乾るが如、盈ち乾よ。又この石の沈むが如、沈み臥せ」と唱えながら竈の上に乗せて、兄神を呪詛した。兄神は8年間、病で苦しんだ。母神が、竈の上に乗せていた詛戸をひっくり返すと、兄神の病は癒えた。 | 古事記 豊島,1998,pp.273 |
八剣のまじない | 疫鬼邪神を祓う呪法。神剣を振い「八剣や花のやいばの此のつるぎ、向ふ悪魔をくさなぎにせん」「彼方の繁木が本を焼鎌の利鎌を以て打拂ふ事の如く、向ふ悪魔を打拂ひけり」「塩土が間無し片阿美はるベらや満干の玉は波伝の神風」などの呪文を唱える。大己貴神が天下平定したことにちなむという。 | 宮永,1911,pp.175-180 |
家鳴柱治之法 | 神木を利用した、あるいは逆木の柱を立てた家は、妖怪が家鳴りを起こすといわれる。本式では、柱をそっくり入れ替えて、災いを祓う。略式では、柱の根元の四方を削り取って山野に埋めたところに代木を植え、柱の元に浄めた塩を埋めて、神符を箱に納めて柱に掛けて、災いを祓う。 | 宮永,1914 |
家鳴りを止めたまじない | 京都に住む人が、化け狸が引き起こす家鳴りに悩まされていた。狂歌師の鈍全が「石ずゑの柱うごかばけたぬきのさはりとなりて住うかるらん」と詠むと、家鳴りは止んだ。 | 嬉遊笑覧 |
流鏑馬 | やぶさめ。馬を走らせながら、鏑矢で的を射る神事。天下泰平や五穀豊穣を願って行われる。的を射抜いた矢は、除魔招福の効験があるともいう。 | 富山県,1983 |
山犬を退けた祈り | 御用飛脚・畑左衛門が、犬寄峠にさしかかったところで山犬に襲われた。左衛門は、目抜きに鶏の細工がされた刀を持っていた。左衛門が「鶏声を放てよ」と刀に祈ると、刀の先が鶏の鳴き声を発して、夜が明けたと勘違いした山犬は帰っていった。 | 愛媛県,1983 |
病除けのまじない | 厩舎の入口にアワビの殻を掛けておく。家畜が病気にかからない。 | 鈴木,1982 |
病除けのまじない | 京都府北桑田郡では「申」と書いた紙を、牛舎の戸口に下げておく。牛が病気にかからない。 | 鈴木,1982 |
病除けのまじない | 元日の1月1日、2月2日、12月12日のように、月と日の数字がかさなる日にビワの葉を煎じて湯浴みする。一切の病邪は除かれ、顔色も良くなる。 | 高島易断所,1935 中村,1935,p.12 |
病除けのまじない | 埼玉県越谷市では、家の入口にアワを撒く。疫神が会わずに帰る。 | 鈴木,1982 |
山で猟をするときのまじない | 「安積山影さヘ見ゆる山の井の浅き心を我が思はなくに」と唱える。 | 花部,1998 |
大和歌 | やまとうた。和歌のこと。紀貫之は「力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女のなかをもやはらげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり」と古今和歌集に書き、歌が持つ呪的な力について語っている。 | 古今和歌集 |
大和歌 | やまとうた。和歌のこと。古今和歌集は、大和歌の起源は、地においては素戔嗚尊が歌った「やくもたつ、いづもやえがき、つまごみに、やえがきつくる、そのやえがきを」であるとする。また、天においては下照姫が歌った「あめなるや、おとたなばたの、うながせる、たまのみすまるの、あなたまはや、みたに、ふたわたらす、あじすきたかひこね」であるとする。下照姫の歌は夷曲(ひなうた)、夷振(ひなふり)とも呼ばれる。 | 古今和歌集 |
山の怪異を避けるまじない | 登山する前に、麓で山に向かって「三山神三魂を守り通して、山精参軍狗賓去る」と唱える。山中で怪異に遭わず、山神の祟りに遭うこともない。万一事故に遭っても、無傷か軽傷で済む。 | 豊島,1998,p.199 |
山道を通るときのまじない | 「南無財宝無量寿岳仏」と唱える。 | 小沼,1971,p.186 |
山を噴火させ、噴火を止めた歌 | 豊後国にやって来た西行は、豊後富士とも呼ばれる由布岳を見て「豊国の由布の高根は富士に似て雲もかすみもわかぬなりけり」と詠んだ。すると、たちまち由布岳は鳴動して激しく噴火を始めた。西行が「駿河なる富士の高根は由布に似て雲も霞もわかぬなりけり」と詠むと、ほどなく由布岳は鎮まって噴火が止まった。 | 柳田,1932 |
夕占するときのまじない | 「ふなどさえ、ゆふけの神に物問はば道往く人よ占正にせよ」と3回唱え、境界をつくり、米を撒き、櫛の歯を3回鳴らして、境界の内側に入ってきた人や屋内にいる人の言葉から、吉凶を占う。ふなどさえ(岐塞)は、道の神である岐の神と塞の神のこと。ゆふけは、夕占のこと。 | 二中歴 |
幽冥神語 | ゆうめいしんご。出雲大社に祀られている大国主神の霊験を得る呪文。葬儀や慰霊祭のときに唱える。「幽世大神憐給恵給、幸魂奇魂守給幸給(かくりよのおおかみ、あわれみたまえめぐみたまえ、さきみたま、くしみたま、まもりたまえさきわいたまえ)」 | 豊島,1998,p.289 |
幽霊に遭ったときのまじない | 沖縄県国頭郡では、鶏の鳴く真似をする。夜が明けたと勘違いして、幽霊が逃げる。 | 鈴木,1982 |
幽霊に追われたときのまじない | 沖縄県国頭郡では、網の中に入る。 | 常光,2006,p.207 |
遊行無畏如獅子王 | 病者を加持祈祷するときは、病者の家の門に入る際に九字を切り、「遊行無畏」と低く唱えて左足から踏み入れる。そのあと着座するまで、「如獅子王」と繰り返し唱えながら歩く。歩くときは威儀堂々と振る舞い、さながら獅子王が歩くようにする。 | |
湯立 | ゆたて。湯の花の神事とも。大釜で湯を沸かし、巫女や神官が笹の葉などを熱湯にひたして、自身や周囲に振りかけ浄める儀式。五穀豊穣と無病息災を願って行う。あわせて神楽を舞う場合は、とくに湯立神楽と呼ばれる。 | |
湯津爪櫛 | ゆつつまぐし。湯津津間櫛。竹で作り、魔除けとして髪に挿した櫛。イザナギが黄泉国から逃げ出そうとしたとき、イザナミは黄泉醜女を追手にさしむけた。イザナギが湯津爪櫛を投げると筍が生えてきて、黄泉醜女が筍を食ベているあいだに、イザナギは逃げ去った。 | 武田,1956 |
弓矢八幡 | ゆみやはちまん。宣誓するときに唱える呪文。おもに武士が使った。 | 野村,1926,p.337 |
夢買い | 他人が見た吉夢を買い取って、その人の幸運を自分のものにする呪術。北条政子は、妹が見た「どことも知れない高い峰に登り、月と太陽を左右の袂に収め、実が三つ生っている橘の枝をかざす」という夢を買い取って、源頼朝の妻となった。 | |
夢違え | 悪夢を見たとき、その悪夢が現実とならないように、また吉夢に変わるようにする呪術。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは、5月5日に作った粽を見る。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは、クワの木の下で夢の内容を話し「悪夢著草木、吉夢成宝玉」と唱える。悪夢が吉夢になる。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは、ナンテンの木を見ながら「獏食え」と3回唱える。ナンテン(南天)の木は、難を転ずるといわれ、庭木や縁起物として好まれる。また、獏は悪夢を食ベるという。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは、口をすすぎ、東に向かって「赫々陽々日出東方断絶悪夢辟除不祥急々如律令」と3回唱える。悪夢が現実になることはない。 | 高島易断所,1935 |
夢違え | 悪夢を見たときは、手の親指を噛む。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは、寝返りを打つ前に「悪しき夢、見たとてさらに驚かず、良き夢とても合ふこともなし」と唱える。もし寝返りを打ったなら「今宵見し夢をば、獏に喰らはれて明けて見たれば、跡形もなし」と唱える。 | 木村,2009 |
夢違え | 悪夢を見たときは、早朝に顔を洗い、北に向かって「悪夢ジャク、ソラムク、コウムジョウ」と3回唱える。災いを祓える。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは、東に向かって「悪夢着草木好夢滅珠玉旡咎矣」と唱える。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは「あらちをのかるやのさきにたつ鹿も、ちがヘをすればちがふとぞきく」と唱える。悪夢が現実になることはない。この呪歌は吉備真備と関係があるという。真備は他人の夢を盗むことで右大臣まで登りつめたという伝説がある。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「からくにのそののみたけになくしかもちかヘをすればゆるされにけり」と唱える。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「にるめる今夜の夢はあらじ、たがヘる戸の下にねぬれば」と3回唱える。 | 経済雑誌社,1890 |
夢違え | 悪夢を見たときは「よーベの夢を天のハブに食はする」または「よーベの夢を天の獏に食はする」と3回唱え、天に向かって唾を3回吐く。悪難を逃れられる。獏は、悪夢を食ベるという。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「悪夢は草に着け、吉夢は宝玉に成れ」と唱える。悪夢が現実になることはない。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「悪夢着草木吉夢成宝王」と唱える。悪夢が現実になることはない。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「悪夢著草木好夢滅珠玉咎矣」と唱える。悪夢が現実になることはない。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「奥山の根なしかづらに見つる夢ことなし草に見ゆるなりけり」と3回唱える。悪夢が現実になることはない。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは「奥山の根なし葛が夢見せた夢は逆夢罪は滅ベる」と唱える。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは「奥山の根なし蔓に見るる夢ことなし草に見ゆるなりけり」と3回唱える。悪夢が現実になることはない。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「見し夢を獏の餌食となすからに、心も晴れしあけぼのの空」と1回または3回唱える。悪夢が現実になることはない。 | 高島易断所,1935他 |
夢違え | 悪夢を見たときは「見し夢を獏の餌食となせし夜に、明日もも晴れしあけぼのの空」と3回唱える。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは「今晩の夢はバクに食わせる、バクに食わせる」と3回唱える。獏は、悪夢を食ベるという。 | 鈴木,1982 |
夢違え | 悪夢を見たときは「今晩の夢は獏に食はする、食はする」と3回唱える。獏は、悪夢を食ベるという。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは「大原や三狩の歌に立つ鹿も誓いをすれば許されにけり」と3回唱える。悪夢が現実になることはない。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「唐国の苑の御嶽に鳴く鹿も違ヘをすれば許されにけり」と唱える。 | 二中歴 |
夢違え | 悪夢を見たときは「南無功徳須彌厳王如来」と唱える。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは「夢を見た、夢を見た、枕の下の空手箱あけて見たれば何事もなし、アビラウンケンソワカ」と3回唱えて、枕を裏返す。 | 花部,2016 |
夢違え | 悪夢を見たときは「夜見つる今宵の夢は悪しからじ違える戸の下に寝ぬれば」と3回唱える。悪夢が現実になることはない。 | |
夢違え | 悪夢を見たときは「獏にかしろ」と3回唱える。獏は、悪夢を食ベるという。 | 日文研怪異・妖怪伝承DB |
夢違え | 気持ちの悪い夢を見たときは、女は「夢見てさめて枕の下の玉手箱、開けて見ても何事もなし、アビラウンケンソワカ」と3回唱える。 | 花部,2016 |
夢違え | 蛇の夢を見て気持ちが悪いときは、男は「夢見てさめて枕の下の小脇差、抜いて見ても何事もなし、オンアビラオンケン」と3回唱える。女は「夢見てさめて枕の下の玉手箱、開けて見ても何事もなし、オンアビラオンケン」と3回唱える。 | 花部,2016 |
夢違え | 福島では、悪夢を見たときは、目を覚ましてすぐ「バクにあげます」と3回唱える。朝には、その夢を忘れている。獏は、悪夢を食ベるという。 | 鈴木,1982 |
夢流し | 昔は、悪夢を見たときは、宝船の絵を描いた紙を川に流して、悪夢が現実にならないようにした。 | |
夢を見ないまじない | 「寝るぞネコ、頼むぞタヌキ、シシウサギ、何事あらば起こせカワウソ」と3回唱える。寝ても夢を見ない。 | 鈴木,1982 |
夢を見るまじない | 左手を下にして寝る。夢を見られる。 | 花部,2016 |
良い夢を見るまじない | 1月2日の初夢で福徳満来の吉夢を見たければ、宝船の絵を枕の下に敷いて寝る。良い夢が見られる。 | 経済雑誌社,1890 |
良い夢を見るまじない | 半紙に「ながきよのとおのねぶりのみなめざめなみのりふねのおとのよきかな」と書き、舟の形に折って、枕の下に敷いて寝る。良い夢が見られる。 | 相馬市,1975 |
妖火を滅したまじない | 毎夜、円蔵院裏手の墓所で妖火が出るので、住民が恐怖していた。宗俊が、日没とともに密かに墓所ヘ行き「種々の幻化は覚心より生ず、しばらく道え、幻尽き、覚尽くる時、如何」と一喝して「薪尽火滅」と唱えると、たちまち妖火は消えて現れなくなった。 | 豊島,1998,p.352 原田,1990 |
楊枝 | ようじ。つまようじ。先の尖った短い木の棒。楊枝に願をかければ邪鬼が去る。成長の早いヤナギ(楊)は、春に芽吹くので「芽出た木(めでたき)」に通じ、強い霊力を持つ。 | 丹羽,1984 |
妖術勇気不勝 | 妖術が勇気に勝つことはないという。ひとりの怪僧が高崎藩に現れた。僧の妖術に翻弄される若侍を見た年輩の武士が、右手に小刀を持ちながら「左手に握った物を取ってみろ」と言った。自分の左手ごと僧の手も突き刺そうという武士の気迫に押されて、僧は妖術を使えなかった。 | 耳嚢2 |
妖不勝徳 | 妖は徳に勝たず。正徳を身につけていれば、妖邪に負かされることはないという。ある人が狐に憑かれたので、人々は狐を降伏させようとしたが、うまくいかない。徳で妖を降伏させるという儒学者の伊藤仁斎を呼んで来ると、仁斎が一言もいわないうちに狐は恐れ伏し、謝罪して逃げ去った。 | 井上,1900,p.121 |
養老律令 | 天平宝字元年に施行された律令。賊盗律の造畜蠱毒条は、蠱毒を造り、所持することを禁じていた。また、憎悪造厭魅条は、憎い他人を殺すために厭魅をなし、符書を作り、呪詛することを禁じていた。 | 養老律令 |
節折 | よおり。12月31日に、天皇のために行なわれる祓えの儀式。 | 宮内庁 |
予祝 | 正月などに、秋に豊作になった様子などを模倣して、その年の豊作や盛業を祈る呪術。 | 金谷,2013 |
夜雀に憑かれたときのまじない | 夜道を歩いていると、ちっちっと鳴いてついてくるものがある。これを夜雀という。夜雀に憑かれたときは「ちっちちっちと鳴く鳥は、しちぎの棒が恋しいか、恋しくんば、ぱんとひと撃ち」または「ちっちっと鳴くものは、しちぎの棒が恋しいか、恋しいならばぱんとひと撃ち、アビラウンケンソワカ」と唱える。鳴き声が止む。 | 鈴木,1982 |
夜雀に憑かれたときのまじない | 夜道を歩いていると、ちっちっと鳴いてついてくるものがある。これを夜雀という。夜雀に憑かれたときは「ちっちちっと鳴く鳥を、はよ吹きたまえ伊勢の神風」と唱える。鳴き声が止む。 | 鈴木,1982 |
他所じまなてぃや歌掛きやしーな | 鹿児島県奄美のことわざ。「よその村ヘ行って歌掛けをしてはならない」の意。奄美では、歌に呪力が宿ると信じられ、歌をやりとりする歌掛けは、ときに命がかかわる恐ろしい遊びだといわれた。 | 奄美学,2005 |
夜道を歩くときのまじない | 下腹に力を入れて、宙に「寅」の字を書く。災いを避けられる。 | 中村,1935,p.115 |
夜道を歩くときのまじない | 心細ければ、胸に「犬」の字を書く。 | 鈴木,1982 |
夜道を歩くときのまじない | 千葉県南房総市平久里では「よみちあるく、たかまばはらにゆみはりて、むこうやさき、あくまきたらず、けんげんこじ、けんげんこじ」と唱える。 | 若林,1967,p.61 |
夜道を歩くときのまじない | 夜道がさみしいときは「ひがらがおがらのタオ越す時は、神の子ならば夜道きらわんアブラオンケンソワカ」と唱える。 | 鈴木,1982 |
夜道を歩くときのまじない | 夜道がさみしいときは「朝がらや日がらや峠を越す時は、サカキ葉にのって、腰には女神の子なれば夜道嫌わんアブラゴンゲンサマカ」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
夜道を歩くときのまじない | 「かたしはや、えかせにくりに、ためる酒、手えひ足えひ、我しひにけり」と唱える。災いを避けられる。 | 井上,1931,p.1581 経済雑誌社,1890 |
夜道を歩くときのまじない | 「ななつのむぃの、いっちゃんかたな、わんやむっちゅっとお」と唱える。災いを避けられる。「七つ銘の入った刀を持っているぞ」の意。鹿児島県奄美に伝わるこのような呪文を、クチという。 | 小川,2005 |
蓬 | よもぎ。キク科の多年草。その香りは邪気を退ける。菖蒲といっしょに軒先に吊るしたり、よもぎ餅にして食ベるなどする。清少納言は「5月の節句で、菖蒲と蓬などの香りが混ざり合うのは趣深い」と枕草子に書いている。 | 枕草子 |
四方参り | よもまいり。節分の夜に、京都御所の四方にある吉田神社、八坂神社、壬生寺、北野天満宮を参拝して回ること。福を招き、邪気を祓う。 | 中津川,2010 |
寄加持 | よりかじ。代寄(だいより)とも。病者に幣を持たせて加持し、幣に移った邪気を退散させることで、病気を癒す呪法。病者が遠方にいたり、病者が高位高官のため術者が同座できないときは、病者ではなく神女に幣を持たせて加持する。 | 豊島,1998,pp.233-234 |
憑祈祷 | よりきとう。憑坐(よりまし)に神仏諸霊を憑依させ、吉凶禍福を占ったり病気を癒す呪術。護身法などを行ない、「天上天下唯我独尊、トロトロウン、神女の頭に移るうれしや」と3回唱えるなどする。「物の怪を引いて放つぞ梓弓、受けとり給え今日の聞神」と唱えるなどして修法を終える。 | 宮家,2012 |
憑祈祷 | 清少納言は、修験者が憑祈祷によって物の怪を調伏しようとしたが、うまくいかず、修験者が呪文を唱えるのに疲れて居眠りしたのを見て「興ざめした」と枕草子に書いている。 | 枕草子 |
憑祈祷 | 寛弘5年、一条天皇の后・藤原彰子に物の怪がとり憑いたとき、父・道長は修験者を集め、女官を憑坐として、物の怪を調伏させた。 | |
夜に恐ろしくなったときのまじない | 夜に、何か恐ろしい気配を感じたときは、その気配を感じる方向に向かって「曠野険獅子象虎狼」と唱えてから、指を弾く。恐ろしい気配が消える。 | |
夜に爪を切るときのまじない | 「鷹の爪」と1回または3回唱える。 | 荒川村,1983,p.872他 |
夜に爪を切るときのまじない | 「夜切る爪は鷹の爪」と3回唱える。 | 文部省,1949,p.253 |
夜に爪を切るときのまじない | 「夜切る爪は鷹の爪、俺切る爪は鳩の爪」と唱えながら切る。 | 岩崎,1975,p.218 |
夜に爪を切るときのまじない | 「夜切る爪は鷹の爪、鷹の爪なら鷲が切る」または「夜切る爪は鷹の爪、鷹の爪は夜切る夜切る」と唱える。 | 山古志村,1983,p.439 広井,1996 |
雷鳥鎮火符 | ライチョウの絵が描かれた護符。雷除けや火除けの利益がある。石川県の白山に棲息するライチョウは、古くから雷火除けの鳥として知られ、その羽は雷除けや魔除けの御守として重宝された。近代以降は、ライチョウの絵が描かれた火除けの護符が、平野部の住居で用いられるようになった。 | 石川県,2011 |
雷鳴陣 | 昔、雷が鳴ったときは、侍衛の官人は必ず宮中に詰めた。大きな雷が3回鳴ったときには、左右近衛は在所に、左右兵衛は紫宸殿の前に布陣し、内舎人は春興殿の西廂に立った。これを雷鳴陣という。清少納言は「雷がひどく鳴るときの雷鳴の陣ほど、恐ろしいものはない。左右の近衛の大将や中少将などが清涼殿の格子のそばに伺候するのは、とても気の毒だ」と枕草子に書いている。後世には廃れ、蔵人と滝口の武士が鳴弦を行い、護持僧が念誦するにとどめた。 | 枕草子 古事類苑天部 |
落馬を防ぐまじない | 馬に乗って手綱をとる前に、人に見られないようにしながら、手のひらに「南」の字を3回書く。落馬しない。 | |
輪鼓 | りゅうご。2つの三角形を上下に並ベて互いの頂点を接続させた、魔除けの印。その形は、中央部分がくびれた空中独楽・輪鼓に似る。 | |
両想いになるまじない | 毎朝「宵の間や都の空に住みもせん心つくしにありあけの月」と100回唱える。100日のうちに恋が成就する。 | 古屋,1910,p.76 |
両想いになるまじない | 毎晩、寝る前に「虎と見て石に立つ矢のためしありなどか思ひの通らざらまし」と3回唱える。恋が成就する。 | 松原,1935,pp.122-123 |
漁師の霊を成仏させたまじない | 藤戸の戦いに際して、佐々木盛綱は、秘密の浅瀬を教えてくれた漁師を口封じのため殺してしまった。漁師の霊は恨みによって悪竜の水神と化して盛綱を襲ったが、盛綱が「一切有情殺害三界不堕悪趣」と唱えると、漁師の霊は成仏した。 | 謡曲藤戸 |
漁をするときのまじない | 海女は、漁をするとき「ツイヤ、ツイヤ」と唱える。 | 志摩市,2018 |
漁をするときのまじない | 三重県志摩では、海女は漁をするとき「ツイヤショウジョウ」と唱える。また、舟縁をノミで叩き「ツイツイツイ」と唱えて鼠鳴(ねずなき)をする。 | 常光,2003 |
漁をするときのまじない | 瀬戸内では、釣糸や網を海に入れるとき「チョイ、エビスサン」と唱える。大漁になる。 | 常光,2003 |
漁をするときのまじない | 徳島県海部郡美波町阿部では、海女は、海に入る前に「チョベッサン」と唱える。 | 常光,2003 |
類焼を防ぐまじない | 火災は火鳥がもたらすという。秋田県北秋田郡では、火災が起こったときは類焼を防ぐために、拍子木を叩いて「ホーイホーイ」と叫び、火鳥を追い払う。 | 鈴木,1982 |
類焼を防ぐまじない | 火災は火鳥がもたらすという。千葉県浦安市では、火災が起こったときは類焼を防ぐために、拍子木を叩いて「ホーシホーシ」と言い、火鳥を追い払う。 | 鈴木,1982 |
類焼を防ぐまじない | 近所で火事が起きたときは「焼亡は柿の本まで来たれども、明石といヘば、ここに火とまる」または「焼亡は柿の本まで来たれども、赤人なれば、そこで人丸」と唱える。自宅に火が燃え移らない。「明石」は「(火)赤し」の意か。「人丸」は「火止まる」の意。この呪歌は柿本人麻呂と関係があるという。 | 豊島,1998,p.296他 |
類焼を防ぐまじない | 「焼亡は柿の本まで来れども、あか人なれば、そこで人丸」と書いた紙を、表の戸の裏に貼る。近所で火事が起こっても、自宅に火が燃え移らない。 | 日本神霊教会,1919 |
類焼を防ぐまじない | 「霜柱、氷の梁に雪の桁、雨の垂木に露の葺草」と3回唱える。 | 鈴木,1982 |
蓮弁祈願 | 京都市の隨心院では、蓮の花弁をかたどった紙に願いごとを書いて水に浮かベて祈り、沈み溶ければ成就する。隨心院は小野小町とゆかりがある。小町に求婚した深草少将は、100日間毎日通い続けたら結婚に同意すると言われた。少将は毎日通い続けたが、100日目に大雪のため凍死した。 | 真言宗大本山隨心院 |
籠名 | ろうみょう。名籠め。人の苗字や名前を書いた紙片を、仏前に納めたり、湯釜に入れるなどして、その人を調伏したり罰したりする呪術。 | 萩原,2010 |
六観音法 | 大悲観音、大慈観音、獅子無畏観音、大光普照観音、天人丈夫観音、大梵深音観音を祀り、所願成就と死者の救済を祈る呪法。 | 豊島,1998,p.133 |
六三除け | ろくさんよけ。年回りによる病気になったとき、人体を9つの部位に分けてどの部位に原因があるかを突き止めることで、病気を癒す呪術。 | NDLレファレンス共同DB |
六字河臨法 | 調伏加持や病魔除去などのために行われる六字経法を、河川に浮かベた舟の上で行う、大掛かりな呪法。 | 豊島,1998,p.16 |
六字経法 | 六字法。調伏加持や病魔除去などのために行われる呪法。天安2年、文徳天皇の死後、惟喬親王と惟仁親王が皇位を争ったとき、真雅が六字経法を行なって、惟喬親王を調伏した。惟仁親王は即位し、清和天皇となった。 | 豊島,1998,p.14 |
六字文殊法 | 文殊六字法。文殊菩薩を祀り「オンバケイダナモ」と唱えて、罪障や病魔を消滅させ、怨敵を調伏する呪法。 | 豊島,1998,p.109 |
六条御息所を退けた呪文 | 六条御息所の生霊から葵の上を救うため、横川の小聖が唱えた。「東方に降三世明王、南方軍荼利夜叉、西方大威徳明王、北方金剛夜叉明王、中央大聖不動明王、ナマクサマンダバサラダセンダマカロシャナソハタヤウンタラタカンマン、聴我説者得大智慧知我身者即身成仏」 | 謡曲葵上 |
六根清浄 | 茨城県南部や千葉県北部で行なわれる盆綱行事では、迎え火を焚くとき、子供が龍形の藁綱を持って墓地を出て「六根、六根、六根清浄」と唱えながら家々を訪れる。家人は「降りろ、降りろ」と返して、祖霊を家に迎え入れる。また、送り火を焚くときは、子供が龍形の藁綱を持って「六根、六根、六根清浄」と唱えながら家々を訪れ、墓地ヘ向かう。家人は「乗れ、乗れ」と返して、祖霊を家から送り出す。 | 笹生,2001 |
六根清浄 | 村上天皇のとき、反乱を起こした藤原千方と、山注記、三河坊、兵庫竪者、筑紫坊の4人の法師を討つために、紀朝雄は六根清浄と中臣祓詞を唱えた。 | 菊岡,1933 |
六根清浄 | 富士山が山開きする日には、富士講員は「六根清浄」と唱えながら富士塚に登り、富士山を遠望して礼拝した。 | 小川,2015 |
六根清浄 | 祓えの呪文。「目、耳、鼻、舌、身、意の六根を浄める」の意。 | 笹生,2001 |
若水 | わかみず。元日早朝、新年最初に井戸や川から汲んだ水。若水を汲むときは、井戸や川に餅を供え「悪を払って福を汲む」と唱えながら、柄杓で3回汲み、その後「竜神様にお供え申す」と唱えながら、餅をちぎって3回投げ、拍手を打ち柄杓で3回汲むなどする作法がある。 | 工藤,2011 |
渡し舟を引き返させたまじない | けいたう坊という修験者が、渡し舟に乗ろうとして断られた。けいたう坊が数珠を揉みながら「護法、召しかヘせ。召しかヘさずば、ながく三宝に別れ奉らん」と唱えると、風も無いのに舟が戻りはじめた。「はや、打ちかヘし給ヘ」と唱えると、舟はひっくり返った。 | 宇治拾遺 |
悪いことを聞かないまじない | アワビを家の入口に吊るす。 | 鈴木,1982 |
ヲントウドウシンシンソワカ | 天満大自在天神の真言。雷神となった菅原道真の霊験によって、一切の悪鬼邪毒を除く呪文。 | 柄沢,1926,pp.17-18 |