黒魔道士
黒魔道士
“魔道士”という表記には、FFシリーズを通して揺らぎがある。
FF1と6では魔導士、2は魔導師、3は魔道師、4と5そして9は魔道士と様々。
10にいたっては、無印は魔道士、10-2は魔導士と、同ナンバーでも表記が違う。
特筆すべきなのは、ビビが装備する杖の中に「魔道士の杖」と「魔導師の杖」があること。
英語版では、魔道士はmage、魔導師はhigh mageと表記されているようだ。
どうやら魔導師は、魔道士よりも格上らしい。
……だからなんだって話なんだけどさ。
さてさて、ジョブとしての黒魔道士(←当サイトでは、基本的にこの表記です)は、1から登場している最古参だ。
3では、大魔道士ドーガをはじめとして、多くの黒魔道士がNPCとして登場する。
彼らは魔法を研究する過程で自然を知り、自然から学ぶ科学者だ。
4には少年黒魔道士パロムがいるし、5でもジョブとして再登場している。
とくに4では魔法国家ミシディアが登場し、興味深い。
しかしこれ以降、魔法と魔道士を取り巻く状況が変化する。
6からは、白や黒といった「色」によって分類する概念が無くなり、
7、8になると「魔道士」という存在そのものが希薄になり、消滅した。
「原点回帰」を謳った9で、魔法と魔道士は華々しい復活を遂げる。
とくに人型兵器黒魔道士兵に関わるエピソードは、9の物語の主軸を担った。
「軍事利用される魔道士」というモチーフは、いくつかのナンバーに見られる。
4では、バロン軍を構成する部隊に黒魔道士団が存在しているし、
6でも、ガストラ帝国によって魔道士に改造されたセリスやケフカといった魔導戦士が登場する。
しかし9は、他ナンバーに比べて黒魔道士と戦争の関わりが深い。
黒魔道士兵が直接の戦闘手段として――しかも消耗品として使われたからだ。
物語の中盤、
ただの「道具」でしかなかった黒魔道士兵が、目覚めて自我を持ちえることが明かされる。
ビビもまた、そうして目覚めた黒魔道士であることが分かる。
しかし、彼らに与えられた時間はあまりに短い。
セリスをはじめとする魔導戦士と、ビビをはじめとする黒魔道士兵。
立場は非常に似ているが、黒魔道士兵が帯びる悲劇性はより暗く、希望が無い。
だからこそ、エンディングで語られるビビの言葉が、より強く胸に響くのだと、
そう思う。
Sep.13.2009
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